半分少女のヒーローアカデミア   作:Akafuku2000

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半分少女とアホの子

半分少女のヒーローアカデミア

 

雄英高校1年A組、学生寮。超常解放戦線との死闘を終え、ようやく落ち着きを見せたA組。

 

──しかし、そこは平穏とは程遠い、蜂の巣をつついたような騒ぎとなっていた。

 

「みんな大変だ!ドアに緑谷からの手紙がッ!」

 

峰田が上げる動揺の声に、一同は誰もが同じく信じられないという反応を返す。

 

大切なクラスメイトである緑谷出久、そんな彼からの別れの置き手紙があったからだ。

 

内容は、

 

『自分の個性はオールマイトから授かった特別なものであること。』

 

『その力を死柄木とオール・フォー・ワンから狙われていること。』

 

『故に、みんなを危険に晒さないため、雄英を出ていくこと。』

 

『A組と過ごせたことの感謝。』

 

別れと言うには、あまりに唐突で、自己犠牲と言うには、残される人の気持ちを蔑ろにしている、とても悲しい手紙。

 

中身を読んだそれぞれが、怒りであったり、悲しみであったり、悔しさを顕にしていく。そんな中、いち早く飲み込み、全員へ声をかけたのは。

 

「みんな、手紙読んでるとこ悪ぃけど、話がある。」

 

轟焦凍であった。

 

「その手紙には続きがあるんだ。」

「緑谷さんからでしょうか?ですが、なぜ轟さんにだけ……」

「緑谷じゃねぇよ、加山からだ。」

「は!?加山…ってそういやアイツ全然見てねぇ!」

「あぁ、瀬呂の反応も分かる。理由はドがつくお節介の手紙に書いてるから見てくれ。」

 

既に開かれた形跡のある封筒を取り出し、中身を机に広げる。それを受けて動いたのは誰が早かったか分からない。しかし数秒としないうちに、その場が人で埋め尽くされたのは確かだった。

 

『えー、拝啓A組の皆々様。この手紙が読まれている頃、私は雄英を出ていることでしょう。……こういうの書いてみたかった。』

 

そんな人の心情を舐め腐った書き出し、読んだ者に微かな青筋が立つ。

 

案の定な光景を見て轟は頭が痛い。

 

──他人の機微を鋭く見抜く眼と、それに寄り添おうとする心がありながら、なぜこうもアホなのだろうか……ブラックジョークにもならない。

 

こんなことをすれば、みんなが怒り心頭になるのは火を見るよりも明らか。だが、そこでふざけてしまう女であるのも轟は身に染みて知っていた。

 

「アイツ…ギャグセンねぇな。」

 

加山水穂、高校1年生16歳。彼女は恐ろしくジョークが下手である。

 

『まず、結論から言うと、私は緑谷くんのサポートをすることにしました。理由をここに書くと長くなるので別紙に記載します。色々隠していたことがあります。ごめんなさい。緑谷くんと同じく、黙って出ていったことも謝ります。戻ったら煮るなり焼くなりしていいです。』

 

言質は取った。

 

このアホが戻ったらどう料理してやろうかと、面々の脳裏に浮かぶ。

 

『出てった理由はちゃんとあります。それは緑谷くんを止めるためです。現状は彼を行かせるしか手がありませんでした。でも、必ず限界が来ます、1人にできることは限りがあって、それにいつか押し潰される。』

 

『その時にはみんなで緑谷くんを連れ戻して欲しい。救けるのを手伝って欲しい。今の緑谷くんを止められるのはA組だけだから。』

 

ふざけ倒している書き出しから一転、文体は真面目なものへと変わっていく。

 

加山水穂はちょけるのをやめられないおバカではあるが、彼女はいつだってヒーロー候補生として本気でやっている。矢面に立つことを厭わず、手を差し伸べることを迷わない。やらなければ、と思ったら説明をすっ飛ばして体が動いていることの方が多い。

 

それを知っている彼ら彼女らは、同級生を案ずる顔からヒーローのそれとなる。

 

──これはヒーローからヒーローへの救援要請なのだ。

 

『緑谷くんが無茶をしないよう、ギリギリまで引き止める。もし私までも振り切られることがあったら、それはもう彼が周りを見られなくなってる証左。ぶん殴ってでも止めなきゃいけない。』

 

『だから、それまでに準備と作戦立案よろしく!』

 

やっぱりシバいた方がいいかもしれない。とりあえず正座はさせよう。

 

『………』

 

1枚目を読み終え、面々は深くため息をつく。ソファに沈みこんでたり、眉間を揉んでたり、関節をパキパキさせてたりする。

 

こんなのに振り回されてる同中組のメンタルが強すぎるだろという感想で全員が一致した。後方で分かるという顔をしている轟もなんか変。相澤先生に直接指導されてきてこの性格は筋金が入りすぎている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──裏面──

 

『P.S. これは爆発さん太郎が読むこと、居ないなら読ませること。』

 

 

『爆豪、これが最初で最後のチャンスだと思うよ。』

 

 

『君の良き同級生より。』

 

 

※ ※ ※

 

 

手紙の一件から数日前、それを読んだA組から正座確定させられるなどと欠片も思っていない加山水穂は──

 

 

 

病室の扉の前でコスチュームを整える。と言っても蛇腔市で派手にやったからちょっとボロになってる。時間的に修理してる余裕がなかった。

 

若干の不安が残る状態だが、今すぐ動かなきゃいけない。

 

……よし

 

「ごめんください。」

「入っていいぞ。」

 

聞こえた相澤先生の返事で、中へと入る。

 

先生のことだから、病院でも仕事の虫かと思ったけど、ちゃんとベッドの上で大人しくしていた。少し意外かもだ。

 

「やぁ、加山少女。先に失礼しているよ。」

「オールマイト…来てたんですね。」

 

オールマイトもいますと。

 

軽い挨拶を彼としていると、先生が上体を起こしている。でもぐったりした様子だ。

 

「悪いな、こんな状態で。」

「大丈夫です。……もしかして疲れてますか?」

「さっき婆さんが来たんだ。」

「あー、リカバリーガールの。」

 

治癒の反動ね、道理で元気がない。あの人、雄英から出張してたんだ。

 

現状を鑑みれば、それも当然か。ヒーロー不足が深刻化していく中、軽傷の者には早く復帰して貰いたいし。

 

先生が軽傷かどうかは議論の余地があるけど……

 

「それでこんな時間に来た訳は…聞くまでもないか。」

「はい、緑谷くんとエンデヴァーたちのチームアップにくっついて行こうかと。」

「だろうな。でなきゃ、コスチュームなんて着ない。」

 

私の格好の理由を察して、なんとも複雑そうな顔をしている。チームアップの件は相澤先生にも共有したから、なんの用で来たかは簡単にわかる。

 

「作戦内容も聞いたし、お前が着いて行く意味も把握したがやれるのか?人に言えたことじゃないが、病み上がりだろ。」

「調子はいいですよ?体も戻りましたし、ストックも結構貯められました。多分、私5人分くらいは余裕あります。」

「そうか。「気配」の方はどうだ?」

「何にも感じません。探れる範囲はまだ未知数ですね。」

「………」

 

難しい顔してるなぁ。そもそも緑谷くんを囮にするって作戦自体も先生は乗り気じゃない。もちろん私のことも。

 

この作戦は、ワン・フォー・オールを狙って緑谷くんを襲うであろう死柄木たちを釣り出そうって内容だ。戦力的なサポートはエンデヴァーたちで足りてるし、本来なら私の参加する意味は皆無。

 

ただ、ある一点だけ私は利用価値がある。

 

それはワン・フォー・オールとオール・フォー・ワンの気配を探知できること。

 

蛇腔市の戦いで感じた第六感、最初は偶然だと思ってた。けれど思い出すと、あれは勘と言うにははっきりしていた。流れ込んできていた、死柄木の放つ意思が。だから、崩壊の予兆も察知できたし、消失弾を使おうとする意図も読めた。そこから遡って場所もわかるのだ。ただ近くにいそうという細やかなものだけれども。

 

それを自覚すると、ワン・フォー・オールのこともわかった。あの個性には複数の人格があるせいで、緑谷くんの意思は感じられないけど、死柄木と同じく何となくの場所はわかる。

 

多分、水と炎の個性以外に本当に僅かながらオール・フォー・ワンが私の中にある。

 

個性を譲渡された時に紛れ込んだ微かな残り香。これを繋がりとしてオール・フォー・ワンを感じ、執着しているワン・フォー・オールを感じ取れる。

 

力は何も無いが、大きなメリットだ。使わない手はない。だから役に立てると思って作戦に志願した。

 

「加山少女、君が参加してくれるのはありがたい。緑谷少年が要ではあるが、彼一人には荷が勝ちすぎる。」

 

沈黙を保っていたオールマイトが口を開く。

 

「だが、君の体が抱えているリスクは忘れないで欲しい。相澤くんが心配しているのは、そこを含めてなのはわかっているだろう?」

「……そう、ですね。」

「体調には常に気をつかって欲しい。」

 

釘を刺された……って言うのは悪し様か。

 

オール・フォー・ワン限定の気配探知に加えて、わかった事実がもうひとつある。これはオールマイトから伝えられたこと。

 

 

──個性複数所持の危険性

 

 

1つの体で新たに個性を持つのは寿命を削る可能性がある。それが4代目の継承者が、40歳という若さで「老衰」したことから判明した。脳無を見ても、複数所持のために強力な肉体改造が成されている。。生身では生まれ持った個性以上を受け入れられないのだ。

 

だから、オール・フォー・ワンから個性を渡されている私はこのリスクが非常に高い。ただ、個性を何個も持ってるなんて事例が少なすぎて、私が本当にそうなるかははっきりしてない。

 

なので、私は気にしないようにしている。

 

「大丈夫ですよ、きっと。」

 

今使ってる炎の個性は、母から遺伝した個性因子を上書きする形で存在している。少なくともそうなるように譲渡された。実際、検査しても出てくる結果は因子が2種類あるというだけ。

 

器が2つあったうちの片方を中身を入れ替えるように発現しているなら、元々備わっていた所持数を超過していない。なら問題ないと、私はしている。

 

生まれはどうあっても、この個性はもう私のものだ。自分を信じることと何も変わらない。

 

それにある種、異心同体な人もいるから。

 

ね!シノさん!

 

──君って親の心子知らずを地で行くよね。

 

……うわ、ほんとに返ってきた。

 

──呼ばれたから出てきたのに、ぶっ飛ばされたいの?

 

だって、夢の中でしか話せなかったのに、急に喋れるようになっててびっくりして……

 

 

私、加山水穂。なんかシノさんと喋れるようになった。

 

なんで???

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