お待たせしすぎてすまない……今日から3日間、0時に投稿します。
忘れてはないんです。筆が遅くなったのと、TRPGと、お絵描きが楽しすぎるのが悪いんです。
半分少女のヒーローアカデミア
オール・フォー・ワン、死柄木弔たちとの決戦、その前夜。私たちA組は仮設要塞トロイアへと移り、最後の休息を取っている。青山くんのことで色々とごたついたけど、来るべき時が来てしまったわけだ。
戦況は劣勢であることは変わりない。以前としてヒーロー側の戦力は不足してる上、向こうは準備万端だ。それでも今ある材料をかき集めて、最良の作戦は立てられた。
──肝は敵側の各個撃破。
2つの「オール・フォー・ワン」が揃った時点で詰みだ。オールマイトが2人いるようなもの、どうやっても勝てない。故に敵を合流不可能な距離まで散らす必要がある。そのため、奴らを何とか騙して集めたいが難しい。
そんなときに抜擢されたのが、青山くんと心操くん、そして物間であった。
オール・フォー・ワンに唯一連絡を取れる青山くんが偽情報を流す。けど、向こうは嘘発見器のような個性を持っていることを、彼の両親から伝えられている。いくら青山くんが完璧な演技をしたところでバレてしまう。そこで心操くんの出番だ。個性「洗脳」は個性伸ばしの結果、相手の発言を操るところまで来ている。この2人の力を合わせて、オール・フォー・ワンらを誘導する。
と言っても、呼び出したところにヒーローがぞろぞろと居れば奴らも気づく。加えて死柄木は個性「サーチ」を持ってるので潜伏もできない。物理的に距離を取っていなければいけないが、その問題を解決できるのが物間である。個性「コピー」、それをもって黒霧のワープゲートを使う。
こうすれば一転してオール・フォー・ワンたちをヒーローの包囲網に誘い出すことができる、という作戦だ。
かなり綱渡りの作戦ではある。青山くんと心操くんの誘導は勘付かれてはいけない。物間は、決行日までに黒霧の複雑な個性を使いこなさなければならない。針の穴に糸を通すような厳しいミッション、しかしこれを通さなければ負けは必至だ。
「けど……」
作戦地点に選ばれた市街の方を見る。成功率は五分もあればいいかもしれない。それでもこれは、
──誰か1人でも、たった一つでも欠けていたら、そもそも辿り着けなかった。
その繋がれた先に私たちは立っている。これを次に繋いで行くためなら、私は命だって賭けられる。
「……絶対に勝つ。」
勝って生き残って、救ける。
蛇腔のときから今日まで戦ってきて考えていたこと、ずっと救けたいと思ってる人、人たちがいる。見ていると悲しくて、お節介を焼きたくて仕方がない。それこそ、オール・フォー・ワンとの因縁に片をつけて、積年の恨みを!なんてことが吹き飛んでしまうくらいには。
だから、オール・フォー・ワンと死柄木の相手は、エンデヴァーと緑谷くんたちに任せる。明日は、ヒーローとして超絶お節介を焼きに行く。
「ここに居たのか……探したぞ。」
「轟くん?何かあった?」
後ろから声をかけられて振り向く。
普通に驚いて肩が少し跳ねたのは内緒。
「いや、加山の姿が見えねぇなって。」
「そ、そう?……ちょっと考え事してただけだよ。」
「ならいいんだ。」
なんか今の表情グッと来ちゃったんだけど何?
まさか、轟くんが探してくれてたことに嬉しくなってる?いくらなんでも恋愛脳すぎるだろ私。決戦前だよ、決戦前。ついさっき頑張ろって思ってたところじゃん。それに人に心配されて喜ぶとか悪い女すぎる。
煩悩退散、煩悩退散、煩悩たいさ……
「……やっぱりなんか悩んでんのか?」
「へ?なー、やんではないよ。全然悩んでない。」
「………」
少し突っ込んだ話題を振られてたじろいだ。
くっ、目線が鋭い!明らかに疑惑の目をしてる。こんな顔を向けられるのは、私の日頃の行いが悪いからだ!
…………素直に言うかぁ。下手に誤魔化して考え事を増やさせるのも良くない。
「悩んでないのはほんと。……ただ考えてたの、君のこと。」
「は…?」
「あぁ、正確に言うと轟くんを含めた君ん家のことね。」
ん?フリーズしてる?前にもあったよね。体調悪い?
おーい。……あ、帰ってきた。
「考えてたって………なぁ、正直、よく分かんねぇと思ってるんだ。なんで燈矢兄…荼毘の方に参加した?お前なら──」
「オール・フォー・ワンの方に行くって?」
「……そうだ。お前にとってアイツの方が余程因縁がある。元々、割り振られたとはいえ、素直に従う必要もないだろ。」
「うーん、確かにそう。けど、荼毘の炎熱に真っ向から相手できる人材がいるなら配置するでしょ。適材適所!」
「理屈なら、な。」
納得してないなぁ。そんなにダメ?確かに前は無様に負けたけどさぁ。
ていうか、話してて思ったけど轟くんって、
「まさか私が君ん家の問題に巻き込まれてる、なんて思ってないよね?」
「……ッ」
あ、図星なの!?えぇ〜〜?
全く……と少しため息をつく。
「私がやりたいからやるんだよ、ヒーローだから。」
そして彼の手を取る。
「轟くんの家族はさ、みんな生きてる。仲は悪いけど、そのままじゃダメだって思ってる。君もそうでしょ?」
「あ、あぁ……」
「そこに燈矢さんがいないの、私は凄く悲しいと思った。お互いに生きてるのに、話し合えるのに、彼は全部道連れにして終わろうとしてる。」
轟家の過去、燈矢さんの憎悪、エンデヴァーの後悔……
話し合えれば、はい解決とは思っていない。けれど、死んでしまったらそれすらできないんだ。許せなくてもいいから、お互いに考えていたことを、思っていたことを打ち明ける、して欲しかったことを、してあげたかったことを伝え合う。全員生きて、目を見てだ。
私はそういう選択肢を消したくない。
「轟くんも燈矢さんを止めたいのは同じだよね?」
「そうだ、だから俺がやらないと。」
「も〜、病院で話したこと忘れちゃってる。」
手を引き寄せ、グッと顔を近づける。
「独りにならないで。」
揺れていた瞳がこちらを見た。両親の特徴を濃く受け継ぐ、彼のオッドアイ、そこに私の顔が映る。
不意にとても綺麗だと思った。
「轟くんが戦うなら一緒に戦う、轟くんが止めたいと思うなら私も手伝う。……私は、君と君の家族が揃っている光景を見たい。」
目の前に困っている人たちがいる。その手を掴める人間でありたい。
目の前に苦しんでる人たちがいる。その手を引っ張れる人間でありたい。
──それが、私のオリジンだから。
「独りならないで、か……大事なことなのにすっかり忘れちまってた。」
「まぁ、私が言っても説得力薄いけど……」
「ふ、確かにな。」
曇っていた顔に微かな笑みが見える。そう、それが見たかった。できたら次はみんなでね。
「もう大丈夫?」
「問題ねぇよ。何やってんだろうな、逆にこっちが心配かけてる。」
「いいのいいの。当然のことをしただけだし。」
「ヒーローとしてか?」
「その通り!…………けど、最近はそれだけじゃないよ。」
「…?」
……あ〜、これを言ったら、ヤバい。
ステインあたりに聞かれたら粛清対象だ。変なテンションで色々捲し立てたからかな。自分でもおかしくなってるのがわかる。ぐぅ〜っと感情が膨れ上がって止められない。
でも、言っておきたかった。
「好きになっちゃった、轟くんのことが。いくらでも肩入れしたくなるくらいどうしようもなく。」
「な、加山、お前……」
「言っとくけど異性としてだから。」
「〜〜〜ッ」
近づいていた距離を離す。
顔が熱い。すっごく熱い。周りに月くらいしか明かりがなくて良かった。茹でタコよりもずっと赤くなってる顔を見られずに済む。
「「………」」
気まずい沈黙が落ちる。
タイミングがおかしいのはわかってる。それでも口をついて出てしまった、我慢が出来なかった。無意識のところで、今じゃないとダメだって思えて仕方なかった。
彼は怒るだろうか、呆れるだろうか。私に都合のいい返事が来るなんて高望みはしてない。だって私の自己満足でしかない、ただの気持ちの押し付けなんだから。
1分、2分、もしかしたらそれよりももっと続いた静寂は、轟くんによって破られる。
「……悪ぃ、今その言葉に返事は出来ねぇ。」
「そう、だよね。」
「だから、終わったあとだ。これが終わったら絶対に返す。」
今度は彼が距離を詰める番だった。
それで余計に恥ずかしくなって、つい茶化してしまう。
「なんかフラグっぽい。良くないフラグ。」
「わかってる。でも、先の約束を取り付けとかねぇと、加山はどっか行っちまいそうだ。」
「私をよくご存知で……」
「さっき言った光景、加山が見てくれなきゃ困る。」
「〜〜〜っっ!!!?」
そんなことを真剣に言われたら頷くしかないじゃん。
顔面偏差値が高すぎるんだよぉ……
この戦いの目標は勝って生き残って、救ける。
──加えて、絶対に死んでたまるか、だ。