半分少女のヒーローアカデミア   作:Akafuku2000

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年末最後に3話連日で出します。

ヒロアカ終わちまったけどまだmoreがあるぜ!


半分少女とそこに正座

半分少女のヒーローアカデミア

 

「やっぱりダメだったか〜」

 

空中で腕を組み、残念だなぁと思いながら落下していく。結局、緑谷くんに振り切られてしまった。ワン・フォー・オールの完遂とそれに周りを巻き込まない覚悟は生半可ではない。ただ、その覚悟があまりに悲愴であったから止めたかったんだけどな。

 

だって、彼は成し遂げたあとの景色に自分がいることを考えてない。みんなが笑っていられるようにと言う癖に、その中で自分は笑っていられるのかを勘定から外している。

 

それを何とかして止めさせたくて着いてきたけど、私だけじゃ足りなかった。まぁ、そのことを考慮して予めA組に声を掛けておいたんだけども……

 

みんな、緑谷くんが無茶してるってのは気づいてるだろうし、今頃は温まりきってホカホカでしょう。

 

「よっと!」

 

くるりと上下を入れ替え、着地する。

 

「オールマイト、雄英帰りますよ。ほら、立ってください。」

「……すまない、すまない!私が着いていながら、彼を…行かせてしまったッ……!」

「おぉう。大人のガチ泣きは困ります。」

 

蹲ってるなとは思ってたけど、まさか泣いてるとは。いや、大人が本気で泣いてるのはエンデヴァーで見たか。

 

……それはそれとして。

 

この状況はオールマイトにとって辛いだろうなと思う。

 

2人の師弟関係はとても堅い。ワン・フォー・オール継承者というのもあるけど、心の繋がりが強いと思っている。なにせ、オールマイトは緑谷くんの憧れだ。そしてオールマイトも彼の師匠たらんと心身を尽くしている。

 

だからこそ、弟子に大役を背負わせてしまったこと、擦り切れているのに止められなかったことを悔いている。加えて、オールマイト自身が平和の象徴となるため、今の緑谷くんのように多くを置き去りにしてきた。自分はそうやって英雄になったのに、弟子にはそうして欲しくないという矛盾が無力さを掻き立てているんだろう。

 

 

 

 

とりあえず、このままだとオールマイトが泥だらけで風邪引くので立たせまして。

 

「泣いてる場合じゃないですよ。早く雄英に戻らないと。」

「何故だい?今、雄英に戻ったところで……それより緑谷少年を追跡しなくては!」

「無理ですって。私もオールマイトも、この作戦に参加してるヒーローだけじゃ彼は絶対捕まりません。そう、私たちだけじゃ逆立ちしたって無理なんです。なので雄英に戻ります。」

「それは、どういう……」

 

ポカンとしている。

 

うーん、やはり似た者師弟ですね。他人に頼るのがおっそろしく下手だよ。オールマイトの場合、なまじ今まで出来てしまったから重症だ。

 

でも、そのツケは必ず払う羽目になる。人間ひとりでできることなんて限りがあるから。

 

これは紛れもない実体験だから断言できる。私だけじゃ、こんなところまで来られなかった。みんなに救けられて生きている。

 

独りだったら──とうの昔にあの研究施設の硬い床で冷たくなっていた。

 

 

「救けを求めに行くんですよ。ヒーローだってヒーローに困っていると言って良いんです。」

 

 

どんな役目を負った人であっても、どんな歴史的な英雄であっても、辛いときは辛いんだと、表に出していいんだ。

 

 

 

──君は呑気だねぇ。鈍すぎるとお姉さんは思います。

 

何がですか?私、至って真面目にやってますけど。

 

ダツゴク狩りに精を出し、今これから緑谷くんを連れ戻そうとしているのに。失礼しちゃう。

 

──凄いよ、A組は。このおバカさに付き合ってられるんだもん。

 

はい???

 

──まぁ、あとのお楽しみということにしとこう。帰れば分かるから。

 

さいですか。

 

あとのお楽しみ……ちんぷんかんぷんだ。

 

 

……ん?今、私バカって言われたか?

 

 

※ ※ ※

 

 

「到着〜〜!!」

 

正門前に降り立ち、一息つく。

 

結局、雄英に戻ってくるまで数日かかってしまった。オールマイトと帰ろうとしたけど、道はガッタガタで思うように車を進められないわ、ネームドではないにしろダツゴクに次々出会うわで、時間をかけざるを得なかった。作戦のために広範囲かつ比較的離れたところを行動していたので、意外と遠かったのもある。

 

そのためオールマイトとは分かれる形になってしまった。一応、私も新しい端末を借りて連絡は取っていたけれど、緑谷くんの目撃情報は入りこそすれ誰も捕捉できていない様子だった。わかっているのは、各地でヴィランと見紛う程の真っ黒な少年がダツゴクを捕まえて回っているとだけ。

 

今のところ、途中でぶっ倒れるなんてことにはなってないのは幸い。まだ彼を救けるために動く時間は残されてる。

 

「とりあえず校長のとこかな?」

 

門を潜って校長室へと走る。避難所となった雄英には普段見かけない一般人の方たちがちらほらいた。いつもとは様変わりした校内の雰囲気に少し陰鬱さを感じる。

 

逆に校舎内の人影は少なく、すれ違うことはなかった。こちらは人の少なさに寂しさを覚える。授業は停止、生徒のみんなも寮待機なんだろう。早いとこ、騒がしい雄英に戻したいものだ。

 

階段を一息に駆け上がって廊下に出ると、明かりの漏れる部屋が一つ。嬉しいことに校長先生は在室らしい。急に来たから用で外してるかもとヒヤヒヤしてたから。

 

扉に飛びつき、その勢いで開け放つ。

 

「校長先生!突然のとこ失礼します!あの、作戦中の緑谷くんが、です……ね?」

 

飛び込んできた光景に言葉が尻すぼみになる。中には人、人、人、A組のみんなだった。

 

集団の僅かな隙間の先に座す校長先生が顔を見せる。

 

「やぁ、加山くん、首を長くして待ってたのさ。でもちょっとだけ想定が甘かったようだね。」

「あれ、あれぇ?」

 

何が一体どうなってるの???なんでエンデヴァーまでいるの???彼は作戦の真っ最中のはずでは……

 

「私もこうなることを見越していてね、先んじて彼を呼んでおいた。君の周りを慮った行動、緑谷くんを案じて真っ先に動いた心意気、どれも間違いじゃない。」

「あ、はい……」

「けれど、緑谷くんと同様にみんなを過保護に考えすぎた。我々、大人も緑谷くんへおんぶにだっこではない。そこに居るA組もそう。彼らは自分で考えて、やるべき事を見出しここに来たのさ。」

「……ひゃい。」

「と、さらに続けたいところだが、私の出る幕は別。彼らの方がずっと発言権がある。」

 

ごくりと喉を鳴らす。

 

根津校長のつぶらな瞳が怪しく光る。

 

「さぁ、思う存分言ってあげなさい。」

「あ、あははは……」

 

思わず後退り──それが開戦の合図だった。

 

『加山ァァァァッ!!!!!』

「うわあああああ!??」

 

行動を起こす間もなく中へ引き入れられ、ど真ん中に置かれる。

 

私を囲むみんなの顔、まさに般若だ。鬼の形相とはこういうものを言うんだろうね。

 

「加山くん、座りたまえ。」

「え?」

「座りたまえ。」

「……ッス。」

 

飯田くんの有無を言わさぬ物言いに素直に従う。普段より5割増で眼鏡が光ってるので表情が読めない。ブチギレであらせられることしか分からない。

 

一旦、場の空気に合わせて正座にする。

 

「君は……全く君というやつはッ!なぜこうも危ない真似をするんだ!どうして何も相談してくれない!」

「え、あの一応お手紙を……まさか読まれてない?」

「とっくに全員読んでいる!」

「で、でもそれだったら──」

「あれでなるほどそうかと納得できるわけないだろう!!!」

「ひゃい……」

 

小さくなりすぎて塵になりそう。

 

私が一回り萎んだ気でいると、飯田くんはまぁまぁと宥められ、代わりに瀬呂くんがやってくる。合わせてくれた彼の目線はどこか刺さるものがあった。

 

「委員長もさ、本気で怒ってるわけじゃねぇのよ。わかるっしょ?」

「それはまぁ、うん。」

「加山が黙ってたこと合わせて読んだ。1年くらいの付き合いじゃ言いづらいよな。それでも1年だ、相談してくれなかったことは悲しい。」

「………」

「ヒーロー候補生だからな、そうされると俺らってそんなに頼りないか?って思うわけ。」

「うぅ、けどあの時はすぐに動かないとって思ってて、時間的に打てる手があまりなくてぇ……」

「そこだよなぁ、怒りにくいとこは。加山のそれって自分引っ括めて全取りするってことじゃん?自分を掛け金に入れて、全員の勝ちを取りに行く。その博打に全っ然負けるつもりねぇの。」

 

指摘されると確かにと思ってしまう。

 

生き残ることを最低条件にして、ならどこまで自分を手札として使うかっていうのは、私の戦闘思考だ。いつもいつも土壇場で命は賭けるけど、きっちり回収するつもりでやってる。

 

「そういやUSJのときもそうだったよな。」

 

ひょっこりと顔を出した峰田くんが一言。

 

「…思えば、ヒーロー殺しとの戦いでも……」

 

まだプンスコしてる飯田くんもボソリと一言。

 

「林間合宿のあれもそういうことか。」

 

思い出したかのように轟くんも一言。

 

「緑谷ちゃんと一緒に治崎と戦ってたときも凄かったわね。」

 

梅雨ちゃんまで……

 

痛い痛い。胸が苦しくなってきた。要約すると、お前めっちゃ無茶するくせに全部勘定に入れて動いてるからタチ悪いぞと。みんなのジトーっとした目がもう。

 

いたたたた……心臓がキュッとなる。

 

「加山さん……」

 

八百万さんがいつの間にか傍らに座っていた。とても神妙な顔で。

 

「わたくし、加山さんを危険な目に遭わせるために、あの時知恵を絞ったのではありませんのよ。」

「……すみません。」

「それにこのコスチュームの傷と血痕、真新しいものですわね。どうされたのですか?」

「えーっと、これはレディ・ナガン……その、ライフルで撃たれまして。」

「撃たれた!?」

「大変じゃん!!」

「うわわっ!大丈夫、傷一つないから!三奈さんも葉隠さんも安心して!」

 

捕縛布で隠れてた部分を2人に確認され、慌てて制止する。この傷はストックで治されてるから跡すら残ってない。問題ないんです。

 

「個性の応用でこのくらいなら治せるようになったの。八百万さんのおかげでね。三奈さんも覚えてるでしょ?」

「そうだけどぉ……!」

「……わたくしとしては、そのお力を最初からA組の皆さんと使っていただきたかったのですけれど。」

「ぐっっふ!?」

 

言葉のストレートパンチ効くなぁ。顎抜かれたかと思った。ふんっとそっぽ向かれてしまう。八百万さんには期末のときから世話になりっぱなしなのに……

 

そろそろあれか、めり込む勢いで土下座した方がいいやつだろうか。石頭具合には自信があります。床材ともやれます自分。

 

「おーい、クソメッシュゥゥ……話は終わったか…?」

「……げ、この声は。」

 

私が残した手紙を投げてきた方向を見る。

 

……青筋だらけで凄いことになってる爆豪がいた。怒りにしろ興奮にしろ、テンション上がるとめっちゃ笑うんだよね、怖い。

 

「テメェ、良くもまぁこんなもん寄越せたな。俺には余計なオマケ付きでよ。」

「だからそれは時間がなかったからで……爆豪のは発破かけようかなって思っただけで……」

「ほぉ、なら俺を煽る意図は微塵もねぇ100パー善意だったってわけか。」

「…………ちょっとありました。」

「だってよ先生ェ!こいつ全然反省してねぇわ!」

「待って待って反省してる!めっちゃしてる……あれ、先生って言わなかった?」

「あー言ったな。」

「そっかぁ……」

 

あの、急用を思い出したので退室させていただきますn……

 

「──どうした加山?用があるんだろ、根津校長に。」

 

上げかけた腰を上から押さえつけられる。この感触、このゴツゴツした手、とっても覚えがあります。

 

「あ、相澤先生、へぶっ!……いっだだだだだッ!?」

「ずいぶん好き勝手やったな、ん?」

 

アイアンクロオオオ!ちょ、頭、頭潰れ……持ち上げないで!?全体重が首にかかってもげる〜〜〜!!!

 

すっげぇ!片手で頭掴んで持ち上げられてる!なんて握力と腕力、あででででで!

 

「俺は確かにお前が同行する意義を認めて、作戦に出ることを許可した。」

「ばいぃ…」

「そして話を持ってきたときに言ったな?このことはきっちりA組に話しとけって。それが退院して戻ってきて見ればこの騒ぎだ。……なんで直接話さなかった。」

「ゔ…しょれはそっちの方が手っ取り早いかにゃと……」

「そうか、なるほどな。──加山、お前日和っただろ?」

「ギクッ!?」

 

な、なぜにそれをッ!

 

話をするために雄英に帰ってきたはいいものの、直前でサブプランに持ってきていた手紙に切り替えたことをなぜ!?猛反対されたら嫌だなぁ、引き止められたら作戦置いてかれちゃうしなぁって思ったことをどうしてわかるんですかね。

 

「なんでって顔してるな。」

「よくわかりまふねぇ。」

「手に取るようにわかるぞ。」

「上手い!……アッッーーー!割れる〜〜〜!!!」

 

余計なこと言いました!力強めないでください。

 

ミシミシと鳴っていた頭蓋骨が段々ピキパキ言い始めた頃にやっと解放される。地面に降ろしてもらえたが、未だにアイアンクローは継続中です。

 

「……なぁ加山、仲間をもっと信じてやれ。腹の底から、みんななら大丈夫だって胸張れるくらいに。」

「………」

「お前が本気でやりたいことを止めるような野暮なヤツらじゃないってわかってるだろ。緑谷といい、周りを過保護に考えすぎだ。遠慮なく寄りかかれ、全員それだけの覚悟と準備はできてる。」

「はい…すみませんでした。」

「それはA組にな。」

 

ようやく手が離れ、目を開けてみる。

 

みんな真剣な顔で私を見ていた。それを見ていると自分の行動が如何に浅慮で卑怯だったか思い知る。今になって後悔がせり上がってきた。

 

「ごめんなさい!訳も話さず出て行って、心配かけてほんとーに!すみませんでした!」

 

「でも緑谷くんを救けたいのは本当だから!一緒に頑張らせてください!お願いします!!!」

 

…………

 

どう、、かな?

 

「頭を上げてくれ。言われずとも、加山くんはA組の一員だ。緑谷くんを連れ戻すときにはもちろん尽力してもらうさ。」

「飯田くん…!」

「本当は言いたいことが山ほどあるんだがな。君がいち早く動いて頑張ってくれていたのも事実、ここまでにしておこう。みんなもそれでいいだろうか?」

 

飯田くんかみんなに呼びかける。

 

「……俺はいいよ。加山がクソ度胸で変にビビりなのはわかってるから。」

「轟くんにはその節もあの節もすみませんでした……」

「あぁ、二度とすんなよ。」

「……はい。」

 

轟くんが飯田くんの言葉に応え、場の空気が弛緩する。

 

少しして相澤先生がパンパンと手を叩く。

 

「じゃあこれで話は終わりだ。ほれ、加山。」

「なんですかこの紙束……原稿用紙?」

「それ、お前の反省文な。」

「えっ!」

「丸く収まって終わりじゃ再犯の可能性があるだろ。A組、緑谷以外の全員に一人一人謝罪文を書いて提出するように。あとこれも。」

 

ぽんと渡されたのはロープ付きの板……なにこれ?

 

『連名 A組一同』とある。

 

「表見てみな。」

「はぁ、表を……」

 

くるり。

 

──加山水穂は相談もなく飛び出して行き、みんなを心配させました──

 

「それ吊るしながら書くように。」

「相澤先生?」

「では我々も失礼します!早速、作戦を練らなければ!」

「委員長?」

 

言うが早いか、校長室からみんな居なくなってしまう。エンデヴァーもしれっと帰ってった。1人取り残され、校長と2人きり。

 

え……

 

「心配ないよ、鉛筆くらい貸してあげるのさ。」

「校長先生?」

「大丈夫、こういう失敗と反省を繰り返して人は大人になるんだよ。私は少し席を外すけど、机は好きに使っていいからね。」

「校長先生ッ!?」

 

行っちゃった……

 

めっちゃあっさり置き去りにされたけど?

 

「反省させるにはちょっと物理的すぎる。」

 

はぁ、ゴネても原稿用紙は減らない。書きますか……

 

あれ?でも用紙が滲んでよく見えないな。

 

「ぐすっ……」

 

──君の鈍さっぷり分かった?みんなカンカンだったでしょ。

 

シノさんの言う通りでございました。空気の読めない鈍感女は私です。

 

──これに懲りたら、正直に話すようにしなさいね。……でないとクラスメイトどころかあの子に嫌われちゃうかもよ?

 

「それは嫌ッ!」

 

あ!笑ってますか!?笑ってますよね!!!

 

ちょっとぉ!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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