ちょっとゴタゴタして書くのが遅れました。
原作要素と二次創作要素を混ぜるの難しいです。
半分少女のヒーローアカデミア
変化球から始まった高校生活から数日、私たちは至って普通の日々を送っていた。国英数に理科社会、普通科高校で行われる授業はヒーロー科でも当然ある。ヒーロー科だからといって一般教養を疎かにするのは許されないのだ。なんならヒーロー課程がある分、授業のペースは他よりもハードだ。
そんなこんなであっという間に午前が終わり、今日も午後の授業が始まる。けど今日の内容はちょっと違う。ヒーロー基礎学の授業、やっとヒーロー科らしくなってきたね。
『わーたーしーがー!普通にドアから来たーーーー!』
大声と共に、ヒーロースーツを着込んだ巨漢がヌッと教室に入ってくる。天下のナンバーワンヒーロー、オールマイトだ。色めき立つクラスメイトと一緒に私もちょっとワクワクしてる。なんて言ったって、現役のトップヒーローが直々に教鞭を取ってくれるんだから!これでテンションの上がらないヒーロー科が居ようか、いや居ない。
『早速だが、今日はこれ!戦闘訓練!』
『BATTLE』というやたらデカい、オールマイトサイズなので本当にデカいフリップが掲げられる。今日の授業は、いきなり実践形式らしい。それにしても戦闘訓練かぁ、的相手ならいくらでもしてきたけど……
『そしてそいつに伴ってこちら!』
オールマイトの話はまだまだ終わらず、彼の声に応じて教室の壁がせり出してくる。
おぉ、ここってそんな風になってたのか…ハイテクでちょっとかっこいいかも。
『入学前に送ってもらった個性届と要望に合わせたあつらえた戦闘服!』
「「「おおおおおお!」」」
『これに着替えたら順次、グラウンドβに集まるんだ!』
ついに来た、マジのコスチューム!思わず声上げちゃって恥ずかしい……みんなも上げてたからセーフだけど。デザインとかは分からないので、大まかな要望だけ書いて送っちゃったから、完成品がどうなってるのか楽しみだ。
* * *
『いいじゃないかみんな、カッコいいぜ!』
グラウンドに集まった私たちを見て、オールマイトが言う。そう、みんなかっこいいのだ。正しく各々の『個性』を体現する戦闘服、これからカスタマイズされて変わっていくにしても、とってもかっこいい仕上がり。
私のを除いて……
箱を開けたら雄英の体操服を無地にしたみたいなツナギにしか見えないものが出てきて5秒くらい固まってしまった。まぁこれも性能面でしか要望を出さなかった私のせいか、グスン。
なんて寂しい考えをしてる私を脇からツンツンしてくる人がいる。少し傷心中の私にちょっかいかけるのは……爆豪ではないな。あいつはもっと堂々と弄ってくる、なんならさっき目が合った時に口角上がってたの見逃してないからな。無駄に思い出しイライラをしつつ、いい加減誰かしら?と振り返る。
「お、気づいた。さっきから元気ないけど大丈夫?」
「麗日さん……うん、ちょっと戦闘服が思ってたのと違くってさ。」
「分かるー!私もこんなパツパツで恥ずかしい。」
「確かにライン出すぎだけど、宇宙服っぽいし麗日さんの個性と合ってて良いんじゃないかな?」
「ありがとーー!加山さんのも逆にそういう飾らない感じがかっこいいよ!」
「ほんと?麗日さんに言われると良い気がしてきたかも。ありがとう。」
麗日さんと同じクラスで良かったーー!この子の陽だまりみたいなオーラ浴びてるとこっちも明るくなってくるよね。
『さて、始めようか。戦闘訓練のお時間だ!』
「先生!ここは入試の演習場ですが、同じく市街地演習を行うのでしょうか?」
『飯田少年、ナイスな質問だ。今回は入試よりも2歩先に進む!』
オールマイト曰く、真に賢しい敵は屋内に潜む。悪質な敵犯罪は屋内での方が多いらしい。苦しい記憶だけど、私としても実感のある話。それを敵組、ヒーロー組の2対2に分かれて再現して行うのが、今回の演習とのこと。
核兵器を持つ敵をヒーロー組が捕まえる、若しくは核兵器の奪取。敵組はその逆でヒーローを捕まえるか核兵器を取られないこと。以上が今回のルール、オールマイトめちゃくちゃカンペ読んでたけど。
『コンビ、対戦相手はクジで決める!』
「適当なのですか!?」
「プロは急遽、他事務所のヒーローとチームアップすることも多いし、そういう事じゃないかな。」
「なるほど、先を見据えてのことか。失礼しました!」
「いいよ、早くやろう!ちなみにクジは1枚だけ白紙だから、引いた人は私がバランスを見て3人組を組んでもらう。なんてったって今年、21人だからね!」
* * *
なんの因果か私は白紙を引き、オールマイトの判断の元、チームIに入ることになった。チームメイトは、尾白くんと葉隠さんだ。
「じゃ、改めて自己紹介を。私は加山水穂、個性は半水半燃!」
「次、私!葉隠透、個性は見ての通り透明化ー!」
「最後は俺か、尾白猿尾、個性はこの尻尾。よろしくね。」
2人ともちゃんと話すのは今日が初めてかな。葉隠さんは感情表現豊かなのがよく分かる。見えないけど身振り手振りて凄く伝わってくる。逆に尾白くんは物静かな方なのかな。
で、すこーーーし気になることがあって。
「葉隠さん、戦闘服って手袋と靴だけ?」
「そう!私の個性活かすならこうじゃないと!」
「あ……」
そっとチームI唯一の男子、尾白くんの方を向くと可哀想なくらい真っ赤にして顔を背けてました。まさかとは思ったけど本当にほぼ全裸とは思わなかった。やぶ蛇だった。
「尾白くん、葉隠さんは見えない服を着ています。はい、繰り返して。」
「え、えっと。葉隠さんは見えない服を着ています。」
「よし!頑張って、邪念を捨てるんだ!」
私たちが無駄なやり取り、いやいや尾白くんの健全な学校生活のためにあれは不可欠だった。
こほん、私たちが必要なやり取りをしてる間に第1組の対戦カードが決まったようで、しかも緑谷くん対爆豪、赤い糸で結ばれてるのかってくらい因縁の深い対決になっちゃったな。
正直、個性把握テストの日から爆豪はおかしい。確かに何かと緑谷くんに噛み付く奴だったけど、今はむしろ絡んでることが少なくなって、ふとした時に憎々しげな視線を向けてることが多い。原因は察するに緑谷くんが個性を持っていたってところかな。
有無を言わさない超パワー、使いこなせばオールマイトに匹敵するかもしれない個性を緑谷くんが、自分より絶対に下だと思ってた奴が、無個性だったはずの奴が持っている。プライドの塊と言っていい爆豪がそんな事実に直面して、その鬱憤を晴らすのにはおあつらえ向きな場を得たらどうなるか。
2人とも心配だけど、この因縁は決着をつけないといけないって思う。
* * *
結果として、爆豪、飯田くんの敵チームと緑谷くん、麗日さんのヒーローチームはヒーロー側の辛勝で終わった。初戦こそ緑谷くんの機転で有利に進んでたけど、別行動中の麗日さんが飯田くんに見つかり、爆豪がなりふり構わなくなってからはヒーローチームの旗色が一気に悪くなった。追い詰められた緑谷くんの捨て身の作戦で何とか麗日さんが核を回収したけど、ビルは損壊し緑谷くんも負傷してしまった。
後の講評では、八百万さんによる徹底的な解説により、オールマイトの言うことがなくなってしまったのはご愛嬌だと思う。明らかに誤魔化してたというか、降参してたし。まだあまり話してないけど、さすが推薦入試に受かっただけはあるなぁ。
爆豪は、まぁ……見た感じ悪感情でドロドロというより、ショックでフリーズしてるって感じだった。良い薬になってもう少し緑谷くんと仲良く出来たらいいんだけどな。
『じゃあ場所を移して第2戦と行こうか。ヒーローチームBコンビ!敵チームIトリオ!』
さて、私たちの対戦相手は障子くんと轟くん。障子くんの個性は「複製腕」、触腕に目や耳、口を複製できる索敵向きの個性だから彼は後衛の可能性が高い。前に出てくるのは、「半冷半燃」の轟くんかな。奇しくも私と似た個性だ、どこまで出来るか未知数だけど、相性的に私が相手するのが良いかもしれない。
「尾白くん、葉隠さん、2人とも戦うとしたら近接寄りだよね?」
「そうだね。俺は尻尾を使った近接戦の方が得意だよ。」
「私も透明だからそれで近づくのが得意かも!」
「OK、多分向こう側は轟くんを前衛に出してくると思う。私が彼の足止め、捕縛を狙うから2人が核の側で障子くん警戒して欲しい。いいかな?」
「「了解!」」
「ありがとう。じゃ!頑張っていこう!」
『第2戦、スタート!』
インカム越しにオールマイトから開始の合図が来る。と、同時にビル全体が氷漬けにされた。
轟くんの氷結攻撃か!
ビルを丸ごと覆える規模を瞬きする間に出せるなんて……彼も流石は推薦入学者。相手は凍らせて行動不能にできるし、仮に拘束出来なくてもこの低気温と足場の悪さなら容易に動きを鈍らせられる。
けど私だって炎使えちゃうの忘れてないよね?
「尾白くん、葉隠さん!この部屋の氷を溶かしたら、そのまま轟くんの対処に行く!2人は作戦通りにお願い!」
「わ、わかった。」
「わた、私もー!」
かなり寒そうだけど元気は有り余ってるみたいで良かった。2人にサムズアップし、私は床に手を触れて意識を集中する。炎に変える熱を放出せず、そのまま手のひらから全体に伝えていく。ものの数秒で部屋の氷は溶け、僅かに水溜まりが残るのみとなった。
2人の拘束が解けたのを確認して、部屋を出る。
想定外の攻撃で余計に熱を使ってしまった。けど有難いことに一面に氷があるので少し失敬して、体を冷やさせて貰おう。多分、轟くんはさっきので私たちを完封したと油断してるはず。急げば核に近づかれる前に接敵できる。
駆け足で階段を下り、2階廊下に差し掛かったところでついに轟くんと会敵した。
「やっぱり抜け出してたか。」
「まぁね。……!」
軽く会話を交わして時間稼ぎと轟くんの出方を見ようとしたが、問答無用で足元から氷結が迫ってくる。こちらも負けじと水流を放ち、氷の動きを止める。どんどん凍ってしまうが、流水から熱を奪うには時間がかかるのを嫌ったのか、氷の奔流が治まった。
「いきなりご挨拶だね、轟くん。」
「障子、作戦変更だ。別ルートで核に向かってくれ。」
「無視?まぁ目の前で作戦話してくれるならありがたいけど。尾白くん、そっちに障子くんが来るよ。葉隠さんと対処して。」
お互いに仲間との連絡が終わり、自然と目線がかち合う。嫌にしんと静まり返った一瞬、再び轟くんの氷が襲いかかってくる。私はそれを上に避けて、既に生成が終わった勢いのない氷に着地し、慣性に任せて滑り出す。轟くんの氷は私の水流操作で操ることは出来ないが、そこから溶けだした水は違う。私の体重を受けた圧力で、靴底に現れた水は微力ながら操作の範囲内。ただの慣性に水の指向性を足して加速する。
轟くんの個性は強力だが、言ってしまえば大味。中遠距離は得意でもインファイトは苦手なはず。加えて彼は氷をメインにしてるようだけど、それは右半身からしか出せない、つまり左側はフリー。逆に私の水流は両手両足から自在に出せる。なら今、轟くんに近接戦を挑むのは理に適ってるはず!
「速ぇな……お前が得意なのは水だろ?」
「ふふん!個性の使い方は創意工夫、使い所を常に考えるものだよ!」
「確かにな。」
私が氷を難なく滑ってきたことは、かなり予想外だったようで軽く数発入れることが出来た。けど轟くんの実力も大層なもので、あっという間に近接戦に対応されてしまう。その上、氷の使い方も攻撃一辺倒ではなく、素早く距離を取るのに使ってきたりと、考えていたより一進一退が続いた。
だけど少しずつ私が押し始めてる手応えがあった。轟くんの動きが鈍ってきているのだ。よく見れば体に霜が降りていて、氷の連続使用は相当体温を奪われるらしい。
「轟くん、寒そうだね。炎使わないんだ?」
「……俺は左は使わねぇ。お前こそ使わねぇのかよ、炎あるんだろ?」
「…………ま、まぁね。苦手なんだ。」
「そうか。なぁお前って──父親いるか?」
「は?」
彼はいきなり何を聞いてくるんだろう。時間稼ぎの話題にしては脈絡が無さすぎるし、油断を誘うためにしては何も仕掛けて来ない。それに私の家族のことは私にとって1番触れられたくないところだ。なのに彼はそこに触れてきた、いくつもの感情が揺らめいて、その不快さに思わず苛立ちを覚える。
「……今はいないけど。だったら何、人の家の事は不用意に聞くものじゃないよ。」
「いねぇのか、父親はヒーローか?」
「〜〜!今、私が言ったこと聞こえなかった?他人の事情を無遠慮に踏み込むなよ。」
全身がカッと熱くなるのが分かる。なんだ、なんなんだこの人は……嫌なところを突いてきたと思ったら、忠告も聞かずにズケズケと聞いてきやがって。父親がいなかったらなんだ、ヒーローだったらなんだ、今のお前に関係ないだろ。
───思い知らせてやる。
「轟くん、私の炎見たいんだっけ?」
手先に熱を集め、密度を、温度を高めるイメージ。
「お前……」
「いいよ。好きなだけ見せてあげる。」
一極に集中した熱を炎に変え、放つ!
廊下全体を舐めるように走る炎が、残った氷を焼き溶かしながら轟くんに迫る。けれどそれは直撃する寸前で分厚い氷壁に阻まれてしまった。私の炎が急速に溶かしていくけれど、突破する前に威力を失ってしまう。
大きく溶けた氷の隙間から覗く彼の表情には、驚きこそあれ焦りは見られない。むしろビル内の気温が上がったことで、右半身の体温も少し戻ったようだ。防がれることは想定の内だったけど、彼に回復の機会を与えてしまったことに内心、歯噛みする。
──あぁ、腹立たしい。その仏頂面、殴り飛ばしてやる。
そこからはさっきよりも激しい攻防が始まった。私の水流と炎を織り交ぜた攻撃は生半可な氷結はものともせず彼に打撃を与えるが、致命的なものは全て逸らされ、カウンターで放たれた氷撃を数発くらってしまう。
数十秒か、はたまた数分か。一瞬が何倍にも引き伸ばされる感覚の中、私は再度轟くんを押し始めていた。それは寒暖差による体力の消耗。確かに私の炎は彼の体を温めもした、けれどその後何度も彼は氷結を繰り出し体温を奪われ、また炎で温められるのを短時間に繰り返していた。
轟くんの個性は半冷半燃、両方の使用に耐えられる体質なのだろう。だけど彼だって人間だ、人間である以上通常ありえない体温変化に曝されれば体力を奪われるのは必至。逆に私はすこぶる調子がいい。いつもならとうにキャパを超えているはずなのに、全く限界を感じない。
「轟くん、しんどそうだね。降参してもいいよ。その前に一発殴らせてもらうけど。」
「そうでもねぇよ。お前こそ別人みてぇだな。猫被ってたのか?」
彼はそう強がりを言うけど、既に疲れきってるのはわかってる。それに彼の弱点も掴んだ。
──そう、彼の弱点は
「……ッ!!」
「熱湯、苦手なんだよね。その火傷と関係あるのかな?」
「てっめぇ!がっっ!?」
足元で炸裂させた水蒸気に乗って肉薄した私に対処できず、私の拳が彼の頬を捉える。
熱湯、彼は熱湯が苦手なのだ。降りかかる熱湯なんて誰だって怖いと思うが、彼の場合は違う、明らかに怯んでる。左目あたりにある火傷跡に理由がありそうだけど、そんなことはどうでもいい。踏み込んじゃいけないところに踏み込んだのは彼が先だ。
大きく体勢を崩した彼に、私は再度殴り掛かる。
次だ、次で決まる。
右腕を煌々と燃やして。
──あいつをグズグズに燃やしてやる……
『そこまで!!!!!!…………敵チームWIN』
オールマイトの声で一気に意識が引き戻される。
周りには焼け焦げ、ボロボロに砕けた廊下。目の前には傷だらけで息も絶え絶えな轟くん。
「はぁ、はぁ……わた、私……」
まだ炎の燻る右腕を見て自覚する。
「そんな、私……本気で轟くんを」
──殺そうとしたのか?
体温は今にも燃え上がってしまいそうなのに、体が氷点下まで冷えていく気がした。寒いはずなんてないのに、歯の根が合わない。
なんだ私、爆豪のこと言えないじゃん。苛立って簡単に個性に飲まれて、人を傷つけて……あまつさえそこに殺意まで乗せて。
「私、最悪だ。」
その後の講評は当然ながら散々なものだった。序盤こそ良かったものの、私が炎を使い出してからの暴走っぷりは酷かったようで、特に最後の一撃は寸前で止まったけど大怪我に繋がりかねない訓練の域を脱した行為だと大幅減点された。他人に改めて指摘されることは、それがより私に深く突き刺さって、今にも吐き出しそうで震えた。
轟くんは幸い、怪我は打撲と擦り傷のみでそのまま授業を受けるようだったけど、私はとてもそんな気になれず体調不良を理由に早退させてもらった。
みんなの前に居るのが辛くて、オールマイトは何か言おうとしていたけれど、私は逃げ出したんだ。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
水穂としては苦い結果に終わりました。本人としても最初はそこまでキレてた訳じゃないんですが、個性の過剰使用でハイになってしまったという感じです。
今後も彼女のうちにある炎と向き合う様を書けたらなって思います。