半分少女のヒーローアカデミア   作:Akafuku2000

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予約投稿忘れてたぁ!

2026/04/19 前話に同じ話を間違って投稿してたので消しました


半分少女と未成年の主張

半分少女のヒーローアカデミア

 

単独行動を取っていた緑谷くんを辛くも引き止め、私たちA組は帰路についた。

 

10数分程度の攻防だったけど、消耗がなかったとは言い難い。雨も体力削る。私だってストックがもう空っぽだしね。

 

というわけで、みんな割と疲れているわけなんですが……

 

『我々の安全を優先しろーー!その少年を雄英に入れるなーー!』

『噂されてる死柄木が狙った少年ってそいつだろ!』

『校長から説明があったじゃないか!我々の安全は保障されるって!』

 

「ヘイヘイ!落ち着いて!!」

 

この騒ぎだよ。

 

色々と抱えてしまっている緑谷くんが帰ってくるとなったら、そりゃみんな大慌てだろう。なにせ、ワン・フォー・オール周りの話はかなり広まってしまっている。それも中途半端に、憶測が憶測を呼ぶ形で。

 

マイク先生が宥めてるが、まるで収まらない。説得する相手がこんな状態じゃ、校長先生だって上手く話せない。

 

『安全だと言われたから避難したのに!』

『なんで爆弾を入れるんだ!』

『雄英じゃなくてもいいだろ!匿うなら他でやれ!!』

 

避難民が空気で分かるくらいピリピリしてるのは、先に帰った時に感じてたけどここまでとは思わなかった。プロヒーローの引退者が続出するのも分かる気がする。

 

守ろうとする相手に石を投げられる理不尽、辛くて当然だ。なんのために戦っているのか見失ってしまう。

 

向こうの感情だって理解出来る。突然、訳の分からないまま日常を奪われ、頼っていたヒーローは逃げてしまうし、隠し事まみれ。不安と猜疑心で頭がいっぱいなんだ。

 

──避難とは、生活を根こそぎ捨てさせること。

 

簡単にできないし、簡単に断ち切れない。ここに来てくれた人たちは、僅かに残った信頼を元に、既に多くを捨てている。

 

『ワン・フォー・オールってのは脳無なんだろッ!!』

 

ぐふっ!な、流れ弾が。

 

……言うとしたら、脳無なのは緑谷くんじゃなくて、私なんですけどね。世間的に注目されてないので、特に探られたりはしてないから、みんなは知る由もない。死柄木がこっちに興味なくて良かった点ではある、うん。

 

と、とにかく、分かると言ってもヒーローとしてならだ。

 

ヒーローの前に、私たちは緑谷くんの友達だから、そこは肩を持たせて欲しい。彼を雄英に帰し、休ませ、そして共に最後まで戦う。そのために、ここを譲るわけにはいかない。

 

何としても行かせてもらう。無論、言葉を持ってね。

 

「うーん、しかしどうしようか。」

 

口喧嘩ならともかく、私は大勢を前にして弁舌が立つ方じゃないし……

 

相手側からしたら誰だお前だし、身内贔屓に見えるもんなぁ。こうガツンと、言葉を届ける方法はないかな。

 

……む、ジーニストが話してみるっぽい。

 

「校長から説明があったように、ここは今、最も安全な場所であり、あなた方の命を第一に考えている。我々は先手を打つべく、緑谷出久を囮にヴィランの居場所を突き止める作戦を取った。」

 

「だが、十分な捜査網を敷けずに、得られた成果は極わずかだった。緑谷出久はヴィランの狙いであると同時に、こちらの最高戦力の一角。これ以上の摩耗は致命的な損失になる。」

 

私がねぇ、もっと役に立てたら良かったんですけどね。思ったより感知も役立たずで……

 

ナガンにぶち抜かれた時は、自分の無能っぷりに顔から火が出そうだった。

 

「確かに最善ではなく、次善に他ならない。不安因子を快く思わないことは承知の上で、この最も安全な場所で彼を休ませて欲しい。何時でも戦えるように、彼には万全でいてもらわねばならないのです!」

 

ジーニストらしい演説?だった。

 

私がこんな感じで理路整然と、君は何をやっているのかねとか言われたら五体投地でその通りですと、従うよね。

 

……私だったら、だけど。

 

『な、何言ってんだよ。あんたらが失敗したから、日本は無法になっちまったんだぞ。んで、また失敗したから皺寄せ受け入れろって、アンタそう言ってんだぞ!──ふざけるなッ!!!!』

 

一人の避難民から出た反論、そこから再燃した不満の爆発はさっきの比じゃなかった。

 

次々と紡がれる、罵倒、罵倒、罵倒……

 

ジーニストが言葉足らずだったわけじゃない、避難民の頭が固いわけじゃない。双方に主張があって、考えがある。それが悲しい程に噛み合っていないだけ。誰も悪くはない。

 

──ただ、今の緑谷くんには刺激が強すぎる。

 

「水穂さん──」

「大丈夫だよ。」

 

お茶子さんは振り向かない。一言、私に声を掛けてくれただけ。

 

もう緑谷くんの耳は私の個性で覆ってますとも。ほーら、暴れない暴れない。冷たくないようにね、お湯にしてあげてるから。水が入っちゃったらごめんだけど。

 

「……ありがとう。ちょっとの間、デクくんをお願い。」

「いいけど……お茶子さん?」

 

また振り返らない。彼女が一歩踏み出したのを、後ろでぽかんと見つめてた。

 

けれど、マイク先生の拡声器を掴み、個性で無重力へと跳ねる様子を見てようやく何をしようとしているのかわかる。

 

ヒーローが困っている時、救けるのは誰か。それを問うていたのは、きっと彼女もだった。

 

──そういう事ね、お茶子さん!

 

 

校舎の屋上に降り立った姿を見て、緑谷くんの耳栓も外す。

 

 

『……緑谷出久は、特別な力を持っています。』

 

『だから!そんな奴が休みたいからってここに来るなよって話だろうが!』

 

厳しい声が飛ぶ。

 

『違う!迷惑かけないよう、ここを出て行ったんです!連れ戻したのは私たちです!』

 

その通り、彼が帰ってきたんじゃない。私たちが危険を承知で連れ帰ってきた。

 

ここの避難民、そのほとんどは緑谷出久という人間の背景を知らない。急に現れた超人のように見えているのかもしれない。でも、それが違うことを私たちはよく知っている。

 

だから、伝えなくちゃいけない。彼の背景を。お茶子さんがやろうとしているのはそういうことだ。

 

『彼の力は、あの…特別で!オール・フォー・ワンに打ち勝つための力です!だから狙われる、だから行かなきゃいけない!そうやって出て行った彼が、今どんな姿か見えていますか!!』

 

お茶子さんに向いていた視線が、こちらに戻ってくる。

 

けれど同じじゃなかった。彼女の言葉は、彼らの見る目を変えていた。

 

『この現状を一番どうにかしたいと願って!いつ襲われるかも分からない道を進む人間の姿を!見てくれませんか!』

 

『特別な力はあっても!!特別な人なんていません……ッ!!!』

 

あそこに立っているのがお茶子さんでよかったと、心の底から思う。彼にとって雄英で出会った、最初の人であってくれてよかったと。

 

ワン・フォー・オールは特別だ──

 

でも、それを持つ緑谷くんは特別じゃない──

 

彼女は、そのことをとても理解してくれているから。

 

「コイツらの命を守るシステムがある。だが、不安は残っちまう。……テメェが拭えねぇもんはこっちで拭う!」

「校長先生の作ったシステムすごいんだよ?だから、聞いてあげて。お茶子さんの言葉を。」

 

茨の道を行くと言うなら、どこまでだろうと一緒に歩いて行くのが友達ってもんでしょ。

 

……そのうち、片方は誰かに譲る気がしてるけど。

 

なんてね。

 

 

『私を…救けてくれた子だ。……戦ってたんだ。私を救けてくれたあとも、ずっと!戦ってたんだ!』

 

集団の中から罵倒以外の声が初めて聞こえた。

 

そうです。戦ってたんですよ、彼は……って。

 

今の人、いつぞや自警団に狙われてたところを救けた人だ。雄英に無事着けてたみたいで良かった。

 

『……見たら、なんだよ。まさか、あんなふうにボロボロになれって?俺たちまで泥に塗れろってか!?』

『泥に塗れるのはヒーローだけです!!泥を払う!暇をくださいッ!』

 

 

「緑谷くん、麗日くんは今、戦っている。君を含めた、全ての人の笑顔のために。」

「……………麗日さんッ」

 

泣き虫のくせに、やっと泣いた。人のこと言えないけどさ。

 

辛い時に、辛いと言えないことが一番苦しいんだから。

 

 

『今!この場で安心させることは、ごめんなさい!できません!私たちも不安だからです!私たちも皆さんと同じ隣人なんです!』

 

『だから力を貸してください!共に明日を笑えるように!……皆さんの力で!どうか!彼が隣で!!休んで、備えることを許してくれませんか!!』

 

『緑谷出久は!力の責任を全うしようとしてるだけの!まだ学ぶことがたくさんある!!普通の高校生なんですッッ!!!』

 

『ここを!彼の──』

 

 

『ヒーローアカデミアでいさせてください!!!』

 

 

今のお茶子さん、超かっこいいよ。

 

 

※ ※ ※

 

お茶子さんが叫んだ必死の主張、その残響が消える頃には、一帯はしんとしていた。

 

怒鳴り声も、罵り声も、何もない。ここにいる人の息遣いと、雨音だけがある。

 

彼女の言葉のあと、緑谷くんは崩れ落ちて動かない。普段なら駆け寄ってるところだけど、何となくそうしなかった。何となく少し下がった。

 

──何となく、一歩動くのはA組でなくて欲しかった。

 

だって、ほら……

 

 

「緑谷兄ちゃん!!」

 

 

きっと、彼に手を差し伸べてくれる人たちがいる。

 

洸汰くんは彼が命を賭して救けた。避難民の女性は彼が身を呈して救けた人の一人だ。

 

「ごめんね!僕…怖くて動けなかったんだよ!でも、あの姉ちゃんが頑張って話してて!僕、行かなきゃって!兄ちゃんみたいにならなきゃって!」

 

「だから……来たよ!!だからもう泣かないで、大丈夫だよ!」

 

洸汰くんの、緑谷くんに駆け寄って必死に思いの丈を語っている姿を見て、どこか満足感を覚える。凄く変わったなって。

 

あんなにヒーロー嫌いだった子が、ヒーローの緑谷くんを本気で案じてくれている。マスキュラーとの戦いで見せた勇姿が彼を変えたんだ。それを少しだけでも支えられたことが嬉しい。

 

「雄英の人だったんだね。」

「おねえ、さん…あのときの……」

「うん。……異形は入れられないって何ヶ所か避難所断られちゃってね。結局、雄英がいいってことになったの。でも君にまた出会えたからラッキーだ!」

 

「救けてくれてありがとう、泣き虫ヒーローさん。」

 

2人が緑谷くんを抱きしめる。

 

 

 

「………」

 

……私だけじゃ、この景色は見れなかったな。

 

猛反省しつつ、しみじみとする。そして、私が感慨に耽ってる間にも周りの空気は少しずつ変わっていった。

 

『ヒステリックに糾弾する前に、話ぐれぇ聞いてもいいんじゃねぇのか?あの兄ちゃんは、ここに常駐するってわけでもねぇんだろ。』

 

また一人、手を差し伸べてくれる人がいる。

 

『物資も人手も足んねぇ今、兄ちゃんがすり減ることなく休めるのが、ここしかねえってこったろ!……そういう説明だったよな、校長先生よ?』

「ええ……」

 

『士傑じゃダメなのかよ!ここと同等の設備なんだろ?』

『そしたら士傑で同じことが……』

『あっ……』

 

また一人、気づいてくれる人もいる。

 

『俺はよ、今まで気づかんかったよ。俺は客で、ヒーローは舞台上の役者だった。かつてオールマイトっつう不世出の男がヒーローを示したよ。みんなソイツをなぞった、囃し立てた。……そうしていくうちに、いつかみんなそこに込められた魂を忘れちまってたんだ。』

 

『だが舞台はとっ払われた。失敗を重ねて、金も名誉も望めねぇ、ヒーローと呼ばれた大勢の人間が投げ出した!そん中で今!戦ってる連中はなんのために戦ってるんだ?今、戦ってる連中まで排斥して行って、俺たちに何が残る!どうやってこれまで通り暮らす!?』

 

『辛えのは分かる。けど冷静になろうや!俺たち、いつまで客でいるつもりだ!』

 

最初に声を上げたおじさんに、みんな押し黙る。

 

すっごく良いこと言う人だ。この人も、自分なりに今がどうしてこうなったか、考え続けていたのかもしれない。

 

『ふ、複数の個性を操るボロきれのような男が目撃されている。ヴィランとも、真のヒーローとも言われてる……』

 

ん、今度はさっき筆頭で怒ってた人か。

 

『答えろよ。お前がここで休んだら、俺たち元の暮らしに戻るのかよ!』

「──取り戻します。みんなが一緒にいてくれるから。……全部、取り戻します!」

『……ッ!』

 

他でもない、この騒動の中心たる緑谷くんからの回答。それを聞いて、この人はどう返すのか。

 

受け入れ、彼も手を差し出してくれるのか。

 

詭弁だと、振り払われるのか。

 

答えは──

 

 

 

 

 

 

 

『……信じてみるよ、ヒーローのこと。………怒鳴って悪かったな。』

 

緑谷くんの前にあったのは、差し伸べられた手と、そこに握られた傘だった。

 

その瞬間、ドッと体の力が抜ける。長距離走したみたいにぐったりしてるし、何徹目?ってくらい頭が回らない。もう立てない……

 

ここまであっちこっち奔走してからしょうがないかな?緑谷くん程じゃなくても、ゆっくり出来なかったから。

 

「はぁ〜〜〜」

「近くで年寄りみてぇな声だすな。老けるわ。」

「疲れたの。それに華も恥じらう乙女になんてこと言いますか。」

「華ァ?……ハッ!」

「笑うない。」

 

いつもなら喧嘩上等なんだけど、そんな元気もない。

 

疲れたアピールしたい。

 

「ま、今回のMVPはお茶子さんだけどね。」

「だろうな。」

「あと爆豪ね。君じゃなかったらダメだった。」

「蒸し返すんじゃねぇ。それ言うならテメェが3番目か?」

「……お?」

「………」

「理由、聞きたいなぁ〜〜?」

 

ん?なんですか、爆豪くーん?

 

……ぐえ!?襟掴んで持ち上げないでよ。猫じゃあるまいし。

 

「八百万、この泥団子をさっさと風呂に入れろ。」

「分かりましたわ!」

「は?誰が泥団子おおおおお!?」

 

八百万さんを始め、女子組に掴まれて運ばれていく。

 

あの!こんな面前でこんな運び方は恥ずかしいんですけど!?

 

先生、相澤先生にも見られてるって!逃がさない?誰も逃げないって!ねぇ!!!!

 

……あ!お茶子さん!!

 

──サムズアップ!グッジョブだったよ!

 

 

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