半分少女のヒーローアカデミア   作:Akafuku2000

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ちょっと間隔空きました。長いです、1万字超えです。

UA1万6000件、お気に入り400件を超えました。たくさんの方に見ていただけて嬉しいです。これからも頑張って書いていきます。


半分少女とUSJ

半分少女のヒーローアカデミア

 

「今日のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイトに加えてもう1人の3人態勢で見ることになった。」

 

教室に入ってきた相澤先生は粛々とこれからの授業について説明を始める。

 

マスコミの侵入騒動でドタバタした次の日、午後のヒーロー基礎学の時間になった。どうやら今日は先生が3人も付くらしい、結構大掛かりな内容なのかな。

 

「はい!今日は何するんですか?」

「今日の基礎学は、災害、水難なんでもござれ。レスキュー訓練だ。」

 

レスキュー訓練、敵退治もそうだけど災害現場での救助活動もヒーローの花形だ。有名どころだとオールマイトのデビューになった大火災とかだよね。周りもヒーローらしい訓練ができることに色めき立ってる。私も結構ワクワクしてきた。

 

「おい、まだ話の途中だ…今回、コスチュームの着用は自由、中には活動を限定するコスチュームもあるだろうからな。」

 

そう説明しながら戦闘服の仕舞われた棚を操作していく先生。今日の訓練は離れた訓練場で行なうみたいで、バスに乗って行くらしい。私も雄英に住んで長いけど、行ったことのない場所はたくさんある。まぁ住んでると言っても学生だった訳じゃないし、やたら広い上に危ない場所もあるから絶対にうろちょろするなって相澤さんに釘を刺されてたのも大きい。

 

「以上、行動開始!」

 

先生の号令を受けて全員が動き始める。戦闘服の着用は自由って言ってたから私はどうしよう……うーん、やっぱりあれはちょっとダサいんだけど。

 

……性能で戦闘服の勝ちかな。

 

※ ※ ※

 

着替えもそこそこにA組の面々がバスロータリーに集まり出す。

 

「1ーA集合!バスにスムーズに乗れるよう、番号順に2列で並ぼう!」

 

我がA組の委員長、飯田くんが早速張り切って場を仕切っている。さっきのホイッスルどこから用意したんだろう、自前で持ってきたとか?

 

ピッピー!と元気よく号令をかけているので、みんな素直に並んだんだけど……

 

「こういうタイプだったか!」

 

残念ながら雄英のバスは路線バスと同じ構造で、シャトルバスのような全席が縦列に並んでいるタイプではなかった。とどのつまり、残念ながら飯田くんの頑張りは空回ってしまったのだ。「意味なかったなー」と三奈さんがバッサリ一言、哀れ飯田天哉。

 

それぞれ思い思いの場所に座り、バスが発車して少しした頃。

 

「私、思ったことなんでも言っちゃうの、緑谷ちゃん。」

 

私の隣に座っていた梅雨ちゃんが、そのまた隣にいる緑谷くんへおもむろに話しかける。

 

「あなたの個性、オールマイトに似てる。」

「え!そうかな!?」

 

人に話しかけられるの、特に女の子が苦手な緑谷くんはそれはもうかわいそうなくらいしどろもどろになる。けど、緑谷くんの個性は私も気になるところだ。前に考えてた「個性を貰った」という可能性、それが事実だとして、譲渡したのがオールマイトなら緑谷くんの個性が似通っているのも納得できる。

 

「待てよ、梅雨ちゃん。オールマイトは緑谷みたいに怪我しねぇぞ?似て非なるアレだぜ。」

 

2人の個性は似て非なるもの、切島くんはそう言う。けどどうなんだろう?受け取った個性は生まれ持ったものでない以上、制御下に置くには相応の鍛錬が必要だ。これは私の経験からある種の確信を持って言える。

 

緑谷くんに突如発現したオールマイトと似た個性。それを制御出来ない緑谷くん。他者から貰った個性は簡単には操れないこと。

 

……やっぱり緑谷くんはオールマイトから

 

「派手で強えつったら、轟と爆豪、あと加山だよな!」

「え?」

 

いつの間にか思考に耽っていたようで、切島くんにいきなり名前を呼ばれて引き戻される。どうやら個性が派手か、人気が出るとかの話らしい。

 

うん、今考えてたことは多分表に出しちゃいけないことなんだ。オールマイトの秘密主義、個性の詳細を語らない緑谷くん、これは私の内に秘めておこう。

 

「爆豪ちゃん、キレてばかりだから人気でなさそうね。」

「ンだとコラ!出すわ!!!」

「ほら。」

 

考えごとしている間に、みんなは楽しそうだ。今まさに梅雨ちゃんに言われたまんま、キレ散らかしてる爆豪とか。混ざりたい!!!!

 

「いやーこの浅い付き合いでもうクソを下水で煮込んだような性格って認識されてるのすげぇよ。」

「おぉ!言うね上鳴くん。かっちゃーん!そんなに怒ると血管切れるよー。」

「てめえのボキャブラリーは何だ殺すぞ!そこのクソメッシュも便乗してんじゃねぇ!」

 

楽しい!爆豪弄るの楽しい!打てば響くとはこのことだと思う。みんなも段々、爆豪が弄りがいのある性格をしてるの気づいてきたみたいで私は嬉しい。元々爆豪はあまり良い性格をしてないから周りが茶化してやるくらいでちょうどいいのだ。

 

「お前らもう着くからいい加減にしとけ。」

「「「「はい!」」」」

 

相澤はeyeは静止力。

 

お、訓練場見えてきた。おっきーーー!

 

※ ※ ※

 

訓練場前で待っていた13号先生、今日の担当してくれる先生の1人に連れられ訓練場の中に入る。あまりの大きさと設備の多さに切島くんがUSJみたいって言ってたけど、本当に名前がUSJらしい。13号先生によると「嘘の災害や事故ルーム」から来てるとのこと。

 

「13号、オールマイトはいないのか?ここで待ち合わせのはずだが。」

「先輩、それが……」

 

相澤先生と13号先生が何やらゴニョゴニョ話している。最初にチラッとオールマイトって聞こえたけど……あれ?そういえば今日はオールマイトと3人だって言ってたのにオールマイト居ないなぁ。彼のことだし通勤中もヒーロー活動してて遅刻してるとかなのかな?

 

「はぁ……仕方ない、始めるか。」

「そうですね。では、皆さん始める前にお小言を1つ2つ、3つ4つ5つ6つ……」

(((増える……)))

「ご存知だと思いますが、僕の個性はブラックホール。何でも吸い込んで塵にしてしまいます。」

「その個性でどんな災害でも人を救いあげるんですよね!」

「うんうん!」

 

緑谷くん、さすがヒーローオタク。反応が早いね。お茶子さんもファンだって言ってたし話を聞けて嬉しそう。

 

「その通りです。ですが、これは簡単に人を殺せる力でもあります。」

 

……耳が痛い言葉だ。

 

つい先日も私はその個性を本気で轟くんに向けた。

 

「超人社会は個性使用を資格制にして取り締まっています。しかし容易に人を殺せる個性を個々が持っていることを忘れないでください。今回の授業では、人命のためにどう個性を使うか学んでいきましょう。以上、ご清聴ありがとうございました。」

 

優雅に一礼する13号先生、その含蓄のある言葉はA組のみんなにも届いたようで、わっと歓声と拍手が起こる。

 

「よし、そんじゃまずは……」

 

13号先生の話も終わり、相澤先生が号令を出そうとした瞬間、強烈な悪寒が走った。

 

消える照明、動きのおかしい噴水……そしてその噴水が歪み現れたのは。

 

不気味な人影。

 

「全員、ひとかたまりになって動くな!13号、生徒を守れ!」

 

知っている、この肌を刺す恐怖と嫌悪感。私を実験動物のように扱い、忘れもしない白髪男の底冷えする気配と同質のもの。

 

「あれはヴィランだ……」

 

そう、あれはヴィラン……あの白髪の男の手先だ。

 

 

※ ※ ※

 

「ヴィランって!バカだろ、ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」

「13号先生、侵入者用のセンサーは?」

「もちろんありますが……」

「ヴィランがここだけか、学校全体に出たのかは分からねぇ。だがセンサーが反応しねぇなら、それをできる奴がいるってことだろ。校舎から遠い隔離空間、そこへクラスが入る時間割、バカだがアホじゃねぇよ。これは何かの目的があって周到に計画された奇襲ってことだ。」

 

轟くんの冷静な分析に、クラス全員が自分たちの置かれた状況を正確に理解する。

 

「相澤先生!」

「加山か?どうした。」

 

現れた手だらけの男と不気味な巨漢、奴らから感じ取ったことは相澤先生に伝えないといけない。

 

「相澤先生、ヴィランの、細身の男たちからあの時の、私が会った白髪の男に似た気配がします。」

「本当か!?」

「はい、そして隣にいる大柄な奴が1番気持ち悪いです。」

「わかった。…おい、13号!生徒を連れて避難しろ!」

「わかりました!」

 

13号先生に指示を飛ばした先生相澤はゴーグルをかけ戦闘態勢に入る。けど不安だ、相澤先生の強さは私は身に染みてよく知っているけれど……少しでも力になりたい、手下の敵たちを相手にするなら私だって出来ないことはない。

 

残りたいと足を踏み出そうとして、相澤先生と目が合う。ゴーグルに隠されているけど、その奥にある目は私、いや私たち生徒は来るなとはっきり断じていた。

 

「先生は?1人で戦うんですか!個性を消すと言ってもあの数じゃ…」

「緑谷くん!」

 

私と同じように感じていたであろう緑谷くんが、相澤先生に助けに入ろうとするのを片手で止める。

 

「大丈夫、大丈夫だよ緑谷くん。今の私たちができる最大限の手助けは、避難して相澤先生が自由に動けるようにすること。ここは指示に従おう。」

「加山の言う通りだ。俺の戦闘スタイルは相手の個性を消して捕縛すること、正面戦闘は普通行わない。だがな一芸だけじゃヒーローは務まらん。」

 

それだけ言い残してヴィランの真っ只中へ駆けて行く相澤先生、捕縛布と体術を高度に組み合わせた戦闘術は向かってくるヴィランをものともせずに蹴散らしていく。

 

相澤先生が飛び出したのと同時に動き出していた私たちは、13号先生を先頭にUSJの出口を目指す。だけどあと少しというところで、黒い靄のヴィランが間を塞ぐ。

 

ゆらりゆらりと靄が集まり形を成す。不定形な顔貌に目が開き、言葉を発した。

 

「初めまして、我々の名は敵連合。僭越ながら雄英高校に入らせていただいたのは、オールマイトに息絶えていただきたいと思ってのことでして。」

 

敵連合…聞いた事のないヴィラン組織だ。最近、組織された?オールマイトを殺すって、どこにそれほどの実力者が?

 

「ですが当のオールマイトがいらっしゃらないようで。まぁそれとは関係なく、私の役目はこれ。」

 

余程の自信、余裕があるのか私たちを前にして長々と話す黒靄、誰もが警戒してじっと身構える中、そこへ飛びかかる影が2つ。

 

「「うおおおりゃあ!」」

 

切島くんと爆豪がそれぞれ攻撃したのだ。激しい爆発と広がる黒煙。

 

「その前に俺たちにやられるのは考えなかったのか!?」

 

硬化と爆破の個性、常人がまともにくらえば怪我では済まない威力がどちらもあった。けれど

 

「危ない危ない。」

 

晴れた視界に現れたのは、かすり傷1つ付いた様子のないヴィランの姿。

 

……あいつの体、普通じゃない。靄は個性由来のものだろうけど、それで全身を覆ってるんだ。実体のある部分に当てないと爆破も硬化も通らない。

 

そして黒い靄はまた揺らめき、膨らみ、動き出す。

 

「退きなさい2人とも!」

 

13号先生が個性を発動しようとするが、位置が悪かった。爆豪と切島くんが前に出てしまい、ヴィランに向けてブラックホールを使うことが出来ない。その一瞬の遅れが致命的だった。

 

「私の役目は、あなた達を散らしてなぶり殺す!」

 

急激に広がった靄は、そのまま黒い奔流となって私たちを飲み込んで行った。

 

 

※ ※ ※

 

「きゃ!」

 

いきなり視界が開け、目の前に飛び込んできたのはコンクリートの床。唐突なことだったので受け身が取れず強かに体を打ち付けた。

 

うぅ、クソ痛い。高さが大したことなくて良かった。

 

黒靄の個性は多分ワープ、どこに飛ばされた確認しないと……ん?

 

「どわ!」

「うお!」

「ぐへぇ……お、重い。」

「か、加山!?悪ぃすぐどく!」

「あ…?チッ!」

 

上からさらに切島くんと爆豪が落ちてきました。潰されるかと思ったけど、同じところに飛ばされた人がいるなら頼もしいかな。起き上がってとりあえずお互いの無事を確認する。

 

さて、これからどう動くかというところで、10人そこらのヴィランが現れる。3対多の生徒の私たちには荷が重いかもって思ったんだけど、さっきの手野郎とかに比べたらチンピラに毛が生えたような三下で、大して苦戦もしなかった。彼らは相手側が私たち用に集めた言わば数合わせ、散らして殺すと言っていたけど、相当甘く見積もられてらしい。

 

「おいおいこれからどうするよ。他の奴らと合流した方がいいんじゃねぇか?」

「行かねぇ。俺はあの黒靄をぶっ殺す。」

「私も。あの靄のヴィランは相手の出入口、あいつを倒せば敵の逃げ道はなくなるよ。それに相澤先生はああ言ったけど、相当無理してる。やっぱり助けに行くよ。」

「で、でもよぉ!これだけのヴィランだぜ、散らされた奴に戦闘向きじゃねぇのもいるしよ、そっちも心配した方がいいんじゃねぇか?」

「気にすんな。俺らが相手したのも雑魚ばっかだ、大概大丈夫だろ。」

「……なるほどな。わかった俺も行く、ダチを信じるぜ!」

 

方針も固まったところで移動を開始する。目指すのはさっきの噴水広場だ。

 

にしても、実戦になると爆豪がここまで動けるタイプだったなんて。戦闘センスも頭もいいことは知ってたけど、的確に相手の弱点を見抜いて冷静に取りにいく。頼りになるじゃん、見直した。

 

けど、この時を思い出せばはっきり言える。私は全くわかっていなかった、いや想定しきれてなかった。ヴィランが私たちを甘く見ていた?そんなわけが無い。オールマイトを殺す、そう宣言した奴らがどれだけ周到な戦力を用意していたか。そんな戦力に相澤先生が単騎で戦おうとするのがどれだけ恐ろしいことだったのか。

 

 

※ ※ ※

 

広場に着いた私たちが見たのは、両腕を折られ地面に倒れ伏す先生。その先生の頭がヴィランに地面へ叩きつけられる瞬間だった。

 

「マジかよ、先生……」

「クソッ…」

「…………」

 

三者三様に驚愕する。間違いない、やはりあれが対オールマイト。これじゃあ黒靄をどうこうする話じゃない。相澤さんの体術も個性も気にせずねじ伏せるパワー

 

……ここは動かないのが最善、けど相澤さんはどうする?このまま殺されるのをみすみす見てるの?

 

私は、私は……

 

全身がカッと熱くなるのを感じる。心臓の鼓動がうるさい、感情が不安定になってる証拠だ。相澤さんを傷つけられた、その現実がどうしようもなく胸をかき乱す。

 

「ダメだ……落ち着け、私。」

 

痛む胸をギュッと押さえつけ、深呼吸する。混乱した時のルーティン、何度もしてきた心を静める動作。

 

よし、大丈夫。もう一度考えろ、私がどうしたいか、どうするべきか。

 

 

 

──助けたい。私じゃ絶対にあのヴィランには敵わない。でも相澤さんを、たった1人の家族を見捨てるのはもっと出来ない!

 

横目で隣の爆豪を見る。いい手を思いついたけど、これは私一人じゃ出来ない。

 

「爆豪、手伝ってくれる?」

「あ?…そういうことかよ。俺を使おうなんざいい度胸じゃねぇか。……篭手は1発しかねぇ、しくんじゃねぇぞ。」

「当然。」

「切島くん、硬化で壁になって。」

「はぁ?お前ら何言ってんのかわかんねぇぞ!」

 

いいから黙ってやれと爆豪が無理やり切島くんを動かして、ボクシングのブロッキングの構えを取らせる。未だオロオロする切島くんの前に私が立ち、少し斜め前に爆豪が篭手を構える。

 

「行くぞ。」

「OK!」

「ちょ!説明してくれって!」

「切島くん、いいから硬化!」

「だあああもう!わかった!!」

「……ちょっくら死ねやああああ!」

 

爆豪の叫び声と共に彼の篭手から大規模の爆撃を放つ。ヴィランにはすぐ気づかれるがそれでいい。ビビれ、防御しなければと思考しろ。

 

目論見通り、手だらけの男が相澤先生を押さえつけているヴィランに「守れ」と指示を出す。その声が聞こえた瞬間、私は切島くんを足場にして水蒸気を炸裂させた。

 

「相澤さん!!!」

 

飛び出した勢いをそのままに私は駆ける。爆豪が作ってくれた目くらましも長くは持たない。滑り込むようにして相澤さんを抱きかかえると、再び水蒸気を使って跳躍する。

 

黒煙が晴れた頃には、私はヴィランたちと真反対に退避できていた。本当は爆豪たちの方に逃げたかったけど、これなら……

 

「はぁ、ゲームオーバーだ。ガキ相手に邪魔されるし、1人は逃した……何十人もプロが来るんじゃ歯が立たない。帰ろっか。」

 

手だらけの奇妙な格好をした男がそう零す。

 

ゲームオーバー?帰る?オールマイトを殺すって息巻いてたのに逃げるの?でも私たちじゃあいつらと正面から戦っても間違いなく死ぬ……なら逃げてくれる方が……

 

「でもその前に、平和の象徴としての矜恃を……」

 

ブツブツと呟く男が不意に揺らめいて

 

「へし折ってから帰ろう!」

 

いつの間にか水難エリアの縁にいた梅雨ちゃんたちに襲いかかった。何をするつもりなのかは分からない。けれどその触れようとする手にある絶対の自信、触れられだけで致命傷になりかねない個性…!

 

「…………ほんとかっこいいぜ、イレイザーヘッド。生徒に守られるほどボロボロのくせにさぁ。」

 

すんでのところで止めたのは、相澤先生の抹消だった。もう意識を失ってると思ってたのに、死にものぐるいで梅雨ちゃんを助けてくれた。

 

「あーあー鬱陶しいよヒーロー、それを助けた白いガキもだ。お前が邪魔しなかったらちゃんとイレイザーヘッドを殺してやったのにさぁ!!!」

 

ヒステリックに叫ぶ男は病的な手つきで執拗に首を掻きむしる。へ、変な人だ……これほどの作戦を用意して襲撃してきたはずなのに、その張本人は上手くいかなければ大声で怒り、周りに当たってまるでリーダーとしての冷静さがない、とても歪な男……

 

「やっぱりこいつらじゃなくてアイツにしよう、やれ脳無。」

「……え?」

 

気づいた時には脳無と呼ばれたヴィランが目の前で腕を振りかぶっていた。速い、油断した、逃げようにも間に合わない。近づいてくるのは見えなかったのに、今直撃しようとしてる拳は嫌にスローだ。ゆっくり、ゆっくり迫ってくる死を知覚して

 

──あぁ、ダメだ……

 

ただ目を瞑った。

 

「あれ?」

 

当たるはずの拳が来ないことを不思議に思って恐る恐る目を開けば、見覚えのある山のように大きい背中、拳は寸前で止められていた。

 

「オ、オールマイト?」

『遅くなってすまない。加山少女、よく耐え忍んだ。でももう大丈夫、私が来た!!!』

 

そう告げ、彼は目にも止まらぬ速さで緑谷くんたちまでも回収してしまう。

 

「加山少女、緑谷少年たちを連れて逃げなさい。君たちも彼女が相澤くんを運ぶのを手伝ってやるんだ。頭の傷が深い、揺らさないよう慎重にな。」

「待って、ください。」

「相澤くん!?意識があったのか。無理するんじゃない、あとは私に任せて……」

「違います。あの…大柄なやつについて、です。あいつ、個性を消しても貴方並の力がありました。貴方対策と…ヴィランは言っていた、気をつけてください。」

「…本当にありがとう。だが心配無用さ、大丈夫!」

 

私たちが動き出したの確認し彼は向き直る。

 

「オールマイト……ゲーム続行だ。」

「ゲーム?そんな腹積もりで来るとは、考えが甘いんじゃないか?」

「バカだなぁ、それで問題ないから来たんだろうが。…脳無。」

 

背後から敵とオールマイトの応酬が聞こえ、すぐに脳無との激突が始まった。凄まじい打撃の連続、一発一発が大気を揺らす。

 

相澤先生をできるだけ安全圏に運ぶため必死に足を動かす。けれど不意によろめいてしまうほどの衝撃を受け、たたらを踏む。振り返れば、もうもうと上がる土煙、オールマイトと脳無が地面へ不自然な形で突き刺さっていた。

 

「そ、そういう感じか……!」

「残念だったなぁオールマイト、脳無を拘束しようなんて想定の通りさ。そのまま引きちぎれ黒霧。」

「かしこまりました、死柄木弔。」

 

ワープゲートを利用した反則の落とし穴。そして平和の象徴の危機を見た緑谷くんの目の色が変わる。

 

「蛙吹さん、相澤先生担ぐの変わって。」

「いいけど、なんで?」

「緑谷くん、まさか!」

「……嫌だ、嫌だよ!オールマイト。」

 

理由も告げず彼はオールマイトの元へ走って行ってしまった。

 

「ごめん、峰田くん。私も変わって。」

「はぁ?加山まで何言い出すんだよ!」

「彼、オールマイトを助けに行ったんだよ。止めるにしろ加勢するにしろ、緑谷くんを一人にできないから、じゃ!」

「じゃ!じゃねぇよバカああああ!」

 

相澤さんの体を峰田くんたちに預け、私も緑谷くんの後を追う。

 

勇気か無謀かと聞かれたら無謀もいい所だと思う。こんな無茶しでかしたって相澤さんが知ったら大目玉をくらっちゃうな。

 

 

※ ※ ※

 

「オールマイトーー!」

「緑谷少年!?」

「……浅はか」

 

前を走る緑谷くんがオールマイトに手を伸ばす。けれどそれを遮るように黒霧が現れた。オールマイトをワープゲートで捕まえてるのに自由に動けるのか。凄く器用な奴だ、このままだとまた緑谷くんが飛ばされる。

 

「どけ!邪魔だデクゥ!」

 

あわや緑谷くんが飲まれる寸前、隠れていた爆豪の爆破が黒霧を大きく吹き飛ばした。そのまま間髪入れず地面に叩きつけて拘束する。

 

……ナイス爆豪!おかげで私も準備出来た!

 

両手を合わせ練り上げた水流を一点にして放つ。ヴィランの出入口は爆豪が塞いだ、なら私はオールマイトを捕まえてる脳無に。

 

「かっちゃん!もっと頭下げて!!!」

「は?…ぶっねぇ!殺す気か下手くそ!」

「ごめん!」

 

けどこれで脳無とかいうやつの左腕を削いだ。撃ち抜いた肩からダラりと力が抜けていくのが見える。そしてもう一本、右腕を氷漬けにしたのは。

 

「轟少年!加山少女まで!…おかげで手が緩んだ!」

 

よし、オールマイトの拘束は外せた。でも左脇腹に血が滲んでる、捕まってた時に抉られたんだ……シャツの上からでも分かるくらいの出血量、重症ってほどには見えないけど浅くない傷。

 

「オラァ!」

「危ないなぁ……」

「クソっ!外した!」

 

また一人、渦中へ飛び込んできたのは切島くん。緑谷くん、爆豪、轟くんに切島くん、そしてオールマイト。頼りになる人達が勢揃いだ。

 

「黒霧を押さえられ、オールマイトの拘束も解かれた。最近の子供はすごいなぁ、恥ずかしいぜ敵連合。……動け脳無。」

 

その声に呼応し、脳無が立ち上がる。が、轟くんに凍らされた右半身が砕け、倒れ込む。左腕の傷だって向こうが透けて見えるくらいの深手だ、動けっこない。なのに声も上げず立ち上がろうとする姿はまるで痛覚がないみたい…

 

そして脳無の傷口がそれ自体が別の生き物のように蠢いた。

 

「手足が生えた!?ショック吸収だけじゃないのか?」

「超再生だよ。こいつはあんたの100%にも耐えられる超高性能サンドバッグ人間さ。」

「む……」

「まずは出入口の奪還だな。やれ、脳無。」

 

見る間に欠けた右半身、ズタズタになった左腕を再生させた脳無が立ち上がり、消える。

 

向かった先は黒霧を押さえていた爆豪、しまったと思った時には壁が砕ける音と立っていられないくらいの衝撃波。

 

爆豪……直撃だ、避けるどころかガードも受け身も取れない瞬速、これじゃあ……あれ?

 

さっきまでそこに居なかったはずの爆豪を見て、全員が呆けたような声を出す。

 

「か、かっちゃん!避けたの!?」

「違ぇわ、黙ってろ。」

「じゃどうやって…」

「なら、あれは……」

「オールマイトだよ。オールマイトが庇ったんだ。」

 

見えなかったけど、ここに爆豪が居て、彼を庇えたのはオールマイト以外ありえない。その証拠にオールマイトが土煙の中から現れる。けど息も絶え絶えって感じだ。腹の傷が響いてる?表情もいつものように余裕な笑顔じゃなくて、どこか焦っているように見える。

 

「ごほ…!全く、加減を知らんのか…」

「仲間を助けるためさ…人のために振るわれる暴力は美徳になる、そうだろヒーロー。」

「助ける?君たちが好き勝手に暴れたいだけの詭弁だろう。嘘つきめ!」

「バレるの早」

 

ヘラヘラとどこか笑い声を滲ませながらオールマイトと会話するヴィラン。

 

頭の中にさっき考えていたリーダーの、死柄木弔の不自然さが首をもたげる。オールマイトを殺すとは言っていたけど、それにしては言動が軽薄すぎる。彼がオールマイトや雄英に激烈な恨みを持っているようには感じられない。なのに、雄英のカリキュラムを把握し、邪魔が入らないよう周到に計画された襲撃、見ていて凄くチグハグに思う。

 

侵入してきた時に彼から感じた気配…死柄木は計画を実行しただけで、考えた奴はあの白髪男ということ。私の知る限りオールマイトに匹敵する力を持った脳無を作り、与えた者は奴しか考えられない。

 

「君たち、ここから先はもう危険すぎる。逃げなさい。」

「俺たちがいれば3対6です。それにさっきだって俺と加山の助けがなかったらやばかったでしょ。」

「それはそれだ、ありがとな。だが大丈夫、プロの本気を見ていなさい。」

「……脳無、黒霧やれ。俺は子供を相手する。」

 

ヴィランが動き出す。オールマイトは逃げろって言ったけど、きっと脳無相手で手一杯になる。ヴィランがオールマイトを完全に無視して向かってくるなら自分たちで対処するしかない。確かに逃げの手もあるけど、こいつ見た目に反してかなり素早い、下手に背中を見せるのは下策だよね。

 

敵はもう目の前だ、どうするどうする…!

 

「あっ…!」

 

はっと顔を上げる。自然と目がオールマイトを追った。

 

まるで高熱でも纏っているかのように彼から放たれる圧、プレッシャー

 

向かって来ていた死柄木たちまで気圧され、動きを止める。

 

飛び出したオールマイトと脳無が再び真正面から激突する。そのインパクトは、台風でも現れたかのような突風を生み、私たちを大きく吹き飛ばした。

 

手元が霞んで見えるラッシュの連続、目には捉えられないが確かに衝突する一打一打、それが何度も凄まじい風圧を生みだす。

 

「おいおい、ショック吸収って言ったのは自分だろ?そんなに殴ったって意味ないぜ。」

「確かにな……だが!個性がショック無効ではなく吸収ならば!!!限度があるんじゃないか!!?」

 

その言葉と同時に脳無へ変化が現れる。ヘドロヴィランを吹き飛ばし、天候さえ変えて見せたオールマイトの全力に真っ向から撃ち合っていた脳無がジリジリと後退し始めたのだ。

 

拳が突風を起こし、踏みしめる地面が砕け、巨体が宙を舞う様はトップヒーローのレベルをまざまざと見せつけられる。

 

「ヒーローとは!常に困難を打ち壊して行くもの!」

 

脳無が受け身も取れず地面に叩きつけられ、体が浮かび上がる。悠々とオールマイトの攻撃を受けていた姿は見る影もない。

 

「敵よ、こんな言葉を知ってるかッ!!!」

 

眼前に降り立ったオールマイトが右腕を深く、大きく振りかぶる。私が、その場の全員がそこに渾身の、必殺の一振りが秘められてるのを悟った。

 

「さらに向こうへ!!! プルスゥ!ウルトラアアア!!!」

 

インパクト、瞬きの一瞬そこだけ時が止まったような静寂を破り、脳無が砲弾のごとく飛んでいく。照明に爆発を起こし、天井に風穴を開け、雲を突き破りながら遠く遠く飛んでいく。

 

「…ショック吸収を無かったことにしちまった。究極の脳筋だぜ。」

「デタラメだ、再生も間に合わねぇくらいのラッシュってことか…」

「これがプロの世界…」

 

この瞬間、私は高揚していた。手傷を負い、前には自分の全力に匹敵する脳無、後ろには庇わなければいけない生徒、ヒーローとして先生として敗北は許されない戦い。どれだけの重圧だったのだろうか、それを真っ向勝負でねじ伏せ勝って見せたオールマイト。

 

覚悟を決めた彼の表情は、あの日の私を救ってくれた相澤さんに重なって見えた。

 




ここまで読んでくださってありがとうございました。
今回は中々の難産で、気づいたら1万字を超え1ヶ月経ってました。
他の方々みたいに上手く書けなくて、精進したい限りです。
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