半分少女のヒーローアカデミア   作:Akafuku2000

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そろそろ保須編です。ここもいい話ですよね、みんながグンと伸び始めた感じがします。

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職場体験編
半分少女とヒーロー名


半分少女のヒーローアカデミア

 

雄英体育祭の振り替え休日も明け、また学校生活が始まる。色々あったけど心機一転、頑張ろう!という空気なのだが、今日は天気が悪い。あいにくの雨である。正直、雨の日は体調悪くなるし、気分も沈むので、そんなところを学校で見られたくない。中学生の時は休んだり、できるだけ人との接触は避けてたのでなんともなかったが、雄英生になった今そうも行かない。残念ながら行くしかないのだ。

 

重い体を引きずるようにして家を出て、A組の教室までたどり着く。すると何やら中が騒がしい。A組のメンツは割と仲がいいのでいつも賑やかなんだけど、今日は特に元気な気がする。

 

「おはよー」

「水穂ちゃん、おはよう。あら、顔色が良くないわ。」

「うん、雨の日は体調崩しやすくて。」

「そうなのね、でも学校に来てて偉いわ。私は雨だと体調良いの、ケロケロ!」

「ふふ、梅雨ちゃんの個性カエルだもんね。」

 

梅雨ちゃんとの会話でちょっと気分が軽くなった気がする。やっぱり気の置けない人との会話は精神衛生上良いな。

 

「みんな何の話してたの?」

「おぉ、それな!俺ら体育祭でテレビ中継されただろ?あれで街を歩けば声をかけられるのなんの。」

「瀬呂なんてドンマイ言われまくったらしいぜ!」

「やめろよ〜〜!」

「へー、ドンマイ君?」

「だあああ!」

 

クラスにドッと笑いが起こる。なんだ体育祭の話だったのか。瀬呂くんはドンマイコールされたのが相当アレみたいで、髪をぐしゃぐしゃとして恥ずかしそう。む、そろそろ授業かな?席につかないと。

 

みんなが席についた頃、相澤さんがドアを開けて入ってくる。この前までは包帯ぐるぐる巻きのミイラマンだったけど、先日やっと包帯が取れて普通に過ごせるようになった。あの処置を相澤さんは大袈裟なんだよと言うが、顔面骨折、両腕も骨折、本来なら何日か入院してて欲しい怪我だったんですけどね。

 

「俺の怪我はさておき、今日のヒーロー情報学はちょっと特別だぞ。」

 

その言葉で教室にピリリと緊張が走る。相澤先生が言う特別なんてろくなもんじゃないと、みんなこれまでの学校生活で身に染みてるのだ。またいきなりテストだなんだと言い出しかねない……

 

……ゴクリ

 

「コードネーム、ヒーロー名の考案だ。」

『胸膨らむやつ来たああああ!!!』

 

みんなが一気に盛り上がるが、そこは鉄の教師の相澤先生、キッと一睨みすればシーンと静かになる。大人しくなった私たちに先生は粛々と説明を始める。今日の話は休みに入る前に話があったプロからのドラフト指名にあるとのこと。ヒーロー科生徒は2、3年から指名が本格化し、そのまま自分の進路を選んでいく。私たちに来た指名は興味のある生徒を直に見てみたいというのが主で、言わばお試しなのかな?

 

「で、その集計結果がこうだ。例年はもっとバラけるんだが、3人に注目が偏った。」

 

黒板に表示された数字へ目を向ける。えーと、私が4132、轟くんが4123、爆豪が3556、そっからグッと落ちて常闇くん以降に続いていくって感じか。私、4132かぁ…………4132!?

 

な、なんとぉ……

 

「1位加山で、2位轟、3位爆豪って……」

「体育祭の順位と全然違うじゃねぇか。」

「表彰台で拘束されてたやつとかビビって呼べねぇって。」

「ビビってんじゃねぇよ!プロがッ!!!」

 

唖然として開いた口が塞がらない。会場ボコボコにしたり、キャパオーバーでゲロったやつにこんなに指名が来るとは思わなかったのでびっくりどころじゃない。なんか爆豪がいじられてキレてるけど、そんなのにツッコミ入れる余裕ないよこれ。どーすんのよ。

 

「この結果を踏まえ、指名があるなし関わらず職場体験に行ってもらう。」

「職場体験?」

「あぁ。お前らはUSJで一足先にヴィランとの戦闘を経験したが、プロの仕事を実際に体験して、より実りのある訓練をしようってのが目的だ。」

 

あ、あーなるほど。やっと意識が返ってきた。私たちはヴィランと戦い、ある意味経験を積んだけど、それはその場しのぎで何とか耐えた付け焼き刃にすぎない。プロヒーローには長年のノウハウやルールがある、ちゃんとプロの現場を見ることで、あの時の経験をより高めて来いってことか。

 

「今回つけるヒーロー名はまだ仮ではあるが適当につけると……」

「つけたら地獄を見ちゃうわよ!学生時代につけたヒーロー名がそのままプロ名になってる人多いからね。」

『ミッドナイト!』

 

相澤先生の説明をぶった切って入ってきたのは、ミッドナイト先生。男子組は大人のお姉さんの登場に一部色めき立ってる。しかしあのセクシーなポーズを取りながら入ってくるのは意味あるんだろうか?男子は嬉しいかも、うん。オールマイトも教室来る時はヒーロー活動よろしく、私が来た!って言ってるしそういうもんなんだろう、うん。

 

「その辺のセンスをミッドナイト先生に査定してもらう。俺はそういうのできん。将来自分はどうなりたいのか、名をつけることでイメージを固め、そこに近づいていく。それが名は体を表すってことだ、オールマイトとかな。」

 

そう言い終えると俺の仕事は終わりとばかりに、いそいそと寝袋で寝始める相澤先生。いやぁ、私も相澤さんが忙しい中でも良い睡眠を取れるように頑張ってるんだけどなぁ。時間ができると寝ようとするのが改善されない……もうこれ治らないレベルの癖なの?はぁ……

 

しかしヒーロー名か、考えたこともなかったな。ヒーローになるのは目標だったけど名前なんて二の次だったし。相澤さんのイレイザーヘッドは、確か学生の時に本人がなんでもいいっていうから山田さんに考えてもらったんだっけ?

 

配られたフリップを指先でつつきながら考える。ヒーローだった父のプロ名はシュトローム、大河とか奔流とかって意味なんだとか。激流という個性を持っていた父に似合う名前だ。安直に考えるなら個性から取るのがいいんだろうけど……私の持つ2つの個性を分かりやすく表わせと言われたら非常に困る。どっちかだけならないこともないのに。

 

「じゃあ、出来た人から発表してね。」

 

えー、発表するのこれ?ミッドナイト先生にだけ見せて終わりだと思ってた。自分の考えたヒーロー名!をクラスメイトにいきなり見せるのは結構恥ずかしいよ。みんなもこれには尻込みしてるみたい、やるにしても1番手は嫌だ。相当度胸のいるし、誰が最初に行くよ?って雰囲気だ。

 

そんな中、スっと立ち上がって教壇の前に行く猛者が一人、青山くんだ。確かに彼はナルシストのところがあるし、むしろこういう状況だと率先して動くタイプか。

 

「いくよ、僕のヒーロー名……輝きヒーロー、I can not stop twinkling !」

(((短文…!?)))

 

さすが青山くんのセンスと言わざるを得ない……いや彼、レーザーがキラキラ光るし、本人もなんかキラキラオーラ纏ってることあるからピッタリだけども。これはミッドナイト先生からもツッコミ入るかと思ったら「 I は取って、can’t にした方がいいわ。」と、呼びやすさの訂正が入っただけでOKだった。これでいいんだろうか???

 

「じゃあ次は私!これ、エイリアンクイーン!!!」

 

青山くんに代わり、元気に飛び出してきたのは三奈さんで、某宇宙生物な映画から丸ごと取ってきてた。2の方に出てくるアレである。おどろおどろしすぎるこれにはミッドナイト先生からもやり直しが入ります。あの映画は面白いけども、さすがに友達をエイリアンクイーンなんて呼びたくない……

 

だけど困った、何が困るって先鋒2人が変な、コホン……個性的なヒーロー名を出したので、なんだか大喜利っぽい空気になってる。ただでさえ出しにくかったのに余計やりにくくなってしまった。

 

「ケロッ、なら次、私でいいかしら。」

「はい!梅雨ちゃん!」

「昔から決めてたの。梅雨入りヒーロー フロッピー」

「いいわー!親しみやすくてお手本のようなヒーロー名ね。」

 

普通のやつ来たーーーー!ありがとう梅雨ちゃん、ありがとうフロッピー。これで妙な大喜利ムードがキャンセルされました。このファインプレーには同じ空気を感じていた面々からフロッピーコールが起きている。

 

梅雨ちゃんがいい感じに発表しやすい空気を作ってからは、バンバンとみんなのヒーロー名が発表され始めた。

 

切島くんの「烈怒頼雄斗」(これでレッドライオットなんだとか)に始まり、耳郎さんの「イヤホンジャック」、障子くんの「テンタコル」、瀬呂くんの「セロファン」に尾白くんの「テイルマン」、砂藤くんの「シュガーマン」、三奈さん再チャレンジで「Pinky」と続々続く。お茶子さんの「ウラビディ」なんか一番好き、麗日とグラビティでめちゃくちゃセンスある。

 

で、一番微妙だったのが……

 

「爆 殺 王」

「それはやめた方がいいわね。」

 

爆豪である。今の今までみんなのヒーロー名にウキウキだったミッドナイト先生が真顔で止めるレベル。なんでこの子はすぐに「殺」とか入れちゃうんだろうね?

 

ここは1つ、私イチオシのやつを送りましょう。

 

「爆豪ー!爆発さん太郎にしなよ!」

「お、それいいじゃねぇか!おーい、爆発さん太郎にしろよ!」

「うっせぇぞ!クソメッシュ!!!クソ髪!!!」

 

きゃー!怖い怖い。さてさて、爆発さん太郎のことは置いといて私のヒーロー名を考えないと。みんなすっごくセンスあったからなぁ、シンプルなのからワードセンス良いのまで色々あった。私の個性、水流と火炎、あと合わせ技の水蒸気か。

 

「残りは再考の爆豪くん、あとは加山さんと飯田くん、緑谷くんね。」

 

げ、もう私合わせて4人だけ?爆豪いじって遊んでる場合じゃなかった。と言っても思いつかないものは思いつかないんだよなぁ。片方だけなら思いつくけど、2つとも表すってなると形にならない。うーん、形形……形、あぁ!形だ!

 

やっとマシなのを思いついた!

 

「私、行きます!」

「来たわね!はい、加山さん!」

「ヒーロー名、アモルファス!」

「アモルファス?」

「私の個性、どっちも不定形なのでそこから考えました。」

「なるほど!OKよ!」

 

やったー!あと発表してないのは爆豪除いて、飯田くんと緑谷くん……お、飯田くんできたんだ。

 

私に続いて前に立った飯田くんが発表したのは「天哉」の2文字。てっきり個性のエンジンにちなんだ名前で来るかと思ったのに、本名まんまだ。轟くんも「ショート」でほぼそのままだったけど、なんか毛色が違う気がする。もしかしなくてもお兄さんのインゲニウムがやられたのが原因してるんじゃないの?また余計なお節介だけども飯田くんのこと気にした方がいいかもしれない。

 

「緑谷くん、できたかしら?」

「は、はい!」

 

飯田くんの次は緑谷くんの番だ。結構悩んでたけど、彼のことだしオールマイトから取ったりしてるのか、な?

 

……え、それって

 

「デクなんだ……」

「いいのかそれで?」

「一生呼ばれ続けるかもなんだぜ?」

 

予想外のヒーロー名にクラスがちょっとザワつく。みんながはっきり知ってるってわけじゃないだろけど、「デク」の由来が出久のもじりで、木偶の坊から来てるだろうってのは察してる。爆豪が呼び続けてる明らかな蔑称だ。

 

「うん。この呼び名、今まで好きじゃなかった。でもある人に意味を変えてもらって、僕には結構な衝撃で嬉しかったんだ。……だから、僕のヒーロー名はデクです!」

 

ほぉ、そんな心境の変化があったとは知らなかった。誰に変えてもらったかは、緑谷くんの交友関係見ててなんとなく察しはつくけども。緑谷くんの言った通り、彼の中で「デク」は弱っちい自分を馬鹿にする言葉じゃなくて、自分を肯定してくれる言葉に変わったんだろう。事の経緯をガッツリ知ってる私からすると少しムズムズするけど、緑谷くんが良いなら何も言うまい。

 

色々素敵なヒーロー名が発表されて、ようやく緑谷くんまで終わりまして、残るは再考中の爆豪だけだったんだけど……

 

「爆殺卿!!!」

 

なんでも出来る才能マンだと思ってたけど、爆豪のやつ死ぬほどネーミングセンスがないらしい。

 

当然却下され、あえなく時間切れとなりました。

 

「全員のヒーロー名が決まったところで肝心の職場体験だが、期間は1週間。指名のあったやつはそのリストを渡す、その中から選べ。指名の無い者はこちらが先にオファーしておいた全国40箇所のヒーロー事務所から選んでくれ。」

 

相澤先生はヒーロー事務所によって活動地域や活動の内容が違うから良く考えろよと言い添えて、今日の一限は終わりました。あと提出期限は今週末までだってさ。

 

どれどれ私の指名リストはっと、ひゃー分厚い。恐れ多くも4000件以上の指名を貰ったんだ、頑張って良いとこ選ばないとね。

 

「五十音順になってるのか。えーと……うわ、マジかぁ。」

 

※ ※ ※

 

さて、指名リストを見続けてたらあっという間に1日が終わるわけで、放課後になった。いやぁ4000は多い、まぁ数よりも見つけてしまった某事務所の方に問題があるんだけど……これに関してぶっちゃけられるのは一人しかいない。

 

「轟くん轟くん、指名のことで話あるんだけど良い?」

「あぁ、なんだ?」

「轟くんってどこ選ぶ予定?」

「……親父んとこだ。」

「へぇ!そうなんだ。いやあのね、ここだけの話、私にもエンデヴァー事務所から指名来てるんだよね。」

「なに!?」

 

普通に世間話してるテンションだった轟くんの態度が一気に変わる。そう、リスト貰ってからずっと気になってしょうがなかった事務所はエンデヴァーさんのところなんです。

 

「悪い話じゃないし、受けてもいいかな?とは思うんだけどね。エンデヴァーさんが私に指名を出した真意を測りかねててさ。どう思う?」

「そうだな……俺とお前の個性は似てる、そこにアイツが目をつけたってのはあると思う。俺に指名を寄越したみたいに、お前にも直接指導してやろうって腹じゃないか?」

「うーん、まぁそれが妥当なんだろうなぁ。」

 

私を指名する理由……エンデヴァーさんは轟くんに自分が敷いたレールを走らせ、そうすればやがて轟くんはオールマイトを超えられると考えてるっていうのは聞いた話と今回の指名でよく分かる。しかしそこに私が入る理由はやっぱり判然としない。そりゃ個性は似てるけど、別に血縁じゃないし、知り合いでもない。そもそも体育祭終わるまで私に興味すらなかったんじゃないかな。想像する限り、あの性格で絡んで来ないわけが思いつかない。

 

なーんか思惑がありそうで気持ち悪いよねぇ。

 

「あ、もうひとつ聞きたいんだけど、轟くんはなんでお父さんの指名受ける気になったの?許してないでしょ、お父さんのこと。」

「なんでか、か。まぁ確かに許してねぇし、許す気もねぇ。でも俺がヒーローになるためにはアイツのクソ親父としての面じゃなくて、なぜNO.2と呼ばれてるのか、そこを実際に見なきゃなんねぇって思う。だから受けることにした。」

「そういうこと。…………よし、私もエンデヴァーさんの指名受けるよ。」

「本気か?何言われるかわかんねぇぞ。」

「それは言われたら言われたで。火炎のバラエティも増やしたいし、この指名受けたら絶対お得だと思う。轟くんと一緒なら個性の幅も広がりそうだし、ね?」

「はぁ、まぁ加山が受けた指名だしな。俺にどうこうする権利もねぇか。」

「じゃ、来週からの職場体験よろしくね。」

「おう。」

 

轟くんと約束の握手をして別れる。エンデヴァーさんからの指名、どうなるかわかんないけど受けてみよう、私も轟くんのお父さんについては気になるし。普通に職場体験するなら技術を学べればよし、変なこと言われたら人柄が知れるからよし。

 

やりますか、職場体験!

 

 

 

 

 

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