半分少女のヒーローアカデミア   作:Akafuku2000

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職業体験編スタートです。エンデヴァーを悪く書きすぎちゃったかもしれない……エンデヴァーは好きでもあり苦手でもあります。こんな複雑な人、どう評価すればいいんですか?

UA4万件、お気に入りが700件を超えました。総合評価も1000ポイントを頂いて、ひとつの大台乗れて嬉しいです。1話と2話のUAも1万を突破いたしました。また6月28日の日間総合ランキングで39位にランクインしていました。これら全て読んでくださってる方のおかげです。ありがとうございます!!!



半分少女と職場体験1

半分少女のヒーローアカデミア

 

あれから1週間ほど経って、とうとう職場体験当日となった。1-Aは雄英最寄りの駅に集合して、相澤先生の説明を受ける。通りすがりの人の微笑ましいものを見るような視線がちょっとむず痒い。

 

「全員コスチュームは持ったな。本来なら公共の場での着用は禁止だ、落としたりすんなよ。」

「はーい!」

「伸ばすな。はい、だ!芦戸。」

「……はい。」

 

テンション上がりすぎた三奈さんが少し注意されたが、あとは訪問先の事務所には迷惑かけるなよと念押しして解散が言い渡される。選んだ事務所は人によってバラバラなので、ほとんどの人とはここでしばらくお別れだ。

 

「飯田くん!本当にどうしようもなくなったら言ってね。友達だろ?」

「うん!うん!」

 

緑谷くんとお茶子さんが飯田くんに話しかけてるのを見かける。特に飯田くんと仲のいい2人のことだ、インゲニウムの件を知って心配してるんだろう。私も何度か話しかけようと思ったが、体育祭のときの反省と飯田くんが何も無い風に過ごしていたので中々話ができなかった。

 

「あぁ。」

 

2人に一言だけ返事をした飯田くんはそのままホームへ歩いていく。いつもの飯田くんならもっとハッキリ気持ちを言うだろうが、なんとも曖昧な答えだ。しかし遠巻きにも見えた彼の目つき、私には見覚えがある。飯田くんの訪問先は保須市にあるらしい、インゲニウムとステインの事件が起きた街。とても事務所を見て選んだとは思えない。

 

私はエンデヴァー事務所に行くし、彼とは別の場所だからなぁ。いざっていう時に救けられない。バカなこと考えてないといいけど……

 

「轟くん、私たちも行こっか。」

「あぁ、そろそろ乗っとかねぇとな。」

 

同じくエンデヴァー事務所へ行く轟くんに声をかけ、3人のもとから離れる。職場体験か、こんなに長く相澤さんといないのは初めてになるのかな?ヒーロー活動で家を空ける時も別の人に面倒見てもらってたし……

 

お、新幹線来た。どれどれ学校が取ってくれた指定席はっと。

 

「あったあった。ほら轟くん、早く早く。」

「そんなに急かさなくてもいいだろ。……お前なんかテンション高くねぇか?」

「だってこういうのに参加するの初めてだし!まず小学校は行ってないでしょ、中学校も体調不良で参加出来なかったし。」

「俺も似たようなもんか。家族とか友達とかで遠出なんてなかったからな。」

「私、自由に外に出られるようになったのも、ここ3、4年だからほんと新鮮!」

「……俺らすぐに会話重くなるな。」

「お互い複雑だからねー。」

 

反対側の席に座ってるおじさんの顔が青くなってきたからそろそろこの会話止めようか。しかし轟くんと話すとうっかり重い話になってしまう。少し前ならこの手の話をするのは大嫌いだったんだけど、彼とならなんだか軽く話せてしまう。なんなら轟くんとの鉄板になりそう、普通の人生を送ってこなかった似た者同士だからなのかな。

 

「なぁ、飯田のことどう思う?さっき見てたろ。」

「んー?まぁこのまま放っておいたらヤバいとは思うよ。」

「……恨みつらみで動くヤツの顔はよく知ってるつもりだ。あのときの飯田はそういう顔をしてた。」

「人間、憎しみで心がいっぱいになると脇目も振らずめちゃくちゃやっちゃうからね。私も経験あるし。」

「救けて、やりてぇな。」

「そうだね。」

 

轟くんも同じこと考えてたんだ。あれから周りに目を向けられるようになってなんだか嬉しく思う。

 

インゲニウムがやられたことに飯田くんは間違いなく憎しみを覚えてる。そりゃ人間誰だって感情があって、当然他人を憎く思うことはある。轟くんがお父さんへの憎しみで、父親を否定することしか考えてなかったように、私が轟くんにトラウマを刺激されたことで彼を攻撃することしか考えられなかったように。行き過ぎた憎悪は人を視野狭窄に陥らせる。飯田くんもそうなんじゃないかな。

 

「なんかまた暗くなっちゃったね。」

「悪ぃ…」

「いやいや悪くないって。そうだ、職場体験の話しようよ。エンデヴァーさんとこ行って何するんだろうね?」

「なんだろうな。俺らは免許持ってねぇし、アイツの後ろで見てるだけなんじゃねぇか?」

「だよねぇ。パトロールしながらエンデヴァーさんの仕事見たり、軽く手伝うとか。」

「あとは個性の訓練もあると思う。実家にいた時はずっとそんなだった。」

「へー。」

 

それからはエンデヴァーの事務所はどんなだろうとか、サイドキックはどんな

人たちだろうとか、今日ってどこに泊まるんだろうとか色々話した。飯田くんのことは気になるけども、私たちにだってやらなきゃいけないことがある。まずは目先のことから頑張ろう。

 

※ ※ ※

 

着いたエンデヴァー事務所、クソでかい。案内されるまま所長室に入るが普通に教室よりデカい。そして奥のこれまたデカいデスクにデカいおじさんがいる。

 

「よく来たな、焦凍。そして加山水穂。」

 

轟くんの父親、NO.2ヒーロー エンデヴァーだ。

 

「焦凍、ようやく覇道を進む気になったか。」

「アンタの敷いた道を行く気はねぇ。俺は俺の道を行く。」

 

なるほど、確かに轟くんの言う通りの人だ。凄く自分勝手というか、思い込みが強いというか。子供は自分の言うことを聞いて当然って言いぶりだ。轟くんは父親に従ったから来たわけじゃないのにね。

 

「フン、まぁいいだろう。これからすぐ出かける。焦凍、お前は先に出て準備していろ。加山くん、君には話がある、残りなさい。」

「……おい、加山に何する気だ。」

「まぁまぁ、危害を加えられるってわけじゃないし大丈夫だって。」

「けどな…、なんかあったらこんな指名蹴れよ。」

「わかった。ほら行った行った。」

 

轟くんが退室して、完全に扉が閉まったのを確認してからエンデヴァーさんへ向き直る。私だけを残してしたい話か、いやぁまーったく良い予感がしないよね!

 

「加山くん、君の個性は半水半燃だったね?」

「はい、その通りです。」

「ふむ。では、単刀直入に聞こう。君、焦凍と結婚する気はないか?」

 

うわぁ、嫌な予感的中……この人思ってたよりもヤバい人かもしれない。普通、女子高生1人を相手に密室で、息子との結婚を迫るとかレッドカード退場だよ、社会的に。当然その気はないからこのまま突っぱねてもいいんだけど、もう少し話をしてみるか。

 

「構いませんよ。」

「ほう?」

「ですが、それは私と轟くんが本当に想いあってたらの話です。私は轟くんを友人として好ましく思ってますけど、異性としては別です。」

「だが、焦凍と君なら、」

「より強い個性を持った子供が生まれる。ですか?お言葉ですが、私は個性じゃありません、轟くんもそう。一人の意思のある人間です。好き勝手に子供を作って、思い通りにならなかったら失敗作の烙印を押すんですか?轟くんのお兄さんやお姉さんのように。」

「……なに?」

 

さっきまで大上段から見下ろすような態度だったエンデヴァーさんに怒気が滲む。小娘が知ったような口を叩くことにだろうか、それとも轟家の事情を知り、非難したことにだろうか。

 

「もしかして、私が孤児だということもご存知ですか?」

「……雄英から君のプロフィールは共有されている。」

「なるほどなるほど。なら私にも轟家に入れば経済的に安定するとでも言うつもりでしたか?轟冷さんにしたように。」

「貴様ァ!!!」

 

ゴオッと炎が燃え上がり威圧感が増す。かなり怒ってるな、自分の後暗いところを突かれてるし、当然か。しかし世の中を何も知らないガキンチョの私が偉そうなことは言いたくないけど、ここまで見下げ果てた人とは思わなかった。これが父親の姿とは思いたくない。

 

けど家族のことを指摘されて憤るってことはエンデヴァーさんにも罪悪感があるのかもしれない。轟くん越しにエンデヴァーさんは、オールマイトへの劣等感、嫉妬、羨望がぐちゃぐちゃになっていることは聞いた。案外、間違ってると知りつつも、もう止まれない人なのだろうか?

 

「私は私の意思で成りたいものを選びます。例え貴方がNO.2ヒーローであってもその指図は受けません。」

「…………そうか。いや、すまなかったな。この話は聞かなかったことにしてくれ。」

「はい。私も忘れることにします。でも、あともうひとついいですか?」

「なんだ?」

「轟くんは今の家族関係を清算しようとしています。この前はお母さんに会ったそうです。エンデヴァーさんも轟くんを、家族のことを見てあげてくれませんか?」

「……」

「無関係な子供が何を言ってるのかって思うと思います。ですが、今向き合わないと、きっと近いうちに凄く後悔されるんじゃないかと思うんです。」

「そうか……考えてみよう。」

 

……うーんやってしまった。エンデヴァーさんにいきなりすごいこと言われたので、こっちも思わず言い返してしまった。本当にヤバい人だったら、普通はガキにあれだけ言われたら手が出てもおかしくない。根っこの根っこのさらに根っこの方では不器用な良い人の可能性があるな。

 

さっきからエンデヴァーさん黙ったままだし、クビ?まだ何も始まってないのに初日で雄英に強制送還される?

 

「エンデヴァーさん、私の指名は取り消しでしょうか!」

「む、すまない、考え込んでしまっていた。加山くんの指名は取り消さん。君が嫌なら別だが。」

「そんなことありません。私はヒーロー、エンデヴァーの指導を受けたくて来ましたから。」

「わかった。なら焦凍と同じように準備して来てくれ。」

「了解しました!」

 

言うが早いか、所長室をそそくさと後にする。いやー良かった、クビにならなくて。父親としてのエンデヴァーさんは轟くんの評判通りだったのがわかったけど、私もなぜ彼がNO.2と呼ばれるのかは気になるところ。それを見ずして終わりにならなくて良かった。

 

※ ※ ※

 

失礼しましたーと所長室を出れば、すぐそこで轟くんが待っていた。戦闘訓練の時とは違う、紺色のツナギ?にサポートアイテムらしきものを胸部に装着してる。

 

「待ってくれてたの?お、轟くんのそれ、新しいコスチュームじゃん。似合ってるねー、私のともちょっと似てる。」

「左側も使うことにしたから新調してもらったんだ。確かに加山のコスチュームと似てるかもな。……そうじゃねぇ、親父とはどうだったんだ?」

「別に?」

「別にってことはないだろ。」

「……結婚しろって言われた。」

「は?加山が?誰と??」

 

やっぱり無理にでも黙っといた方が良かったかも……轟くんの目付きがめちゃくちゃ怖い。こんなに怖い目を見たのは本気で怒ってる相澤さんくらいしか見たことない。もう話し始めちゃったし全部言うしかないか……

 

「私と轟くんが。」

「なっ…!」

「私の個性が目当てなんだってさ。」

「アイツ!!!加山、この指名断れ。クソ親父の指導なんて受けることねぇ。」

「いいや受ける。」

「分かってんのか!?アイツはお前まで俺ん家のことに巻き込もうとしてんだぞ!」

「わかってる。でも断ったし。」

「断っ、た?」

「うん。」

 

轟くんがフリーズする。あまりのことに処理待ち中なんだろう。いやしかし、轟くんに嫌な思いさせるなら本当に黙っとけば良かった。そもそもエンデヴァーさんのしてきたことを見るに、私に指名があった時点でこういうのは予想出来たわけで、事前に打ち合わせくらいしとくべきだった。反省。

 

「…断ったのか。」

「それはもうハッキリと。結構、ガツンと言ったし問題ないんじゃないかなぁ。少なくとも職場体験中にあれこれ言ってくることはないと思うよ。」

「大丈夫、なんだな?」

「大丈夫。かなり効いてたと思う、あの時のエンデヴァーさんの顔、轟くん見たらびっくりするね。」

「そうなのか?アイツが表情変えるところあんま想像つかねぇな。お前何言ったんだ?」

「轟くんのことは友達としては好きだけど、異性としては見てませんって感じ。あとはここが良くないです、ここも良くないですってチクチクしてきた。」

「USJんときから思ってたが、お前度胸あるよな。」

 

感心2割、呆れ8割くらいの表情で見つめられる。いやほんとね、大の大人になんで偉そうな口きいてんだろうね。

 

おっとと、そろそろ私も準備しなくちゃ。思ったより話し込んでしまった。

 

「まぁこの通り、私は無事だから。それよりコスチュームに着替えたいんだけど、更衣室ってどこ?」

「それなら、そこの角を右…いや、直接行った方が早ぇか。親父の事務所、無駄にデケェからな。」

「ありがと!」

 

先に着替えてた轟くんの案内で、更衣室に向かう。すぐそこかと思ったけど割と歩いた。トップヒーローともなれば、事務所のスケールも大きいね。

 

「ここだ。ロッカーは空いてるのを好きに使っていいらしい。」

「了解。……そうだ、轟くん。」

「ん?なんかわかんねぇことあったか?」

「さっきは断っちゃったけどさ、どうする?私たち結婚する?」

「お前なぁ……冗談言う暇あんならさっさと着替えてこい。」

「へへ、ごめんごめん!」

 

ヒラヒラと手を振りながら更衣室へと入る。

 

まだ職場体験は始まってもいないのにめちゃくちゃハイカロリーだった。轟くんの父親、エンデヴァー……噂通り、いや噂以上の人だったな。

 

 

※ ※ ※

 

久しぶりに袖を通すコスチュームに若干ぎこちなさを覚えつつ、轟くん合流して所長室に戻る。中へ入ると来た時と同じく、仏頂面?でメラメラ炎を燃やしてるエンデヴァーさん。さっき話してた時とは何となく雰囲気が違う気がする。これがトップヒーローの雰囲気というやつだろうか。

 

「2人とも準備できたようだな。では、今後の行動を伝達する。」

「おい親父、聞いたぞ。加山にもお母さんと同じことしようとしたらしいな。」

「……」

「無視すんじゃねぇ。」

「ちょちょ!轟くんステイ!」

 

やっぱり今した話、引きずってた。そりゃそうだ、父親が勝手に両者の同意なく縁談を持ち上げようとしてたら怒る。轟くんなら尚更。

 

轟くんの肩を引っつかみ、後ろを向かせる。できるだけエンデヴァーさんに聞こえないよう小声で話しかける。

 

(さっき言ったけど、あの話は無視することにしたからもういいんだってば…!)

(けどな、アイツからどういう魂胆か聞かねぇと納得できねぇ。)

(それはそう!でもここは抑えて、エンデヴァーさんの人となりはわかったし、私もなんであの人がNO.2たるのか見たいの。だから残ったんだし。)

(…………わかった。)

 

轟くんはたっぷり5秒くらい沈黙した後、渋々といった顔で了承してくれた。話をぶった切って放置してたエンデヴァーさんを横目で見ると表情の読めない顔してる。なんかこう、ズーンッって顔してる。

 

「失礼しました。お話続けてください。」

「あ、あぁ。」

 

轟くんが向けてる視線、めちゃくちゃ冷たい。なんか私の半歩前に出てるし。

 

「これから我々は保須市に向かう。」

「保須ですか?」

「そうだ。先日、保須で事件を起こしたステインは、今までの傾向から再び同地に現れる可能性が高い。そのため保須へ出張し、しばらく向こうで活動する。」

「具体的には何するんだ。」

「主にパトロールになる。ステイン出現に伴って、保須では一時的に犯罪発生率が落ちている。ヤツ1人に目標を絞って捜索できるはずだ。」

 

保須に行ってステインを捕まえに行くのか。もしかしたら飯田くんとも会えるかもしれない。

 

「それから活動中は、お前たちのことはヒーロー名で呼称する。ショート、アモルファスだったな?」

「はい、エンデヴァーさん!」

「さんは要らん。」

「加山、こんな奴にさん付けするな。」

 

やっと職業体験らしくなってきたところ、轟くんの一言でまた空気が凍る。

 

「……焦凍、父親に対してこんな奴とはなんだ。」

「事実を言っただけだ。」

「焦凍ォ!」

 

声がデカい、耳の奥までビリビリする。もう親子喧嘩しないでよ……原因を辿れば私がうっかり指名を受けちゃったからなんだけどさぁ。

 

初対面の女子高生に縁談を持ちかけてくるお父さんと、その人にバチバチに反目してる息子さん、そしてその間に挟まれてる私。恐ろしいことに前者は職業体験の受け入れ先で、後者は同級生である。こんな調子で職業体験、乗り越えられるのか不安になってきた……

 

Plus ultra?……はい、頑張ります。

 

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