ヒロアカ来週で、終わり?????
半分少女のヒーローアカデミア
「よっと……」
未だに激しく波打つ河川の中央へ降り立つ。
派手に上がった水飛沫を目印に緑谷くんを追ってきたが、既に事は終わったあとらしい。完全に白目剥いてる巨体が水面に浮いていた。
「………」
速い、夏に2人がかりであれほど苦戦したマスキュラーを単独で完封?一応、相手が相手だし最高速で飛ばしてきたのに……
「緑谷くん、お疲れ。」
「うん、ありがとう。マスキュラーの拘束お願い。」
「りょーかい。」
首元の捕縛布を手繰り、マスキュラーへと投げる。
ここを…こう捻って……引けば、よし出来た。
うーん、まだまだ相澤先生のものと比べると少々不格好だね。専門にするつもりもないし、動けなくさせられれば十分だけど。
どれだけ馬鹿力でも、それを発揮するには予備動作が不可欠。四肢を背中側に折りたたまれて縛られたら、ちょっと藻掻くのが精一杯になる。それに捕縛布は、ほとんど布の形にした合金だから耐久性もピカイチ。
「さっきの傑物学園の人、大丈夫だった?」
「あー、真堂さん?あの人なら重傷だけど手当てすれば問題ないよ。ちゃんと相方の人に渡してきたし。」
「よかった……そうだ、建物にいた人たちは?」
「怪我はなかったと思う。ただビルがだいぶ傷んでるから暮らすのは危ないだろうね。」
「避難、してくれるといいんだけど……」
「だね。」
間違いなく避難してくれなかったのはヒーロー不信から来てる。でも、傑物の人たちがあれだけ頑張ってマスキュラーを抑えてたのも見てるだろうし、ちょっとは良くなってると思いたい。
……あ、大事なこと聞いてないや。
「マスキュラーさ、なんか情報喋った?」
「全然、接触もタルタロスの1回きりっぽい。」
「そっかぁ。私も見てみたけど、嫌な感じはしないから完全にスカだね。」
「しょうがないよ。それよりマスキュラーを警察に渡さないと。」
「なら私が行ってくる。その間、君は休んでて。」
「え、でも……」
「休んでて。」
「……はい」
こういう正論言われて縮こまってるところ、オールマイトそっくりだ。
緑谷くんが適当な場所に座って、休み始めたのを確認してから私も動き出す。マスキュラーを水の玉に乗せて、それを動かすことでずりずり引っ張っていく。筋肉ダルマでクソ重いからね、生身じゃとてもやってられない。
それにしても、だ。
彼、本当に何日もずっと動き回ってる。無理にでも休憩取らせないと身がもたない。私が凄んで大人しくさせるやり取りはもう何回かしたけど、そろそろ慣れて振り切られそうだし。
そうなってもしがみついてやるつもりではいる。ただ、覚悟決めちゃった人のそれに追いすがるのは難しい。そのためにA組に予め呼びかけてあるわけですが。
「はぁ、どうしようか……」
「──何者だ!」
「うわわっ!?」
銃口を向けられ、大声で問い質される。悶々と思考していたら、いつの間にか警察の臨時収容施設に着いていた。
巨漢を謎の玉に乗せた布andゴーグルで素顔隠してる奴が来たらそりゃ怖い。加えて正体誤魔化すために水蒸気を炊きまくってる。怪しさ役満だった。
ここは両手を上げて、敵意のないこと示しまして……
「私、怪しい者じゃないです。あ、いや怪しいっちゃ怪しいんですけど……」
「何者かと聞いている!答えろ!」
ひぃぃ!?不意の発砲だけはやめてください。転身は即時発動できないんです!
もうこうなったら用件伝えてトンズラするぜ!
「あの!これマスキュラーです、ダツゴクの!」
「マスキュラー!?」
「はい!!気絶させてるんで、その間にメイデンで拘束しといてください!では!!!」
「あ、待ちなさい!」
待ちません!
水蒸気爆発で上空へとカッ飛ぶ。あばよ〜とっつぁん!
……とっつぁん?
なんか変な電波受信した気がする。
※ ※ ※
また時間が経って、雨降りの夜。
晩御飯をつつきながら、じっと考える。
今日は少し疲れた。何せ、避難しようとしていた人と自警団のいざこざの仲裁してきたんだから。
ヒーローの信用が底値を割ってからというもの、みんなの心は荒みに荒んでる。ひと握りの信じられる人たちで徒党を組んで、何とか安心しようと必死だ。そういう人を何人か見かけたけど、誰もが恐怖と疑心を目に浮かべている。
死柄木の起こした災害規模の混乱で、最後の頼れる存在だったヒーローたちに裏切られたんだから仕方ない。
仕方ない、けど……さっき見たようなのは、やっぱりキツイ。
自警団が打ちのめしていたのは、ただ避難所に向かおうとしていた普通の女性だった。ただ普通の異形型の個性を持っているだけの、悪人でも犯罪者なんかでもない一般人。けど、今の状況はそんな人が特に敵視されやすい。
元々、異形型個性は怖がられがちではあった。怖い見た目な上に、ヴィランになる人が少なからずいる。これは色々な背景と問題があるからおいそれと言えないところだけども。……とにかく、異形型個性=悪人という図式は程度の差はあれ、持たれている。
それが社会不安と合わさって大爆発してる。怖そうだから、気味が悪いからと誰かが誰かを傷つけているのを見るのは悲しい。傷けられることも、傷つけていることも。
みんな、安心して過ごせるならそんな人間じゃないはずなのに。
「ヒーローって、辛いなぁ……」
蛇腔市戦後の辞職ラッシュが終わったあとも、ぽつりぽつりと辞めていく人が後を絶たないのも何となくわかる。
頑張っても頑張っても状況は良くならない。当たり前のように傷つけあって奪い合う世界になってしまった。その上、場合によっては守ろうとしている人達からさえ石を投げられる。
きっと、耐えられなかったんだ。
──君も辞めたいの?
「ん、……」
シノさんが起きてきた。
辞めないですよ。これが私のやりたいことです、目指しているところです。逆境が辛くて嫌になってたんじゃ、何のためにヒーローをやってるのか分からないじゃないですか。
──うん、それでこそヒーローたると私は思うよ。
シノさんヒーローだった?
初耳である。個性の扱いにも慣れてたから無い話でもないけど。
──さぁ?覚えてないや。
ないんかい……
──こんな苦しいときでも、君の心は暖かく燃えていて澱みがない。そういうところに惹かれる人は多いんじゃないかな?
そうですか?多少メンタル強くなったかもですけど、普通にしてるだけですよ。
──そういうことじゃないんだけどなぁ。ま、打算ありきで動かないのはらしくはあるよね。
はて?なんの事やら。
「……ごちそうさまでした。」
カレーは大変美味でございました。