二次創作のランキング乗ってた……読んでくださった人達に感謝を。
半分少女のヒーローアカデミア
ヒーロー基礎学を早退した後、私は保健室でリカバリーガールの軽い診察と午後いっぱいの休息を貰い、今は校舎の屋上に来ていた。春のまだ寒さの残る風は火照った体に心地よい、未だ冷めきらない整理のつかない感情を少しずつ鎮めてくれるような気がする。
「はぁ……いくら触れられたくないところに触られたからって、なんであんな、私……」
震える右手、あの時の熱が燻っている。
「加山!」
「と、轟くん!?なんでここに。」
気持ちよく晴れた青空と対照的にどこまで暗くなっていく私に声をかけたのは轟くんだった。
「まだ学校に居て良かった。保健室に居るって聞いたのに見つからねぇからもう帰っちまったのかと思った。」
「……何の用。」
何か言おうとして轟くんが口を噤む。
──あぁ、違う。本当は今すぐにでも謝りたいのに。
あちこちに貼り付けた絆創膏やガーゼ、あの下の傷は全部私がつけたものだ。勝手に苛立って怒りに我を忘れて、不必要に彼を痛めつけてしまった。
「……謝りに来たんだ。」
「何を?」
「ヒーロー基礎学んとき、お前の家の事を気にせず嫌な質問しちまった。あれ、人に聞かれたくねぇことだったんだろ?」
「……うん。」
轟くんはやっぱり良い人だ。ほとんど会話なんてしてないのに、あの時に自分の言動にどんな非があったのか考え直して、こうやってすぐに謝りに来てくれる。そんな彼のことだ、きっと彼なりに事情があったのかもしれない。
「本当に悪かった。加山を傷つけたくてあんなこと言ったんじゃねぇんだ。なんつーか、俺の家も複雑なんだ。お前の見た目と個性を見て、変な勘繰りして思わず……」
「そう、なんだ……」
「あぁ。だから……言い訳がましいかもしれねぇけど、俺ん家のこと聞いて欲しいんだ。」
「ううん。それはきっと轟くんにとって自分から口にするのは苦しいことなんでしょ?それでも話してくれるって言うならちゃんと聞くよ。」
そこから話されたのは、轟くんの父親、フレイムヒーロー エンデヴァーのスキャンダルとも言うべき過去。ナンバー1への屈折した感情、個性婚のために結ばれた両親、より強い個性を求めて生み出される子供たち、失敗作そして最高傑作。そしてそんな歪んだ成り立ちの家族が平穏であるはずもなく、家庭内不和の果ての悲劇。
「それで俺は母親に煮え湯を浴びせられた。この左目はそん時の跡だ。」
「そんな……じゃあ私、何回も轟くんに……」
「いや、怒らせた俺が悪い。……そんで、なんであの時お前に酷ぇこと言ったのか、その、気持ちの悪いことだと思うんだけどな。」
「う、うん。」
急に轟くんが歯切れ悪そうに言い淀む。家の事情を話していた時のようなピリつく雰囲気というより、なんだか気恥しいといった感じがする。
「姉さんに似てんだよ……」
そうか、轟くんのお姉さんに似てるんだ私……
……え?は?……え????
「えぇ?」
「それで、親父がまさかお母さん以外にって思っちまって。……悪ぃ、こんなこと女子に話すもんじゃなかった。」
「ほんと似てるの?」
「…………まぁかなり。写真見るか?」
「うん、見せて。」
正直、轟くんへの申し訳なさと彼の家のことを聞いていなかったら、かなり気持ち悪いことを言ってるというのは納得できる。同級生からいきなり「自分の姉に似てる」なんて言われたら誰に聞いてもドン引きしたと答える。
だけど実際に写真を見てみれば、なんとまぁ似ていること。私は青っぽい白に赤毛が混じっているという髪をしているが、轟くんのお姉さんも白い髪に赤毛が入った髪をしている。顔立ちこそ違うけれど、知らない人が並んで見れば姉妹と思いかねない。個性社会広しと言えども、ここまで外観が似通った他人もそう何人もいるわけがない。
この事実に轟くんの事情を繋ぎ合わせれば、確かに父親の隠し子なんじゃって勘繰ってしまうと思う。見知った髪色に、炎と水という珍しいハイブリッド個性だ、致し方ない。それがわかった途端、体の力が抜けてしまって床に座り込んでしまった。
「お、おい大丈夫か?」
「大丈夫だよ。ありがとう。」
差し伸べてくれた轟くんの手を取り、立ち上がる。そしてまっすぐ彼を見つめ、言う。
「轟くん、言いづらことを私に話してくれてありがとう。君がこうして来てくれたから、私は君にも事情があったことを知れたし、納得することができた。だからもう今日のことは気にしないよ。」
「そうか。改めて、悪かったな。」
「もういいんだって!……あとそれから、私のことも聞いて貰えるかな?」
「いいのか?」
「うん、轟くんが話してくれたなら、私の事情も君に伝えるのは筋だと思うし。」
「わかった、教えてくれ。」
それから轟くんは、私の長い長い話を一度も目を逸らさずに話を聞いてくれた。10年分の私の過去、他人に話すなんて初めてだ。正直話している間、動悸が止まらなかった。両親が居ないこと、敵に誘拐され実験道具にされたこと、個性のことそれに苦しんだこと。たくさん語った、上手く話せたか分からない。それでも話して、話して、話し終えて。
轟くんから一歩離れ、姿勢を正し、そして深く頭を下げる。
「私こそごめんなさい。轟くんが知る由もない私の事情に巻き込んだ。あまつさえ君のトラウマを抉るような卑怯な手を使っちゃった。それに最後、私は本気で轟くんを傷つけようとした。人として、ヒーローを目指す者として風上にも置けないことだと思う。本当にごめんなさい。」
「……なら今回はお互い様だったんだな。気にすんな、俺も加山のことも知らず好き勝手言い過ぎだ。」
「うん、ありがとう。」
その後、私と轟くんは握手をして別れた。もうさっきまで燻っていた気持ちはない。焼きつくような熱はなりを潜め、穏やかな体を芯から暖める熱に変わっていた。
この熱を忘れないようにしよう。今回はオールマイトが止めてくれた、轟くんが許してくれた、だから私は最後に間違えずに済んだ。私の中に巣食う私の物ではない炎、この炎に焼かれないように、誰かを傷つけないように向き合っていくんだ。
※ ※ ※
轟くんと別れ、私は帰るために教室に荷物を取りに戻ると、その前で女の子が3人並んでいるのが見えた。あれは麗日さんと……芦戸さん、蛙吹さんか。3人揃って窓際から何か見ている様子。
「麗日さーん!何見てるの?」
「あ、加山さん!ヒーロー基礎学、早退してたけど大丈夫だった?」
「大丈夫大丈夫、それで何見てたの?」
「あのね、緑谷ちゃんと爆豪ちゃんがあそこで話してたの。それを3人で見てたのよ。」
「男の因縁ってやつです!」
チラリと正門側を見れば、立ち尽くす緑谷くんとオールマイト、そして目元を拭いながら歩く爆豪がいる。人のこと言えないけど、あそこまで自分の視野が狭窄しきってたことを見せつけられたんだ、やっと自分を見つめ直せたってところかな。
爆豪もしっかり前に進んでる、緑谷くんだって……私も負けてられないな。
「そうみたいだね。ありがとう蛙吹さん。」
「梅雨ちゃんと呼んで。」
「う、うん。梅雨ちゃんね、よろしく。私のことは水穂って呼んでね。」
「あ!私もお茶子って呼んで欲しい!」
「ずるいずるい!私は三奈って呼んで!」
「お茶子さんと三奈さんね。2人ともよろしく。」
女3人よれば姦しいというが、話し始めたらあっという間に騒がしくなった。中学生のときはあまり親しい女の子もいなかったので、こうやって仲良くしてくれるのは凄く嬉しい。そのままの流れでなんやかんやと話していたら、教室の方から声がかかった。
「おーいお前ら反省会の続きやろうぜ……って加山もいるじゃねぇかお前も来いよ!」
「あらそうだったわね。3人とも行きましょ。」
「「おー!反省会だー!」」
「お、おー?」
やたらテンションの高い人達に巻き込まれ、帰るつもりだったのだが流れで反省会に参加することになった。教室にはさっき別れた轟くんと正門にいた緑谷くん、爆豪以外が勢揃いしていて、みんなから軽く自己紹介を受ける。声をかけてくれた人は切島鋭児郎というらしい。
「加山と轟の凄かったよなー!緑谷と爆豪のも凄かったけどよ、氷と炎の激突!熱かったぜ!」
「けど怖かったよな、終了間際の加山。」
「修羅……」
「しゅ、修羅……?まぁ、ちょっと言い合いというか喧嘩みたいになっちゃって。」
「マジー!?もしかして2人も因縁あるとか?」
「うーん、そうじゃないんだけど。でももう仲直りしたし、なんなら少し仲良くなれたと思うから気にしないでいいよ。」
「そうなのか?ならいいじゃねぇか。いやー俺達もよお前らのを見たら気合い入っちまったぜ。」
私と轟くんのバトルは結構みんなに鮮烈に写ったようで、あれが凄かったこれが凄かったと囲まれてしまった。自分としては大失敗もいいところだったからかなり恥ずかしい。そこからは更に盛り上がりに盛り上がって反省会というより、お互いを褒め合う感想会みたいになっていった。
途中で反省会とは?とも思ったけれど、小学校に行けず中学校でもあまり馴染めなかった私からすれば、その間に失ってしまった色々なものを埋められる気がしてとてもとても楽しいと思える瞬間でした。
水穂と轟くんの仲直り回でした。
上手く書けたか分かりませんが、轟くんの勘違いは水穂の容姿と冬美さんっぽく、個性を轟くんっぽく設定した時に考えてたところだったので書けて良かったです。