めちゃくちゃ筆が乗って楽しいです。
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半分少女のヒーローアカデミア
「おはようございまーす。」
「あら水穂ちゃん、おはよう。」
「おっはー梅雨ちゃん。」
朝、いつも通り登校すると既に教室にいた子達で何やら談笑している。いの一番に挨拶もしてくれた梅雨ちゃんに挨拶を返し、みんなにも挨拶しつつその会話に混ぜてもらう。
「なになに何の話してたの?」
「水穂ちゃん知らん?校門にマスコミの人いーっぱい居てね。」
「教師のオールマイトはどうですか?って質問攻めにあってたんだ、加山さん。」
「そうなんだ知らなかった。ありがとう、お茶子さん、緑谷くん。」
「あら、不思議ね。あんなにたくさん居たのに水穂ちゃん気づかなかったのかしら?」
あ、やば……ドジ踏んだ?絶対ってわけじゃないけど、私が雄英に住んでることとか諸々言うつもり無かったんだけどな。梅雨ちゃんたちの目がじーっと向けられる。
「もしかして加山さん、雄英に住んでる?」
「ぐ……」
「そーや!前に相澤先生に睡眠がどうとか言ってたよね!なんで?」
「う……」
「当たっちゃってたら申し訳ないのだけど、相澤先生と雄英に住んでるの?」
「ごふ……」
いつの間にやら教室にいた他の人達も集まってきて、なんだなんだと私を見ている。
梅雨ちゃん鋭い……ほぼというかまんま正解、ここまでバッチリ当てられたら下手に誤魔化す方が変な解釈をされかねない。
はぁ……
スっと両手を上げ、口を開く。
「こーさん。梅雨ちゃん、大正解だよ。」
「あら……」
「「「「えええーーーー!!!!!!」」」」
全員の謎に息の合った大合唱が教室に響き渡りました。
「おいおいマジかよ、そりゃ初耳だぜ。」
「ねーねーなんでー!教えてよー!」
「いやぁ……」
「緑谷と爆豪、同中だろ?なんか知らねぇのかよ。」
「知るか、んなクソメッシュのこと。」
「誰がクソメッシュか、金髪単細胞!」
「あぁん?」
おっと口が滑った。
にしてもこんな大騒ぎになるとは、話どころを失った感!
「そこまでにしとけよ。加山、困ってんじゃねぇか?」
「あ、ごめん水穂ちゃん。勝手に盛り上がっちゃって。」
「いいよ。轟くんもありがとう。」
「おう。」
あれからというもの轟くんと接する機会が少し増えた気がする。無表情が目立つけど、彼はあまり表情に出るタイプじゃないだけで冷たいわけじゃないみたい。……っとと話が逸れた、みんなにちゃんと話さないと。
「まず言いますと、私は雄英に住んでます。そして相澤先生もとい相澤さんは私の保護者をしてくれています。」
「そうだったのね。私、デリカシーのないこと聞いちゃったかしら?」
「大丈夫、気にしないで梅雨ちゃん。」
その後も続いて私に両親がいないこと、昔から面倒を見てくれていたのが相澤先生で今ではほとんど家族みたいなものであることなどを話した。もちろん誘拐とか個性のこととか伏せて。両親がいないことについては、みんな少し気まずそうな顔をしたけど、努めて明るく話せたから、さほど暗くならずに済んだ。
轟くんとのことがあったからこそ、自分の事情を詮索されても動揺しなかった。あの轟くんと話せて本当に良かったと思う。
「とまぁ、私の家庭事情はこんな感じ。今はもうこれが普通って思ってるからみんなもあまりに気にしないでくれると嬉しいな。」
「おう、任せとけ!」
「何を任されるんだよ……」
「おいおい、オイラ気づいちまったんだけどよぉ……」
「ん?」
話もそろそろ終わりというところで、ひょっこり顔を出したのは峰田くん。なんだろうか。
「相澤先生と一緒に暮らしてるってことはよぉ。入試の内容とか教えて貰って楽勝だったんじゃね!?」
「峰田くん!それは相澤先生と加山くんを侮辱する言葉だぞ!」
「……あぁ?」
なんだァてめェ?
…………落ち着こう。これは所謂行き過ぎた冗談ってやつだよね。峰田くんがこういう失言をするタイプだっていうのは、ここ数日でわかったことだし。
つまり峰田くんに私たちを悪くいうつもりはなかった。なら私も冷静に大人に対処しないと。
「峰田くん……水に沈められてぶどうジュースになるか、燃やされて焼きぶどうになるか、どっちがいい?」
「ひいいい!ごめん悪かったすみません。」
「分かればよろしい。」
優しく微笑みかければ、峰田くんはガチの涙目になりながら謝ってきたので許しました。彼、基本小心者みたい、変なところで胆力はあるんだけど……助平な方向で。まぁ慣れれば逆にそういうのが峰田くんの面白いところなのかも。
「水穂ちゃんって怒らせると怖いのね……」
「今のは峰田くんが悪かったからしょうがないよ……」
あれ?みんなさっきよりちょっと距離遠くない?
「何やってんだお前ら、さっさと席に着け。」
相澤先生のつめたーい声で、朝の大騒ぎは終結しました。
「さて、今日のHRは急で悪いが……」
ピシリと緊張が教室に走る。
まさか……テストやるとか言わないよね相澤さん。
「学級委員長を決めてもらう。」
(((学校っぽいの来た……)))
ホッと緊張が溶けたのもつかの間、各所から委員長に立候補する声が上がり、にわかに教室が騒がしくなる。男女問わず、やりたいやりたいの嵐で収拾がつかない。あ、女子のスカート膝上30センチとか言ったやつ誰だ?峰田くんだな、懲りないヤツめ。
私も興味あるし、どさくさに紛れて手を挙げちゃおっかな……
「みんな静粛にしたまえ!多を牽引する責任のある仕事だぞ、これは周囲の信頼あってこそ務まる聖務!民主主義に則り、多数決で決めるべき議案だろう!」
「「「腕、そびえ立ってるじゃねぇか!!!」」」
全員からの総ツッコミ……
多数決と言いながら自分もちゃっかり立候補して飯田くんを見て、私は椅子から転げ落ちそうになった。飯田くんのこと堅物だと思ってたけど割とお茶目なのかな。
それでなんやかんやと意見が出たが、「信頼が薄い今、複数票を取った人が相応しい!」との飯田くんの意見から多数決で委員長を選ぶことが決定。そしてその結果は……
「僕、4票!?」
緑谷くん4票、八百万さん2票で、緑谷くんが委員長になった。
「なんでデクに!?誰が!!」
「まぁお前に入れるよか分かるけどな。」
「んだとコラ、俺のどこが悪いんだよ!」
「そういう乱暴な言動全部だよ、かっちゃん。」
「かっちゃん言うなやクソメッシュ!そういうテメェこそ0票じゃねぇか!」
「そりゃあ私は私に投票しなかったし当然でしょ?」
「んな!まさかテメェ、デクに!」
「なんのことやら」
適当に口笛吹きながらそっぽを向く。爆豪は適度に弄って適度に放置するのだ。あとは勝手にドッカンドッカン爆発してくれる、ぷぷぷ。あーあー聞こえなーい。
「じゃあ、委員長は緑谷、副委員長は八百万だ。」
「マ、マジ……マジでか。」
「悔しいですわ。」
緑谷くん人前に立つの慣れてないからガチガチでかわいそう……今さら投票したの申し訳なくなってきたな……うーん、南無。でもみんな納得してそうだしいいでしょ、緑谷くんプルスウルトラ。
※ ※ ※
さてさて朝からハイカロリーなどんちゃん騒ぎをしていたらお腹も空くわけで、私は食堂に来ています。ちょうどタイミングもあった緑谷くんとお茶子さん、そして何だか面白いかもしれない飯田くんと!
「いざ、委員長をやるとなると務まるか不安だよ。」
カツ丼をつつきつつ緑谷くんがそんな弱音を吐く。緑谷くんは凄い人なんだけど、生来の性格と落ちこぼれな人生を辿ってきた故か自分に自信が無いのが玉に瑕なんだよね。
「務まる……!」
「緑谷くんはここぞという時の胆力や判断力がある。それは多を牽引するのには十分な素質だ。だから俺は君に投票したのだ。」
「君だったのか!」
「私もだよ、緑谷くん。緑谷くんはいざっていう時、絶対に逃げないし諦めない。そういうところを知ってるから私も投票したんだよ。」
「加山さんまで……」
飯田くん、そこまで緑谷くんのことを評価してたんだ……良かったね緑谷くん、良い友達できたじゃん。私も中学生からの友達として鼻が高いよ。
「ねぇ、前から思ってやんけど、飯田くんってお坊ちゃん?」
和やかな会話の中、お茶子さんがバッサリ行った。私も薄々思ってたけど……あ、やっぱり気にしてるっぽい。
「ぼ…!そう思われないよう一人称を変えていたんだが。」
「「「んんー?」」」
「はぁ……俺の家は代々ヒーロー一家なんだ。」
「「「おお!」」」
そこから飯田くんは色々語ってくれた。ヒーロー一家の次男であること、有名なターボヒーロー インゲニウムが兄であり憧れていること。
──飯田くんがヒーローを目指したのはお兄さんがきっかけなんだ。緑谷くんにとってのオールマイト、私にとってのイレイザーヘッドみたいな存在なんだね。
そんな風に楽しく会話していた中…………けたたましくサイレンが鳴った。
<セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ退避してください。>
近くに居た先輩曰く、学校に侵入者があったとのことだ。私たちも4人揃って避難するが、全校生徒が一気に動き出したために人波に飲まれてしまう。避難に素早く対応するのはいいが、みんな無秩序に動くのでかえってパニックを起こしている。
どうしよう……飯田くんと緑谷くんともはぐれちゃった。お茶子さんは何とか手を掴めたけど。さっき窓から見えたのはマスコミだった、きっと朝に話していた人達がどうにかして校門を突破してきたに違いない。侵入者に危険は無い、これを早くみんなに伝えないと。
「麗日くん!俺を浮かせろ!!!」
大混乱の中、飯田くんがお茶子さんへ呼びかける声が聞こえる。飯田くんもマスコミのことに気づいたんだ。お茶子さんも意図に気づいたようで飯田くんへ必死に手を伸ばす。
「あかん、あとちょっと届かへん!」
「もう少しだ!麗日くん!」
だけど人の壁に阻まれて届かない。私にできること……お茶子さんを向こうに押し返すのは無理、どうやっても押し負ける。私の個性なら一気に飛べるけど、こんな至近距離じゃ怪我させちゃう。
……そうだ!
「お茶子さん、ちょっと失礼!」
「ちょ、くくくすぐったい!」
お茶子さんの両足を太ももから抱き上げて上に逃がす、これなら。
「助かったぞ加山くん!」
お茶子さんの手が飯田くんに届いた!
「エンジンブースト!!!うおおあおおおおお!」
飯田くんと飯田くんのエンジンが唸りを上げてカッ飛んでいく。何とか上手くいった……あ、激突した。おや、あのポーズ……
『皆さん大丈夫!ただのマスコミです!パニックになることはありません!雄英生に相応しい行動を取りましょう!』
ナイス!非常口!!!!!
※ ※ ※
マスコミの侵入騒動も治まり、残っていた他の委員決めが行われる。相変わらず緑谷くんはガチガチだけど頑張れ……って思っていたら。
「あの!やっぱり委員長には飯田くんが相応しいと思います!」
と、緑谷くんが言い出した。曰く、避難時のパニックを治めたのを見て、自分には出来なかったやり方で対処してみせた飯田くんこそ相応しいとのこと。
みんなの反応も好感触で、特に飯田くんの活躍を見ていた人からの押しが強かった。あと非常口が受けてた。
「委員長からの指名ならば仕方ない。以後、この飯田天哉!全力で委員長の責務を果たします!」
「いいぞ!非常口!」
「任せたぞ非常口飯田!」
また群雄割拠に戻ったらどうしようかと思ったけど、これなら本当に大丈夫そう。投票した緑谷くんが降りちゃったのは残念だけど、私も飯田くんなら任せられる。
そんな歓迎ムードの中、ボソッと。
「私の立場は……」
あ、この決め方じゃあ副委員長の八百万さん、立つ瀬なしじゃん!!!
せっかくなので非常口シーンに水穂の役目をねじ込みました。
非常口飯田、私の好きな言葉です。