ーーピンポンパンポン♪
ーー死体が発見されました。一定の捜査時間の後、学級裁判を開始します。
◇◇◇
――死体。"それ"が、目の前に横たわっている彼を指し示しているのは、状況から見てどう足掻いても明らかだった。"死体発見アナウンス"――……。章平がその現状を目前にしてこの放送を耳にしたのは、ご存知の通りこれが初めてだった。だからだろうか、章平はうまく現状を飲み込むことが出来ないでいた。惨状を目の当たりにしても、放送を聞いても――心のどこかで、タチの悪い悪戯なのではないかと疑う気持ちが拭えなかった。
けれども、章平のその疑念は次の瞬間、綺麗さっぱりなくなることになる。
「……ッ!」
脇目も触れず、真っ先に遺体に駆け寄ったのは加連だった。いつもののんびりした彼の姿はどこにも無い。第一の事件が発覚しても、その犯人が処刑されても、それほど大きな動揺を見せなかった彼は、今、明らかに感情を大きく揺さぶられていた。
そう、今鳴り響いた
「スイ……ッ!」
辺りにべったりとついた赤を気にもとめず、あんなに大事だと言っていた自慢の靴が汚れるのも構わず、いつも穏やかに微笑んでいた顔を歪めて――……加連は遺体のそばにへたと腰を落とした。そうして、震える手で冷たくなった猫塚の頬に触れる。猫塚はぴくりとも表情を変えず、ただそこに存在した。……それはもはや猫塚誠司ではなく、猫塚誠司の姿をした
そのまま加連は項垂れるように、遺体に寄り添ったまま俯いて、動かなくなってしまった。
「また……はじまっちゃったのか……」
そうしてしばらくすれば、慌ただしい足音が大勢近付いてきた。身動きもままならずその場に立っている章平たちを見て、彼らはそこが
「なんだ、どうし……! うわああ!?」
「え!? ね、猫塚君!? なんで……!」
「猫っ……!? え、そんな、まさか猫づ……ッはァアァアァアアーーー!!!」
現場を一瞥するなり、悲鳴にも近いため息をついて、慌ただしくばたばたと青錆が離れて行く。生徒たちは誰も彼を引き留めようと動かなかった。……その前に入れ替わりで、あの不快な電子音が響いたからだ。
「くしししし! おや、おやぁ! またまた始まってしまいましたね! いい調子、いいペースです。しかしこのまま走り続けてしまえば……ふた月と経たないうちに誰も居なくなってしまいそうですねぇ!」
楽しそうに笑いながら現れたのは他でもない、この学園生活の監督者でありコロシアイの主催者――モノヴォルだ。思い描いた通りの展開になったことで満足気な様子だ。
「お前……! 何笑ってんだよぃ!」
「何、もないでしょう。ワタクシのお役目を順調に果たせているので、少々喜びを露わにしてしまっただけですよ」
「んにゃろ……ッ!」
いつかの時のように、また飛び出そうとした漁師の目の前を、すっと細い手が阻む。……笛吹き男だった。
「……またあの議論をするんだろう」
「ええ、もちろん。ですので、こちらをどうぞ! "モノヴォルファイル"! くししし。今回も楽しめそうでワタクシ、ロマンティックが止まりませんよ」
前回と同じように、生徒たちにファイルを押し付けたモノヴォルは、そのままてこてことステップを踏む動作で離れていく。
……これで退場かと思われた狐は、一人逃げるように駆けて行っていた城主をずるずると連れて帰って来て、扉の前に座らせる。彼の手にもモノヴォルファイルを抱えさせようやく仕事が終わった狐は、満足気にふんぞり返りなから今度こそ去っていった。その様子は、これからのイベントが楽しみで仕方ない子供のようだった。
◇
そうして再び捜査時間がやって来る。――そう、また自らの手で殺人事件を解決しなければならないのだ。それが出来なければ待っているのは……彼と同じ末路。章平はほうと肺に溜まった息を吐き出した。
「……なんだこれは」
「うん?」
事件概要を確認するため、早速モノヴォルファイルに目を落としていた他の生徒たちは、見れば皆困惑の表情を顕にしている。有子もその一人である。
章平は級友の反応をとても不審に思った。
「どうしたんだい? みんなそろって、鳩に豆鉄砲をくらったような顔をしているよ!」
「……お前は相変わらず能天気だな、佐渡……」
「何か大変なことが起こったのかい?」
呆れたような眼差しを向ける笛吹き男は、物言いたげに口を開いて、しかしすぐに閉口する。
「……いや、いい。それより佐渡、僕たちの様子が気になるのなら、お前もファイルに目を通せ。
「……うん?」
章平は赤柳の言うことがよく分からなくて首を傾げる。このファイルは……あれだろう? 前にも配られた、見ればわかる状況を示しているだけのなんてことない情報だ。それの一体何がそんなに不可解だというのだろう? 訝しげに思いながらも、章平は赤柳に言われた通り、ファイルを手に取り、開く。
……そこには、目を疑う文字が記されていた。
『モノヴォルファイル2』
――被害者は"超高校級のペテン師"鷺沼瑞。
死体発見現場は保健室。
死亡推定時刻は昨夜1時から2時頃。
死因は頸動脈からの大量出血による失血性ショック死。毒物などを摂取した痕跡はない――
「さぎぬま……なんて読むんだい?」
「みず、しるし、めでたい、ズイ……名前に使うならミズキ、か? 縁起の良い名だな、今はどうでもいいが。……兎に角、一つだけ分かったことがある」
「うん?」
「目の前に転がっている死体……僕たちが"猫塚誠司"だと認識していた人物は、……
ぱちくり。章平は大袈裟に目を閉じたり開いたりを数回、繰り返して赤柳を見つめた。彼の言葉にようやく時を動かされたように、生徒たちが各々混乱の様子を見せる。
「え? え? ちょ、ちょっと待って、赤柳くん。この
「猫塚君の才能は、"
「この記録の記述が真実であるならば、当然そうなるであろうな。くふふ……そうか、本当にお前だったのか、猫……くふふふ……」
「長靴の猫くんじゃなくて、オオカミ少年くんだったかぁ……」
ははあと章平が納得する。だから何となくしっくりこなかったんだ、長靴の猫。物語の中で……どちらも嘘をつくキャラクターではあるが、その動機と顛末はまるで異なる。今まで抱いていた違和感に合点がいって、ひとりうんうんと頷く章平をよそに、有子たちはますます眉をしかめ顔を歪ませていた。
「そ、そんな……! じゃあ猫塚くんは……
「みてぇだなぁぃ……。んまぁ、あいつの虚言癖は今にはじまったことじゃぁねぇだろぃ……。にしても、"
「"
伊海田の台詞に続くように、今度は幼い声が鼓膜を震わせる。見れば、星永が猫塚の遺体を調べているところだった。頭部を念入りに確認している。長靴をはいた執事の、あのやたら右側だけ長い前髪を捲って、星永は目を細める。
「"金色ペテン"……って……。黒幕候補の? そういえばモノヴォルがこの中にいるとか言ってたような……」
「おいおいおい……! なんで今その名前が出てくる!? あんなん俺らを惑わすためのウソっぱちだろがよ!?」
「そうよ。あいつの言葉を鵜呑みにするのは良くないって、そう結論を出したでしょう。それに、詐欺師だなんて少なくないわ。いくらこいつが"超高校級"だからって……世絆ちゃん。決め付けるのは早計じゃないかしら?」
「……だって、『おぞましいほど美しい金色の瞳を持つ詐欺師に気を付けろ』って意味で、そのあだ名がついたんでしょう? ……りんこちゃんのいうとーり、せーじちゃんの本当の才能は"ペテン師"……つまり詐欺師。極めつけに、
星永はそう言って、前髪で隠されていた猫塚の右眼を示す。死後硬直で薄く開かれたその瞳は、生気を纏った輝きこそ失われてしまっているものの、吸い込まれるほどに美しく、眩い宝石のように煌めく
「
「……イエローダイヤモンド……いや……スファレライト……? ……あぁ、こんな、美しいものを、猫塚氏がお持ちだったなんて…………。…………もったいない……」
「なるほど、蓬莱の玉の枝にも勝る煌めきよ」
「え、猫塚……オッドアイだったのか!?」
「ヘテロクロミアだなんて、こんな風に隠されてたら気付かないよねぇ。金色の瞳になんか気を付けようがないよ。不親切なあだ名だねぇ」
ふうと息をついて、星永は再び遺体の前髪をささっと元に戻してやる。そして、ちらと目の前で項垂れる人物に目をやった。
「……
「…………」
「『サギヌマスイ』ねぇ……。……うん。『ネコヅカセージ』よりしっくりくるかも」
「せつなちゃん、それって……」
「かんたんな事だよ」
星永はふっと微笑んで人差し指を立てる。それはまるで、探偵が推理を披露するかのよう。いつもの可愛らしい星永には到底似つかわない仕草だったが、何故だか今の星永にはとても様になっていた。
「しゅーやちゃんは血相を変えて真っ先にせーじちゃんに駆け寄ったでしょう? そしてこう呟いた。『スイ』ってね。……しゅーやちゃんはぼくたちより先に、せーじちゃんのほんとのお名前を知っていたんでしょう?」
「…………」
「加連くん……」
「あー……そいや……。おめぇらいっつも一緒にいたなぁぃ……」
遺体を見つめて動かない彼は、呆然としたまま返事もしない。つい昨日までは動いていたはずの身体を、じっと、穴が空くほど見ている。それだけだ。彼はその他に何もしようとはしなかった。心ここに在らず、とは、今の加連を示す的確な言葉だろう。
眉を下げて表情を曇らせていく一同を横目に見て、白雪は一歩前に出る。
「……とにかく、事件を解決することが先決だわ。皆、まだ腑に落ちない点ばかりでしょうけど……。まずは学級裁判を乗り越えることに集中しましょう」
「また、手分けして調査するんですね」
「見張りは……またオレがやろうかぃ?」
「大丈夫か? 伊海田……」
すかさず提案した彼の言葉に前回のことを思い返して、笛吹き男が眉を下げる。あの城主ほどではないが、この漁師も随分と顔色を悪くさせていたのだ。しかし、赤柳の懸念に彼は首を振った。
「これくらいしか出来ねぇけどよぃ……。任せてくれや!」
「じゃあ、またぼくもこたろとやるよ。遺体を調べるのは、やったことある人のがいいでしょ?」
「分かった。ならまた二人に頼む」
「……そうと決まれば、やるしかねぇか」
「うん、行こうきくね」
そうして双子の言葉を皮切りに、また生徒たちが散り散りに動いていく。章平があっと顔を動かした時には、もう目の前に笛吹き男が立っていた。
「佐渡、着いて来い。事件の捜査をするぞ」
「笛吹きくん! 分かったよ!」
「あ、ショウくん……」
章平はそのまま、彼の言う通りにすることにした。また同じことをしなくてはならない。けれどもやはり、章平の心は晴れやかだった。何故なら今回も、この頼りになる笛吹き男が導いてくれるのだ。なんの不安も不満も持たず、章平はただ笑ってその背に着いて行く。
◇捜査開始◇
さて、まず何から手を付けようか……。モノヴォルファイルは先程目を通した。次は何から調べるべきか。章平はくるりと現場を見渡して、遺体の側へ寄っていくかぐや姫と赤ずきんに目を留めた。
「ずきんちゃん、姫さま。何か気になったことはあるかい?」
「笛吹きの小僧に語り部小僧か」
章平の言葉に、二人とも振り向く。薄ら笑みを浮かべて、相変わらず姫ヶ原はゆったりと優雅な仕草で返事をした。
「まあ待て、そう焦るでない。以前も申告した通り、我らは専門家ではない。検分作業はこれから開始する」
「しこくちゃん、しょーへーちゃん。しばらくこの辺りを調べるのはどう? 検死といっても……モノヴォルファイルに書いてあること以上は……やっぱりぼくたちの知識じゃあ、よく分からないと思うから……」
「まあ、できる限りのことはする」
「……分かった。そちらは頼む。佐渡、先にこちらだ。気になることがある」
「あ、うん」
赤柳はくるりと踵を返して入口へ歩いていく。章平は素直に後を追った。様子が気になったのか、伊海田も一緒に着いて来た。
「気になるって……扉? そいやぁ、今朝から開かなかったんだよなぃ。やっぱ鍵掛かってたんかなぃ?」
無理やりぶち破られた扉を見ながら、伊海田がううんと唸る。赤柳はしゃがみこんでその残骸に触れ、調べていく。
「……特別な細工をした様子はなさそうだな」
「ねえ、笛吹きくん。これってなんだろ?」
章平が見つけたもの。二人が見ている扉の反対側……。壊されなかったほうの扉。その前にあるレールの上に、ステンレスの棒が落ちている。
「……つっかえ棒か?」
「つっかえ棒?」
章平がオウム返しすれば、笛吹き男は黙ってステンレス棒を取り上げ、そのまま扉に立て掛けた。
「こうやって扉とレールに沿うように立て掛けておけば、つっかえ棒になって扉が開かなくなるだろう」
「あー、これが引っ掛かってて開かなかったんだね!」
漁師がその状態の扉を開こうと手をかける。その手応えに身に覚えがあったのか、彼はこくりと頷いた。
「間違いねぇぜぃ」
「決まりだね!」
章平は伊海田と目を合わせた。ひとつ謎が解けたところで、あれと章平は首を傾げる。でも……反対側の扉も、同じように開かなかったんだよな? 見れば笛吹き男が屈んで、壊れなかった方――廊下側のレールの扉を調べている。
「なんだこれは」
しゃがみこむ赤柳が突然不機嫌な声を上げたので、章平は伊海田と共に覗き込んだ。笛吹き男の視線の先。扉のレールに、よく見れば傷がついていた。その部分にはほんの少し歪みも見える。
「キズ? 何かぶつけちゃったのかな?」
「いや、これはぶつけるというより……。まだ分からんな。ひとまず覚えておけ、佐渡」
「はあい!」
章平は素直に返事をして、記憶領域にしっかり刻み込んだ。
◇
次に調べるべきところは……遺体の周辺だ。血の海が広がっているが、他にも気になるところがあった。章平はさっそくそのひとつの間の前でしゃがみこむ。
「これは……」
「メス……だな。驚いた、こんなものも保健室にはあったのか」
章平が指差したのは、血濡れた小さな刃物――医療用メスである。赤柳も一緒になって観察する。切っ先には血液が付着しており、柄の部分はほとんど汚れていない。
「凶器はこれかねぃ?」
「検死結果が出ないことには何とも言えんが……。まあ、最も怪しいと言えるだろうな」
いつの間にか後ろにいた漁師が声を掛けてきた。隣の笛吹き男は、ふむと頷いで再び立ち上がった。章平はそのままの大勢で床を観察する。左の方へ視線を滑らせていくと、少し離れたところになにか白いものが床に転がっていた。
「あれ、他にも何かものが落ちているよ!」
章平はしゃがみこんだまま、とことこと小さく歩み寄って行く。丸みを帯びた物体だ。章平の記憶の中をまさぐっても、目の前のものと同一のものは出てこない。つまり、章平にとって初めて目にする物品だった。
「……なんだろう? 笛吹きくん、分かるかい?」
「これは……」
章平が指差した先の物体を、赤柳も覗き込む。彼も顔をしかめたが、直ぐにその物体の名称を口にした。
「イヤホン……か?」
「イヤホン?」
章平が思いもしなかった名前が飛び出たので、つい反射で聞き返してしまう。もちろん、章平もイヤホンという道具がどんなものかは知っていた。けれども章平の知るその機器と目の前にあるものとでは、形状が異なっていたのだ。
「えっとー……。ケータイとかで、音楽を聞く時に使うものだよね! でもこれ、つなぐ線が無いみたいだよ? どうやって使うのかな? それとも線が千切れちゃったのかな?」
「そうか、お前。ワイヤレスタイプを知らないのか」
「わいやれーすたいー?」
章平の感じた不審点に合点がいった彼は、こくりと頷いた。またも章平が聞き返せば、素直に解説をはじめてくれる。
「そのままの意味だよ。線が必要ないタイプだ。無線イヤホン。そこまで珍しいものでもないはずだが……。まあ、使わないなら知らないか。本体機器と無線通信を介して使用するモデルだ」
「ほえー。ハイテクってやつだね!」
「お前のような奴は、有線でないとすぐ失くすだろうな」
「あれ! なんで分かったんだい!? ぼく、すぐにイヤホンって、どこかへやってしまって……」
「…………」
なんだ、有線もか……。とも言いたげな呆れた顔が横目に見えたが、失くしてしまうものは失くしてしまうのだ。仕方の無いことである。
◇
「しこくちゃん、ちょっといーい?」
「検死が済んだのか?」
「ざっくりね。とりあえず」
赤ずきんがくいと笛吹き男の袖を引っ張る。その用件はひとつしかないだろう。小さな彼女に続いて、章平たちは再び部屋の中心……猫塚の亡骸へ集まった。
「ひとまず、現段階で分かったことを教えてくれ」
「死亡すいてーじこくも、死因も……モノヴォルファイルにかいてるので、まちがいないだろーね……。凶器は鋭くて小さい刃物かな。刃渡り60mmくらいの……」
「ろくじゅうみり……。やっぱりメスかな?」
「これだけ鮮血が飛び散り撒き散らされている上、外傷は首の傷のみだ。猫が天に召される要因は明らかに失血性ショックであろうな」
「頸動脈からの出血……か」
赤柳が胸に手を当てるのを横目で見て、章平は猫塚……鷺沼の遺体の傍による。肌は青白く、当然だが生気はまるで無い。今は既に表情筋が解されているのもあって、その整った顔立ちと相まって精巧な人形のようだと感じる。章平がその皮膚に触れようと手を伸ばせば、横から制止する手が邪魔をした。
「靴屋くん」
「何するの」
「傷口を見ようと思ったんだ!」
「それならさっき二人が見たよ」
「そうだね、でも靴屋くん」
「この子、よく知らない人に触られるの、すっごい嫌がるんだよね」
「? それは気にしなくていいんじゃないかな? だってもう、」
「悪かったな、加連。佐渡、一旦離れろ」
章平の説得の言葉を遮るように、頭上から赤柳が被せてくる。うさぎは何故止められるのか分からなくて目をぱちぱちとさせたが、すぐに赤柳の手がうさぎを立ち上がらせたので、まじまじと彼の顔を見つめた。彼はそんなうさぎの様子を一瞥もせず、傍に居た赤ずきんとかぐや姫をも連れ、隅へ寄った。
「佐渡。加連のことは、少しの間そっとしておいてやれ」
「どうしてだい? 笛吹きくん、今は捜査中なんだろう? なら、ぼくたちもオオカミくんの身体を、軽くでも調べるべきだよ」
「ああ、お前の意見は正しい。僕もそうすべきだと考えている。……だが、時には正しさを捨ててまで尊重すべき事柄というものもある。今がそれだ。……不服ならば細かく説明してやるが、佐渡。納得出来るか?」
「…………出来、ていない……けど……。……笛吹きくんが、そうするのが良いと言うなら、そうなんだろうね」
うさぎはもやもやとした気持ちを抱えつつ、離れた靴職人を見やる。頭の中が物語のことでいっぱいの、他者のことなんて何にも考える余地のないこの白うさぎにも、その背中がいつもの陽気で明るい彼のそれとは全く異なったものであるということは分かった。
再び笛吹きたちの元に視線をやれば、姫は相変わらず薄く楽しそうな笑みを浮かべていたが、尊敬する笛吹きと可愛らしい赤ずきんは、神妙な顔立ちをしていた。
――あれ? その光景に章平は言いようのない違和感を覚える。何かが足りない……そんな気がする……。
「死因の他に気付いたことがあれば聞こう」
「……さっきもゆったけど、あのおめめ……。……"金色ペテン"は、せーじちゃんでまちがいないと思うよ。今回のどーきは、それなのかなぁ……って思った」
「後は左の手に何かを握っている様だったな」
「……何?」
くすくすと口元を隠して笑う姫ヶ原を、睨みつけるように赤柳が言う。事件が起こる度に愉快そうな声を上げて満足そうにする彼女のことを、彼はあまり快く思っていない様子だ。
姫ヶ原の言葉に、星永がこくりと頷く。
「ぎゅーってなんかをね、にぎってるんだ。ぜーったいはなすもんか! って感じ」
「……オオカミくんは左利きだったかい?」
「たぶん、右だったと思う……。だから、左手でそこまで強くにぎってるものなら、しょーこになると思うんだけど、……しごこーちょくも、相まって……」
「オオカミくんのおてては開かないのか……」
「かぐらちゃんもしゅーやちゃんも開けなかったよ。死亡すいてー時刻から逆算すると、まだ硬いけど解せば開くと思うんだけど……」
「……時間はかかるな」
この件については、今は置いておくしかないだろう。故人の親友の手前、荒い方法で暴くことははばかられた。今後証拠が集まっていく上で、推理することも可能ではあるだろうが……。いまの章平には、見当も付かない。
一旦この話は終わりにして、かぐや姫は次に移る。
「それから左腕に傷があったな。しかしこれは事件には無関係であると断定しておこうか」
「……傷が事件に無関係とは、どういうことだ? 左腕なら、握られた方の手についた傷なんだろう? それこそ、犯人がこじ開けようとした……」
「まあ、そう睨むな。先程申したが、
「は……」
「傷隠し?」
「ファンデーションテープとかいう代物だ。こういった自傷などの傷を隠す……」
「んーと! んーと! 人それぞれだよねっ! そーゆーのは! 事件にかんけーないんでしょ? なら、これはナイショのお話にしよ? ね?」
「うーん、そうだねえ。古傷ってことだろう? 事件に関係が無さそうだし、これは忘れてもいいよね、笛吹きくん?」
「…………」
章平がそう尋ねて隣の赤柳を覗う。彼はいつもの様に頷くことも、首を振ることもせず、いつもの眉間の皺をいっそう濃くして、視線を落としただけだった。
「端正な顔立ちでいて、存外身体は傷物だったな。他にもちらほらあったぞ。特に背中の火傷跡は酷いものだった。こちらは幼少に拵えたのだろうよ」
「かぐらちゃん……っ」
「……お前にはデリカシーというものが無いな」
平然と情報を連ねていくかぐや姫に、叱るように赤ずきんが声を上げる。笛吹き男はふうと息をついて肩を竦めた。
「情報は多い方が良かろう?」
「事件に関係無いのなら不必要だ。そこまで踏み込む気は毛頭ない」
「そうか、ならば其れまでだな」
星永に睨まれても、微塵も態度を改めず……悪びれもしない姫ヶ原。赤柳はわざと眉をひそめて、バッサリと必要ないと断言した。そこまですればかぐや姫には言う義務は無く――つまらなそうに扇子で口を覆った。
◇
「あ、そうそう、それとね。しこくちゃん。おくすりが減ってるみたいだよ」
「何?」
分かっていることはこれまでかと思われたその時、小さな赤ずきんが笛吹き男の制服の裾を引っ張った。新しい情報に、探偵は詳細情報を要求する。
「保健室の薬品は、お前たちが管理していたはずだな。二人とも把握していない使用歴が確認されたということか?」
「その通りだ。時期は……そうだな、動機とやらが提示された頃と重なる」
「動機って……"金色ペテン"のことだったよね」
そうだ、章平は思い出す。あまりにも衝撃的な事実が判明したので、忘れてしまっていたけれど……。今回の動機は、"被害者の彼"が間違いなくきっかけだ。"超高校級のペテン師"鷺沼瑞――背筋が凍るほど美しい金の瞳――……。捜査を始める前に赤ずきんが言ったことを踏まえても、彼が被害者である以上、その肩書きと特徴が一致している以上……
笛吹き男はすかさず追加情報を引き出すため、質問をする。
「使用された薬物はなんだ。被害者は毒物を服用していないらしいが……」
「……向精神薬。抑うつ剤とか……。精神疾患に処方されるやつだよ」
「……なんだって?」
思いもよらない追加情報に、赤柳は思わず目を見開いた。
「状況から見て、使用した人物には凡そ見当が付くな」
「……そうだな」
うーんと記憶を呼び起こす章平に構わず、二人はそこで情報共有を終わらせた。
◇
ひとまず、ここで出来ることは全てだろう。次はどこを調べるべきか……。章平がうぅんと思考を巡らせていると、目の前にいた笛吹き男は踵を返して立ち止まる。何をするのかと思いきや、遺体の側から離れようとしない加連をそのまま見下ろした。
「加連、ひとつだけ確認したいことがある」
「……なに」
「お前は猫塚及び、
「…………」
少しだけ赤柳の言葉に反応したのもつかの間。彼が続きの質問を口にすれば、神父はまるで聞こえていないかのように、顔をまた遺体に向けて黙り込んでしまった。しばらく待ってから、ふうと息をついて赤柳が首を傾ける。
「……知っているが答えたくない、と取るが構わないな」
「…………」
「……行こう、佐渡」
「え? う、うん……」
反応のない人形のような加連。頷くように視線を落としてから、赤柳は章平の背に触れて方向転換を促す。章平は微動だにしない加連と、すれ違って行ってしまう赤柳を交互に見る。笛吹き男はすたすたと向こうへ歩んで行ってしまう。章平は慌てて追いかけることにした。
「笛吹きくん、靴屋くんに詳しく聞かなくてよかったのかい? 彼とぼくたちの情報量は、平等じゃあないよね?」
章平は前回の裁判を思い返す。そう、あの時の事件は……章平たちと他の生徒たちで、遺体の発見時の状況の認識について、大きな情報の差があった。そこでこの目の前の探偵は、捜査でまず情報の差を埋めるべく動いたのだ。
「この件について詳しく知っているのは、恐らく当事者である猫塚と、その友人の加連だけだ。他の皆は僕たちと知っていることは大差無いはず。だから、この件は裁判で奴から聞き出すことになるだろう」
「……だから、今はとりあえず置いておくってことかい?」
「そうだ。どちらにせよ、今は嫌でも後で話すことになる。とにかく今は、奴の正体を詳しく知るより……奴が誰にどうやって殺害されたのか、その問題の方が重大だ」
「……うん。犯人が突き止められないと、ぼくたちみんな、しんじゃうんだもんね!」
赤柳の説明に納得して、章平は頷いた。早速調査に行こうと一歩踏み出すも、立ち止まって目を伏せる笛吹き男が気になって、その一歩で立ち止まった。すぐさま彼は口を開く。
「……いや。少し待て。やはり僕たち全員が同じ情報量では無いな」
「どういうこと?」
「
ぱちくり。章平は目をまん丸に開いて瞬きを繰り返した。先程の彼の説明は納得がいった。猫塚と加連はほとんどの時間を共に行動しており、彼らが親しい間柄であったことは章平でも察せる事実だった。しかし、目の前の彼はどうだろう。章平の見ている間だけでも、彼が猫塚と親しげだった記憶は無い。それこそ章平たちと変わらない距離感だったはずだ。
笛吹き男の意図が汲み取れず、章平は素直に首を傾げた。
「どういうことだい、笛吹きくん?」
「まず前提を覚えておいて欲しい。猫塚誠司は猫塚家の養子の次男であり、執事をやっている。そして僕はお前をはじめ、ここにいる全員と学園の生徒になってから知り合いになった」
「うん……? でも、猫くんのことを、笛吹きくんはぼくより詳しく知ってるんだよね?」
「
「えぇと……猫くんの、おにいさんってことかい? ……ああ、そっか、そういうことか! じゃあ、笛吹きくんはそのおにいさんから、猫くんのことを聞いていたんだね」
「そういうことだ」
赤柳の補足を聞いて、章平はようやく納得する。つまり――彼と猫塚に接点は全く無いが、彼と猫塚の義兄には深い関わりがあるということである。意外と世間は狭いなあ。章平は呑気にそう思ったが、猫塚の義兄とは、何を隠そう希望ヶ峰学園の卒業生である。章平たちの先輩にあたる人物なので……世間が狭いのは当たり前だった。
赤柳はふむと腕を組んで首を傾ける。
「しかし僕にも腑に落ちない点というのは多々ある。ただ、この情報を持っている僕から言えることは……僕たちの知る猫塚誠司は、まず間違いなく本人であるだろうということだけだ」
「猫くんは猫くんで……オオカミくんでもあるってこと?」
「……ややこしい言い方をするな。だが、お前の認識は概ね正しい。奴は
なるほど、と章平は頷く。少なくとも、目の前の笛吹き男が章平に嘘を吐く理由が無い。ならばそれは事実であると判断して良いだろう。そうでなくとも、章平は彼のことをとても信頼しているのだ。
「納得してもらえたならいい。また他の場所も調査…………青錆、お前何してるんだ?」
「…………精神統一です………………」
ぐったりと壁にもたれかかって、天井を仰ぐように明後日の方向を見つめながら、胸に手を当てて深呼吸をしている不審者。そのあまりに異様な光景に思わず言いかけた言葉を止め、赤柳は顔を顰めた。それからすぐに、納得したように肩を下げて息をつく。
「ああ……。お前、こういうのが苦手なんだったな。大丈夫か?」
「ご心配なく…………」
「ここから離れた方がいいんじゃないか……? かなりの出血量だ、苦手な奴にはきついだろう」
「オオカミくん、血まみれだよー……」
章平も気がついた。そう、目の前の惨状――……。ただでさえ普段から顔色の悪いこの城主は、前回の事件の際、茨木の遺体に大層気分を悪くした様子だった。今回は、彼女の時とまた異なり……大出血による血の匂い、生臭さがそれは酷く、真っ赤な床は見た目も凄惨だ。
青錆はまた天井を仰ぎ、頭を傾けてこつんと壁にぶつける。一度で終わればそれまでの話だったが――、ゆっくり時間を置いて何度も壁に打ちつける様は、彼が全く正気では無いことを表していた。肩をすくめて息を吐いて、赤柳は彼を壁から引き離す。対象が遠のいたからか打ちつける仕草は収まったものの、今度はふらふらと頭を揺らしながら、その手袋を嵌めた手で口元を覆った。
「……あまりにも、あまりに…………いえ、失礼…………。もう少ししたら、移動……します……。いや、今すぐ……いや、もうちょっと……いや、今すぐ、じゃないと……でも、もう、ダメ……ぁあ……う……ぅうう…………」
「……大丈夫じゃなさそうだな。おい、動けないほど具合が悪いなら手を貸すぞ。佐渡」
「うん、お手伝いするよ! 青くん!」
「あ、ぁあ……。あああ……待って……。待ってください、ちょっと……ちょっと、すみません、待っ…………いや、お、お手洗いに……い、行きたい……です…………」
「おい……吐くなら着いてからにしろ」
「青くん、頑張って〜!」
不機嫌を露わにしながらも、赤柳は青錆の腕を肩に回して支えて歩く。章平も反対側から城主の身体を支えて、二人で学校エリア一階にあるトイレに向かう。保健室からさほど遠くないので、前回の時より短時間で目的地に到着した。
倒れ込むように駆け込んで行った彼を見送って、章平は隣を見やる。
「大丈夫かな?」
「……ひとまず捜査に戻ろう。近くに世絆たちが居ることだしな」
「そっか、それもそうだね!」
章平は、そのまま踵を返した笛吹き男の背を追いかけた。
◇
「赤柳君」
廊下を歩いていると、死角から心地の良い電子音が聞こえてきた。章平たちが音の方に顔を向ければそこにいたのは、車椅子の少女――泡淵である。
赤柳は、ああと声を出して彼女に近づいて行く。
「泡淵、捜査はどうだ。僕たちは現場を調べていた。検死も済んだようだから、後で聞きに行くと良い」
「ありがとう、そうします。私の方は、みんなのアリバイを確認していたところだわ。……と言っても、モノヴォルファイルに記載されていた死亡推定時刻では、ほとんどのみんなが個室で睡眠をとっていたようなので……。今の所、あまり収穫はありませんね」
「そうか……。僕もその時間は寝ていたな」
「ぼくも〜!」
章平はいつも、有子と夜少し話をして……夜時間に切り替わる前に別れ、そのまま就寝するというルーティンで生活している。つまり、夜時間アナウンスが放送されてすぐに夢の中に旅立っているのだ。
見たところ、泡淵は他に情報を持っていなさそうだ。赤柳は今回も人を捜して証言を集めようとしているようだった。
章平は少し考えてから、やはり自分の意見は言うべきだと思って素直に提案を口にする。
「あのね、笛吹きくん。凶器の有力候補は見つけたけれど……他に凶器がある可能性はあるかな? 他にも何か道具を使ったかもしれないよ。また倉庫を見に行ってみるかい?」
「あそこは、赤柳君が管理していたんでしたよね」
「ああ。倉庫の物品は僕が管理していた。念の為に見に行くか」
赤柳が頷いて、早速足を運ぼうとする。それを泡淵があっと(声が出ない彼女が実際にそう言ったわけではないが)引き止め、すぐにキーボードを打ち込んだ。
「厨房の包丁のうち、ひとつは青錆君の個室に置いてあるらしいです。せつなちゃんが言っていたわ。猫塚君がそうしていたみたい」
「猫塚が許可を出したということか? ……まあ、厨房の管轄はあいつだったから、今更とやかく言うつもりはないが……」
「青くんがまたりんごを食べられるようにかな?」
どうやら凶器の話題ということで思い出したようだ。前回の時のことを思い返して章平が口を開けば、彼女はこくりと頷いて再びタイピングする。
「ええ、そうみたい。いつでも気が向いた時にって、一緒に置いていたらしいわ。全部せつなちゃんが言っていたことだから、後でせつなちゃんに確認してもらったほうが確実かもしれません」
「世絆の証言ならいい。ありがとう、泡淵。……そうだ、折角だから一緒に来るか?」
「ありがとう、そうします」
誘った彼は人魚姫の車椅子を押すことにして、三人で倉庫に向かった。赤柳は扉を開くなり、そのまま壁に掛かっていたバインダーを手に取る。どうやら自作の物品リストのようだ。種類ごとにいつの間にか整理されていた道具たちを見ていく。章平たちも異変がないかを見て回った。
「昨日は15時にチェックした。念の為毎日時間をずらして、点検時間を悟られないよう犯行抑止に努めたつもりだ」
「いつ確かめているのか分かってしまったら、悪用出来てしまうものね」
「そっか! そういうことかぁ〜」
「複数回実施した日もある。取れる対策は全て実施しておくべきだ」
いつだったか……泡淵も似たようなことを言っていたな、と章平は思う。頭のいい人は用心深いんだなあと感心した。
全てのものに異常が無いことが確認し終わったのか、赤柳は再びバインダーを元の壁に吊り下げた。
「……やはり昨日点検した時と変わりないな。凶器になりうるものは特に注意しておいたから、間違いない」
「ありがとう、笛吹きくん! じゃあやっぱり、あのメスが凶器なんだろうね」
章平がにこやかにそう言うと、赤柳はこくりと頷く。保健室のメス――……。犯人は保健室の設備に詳しい人だったのかな? 倉庫の道具は凶器以外も、使われた様子がないようだ……。
赤柳はくるりと章平たちに向き直って腕を組む。
「他には何か気になったことはないか?」
「そうですね……」
泡淵は少し、うーんと顔を伏せて考え込んでからキーボードを叩く。
「猫塚君……。最近みんなのことを避けていた気がするのですけど……」
「たしかに! ぼく、ぜんぜんオオカミくんに会わなかったよ! お茶会の、あれきり!」
言われてみれば、人魚姫の言う通りである。章平は積極的に彼と交流をしようとはしてこなかったのだが……。それでも、時折廊下ですれ違ったり、仕事をしている最中の執事を見かけたことがあった。だが――記憶を思い返してみても――ここ最近は、それすら全く無かったのだ。
笛吹き男は肩をすくめる。
「仕事はしていたようだから、狙えば会うことは出来ただろうが……。わざわざあいつ個人に用事も無かったからな」
「そういえば、靴屋くんは全然会えなかったみたいだよー?」
どうやら最近彼に出会えなかったのは、他の生徒たちも同じようだ。章平はこの前、有子と二人で赤毛の神父と会話したことを思い返す。そういえば、今朝も似たような台詞を言われ、章平はなす術なく手を引かれたのだ。
泡淵は困ったように眉を八の字にして、また指を動かした。
「敢えて仕事のスケジュールを変えたりしていたのかもしれないわね。私も、以前はよく仕事中の彼に遭遇したものだけど……。最近は本当に無かったわ。動機が提示されてからは……本当に、あのお茶会の時だけよ」
ずっと単独行動をしていた猫塚……。犠牲になってしまった彼のことを思えば、犯人にとって何より都合の良い条件になっていたターゲットだったろう。章平たちが学級裁判に挑むのは、これで二度目だ。つまり――前回のことを踏まえ、殺人の計画は、より複雑に。他者に解答を導き出されないようにしなければならないのである。その前提条件として、目撃者の可能性は低いに越したことはない……。
ひとまず情報を整理し終えた章平と赤柳は、検死結果を聞きに行くという泡淵と一旦別れることにしたのだった。
◇
「ありす!」
「あ……。ショウくん……」
「赤柳と居たのね、佐渡」
見慣れた茶髪の少女を見つけ、章平は思わずぱたぱたと駆け寄る。離れていたのはしばしの間だったが、こうして彼女にくっつくととても安心した。
どうやら幼馴染は、白雪姫と共に行動していたようだ。隣にいた彼女にも目を向けて、笛吹き男は遅れて歩み寄って来る。
「白雪、国中。一緒だったのか」
「ええ、国中さんのことが少し心配で……」
「たしかに顔色が悪い。個室で休んだ方がいいんじゃないか?」
「ううん……。ショウくんも、みんなも、がんばってるから……」
章平の腕の中で無理に笑おうとする有子。一連の会話の内容が、章平にはよく理解出来なかったが……。有子の様子は確かにいつもと違うようだ。彼女はぎゅっと胸の前でこぶしを作り、それからすうはあと深呼吸してから切り出した。
「あのね、みんなに話しておかないといけないことがあって……」
なんのことだろう? 章平は全く心当たりのないことだったが、ひとまず、他でもない彼女がそう言うのであれば聞いておいた方がいいのだろう。章平は有子を解放して、大人しく他の二人と同じように彼女に向き合った。
「わたし……昨夜ずっと、青錆くんと一緒だったんだ。午前0時くらいに会って、それから2時くらいまでおしゃべりしてて……」
「え?」
「そっか、ありすが今朝眠そうだったのは、青くんと夜更かししていたんだね!」
つい、先程。今朝の珍しい有子の様子を思い返して、章平はようやく合点がいった。その頃は当然、章平自身は夢の中で彼女と遊んでいたのである。しかし現実の彼女はそこではなく……かの城主の元にいたのだ。
あっけらかんとした章平とは対照的に、白雪は物凄い形相をして見せたが……しかし、それ以上何も言葉にしなかった。
有子はこくりと頷いて、話を続ける。
「うん……そう……。それでね、その時に……遠くの方から物音が聞こえて」
「物音? ……すまない、気は進まないかもしれんが、詳しく聞かせてくれないか? まず、お前たちはどこで会ってどこに居たんだ?」
大人しく聞いていた笛吹き男も一転、その内容が事件の真相に関わってくるかもしれないと察すると、詳細な情報を求めた。有子はあっと声を出して、わたわたと手を遊ばせる。
「あ、ご、ごめん……。えっと、会ったのは倉庫だよ。寝れなくて足湯でもと思ったら、同じように起きてきた青錆くんに会って……。それで、大浴場には姫ヶ原さんがいたみたいだから……わたしたちは邪魔しないように、寄宿舎を出てすぐの教室でおしゃべりしてたんだ」
「姫ヶ原さん?」
「うん、青錆くんが言ってたんだ。足湯しようとして、でも姫ヶ原さんがいたからやめたんだって」
「そっか、ありすたちにはアリバイがあるんだね!」
死亡推定時刻は昨夜の深夜1時から2時ごろとあった。科学部と介護士の二人も間違いはないとの認識であったようだから、まずこれは確定事項だろう。その時間の出来事であるなら――他の眠っていたと言う生徒たちとは違って――なるほど、有子たちにはしっかりとしたアリバイがあることになる。
大人しく証言を聞いた赤柳は、ふむと頷いてから、また詳細を聞き出そうと口を開く。
「それで、物音を聞いたのは何時頃だ? どんな音だった?」
「どう、だったかな……。ごめんね、そこまでは覚えてなくて……。音は、何かが落ちるような……そんな音かな。一緒にいた青錆くんは、聞こえてなかったみたいだったから……気の所為かもしれないんだけどね……」
「いいえ、何かの手がかりになるわ。ありがとう、国中さん」
しょぼくれたようにそう言って有子は肩を落としたが、白雪はにこやかに微笑んで彼女の肩に触れた。この白雪姫、女子に対しては無条件にすこぶる親切で優しいのだ……。
「すまない、もう一つ尋ねたい。確か、寄宿舎を出てすぐの教室にいたと言ったな? お前たちが歓談している間、寄宿舎と校舎を移動した奴がいたか、分かるか?」
「うん、誰も居ないよ。これは断言出来る。ドア開けっ放しでおしゃべりしてたから、誰かが通ったらすぐ分かると思うんだ」
「なるほど……。ありがとう、国中」
ダメ押しとばかりに更に深掘りする笛吹き男。前回の事件とは違い、今回は犯行時刻がはっきりしている。だからきっと、その時間の手掛かりを少しでも集めようとしているのだろう。有子もそのことを理解しているようで、彼の質問にも快く回答した。
有子の証言をまとめると……。犯行時刻の少し前から、彼女を含む三人の生徒のアリバイは確実であり、寄宿舎と校舎を行き来した人物は居ない……ということ。……うーん、それでもまだまだ容疑者は広いなあ。章平が首を傾げていると、女尊思考のモデルはいたいけな少女を庇うように、もういいでしょうと一言置いて去ってしまった。あっと章平が幼馴染を追いかけようとしたが……。ちらと笛吹き男を振り返って、やめた。特に彼は章平を止めようとしていなかったのだが、なんだか今は、そうした方がいいと思ったのだ。
◇
女子二人組と別れ廊下を歩いていれば、瓜二つの容姿の双子が教室から出てくるところに遭遇した。
「お、赤柳と佐渡」
「こんにちは、双子ちゃん!」
「あ、ねえ。二人とも、昨夜のアリバイ教えてくれない?」
挨拶を交わすや否や、早速捜査の話題に切り替えたのは夜羽だ。赤柳はすぐにその質問に応答する。
「僕は個室で就寝していた。佐渡や泡淵も同じだそうだ。……先程聞いた話によれば、国中と青錆、姫ヶ原にはアリバイがあるようだ」
「ふぅん……。じゃ、後でその三人に詳しく聞いてみようかな」
意外そうに目を丸くしてから、夜羽はそこで言葉を切る。隣の赤柳は何か言いたげに眉をひそませたが、それを察したように菊音がすぐに口を開く。
「俺らは昨夜も二人で個室にいたぞ。昨日はよはねの部屋だったな。まあ、前も言ったが……。身内の証言だし、アリバイにはなんねーだろ……」
「むずかしいねぇ、アリバイ証明って……」
章平はうぅんと考え込んでしまう。夜中の出来事は、証人を用意することが難しい……。閉鎖空間内でお互いの目が常に近くにあるといえば、そうだが……基本的に、侵入不可である個室内部の出来事を知り得る方法は無いのだ。
「他に気づいたことはあるか? どんな小さなことでもいい」
これ以上の情報は望めないようだったが、笛吹き男は記憶を呼び起こすように促す。確かに、現時点で手掛かりは十分だとは言えなかった。
顔を見合わせ、二人は似たような仕草でうーんと首を傾げる。タイミングも完璧だった。……しかし、その後の反応には差があり……。
「僕は特に無いかな。きくねは何かある?」
「そういや……。ああでも、別に関係ねぇか……」
「何か気になることでもあるのかい?」
「もったいぶらないで教えてよ、菊音」
「んー……。別に全然大したことじゃねぇんだけど……」
別段これと言って特別な様子は見せず、本当に心当たりがなさそうな夜羽に対して……菊音はまた難しそうな顔をして腕を組む。二人のうちで共有されていなかったのか片割れが意外そうに覗き込めば、彼女はしぶしぶといった様子で前置きをした後、口を開いた。
「視聴覚室によ、貸出用のプロジェクターがあるの知ってるか?」
「そういえば……そんな道具もあったな」
「え? 知らなかった!」
「あるんだよ。DVDも色々あってよ。寝る前とか暇過ぎて死にそうな時にな、そのプロジェクター借りていろいろ見てんだ」
「はじこいはやっぱ名作だよね〜」
飛び出た話題は予想もしないもので……。章平は純粋にその道具についての初出情報に驚いた。しかし、既にそのことを知っている他の二人はすぐに首を傾ける。
催促するように赤柳が質問を重ねた。
「それがどうかしたのか?」
「ほら、お前とか猫塚とか……。他の奴らって割と才能磨きで忙しそうにしてんじゃん。だから、ずっとあれ借りてるの俺らだけだったみてぇなんだけど。つい最近、誰かがもう一台借りてるみたいでよ」
「……具体的にはいつ頃からだ?」
「一昨日ぐらいかな……」
事件が起こったのは昨夜である。一昨日といえば、その直前であるから……。正直、無関係だと断定しがたい絶妙なタイミングである。隣の夜羽がことりと首を傾げた。
「今まで気付かなかっただけなのかもよ?」
「そりゃそーなんだけど、でもDVDは持ってってなかったんだぜ?」
「えー……? 自前の何か見てたりするんじゃない? だって僕たちの個室、割と私物が置いてあるんだよね。赤柳君のフルートもずっと使ってたやつでしょ?」
「そうだな。いつも使っている本番用と練習用が二本ずつ揃っていた」
「は!? 今お前の部屋、フルート四本あんの!?」
「……練習用でも二本は要るだろう」
「そこじゃねえよ!!! ……んまあーそりゃそうか、そーですよね。音楽家なんて金持ちに決まってるよなー」
激しい突っ込み。やれやれと肩をすくめて、菊音はそれだけ言い捨てくるりと踵を返す。双子は他の場所を捜査しに行くのだろう。二人の背中が遠くなっていくのを眺めながら、赤柳は章平を振り返る。
「……佐渡。今のは僕が変なのか?」
「うー……ん。よく分からないけど、楽器って高価なんだろう? トランペッターを目指してるっていう、ありすのお友達も……楽器はひとつしか持っていなかったよ!」
「…………まあいい。事件には関係無いことだ。ひとまず、奴の証言を確認しに行こう」
「はーい!」
……ともあれ。次の捜査箇所は明確になったので、早速章平たちは移動した。
◇
視聴覚室は、学校エリア一階にある。その場所は章平も探索のとき一度訪れたくらいで、貸し出し機器があることまでは知らなかった。ぐるりと目当てのものを探せば、教室の壁際に貸し出し用機器が並んでいる。プロジェクターが並んでいる場所には、あとふたつは配置されていたであろうスペースが不自然にあった。
「プロジェクターはふたつ貸出中みたいだね!」
「菊音の証言通りか。……正直関係無いとは思うが、事件の直前というのが少し引っ掛かる。……佐渡、もう少しここを調べても構わないか? お前が気になるところがあれば、そちらへ行って構わんが……」
「うん! ぼくも調べるよー!」
他にも貸し出し機器が無いか、不審な箇所は無いか。章平は教室の中をくまなく調べて回る……。
「うーん。分かったのは、プロジェクターがふたつ貸出中で、ビデオカメラがひとつ貸出中ってことだけだね」
「プロジェクターのひとつは双子が借りているものだとして、ビデオカメラか……。まあ、頭の片隅にでも置いておこう」
菊音の証言から気になって調べた場所だが……。正直に言って章平も、この異変が事件にどのように関わっているのか分からなかった。微妙な表情をしている隣の笛吹き男も、おそらく同じ考えだろう。
……さて、次は何処へ。そう思って顔を上げたところへ、再びアナウンスが鳴り響いた。
――キーンコーンカーンコーン。
――皆様、お時間になりました。只今より、学級裁判を行いますので、学校エリア1階にある、赤い扉にお入りください。
「……時間みたいだね」
捜査時間終了の知らせ。前回と同じならば、指示通り扉をくぐった先のエレベーターで、あの不可思議な円形裁判場に行くことになるだろう。
章平が顔を向けると、笛吹き男は真っ直ぐに見つめてくる。
「佐渡、すべき事は分かっているな?」
「うん! 疑問に思ったことを口に出して質問する。聞かれたことに正直に答える。前とおんなじだよね? 出来るよ!」
「分かっているなら良い。行くぞ」
「うん!」
初めての裁判の直前――……。彼が提示してくれた、
赤柳の背を追い掛けて、章平も足早に目的地へ急いだ。
◇
章平は再び、ただならぬ雰囲気を漂わせている赤い扉を開く。エレベーターフロアには、前回と同じく生徒たちが待機していた。今回も出遅れてしまったようだ。
タイミングよくぷつんと頭上のモニターの電源が付いて、先程と同じくモノヴォルの顔が映し出された。菊音が不満そうに腕を組んで、モニターを睨み上げる。
「……おい、さっさと始めるぞ。もったいぶってないではやくエレベーター開けよ」
「まだ皆様お揃いでないので、ご案内する訳には参りませんよ」
「まだ? 誰がいないの?」
「……加連」
赤柳が呟くと同時に、黙って引き返したのは白雪だった。
あっと声を上げて動こうとした数人を、赤柳は黙って手で制止した。その行動の意味を章平は理解出来なかったが、やはり彼は正しい。
しばらくして足早に白雪が、その後に気だるげな足取りで、頬を真っ赤に腫らした加連が現れた。
白雪姫は定位置で立ち止まると、モニターを睨んだ。
「これで文句無いでしょ」
「はい、皆様お揃いですね。それでは、裁判場へ。ご案内致します」
人数が揃ったことを確認した狐が満足そうに頷けば、ようやくエレベーターのドアが開く。嫌でも意識がそちらへ向いてしまう。また頭上を見上げた頃には、モニターはやはり用が済んだのか真っ暗になっていた。もう、他に選択肢はない。先に進むほかに、道はない。
生徒たちが次々にエレベーターへ乗り込む。目の前を赤髪の彼が通り過ぎる際、章平はつい先程疑問に思ったことを口にした。
「靴屋くん、それ、どうしたんだい?」
「…………」
「ほっぺの……」
「…………」
「あぇ〜……?」
完全に章平を無視して、加連もエレベーターに乗り込んでしまった。確か、捜査時間中にはあの傷は無かったはずだ。痛そうだなあ、どうしたのかなあ、と思考を巡らせた所へ、おいと笛吹き男が腕を引く。彼のおかげで間一髪、扉が閉まる前に間に合った。
ゴウン、ゴウンとやはり不快な音を立てながら、エレベーターは降ってゆく。この揺れは心地良いものではなく――正直言って、早く解放してほしいほど不愉快なものだった。けれども、既に一度は体験したこの下り道は、前回ほど果てしないものには感じず……気付いた頃には揺れが静まっていく。
――そうして、目的地に辿り着いたことを知らせる鐘の音が一度、チンと響き、再びエレベーターの扉が開かれた……。
◇◇◇
地下施設の裁判場は、前回来た時とほとんど変わりない様子で章平たちを迎えた。……そう、
「お待ちしておりましたよ。さあさ、お早く! 前回と同じように、ご自分のお名前が書かれた席についてくださいな」
上機嫌に台の上で立ち上がったモノヴォル。ぬいぐるみの言葉に急かされるままに、生徒たちは再び円形裁判場の席に立った。こうして向き直れば、つい先日行った議論が、嫌でも蘇ってくる――……。
章平は、ひとりひとりの顔を見回した。お互いが良く見渡せる裁判場。またここで、事件の真相を暴いて――この中の誰かを、またひとり失うのだ。
「さあさあ、それでは皆さん席に着いたことですし。無駄話はやめにして、早速本題に入りましょう。……学級裁判を開廷しますよ」
前回と同じように、モノヴォルがさっと合図を出せば、すぐに照明がばつんと切り替わる。くわんとする眩暈に似た感覚。徐々に目が慣れ、全員の顔が再びくっきりと瞳に映るようになる頃には、章平も心の準備が整った……。
なんだかんだ言いながらも、章平たちのために様々な仕事をこなしていた長靴を履いた猫。彼を殺した犯人を――……暴くための、"学級裁判"。
命を賭けた謎解きゲームがまた、はじまる。
◇◇◇
◇オマケ!
コトダマ一覧
【モノヴォルファイル2】
被害者は"超高校級のペテン師"鷺沼瑞。
死体発見現場は保健室。
死亡推定時刻は昨夜1時から2時頃。
死因は頸動脈からの大量出血による失血性ショック死であり、毒物などを摂取した痕跡はない。
【"鷺沼瑞"について】
「鷺沼瑞」は生徒たちの知らない名前である。
加連は猫塚の名前が「鷺沼瑞」であることを知っていたようだ。
【"
"金色ペテン"はおぞましいほど美しい金目を持つと言われている。
"金色ペテン"は生徒たちの中に潜んでいる。
死亡した猫塚の右目は背筋が凍るほど美しい金目である。
死亡した猫塚の才能は"超高校級のペテン師"である。
このことから、彼こそが"金色ペテン"であると推測される。
【密室殺人】
保健室は正面の扉以外に、出入り可能な場所は無い。
事件発覚当時、保健室の扉は開かず、密室だった。
【伊海田の証言】
保健室の扉は、今朝から固く閉ざされていたらしい。
【つっかえ棒】
保健室の引き戸の片方にはつっかえ棒が掛かっており、内側から封鎖されていた。
【レールのキズ】
つっかえ棒で封鎖されていないもう片方の引き戸のレールには、何やらキズが付いていた。
【医療用メス】
血液の付着した、凶器と思われるメス。
保健室の床、遺体の傍に落ちていた。
【イヤホン?】
保健室に落ちていたワイヤレスイヤホン。
一般的な形状とは異なるようだが……。
【赤柳の証言】
赤柳は猫塚家の長男と知り合いであり、時折連絡を取っていた。
猫塚家には誠司という名の養子の次男がいて、彼が学生ながら執事として働いているというのは、間違いない情報である。
【星永と姫ヶ原の検死結果】
死亡推定時刻はおおよそ昨夜1時から2時頃で間違いない。
頸動脈の傷は、60mmほどの小さな刃物で付けられた傷である。
【手首の傷】
猫塚の遺体の左手首には、古傷が残されていた。
姫ヶ原曰く、自傷のあとであるようだ。
【握り締めた左手】
猫塚の遺体は、左手に何かを握り締めているようだ。
【保健室の薬】
保健室の薬品は、星永と姫ヶ原が管理していた。
二人の把握していないところで、抑うつ剤などの向精神薬が使用されていたらしい。
【厨房の包丁】
厨房の包丁のうち一本は、青錆の個室にある。
どうやら猫塚が許可を出したらしい。
【倉庫の備品】
倉庫にある道具や備品の管理は赤柳が行っていた。
事件当日の15時時点と事件後とで、無くなった道具は無いようだ。
【猫塚の動向】
最近の猫塚は、加連をはじめ、生徒たちを避けているようだった。
【国中の証言】
猫塚の死亡推定時刻、国中と青錆は寄宿舎を出てすぐの教室で歓談していた。
その時、何やら遠くから物音が聞こえたらしい。
また、歓談中に寄宿舎を出入りした人物はいないらしい。
【昨夜のアリバイ】
青錆と国中は寄宿舎を出てすぐの教室で歓談していた。
姫ヶ原は大浴場で入浴中だった。青錆が証人になるらしい。
それ以外の生徒は個室で就寝中だったため、アリバイはない。
【菊音の証言】
視聴覚室にある貸出用プロジェクターが、事件前日からひとつ無くなっていたらしい。
【視聴覚室の備品】
視聴覚室にある貸出用備品のうち、プロジェクターふたつとビデオカメラひとつが貸出中のようだ。
プロジェクターのうちひとつは、菊音たちが借りている。