半分少女のヒーローアカデミア   作:Akafuku2000

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USJのおまけです。

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1月12日に日間総合ランキングで、半分少女のヒーローアカデミアが85位になりました。こちらもたくさんの方に読んでいただけたおかげです。すごく嬉しいです。


半分少女と大人たち

半分少女のヒーローアカデミア

 

今まで深く沈んでいた意識がゆっくりと浮かび上がり、目を覚ます。目が何かに覆われて視界が真っ暗だが、鼻につく消毒液の匂いと心電計の音が自分がどこに居るのかを教えてくれる。

 

「病院…どうやら助かったらしい。…ん?」

 

痛みか麻酔か全身の感覚が酷く鈍っている。しかし包帯越しに誰かがそっと触れているのがわかった。今が何時か分からないが、俺の負傷が処置され安静に置かれているのを考えると、敵が襲ってきてからそれなりに時間が経っていることになる。そして、そんな自分に側に居てくれそうな存在を俺は1人しか知らない。

 

「水穂か?」

「んん…あ、相澤さん!良かったぁ気がついて…」

「寝てたのか、悪いことしたな。」

 

声をかければ、もう随分と聞きなれた声が返ってくる。彼女が眠っていたってことはもう深夜か…どうやら本当に長く意識を失っていたらしい。

 

「敵は、みんなはどうなった?」

「大丈夫、オールマイトが守ってくれて校長先生たちも駆けつけてくれたからみんな無事だよ。」

「みんな無事か、他の先生方には頭が上がらないな。」

「あ、でも緑谷くんが無茶しすぎて指と足の骨折っちゃった…」

「あいつまた…まぁいい。強力な敵だった、全員五体満足で帰れたなら言うことはないな。」

 

1人を除いて生徒達に大きな怪我もなかったのは本当に良かった。敵連合…奴らとの戦いは1年生には重すぎるかもしれない。だが、この経験は得がたいものだ、彼らがこれを乗り越えたならきっと強く逞しいヒーローに育つだろう。

 

「色々教えてくれてありがとうな。もう夜も遅いだろ、今日は帰って寝た方がいい。」

「い、嫌…」

「どうした?」

 

水穂の様子がおかしい、さっき事の顛末を喋ってくれていたときはハキハキしていたんだがな。声がか細くなり、包帯まみれの腕に触れる手が微かに強くなる。

 

「相澤さん、病院に運ばれた時本当に傷だらけで血塗れだったんだよ?敵に襲われた時は必死だったけど、全部終わって相澤さんの姿見たらさ…」

「……」

「病院の先生は命に別状はないって言ってたけど、目に後遺症が残るかもしれないって。も、もしかしたらこのまま目も覚まさないんじゃないかって。」

「水穂…」

「すごく、すごく怖かったの!相澤さんまでいなくなっちゃったらどうすればいいのか分からなかった。」

「……そうか。」

 

静かに泣く水穂を抱きしめてやることも頭を撫でてやることも出来ない自分の体をもどかしく思う。敵のUSJ襲撃、あそこで前に出たことは間違っていたとは思わない、あの場で俺が取れる最善だった。

 

俺はヒーローであり教師だ、生徒は命を懸けてでも守る。けどその前に、1人の子供を預かる保護者でもある。それが子供に心配かけて泣かせてるんじゃないって話だよな。水穂は良くできた子だがまだまだ子供なんだ、この子がひとり立ちできる日まで俺が側で見ていてやらないといけない。今回は無茶しすぎた、反省だな。

 

「ごめんな、心配させて。でも大丈夫だ、お前がヒーローになって大人になって自分で生きていける時まで独りぼっちにはしない。」

「……違う。私が大人なっても相澤さんはずっと一緒だよ。だって相澤さんは私の……」

 

最後の言葉に思わず苦笑した、それは保護者冥利に尽きる。

 

「分かった分かった。勝手にいなくなったりしないから。」

 

* * *

 

日の落ちた保健室、ベッドの上から眺める景色はまるで学生時代に戻ったかのようだ。よく怪我をしては周りの大人たちから死ぬほど怒られたな…今思い出しても背筋が寒くなる。

 

先程まで隣のベッドを使っていた緑谷少年は一足先に帰ってしまった。指と両足を折る大怪我だったが、リカバリーガールのおかげですっかり良くなって自分の足で帰れたのは喜ばしいことだ。若さとは本当に素晴らしい。

 

今日の出来事を思い出す。私が通勤中にヒーロー活動をしていたために、敵の襲撃に居合わせることが出来なかった。もし予定通りに私が居れば、相澤くんや13号くんが負傷し、生徒たちを危険にさらすこともなかったかもしれない。

 

それでも思うのは、先生2人の獅子奮迅の活躍であり、何より生徒が各々の全力を尽くし、敵へ立ち向かって見せたことだ。特に目に止まったのは緑谷少年たち、爆豪少年の敵の弱点を的確に見抜いたクレバーな立ち回り、轟少年と加山少女は脳無を一時的にでも無力化せしめた、そして緑谷少年が最後敵に攻撃してくれなければ、活動限界で動けなかった私は殺されていただろう。

 

敵連合、主犯格の死柄木弔と黒霧、そしてその尖兵である脳無。どれも長いヒーロー活動の中で聞いたことも出会ったこともない者たち。中でも脳無は死柄木の談を信じるならば、ショック吸収と超再生の2つの個性をその身に宿していたことになる。本来ならば別々の個性を持っているなどありえないこと、両親の個性を受け継ぎ、2種類以上の個性を持っているように見える事例ならある、轟少年が良い例だろう。しかし私はその例外を知っている。

 

1人は我が宿敵、オール・フォー・ワン

 

そしてもう1人は、

 

「加山少女か…」

「イレイザーのとこの子がどうかしたのかい?」

「はい、10年前敵の違法な実験施設から保護された子供が加山少女だったということを最近知りまして。」

「おや、そうだったのかい。」

「えぇ、事件後の行方は詳しく知らなかったので。」

 

加山少女……10年前、オールフォーワンが直接関わっていた事件の被害者がまさか彼女だったとは。この前のヒーロー基礎学、彼女のことが気になって相澤くんに尋ねたときには驚いた。ヒーローに引き取られたと聞いていたが、それが相澤くんで、さらにその子が大きくなってここ雄英で会うとは。

 

ヒーロー基礎学で轟少年と起こした乱闘、内容は定かではないが彼とのやり取りが加山少女の不安定な部分を刺激したのだろう。そんな彼女のトラウマ、安全だと思っていた雄英で敵に襲撃されどれだけ恐ろしかったか、目の前で大切な人が傷つけられてどれだけ辛かったか。それに耐え、反抗さえして見せた加山少女の胆力は素晴らしいものだ。

 

「オールマイト、私はあの子のこともよく見ていてやって欲しいんだよ。」

「加山少女を、ですか?」

「そうさね。アンタは後継者を育てなければいけないし、教師として生徒全体の面倒を見なきゃいけない。でも医者の私からすれば、加山はまだまだ治療中ってところなのさ。」

「そうですか、確かに私も思い至る所があります。」

「あの子の個性は珍しい、そして精神的に弱いところがある。もしかしたらそこに目をつけた敵に唆されるかもしれない。」

 

若い、まだ精神の未成熟な子供が個性を持て余し、敵犯罪に走ることはよくあることではある。またそのような子供に甘い言葉で惑わし、敵への道に誘う悪しき者もいる。

 

「年寄りのお節介とも思うけどね。私やイレイザーだって常に見守ってやれるわけじゃない、自分たちの目がないところで何が起こるか分からない。だから少しでも加山のことを理解している大人の手が欲しいのさ。」

「…分かりました。微力ですが協力いたします。」

 

後天的に2つ目の個性を手に入れた加山少女、彼女の抱えるものは大きい。それは明確な弱点だが、同時に弱点の分だけ伸び代があるということでもある。育てなければならないだろう、きっと彼女も次代を担うヒーローになれる。

 

* * *

 

「痛え…両手両足撃たれた。脳無も手下もやられた、完敗だ。子供も強かった、平和の象徴は健在だった!!」

 

街中にひっそりと佇むビルの一室、BARの内装を模した部屋に死柄木弔は倒れていた。手足から流れる血で床を濡らしながらも、やり場のない不満を撒き散らす。

 

「話が違うぞ先生!」

「違わないさ、けど見通しが甘かったね。」

「うむ、舐めすぎたな。」

 

いつの間にか点いていたテレビから2人の男の声が聞こえる。1人は癇癪を起こす幼子をあやすような優しい声、もう1人はずいぶんと歳を重ねた嗄れた老人の声。死柄木弔にUSJ襲撃の作戦を教え、脳無を与えた者達。

 

「して、ワシと先生の作った脳無はどうなった?」

「回収出来なかったのかい?」

「吹き飛ばされたんだよ!」

「死柄木弔の言う通りです。私のワープゲートも正確な位置を把握出来なければ回収は困難です。」

「せっかくオールマイト並のパワーにしたのに!」

「まぁいいさ、しょうがない。」

 

作戦は失敗したが、声の主たちにそれほど焦りはない。上手くいかないことも想定の内であり、ドクターは出来の良い作品を失ったことに悔しさはあれど後からどうとでもなる範囲と思っている。

 

「パワー…パワーと言えば1人オールマイト並の速さの子供が居たな。」

「へぇ…」

「あいつが邪魔しなけりゃオールマイトを殺れたかもしれない。そうだイレイザーヘッドもだ。青白の変わった髪色の女のガキにも邪魔された!」

「…弔、その青白い子供はどんな子だった?」

「あぁ?赤混じりの青っぽい髪の女だよ。そいつがイレイザーヘッドにトドメを刺そうとしたところで奪いやがった。その女もそれなりに速かった、まるで地面で爆発起こしたみたいに動き回って本当に鬱陶しかった。」

 

画面越しの先生は暫し沈黙し、側に居るであろうドクターに意見を促す。

 

「そやつ、ワシらが作った実験作かもしれんのう。まさか今の今まで生き残っておったとは。」

「僕としてもちょっと驚かされた。ヒーローにくれてやったのは惜しいことをしたかもしれないね。」

「なんだ、何の話だよ先生。」

「なに、年寄りの昔話さ。それよりも今回は悔しい結果に終わったね?でも無駄ということはない、精鋭を集めよう時間をじっくりかけてね。」

 

USJ襲撃を行い新たな知見を得た男は思考する。弔はもっと成長できる、けどそれには人も時間も必要だ。男は組み立てる、大事な大事な「ヴィランの卵」が大きな悪意を育めるように。

 

「僕たちは自由に動けない。だから君のような象徴が必要なんだ。死柄木弔、君という恐怖をこの世に知らしめるんだ。」

 




切島くん端折ってごめん!

次回は雄英体育祭に飛ぶと思います。
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