未来を掴むヒーローアカデミア   作:和賀苗知暉

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キミと戦う

 これで良し、と。

 

 俺は筆記試験最初の科目の数学の試験時間を半分以上残して解き終わった。

 

 念のため、解答欄を埋めてあるか、ずれていないかの確認だけするが、回答内容の見直しはしない。

 さすがに未来視で問題の正誤が分かるってわけじゃない。

 学校のテストなら返って来た答案用紙を見る自分の未来を見て答え合わせができるんだが、今回はそうもいかない。入試の回答用紙は返ってこないみたいだからな。

 見直しをしないってのは、俺のスタイルだな。

 問題を解き終わった今の俺と問題を解いているちょっと前の俺。

 今の俺がちょっと前の俺は間違えてるって言って答えを直すのはどうなのかと思うわけよ。

 

 だって、どっちも同じ俺なんだから。

 

 まあそれに、未来視的にも合格率は変わってないみたいだから、順当に良い点数をとれてるって事だろう。

 多分満点。

 俺、頭いいからな。

 

 未来視抜きにしても、社会が崩壊したら知識を得る手段がなくなるから、勉強は喧嘩の練習と並行して頑張ってきた。

 俺にはそもそもの地力がある。

 

 それに加えて、未来視で出る問題を視たから、それに関しては何回も解いて備えた。

 わざわざ学校休んで、私立の名門校の登下校を張り込んだかいがあった。

 おかげで、雄英を受けるようなエリートの未来を見られたから、俺は筆記の問題をほとんど知ってる。

 つまり、俺にとってこの筆記試験は、何度も解いた過去問と同じ問題が出されてるってわけだ。

 

 ほんと、未来視様様だ。

 

 もっとも、ヒーロー科受ける奴が、個性の無断使用すんのはどうなんだって話だ。

 だけど実際のところ、人に迷惑をかけたり、明らかな個性の使用だって見られなきゃ、罰されることはそうそうない。

 そもそも俺の未来視は常時発動型だから、使わざるを得ないんだけどな。

 

 さて、いい加減現実逃避を止めて、本題を考えよう。

 

 緑君の未来の話だ。

 

 俺は正直、明るい未来があるとは思ってなかった。

 そりゃそうだ。未来視が発現してからおよそ10年。その間に見たことない未来が、あるはずのなかった未来が今見えたんだから。

 

 現実味がない。夢を見ているようなフワフワとした感覚だ。

 そして今、未来を決める重要な分岐点に立っている事が個性無しでも分かる。

 足元がぐらつくほどの緊張感。

 

 だけど俺は未来視の確実性を知っている。

 

 事故が起きる未来を見たら事故は起きるし、ヴィランが暴れる未来を見たらヴィランが暴れる。

 必ずしも高確率な未来が選びとられるわけじゃないけど、どれも俺が知ってる未来だ。

 

 つまり、99.9%社会はぶっ壊れるわけだが、ほんとに微かな、針の穴に糸を通すような確率で、明るい未来を掴み取れる。

 そしてこの未来は確実に存在している。

 俺の未来視で視えたって事はそういうことだ。

 

 ……。戦うのか? 俺が。

 これまでずっと諦めていた俺が、戦っていいのか? 

 俺が……。

 

 ──クソ、悩みやがって俺。

 そうだよ。悩むってのは決断が正しいか確認しているだけだ。

 初めから決めていただろう。

 

 俺は明るい未来が欲しい。

 

 生まれてからずっと暗かったんだ。

 だけど、そこに光が差した。

 緑君だ。

 

 ホント、ヒーローだよ。

 絶対知らないだろうが、緑君は俺のヒーローだ。

 

 クソまぶしい未来視せやがって。

 

 ああ、初めから答えは決まってるんだ。

 

 俺は、未来のために戦う。

 

 未来視を持った人間の義務だとかそんな雑魚みたいな事言う気はない。

 

 俺が決めたんだ。

 

 他ならぬ、この視渡来人がな。

 

 さて、それじゃあ俺に何ができる? 

 

 まずは緑君がどんな進路を取るのがベストか、だな。

 もし雄英ヒーロー科に入らない方が良いって言うなら、俺は全力で彼を不合格にさせるために動くんだが……。

 

 ん~。合格率低すぎだろ。1割ってなんだよ。ほぼほぼ不合格じゃないか。

 

 おかげで明るい未来までの道筋が辿れないから、緑君が合格したのかしてないのか分からない。

 役に立たねーな、俺のヒーロー。

 

 んじゃ次はイガグリ君の未来でも見るか。

 イガグリ君は合格率100%だからな。入学後の未来もはっきり見える。

 

 んで、見る限り……。

 やっぱ緑君が合格してる確率は低いみたいだな。

 

 そんで時間的に入学後の──すぐぐらいかな。

 なんか戦ってるが……。

 うわっマジかよ。脳みそむき出しのやついるじゃん。気色わりーな。

 

 てかこの脳みそ何なんだ? 

 会ったことねーからな、絶対。

 こんなやつ見たら絶対忘れない。会ったことのない人間の未来は視えない俺の個性でもはっきり見えるってことは人じゃーない。

 立ち位置としちゃアレだ。イガグリ君のコスチュームと同じ、モノ扱いだ。

 にも関わらずオールマイトみたいに動き回る。

 

 ……よく分かんねーが、脳みそは絶対雄英高校が用意した何かじゃない。それは確実だ。

 根拠は当然ある。

 見た目がグロテスクだからじゃない。

 脳みそが実戦投入されてないからだ。

 生徒と戦わせるぐらい制御できるなら、実社会のヴィラン退治にも導入されてるだろう。

 治安維持ロボットとして運用すればオールマイト並みの戦力だ。

 見た目の悪さで来る世間のバッシングよりも、オールマイトが一人増えた方が犯罪率が下がる。メリットの方がでかい。

 

 にも関わらず導入されてないってことは、こいつがヴィラン側の持ち物だから、って事だろ。

 まあ、俺が戦う相手はこの社会を壊せるような奴らだ。

 こんなインチキみたいな駒があってもおかしくはない。

 

 さらにこの戦闘は社会が崩壊する前の出来事だ。

 つまり、雄英ヒーロー科に入ったイガグリ君は1年以内にこれと出会うってわけだ。

 

 やべーな雄英。

 正直入学しない方が良いんじゃないかって思う。オールマイト級ヴィランが襲撃するとか即死の負けイベだ。

 

 でも実はそうじゃないみたいだ。

 この戦闘以降の未来が視えなくなってる。

 イガグリ君の未来は続いて、社会は崩壊に到達するにも関わらず、だ。

 

 つまりオールマイト並みの脳みそには何らかの対抗手段があることと、それによってイガグリ君は生き残る可能性があるって事だな。

 恐らく他の生徒も。

 

 話を戻そう。

 まず決めるのは緑君の合格を目指すかどうかだ。

 結論、どっちを選べばいいのか確証はない。

 

 だが、俺の敵は社会を崩壊させるような奴だ。

 そんな大それたことをするとなると、オールマイトを殺すか封じ込めるかしなきゃなんないわけだ。

 だからオールマイト並みの駒を持ってたっておかしくない。

 そうは言っても、この大駒を落とせれば、敵にとっちゃ駒損だろ。早々に対オールマイト用の駒を失えば、代わりを用意しなきゃなんないんだからな。

 経験上分の悪い未来を覆すには、とにかく勝利を積み重ねるほかない。こっちの駒を強化しつつ、相手の嫌がることをして、相手の好きにさせない。脳みそ討伐作戦はこの第一歩だ。

 

 

 となると、当面の作戦は敵の大駒、脳みそを落とすこと。これだな。

 それを成功させるには、俺っていう最強の駒は当然として、倍率300倍を超える入試を突破した優秀な駒は一つでも増えればできることが多くなるはずだ。

 ついでに未来を頻繁に確認したいから、緑君は入学させよう。

 

 緑君の個性は諸刃の剣。ビルよりでかい巨大ロボをぶっ壊せるが、大けがするらしい。

 本人的には使いづらいだろうが、俺がいればいい駒として使える。

 未来を視て、効果的なタイミングで最強の一撃を使えば、盤面をひっくり返せるからな。

 期待してるぜ、緑君。

 

 よし、方針決定だ。

 

 1. 俺が合格する。

 これは難しい事じゃない。

 2. 緑君を合格させる。

 凄い大事な事だ。便利な駒になるってのもそうだが、緑君とは頻繁に会って正確な未来を視たい

 本人の合格率が低いのは気がかりだが、この俺が合格させるって言うんだからな。1割もあれば十分だ。

 3.21人目のクラスメイトを合格させる。

 はっきり言ってクソ面倒だし、1の俺が合格すると合わせると両立が難しい。

 

 定員36人の倍率300倍だから、この場には10,800人いる。

 こん中には少なからず記念受験が相当数いるし、ほとんどは実力不足で受かる未来が無い。

 それで絞っても、受かる可能性がある奴は数百人ぐらいいる。

 残り4科目あるとはいえ、ちょっと現実的じゃない。

 

 普通なら、な。

 まあ、分かっても実現させる方がもっと難しいんだが。

 

 まあ、頑張るか。

 回りのやつらも、今必死こいて合格しようとしてるんだ。

 対して俺は合格者数を増やすために頑張る。

 そこに違いはねい。同じ挑戦だ。

 

 

 さて、話は変わるが、ちょくちょく回答する手を止めながら確かめて分かったことがある。

 この筆記テストだが、ある点数を超えるか超えないかで合否が決まるらしい。

 恐らく足切りだな。

 んで筆記合格者は実技次第で合否が決まると。

 多分そんな仕組だ。

 加えて、36位と37位の合否を分けるのは実技だが、そこが同じなら筆記を参照するって感じかな。多分。

 

 そうなると、俺は誰と筆記の点数を揃えるかが問題になってくるわけだ。

 

 合格者は36人。

 普通なら数百人の未来を視た上で36人を絞り込まなきゃいけないわけだったが、こっちには合格確定のイガグリ君がいる。

 なんと心強い事か。彼がいるおかげで、一人一人の未来を個別に視なくても、イガグリ君の未来を通して、クラスメイトに誰がいるかを視れば合格する可能性が高い奴と低い奴両方分かる。

 さらに合格ほぼ確勢でかつ、イガグリ君と同じクラスにならない可能性が高い植物ちゃんとサイドテールちゃんの未来を視れば、合格率の高い奴ランキングベスト36が作れる。

 

 うんうん。この方法で良かった。

 イガグリ君や植物ちゃんの力を借りて、ようやく最終科目中に間に合った。

 この作業、筆記の点数を調整する都合上、何としても筆記中に終えなきゃならなかったからな。

 筆記が1科目終わるたびに微妙に合格者が変わったりしてたみたいだけど、まあそれは誤差だ。そうでもしないと間に合わん。

 

 

 さて、順位を見ていくわけだけど、36位はキラキラ君か。

 

 ……ふーん。なるほど。

 君、合格しないとヤバそうだね。いろいろと。

 

 正直、対脳みそとして考えると駒としての価値は低いから、合格率もそんな差がない他のやつにしようかと思ったけど……。

 俺の個性は未来視だ。そんな俺なんだから、一手先じゃなくて、十手先を視て大局的に進めていくべきだ。 

 この駒は相当当たりかもしれん。こういう特異性のある駒は経験上よくも悪くも未来を変えるのに役立つ。

 今回の場合、これ以上悪くなったら詰みだからな。デメリットは無視していい。てかそうでもしないと勝ち目がない。

 喜べキラキラ君。この視渡来人が36人目の合格者をキラキラ君にしてやろう。

 丁度試験会場も俺と緑君とキラキラ君が同じみたいだからな。

 点数調整もある程度可能だ。

 

 回答用紙を調整して……。

 これまでの4科目でほぼ満点を取ったからな。最後の理科だけ5割程度とめっちゃ成績低いが、これでも合格はするらしい。

 各科目ごとの足切りラインは無くて良かったよ。まあ知ってたけど。

 

 うん、俺とキラキラ君が合格する未来がちょっとだけ視えてきた。これで次に繋げられる。

 

「試験終了。筆記用具を机に置いてください。試験監督が回答用紙を集め終わるまで席を立たないでください」

 

 キラキラ君。

 俺はいざとなれば君を蹴落とす。

 君も未来が欲しいなら、頑張ってくれよ? 

 

 続く、、、

 




始めまして。和賀苗知暉です。

22:00の投稿を予定しておりましたが、間に合いませんでした。
まあ、バイトあったのに投稿した俺はよく頑張った。それに要は続けばいいのさ。
それに、プロット的には実技試験開始前まで書く予定だったのです。
しかし筆記試験で思ったよりも文章量がありましたし、締めもなんかいい感じにできそうだったのでここで切りました。
多分、雄英の入試で筆記試験に1話使ったのは私ぐらいじゃないでしょうか。
私はこの場面にそれだけの意味を持たせたつもりです。そしてそれを表現できていて、伝えられていたらと思います。

ちょっと後書き長くなりますが、今日はどうしても書きたいことがあります。
それは感想をもらえたことです。
これまで感想欲しいという後書きを何度も読んで、書いてきませんでしたが、読者さんからの感想とはここまで嬉しいものだったんですね。
たった一言でも、頑張ろう、と思わせていただきました。
頼んで読んでもらった友達とは違う、選んで読んでくれた読者さんからの感想は思った以上に特別でした。本当にありがとうございます。

最後になりますが、今後とも「未来を掴むヒーローアカデミア」をよろしくお願いします。

和賀苗知暉
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