半分少女のヒーローアカデミア   作:Akafuku2000

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緑谷と爆豪の関係性良いですよね。爆豪の緑谷を見る目がどんどん変わっていくのが好き。

ヒロアカはずっと面白くて凄い。もうすぐ完結してしまうのが惜しいですね。




期末試験編
半分少女と期末試験1


半分少女のヒーローアカデミア

 

気の休まらない高校生生活が始まって早数ヶ月、桜は青々とした葉桜になった。蝉のけたたましい鳴き声が響く、夏である。色々と大変だったが最近は平和そのもの。まぁそんな頻繁に酷い目にあってたら身が持たないんだけども。

 

「授業はここまでだ。期末試験まであと1週間、お前らちゃんと勉強してるだろうな?知ってると思うが、期末には筆記に合わせて演習もある。頭と体どっちも鍛えておけ。」

 

以上だと言って相澤先生は教室を後にする。そう、やってきたのだ全国の学生たちが味わう試練の時期、期末試験だ。

 

「「全く勉強してなーーーーーい!」」

「体育祭やら職場体験やらで全く勉強してねーー!」

「アッハハハハ!」

 

最初に爆発したのは上鳴くんと三奈さん。前者はガシガシと頭をかき、後者は諦めたのかずっと笑ってる。2人とも中間試験の成績が振るわなかったのだ。確か、クラス内でワーストワンツーを飾っていたはず。期末試験なんて無理だと絶望感がすごい。

 

「……確かに行事続きではあったが。」

「中間は範囲も狭かったしなんとかなったけどな。行事も重なったけど、期末は中間と違って、」

「演習試験もあるのが辛いとこだよな〜〜〜!まぁおいら10位だったけど。」

「「中間10位!?」」

 

ドヤ顔でそう宣ったのは峰田くんである。意外なことに彼は中間試験で10位と中々好成績だった。脳みそピンク色だと思ってたんだけど、本当に意外である。上鳴くんの「お前みたいのはアホで初めて愛嬌でるんだろうが!」というのは同意しかない。人は見かけによらなさすぎる。

 

「芦戸さん、上鳴くん、頑張ろうよ!やっぱり全員で林間合宿行きたいもんね!」

「俺も委員長として皆の頑張りを期待している!」

「普通に授業出てりゃ、赤点にはならねぇだろ。」

「轟くん、トドメ刺してるから……」

「加山お前もだよ!言葉には気をつけろ!」

 

上位層の言葉に上鳴くんが打ちのめされてる。私も余計にぶっ刺してしまった。……ごめん。

 

「お二人共、座学なら私、お力添えできるかもしれませんわ。」

「「ヤオモモ〜〜!」」

「演習の方はからっきしでしょうけど……」

 

キラキラと高貴なオーラを纏って三奈さんたちに助け舟を出したのは、我らがA組の成績1位、八百万さんである。いつからか自信を無くしてしまったのか、演習はかなり不安のようだけど。

 

けど耳郎さんを始め、次々と八百万さんに勉強を教えて欲しいという人が集まってきて、また元気になった。家の講堂を開けるとか、贔屓にしてる紅茶の茶葉なんですかとか聞いて、とてもプリプリしてる、可愛い。ていうか家にある講堂ってなんだろう、贔屓の紅茶ってなんだろう。これがお嬢様かぁ。

 

「この人徳の差よ。」

「ねー、切島くん、この爆発さん太郎は放っておいて、八百万さんとこ行かない?」

「俺も人徳くらいあんだよ!テメェら教え殺したろか!!!」

「おぉ!頼む!」

「えーー!」

「ハッ!俺は中間3位、お前は4位。俺に負けた雑魚はありがたく教えられてろ。」

 

心底バカにした顔でサムズダウンしてきた爆豪にカッチーンと来る。なんだその態度はぁぁぁ?

 

「なにそれ!高々1点差でしょ!?私の方が上手く教えられますー!」

「んなわけねぇだろクソメッシュが!俺の方がうめぇわ。」

「もうそこまでにしとけって。」

「クソ髪は黙ってろ!」「切島くんは黙ってて!」

「やっぱ八百万の方行けば良かったな……」

 

今日という今日はもう許さんからな!絶対に白黒つけてやる。ほら、切島くん逃がさないからね?こうなったら切島くんの成績上げて、爆豪に大差をつけて私が上の順位取るから。

 

口撃の応酬と化し、あわや取っ組み合いにまで発展しそうだった私たちのいがみ合いは、飯田くんとお茶子さんに引き離されるまで延々と続いたのだった。

 

※ ※ ※

 

「はむ!はむ!!」

 

お昼時になり、私はお弁当をかっこんでいる。爆豪へのイライラが治まらないのだ。くっっそ〜!爆豪のやつ、人を小馬鹿にした顔して!前の中間試験で爆豪は3位、私は4位だった。中学の頃から勝ったり負けたりしてたけど、やはり悔しいものは悔しい。だって1点差だよ?たったそれだけ上回っただけであんなに勝ち誇っちゃってさー!されど1点なんだけどね!?今度の期末試験はギャフンと言わせてやる。

 

「加山さん怒ってるね……」

「爆豪くんとバチバチやったもん。」

「緑谷くん、彼女たちは昔からあぁだったのか?」

「そうだね。昔って程じゃないけど、中学生の頃からずっとあんな感じだよ。ことある事に張り合っててさ、お互いにちょっかいかけ合うから僕はヒヤヒヤで。」

「それは……大変だったな。」

「……うん。」

 

なんか緑谷くんが遠い目をしてる。私たちが言い争う度によく巻き込まれてたのは申し訳ない。けど爆豪だって悪いんだよ?いっつも緑谷くんいじめててさぁ。見てらんなかったんだからしょうがないじゃん。

 

「加山、お前って緑谷たちと同中だったんだな。」

「え?うん、そうだよ。言ってなかったっけ?」

「それとなく聞いたような気もするな。緑谷も言ってたが、なんで爆豪とあんななんだ?」

「えっとねぇ。あぁそうそう、今みたいな1年の期末試験くらいの時だったかな。たまたま爆豪に学内順位で勝っちゃってさ。しかも、そのあと私の個性がこれって知られて、難癖つけられたのが始まりだよ。」

「あっちから絡んできたのか、そりゃ面倒だな。」

「わかる!?私、初めての学校生活で平穏無事に過ごしたいなぁって思ってたのに、めちゃくちゃになったよ。まぁ私も慣れてからは爆豪からかって遊んでたけどさ。まさか高校まで続く因縁になるとは思わないよねぇ。」

 

思い出せば懐かしい。今となってはいい思い出、とはいかないけど私の人生で衝撃的な出来事であったことは間違いない。あの時既に1年生の番長的存在になりつつあった人にいきなり突っかかってこられるんだ、びっくりもする。最初は意味わかんなかったし、面倒だったので適当に流してた。でもすごくしつこかったし、緑谷くんいじめてるの見ちゃったしで、受け身じゃいられないと思って、いつの間にかこうなってた。

 

まぁさっきのは許さないけどね。必ず負かすからね。

 

「しかし演習試験か、内容が不透明だから怖いね。」

「突飛なことはないと思うがな。」

「筆記試験は授業の範囲内から出るから何とかなると思うけど。」

「……何とかなるんや。」

「演習試験、何するんだろう?」

 

私が昔の話に浸ってる間に話は期末試験の話に移っていた。私たちからすれば今直面してる問題。緑谷くんの言う通り、筆記は勉強してればどうとでもなる。……けどやっぱり演習の方は内容が判然としなくてなんとも言えない。相澤先生もそこははぐらかして詳しく教えてくれなかった。

 

「一学期の総合的内容……」

「とだけしか教えてくれないんだもの、相澤先生。」

「今までやってきたことって、戦闘訓練と救助訓練やろ。あとは基礎トレ。」

「水穂ちゃんは何か知らないかしら?」

「んーー、相澤先生って学校のことはあまり話してくれないからねぇ。元々部外者だった私に話すことじゃなかったし、今は雄英生だから余計無理だね。」

「それもそうね。」

「演習試験がどんな形であっても、試験勉強に加えて体の方も万全にしとかない、うっ!」

 

昼食を囲んでる面々であーだこーだと頭を捻っているところに、緑谷くんの頭へぶつかってきた人がいた。食堂は混み合ってるし、そういうこともあるかと、それとなし見てみると。

 

げ、あいつは……

 

「あぁ、ごめん。頭大きくて当たってしまった。」

「君はB組の、物間くん!」

「君たちヒーロー殺しに遭遇したんだって?体育祭に加えて、注目される要素ばかり増えるよねA組。でもその注目って期待値なんかじゃなくて、トラブルを引きつける的なものだよね。怖いなぁ、いつか君たちが呼び込むトラブルに巻き込まれて、僕たちまで被害を被るかもしれないなぁ。疫病神に祟られたみたいに。」

 

……突然絡んできたと思ったらめちゃくちゃ捲し立てるなコイツ。まぁ確かに今年の1年A組はトラブル体質なところあるけどさ。こっちだって巻き込まれたくて巻き込まれてるんじゃないやい。あまつさえ疫病神呼ばわりとか煽ってるな物間ァ?

 

「あぁ、怖……ぐはッ!」

「物間、洒落にならん。飯田の件知らないの?」

 

爆豪とは違う面倒くさいタイプの物間をどう退散させようか考えていた時、まだ続けようとした彼の首に手刀が叩き込まれる。素早く美しい手刀だ、相当熟れてる。こんな綺麗な技を見せてくれたのは誰だろうって、あの子はB組の拳藤さんだ。体育祭で物間が絡んできた時と諌めてたし、多分そういう係なんだろう、大変そうだ。

 

「ごめんね、A組。コイツちょっと心がアレなんだよ。」

「アレ……」

「アンタらさ、さっき演習試験がどうこうって言ってたね。入試の時みたいに対ロボットの実戦演習らしいよ。」

「ほんと!?なんで知ってるの?」

「私、先輩に知り合いいるんだよ、そこから聞いた。少しズルだけど。」

「いやズルじゃないよ。そうだ、事前の情報収集も試験の一環だったんだ。先輩に聞けば良かったんだ。なんで気づかなかったんだ。」

「えぇ……」

「拳藤さん気にしないで、緑谷くんは時々こうなるから。」

「そ、そうなんだ。」

 

お約束のブツブツモードになった緑谷くんに拳藤さんが引いてる。しょうがない、見慣れてるA組の面々ならもとかく、初めて見た人はみんなびっくりするし。

 

「馬鹿なのかい拳藤、せっかくの情報アドバンテージを捨てるなんて。憎きA組を出し抜くチャンスだったんd……」

「憎くはないっつうの!」

 

いつの間にか復活していた物間がまたごちゃごちゃ言い出したのを拳藤さんが、手刀でもう1回沈める。あれを毎日のようにやってるんだとしたら、本当に大変そうだ。物間を物のように引きずりつつも、彼の昼食を持ちながら連れて行ってあげるのは彼女のなりの優しさかもしれない。

 

※ ※ ※

 

「「やったー!!!」」

 

期末試験に特に絶望していた上鳴くんと三奈さんが、演習試験の内容を聞いて大喜びしてる。せっかく聞いた情報はA組のみんなにも共有しといて良かった。

 

「なんだよロボなら楽勝だぜ!」

「ほんとほんと!」

「お前らは対人だと、個性の調整は大変そうだからな。」

「ああ!ロボならぶっぱで楽勝だ!」

「私は溶かして楽勝だ!」

「八百万に勉強教えて貰えば、期末試験はクリアだな!」

「「これで林間合宿はバッチリだ!」」

「良かったね、2人とも。」

 

同じ陽キャな2人は結構息があってる。林間合宿に行けない!って鬱々してたけど、持ち直したらしい。周りの人達が楽しそうなら私も嬉しい。

 

「人でもロボでもぶっ飛ばすのは同じだろうが。何が楽ちんだ、アホが!」

「アホとはなんだ、アホとは!」

「うっせぇな!調整なんか勝手にできるもんだろ!アホだろッ!……なぁ?デク。」

「……ッ!」

 

期末試験の攻略に目処が立って湧いていた教室に緊張が走る。爆豪が緑谷くんに噛み付いたのだ。私たちは彼らの確執を知っているから、とてもじゃないが無視できない。

 

「個性の使い方……ちょっと分かってきたか知んねぇけどよ。テメェはつくづく俺の神経逆撫でするな。次の期末なら個人成績で優劣がつく、完膚なきまでに差ァつけてテメェをぶち殺してやる!」

 

爆豪はそう言いながら緑谷くんへ指を指す。最近、割と大人しかったけど相当フラストレーションが溜まっていたみたい。救助訓練で緑谷くんが急成長を見せたのが、引き金になったんだ。

 

「轟、加山!テメェらもな!!!」

「「……」」

 

それだけ言い捨てて爆豪は教室を出ていく。いつもなら言い返してたけど、さすがにあの剣幕じゃ何も言えない。爆豪は本気だ、ふざけて刺激したら本当に喧嘩になりかねない。アイツと適当に言い合うのは面白いけど、お互いにラインを分かってるからであって、触れちゃいけないところがあるって言うのはある。今のはそれだ。

 

「久々にガチな爆豪だな。」

「焦燥?あるいは憎悪か。」

 

クラスのみんなもシンとなってしまった。あれを見せられたら押し黙るしかないか。

 

しかし常闇くんの焦燥、憎悪という指摘は的を得ていると思う。緑谷くんは圧倒的個性でのし上がってきてる。しかも個性の扱いも上手くなってきて、その成長速度は常人の比じゃない。格下だったはずの緑谷くんに並ばれた、もしくは追い抜かされたと爆豪は思っているんだ。それに憎しみや焦りを覚えてもおかしくは無い。

 

……期末試験で何も起こらないといいけど。

 

※ ※ ※

 

嫌な予感どころじゃない状態で迎えた期末試験の準備期間、私は雄英近くのファミレスへ来ている。そのわけは……

 

「なんでこんなレベルもわかんねぇんだ!クソ髪ィ!」

「ちょ!殴んなよ。もっと優しく教えてくれって!」

「十分優しいわボケがッ!この応用はさっき教えた基礎が分かってりゃ出来んだよ!」

「それは分かったけどよ。どう応用したらいいかわかんねぇんだよ。」

「アァ!?」

 

爆豪、切島くんと勉強会をするためである。まだ始まって30分も経ってないけど、切島くんへの爆豪の怒声が止まらない。言ってることは至極真っ当だし、教えてることもあってるんだけど、如何せんやり方が乱暴すぎる。切島くんの頭を叩いた回数は100を超えてから数えてない。

 

「あんまり怒っちゃダメだよ、かっちゃん。……えっとね、教えてもらった公式は覚えてるよね?」

「お、おう。」

「この問題だとね、式の変形がこうなってて……」

 

隣の切島くんへ、ノートに書きつつ解き方を教える。切島くんは基礎はそれほど悪くなかった。イマイチ成績が伸びなかったのは、数学で言えば応用で躓いてたからで、考え方を教えてあげれば結構解けるようになった。爆豪はちゃんと理解して頭の中に入ってるんだけど、自分ができるのが当たり前すぎて、他の人がどこで引っかかるのかが分からないのだ。あと普通に短気。

 

しかし切島くん、教えた通りに解けてるけど、さっきから目線が泳いでる。顔もちょっと赤いし、熱中症かもしれない。大丈夫だろうか。

 

「切島くん、少し顔赤いけど大丈夫?気分とか悪くない?」

「あ、いや!なんでもねぇ!大丈夫だ!」

「そう?」

 

大丈夫って言うなら大丈夫なの、か?赤いけど顔色が悪いわけじゃないし、バス移動でほとんど歩いてないらしいから体温が上がりすぎてるわけでもなさそう。頑張って勉強してるから熱くなってしまってるだけかな?

 

「ふん!どこがわかんねぇかくらい具体的に言えや。」

「教えるならそこも汲み取ってあげてこそじゃん。」

「うっせぇんだよ一々。つかなんでお前がここにいるんだよ、帰れや。」

「ひどい!爆豪が私に勉強教えるって言ったから来たのに。ね?切島くん。」

「ここで俺に振るか!?でも爆豪がそう言ってたのは本当だぜ?」

「そうかよ!」

 

自分の言ったことを思い出したらしい爆豪はムスッとした顔になる。けどまた切島くんが分からないと言い出せば、ボコボコに言いながら教え始めた。私はその時々でフォローする感じ。というかいい加減、怒鳴るのと叩くのはやめた方がいいと思う。他のお客さんと店員さんからの目線が痛い、怒られて追い出されるかもしれない。

 

そこからは数学を終えて、化学物理生物と理系科目が続く。切島くんの飲み込みは早いが、気づいたらお昼をすっかり回っていた。めちゃくちゃにやられながら勉強に集中し続けられる切島くんも凄いが、それに付き合ってキレ続けられる爆豪も凄い。よく息と喉が持つなぁ。

 

「爆豪は切島くんに教えてばっかだけど、そっちの勉強は大丈夫なの?」

「家で終わらせてきたわ!テメェに心配されるようなことじゃねぇんだよ。」

「へー、まぁ私も終わらせて来たんだけどね。」

「……いよいよなんでここに来たんだよ。アホだろ。」

「アホは余計ですー!絶対爆豪は優しく教えないだろうから切島くんを見守りに来たんですー!」

 

アホとかバカとか言わないで欲しい。仕舞いには泣くぞ、いや泣かないけど。本音を言うと、切島くんより爆豪が気になって勉強会に着いてきたところがある。もう定番だし、私だって見慣れてるけどやっぱり気にならない?爆豪が緑谷くんを敵視する理由がさ。

 

「ずっと思ってたんだけど爆豪ってさ、なんで緑谷くんを目の敵にするの?」

「あ?」

「それ俺も気になってた!なんでだよ爆豪、緑谷良い奴じゃねぇか。」

「……」

 

沈黙する爆豪。珍しい、普段ならこういう話振られたら絶対キレるのに。こっちはちゃんと知りたくて話してるから、キレて有耶無耶になるよりは全然いいんだけど。じっと目を伏せて黙ってる姿はもしかしたら見たことない。

 

「……アイツがクソナードのデクだから、」

「嘘でしょそれ。」

「んだと?」

 

爆豪が言い切る前に、それを否定する。キツく睨まれるが、どうでもいい。今の爆豪の言葉は嘘だった。いや、それも正確じゃないか、建前と言った方がいい。こう思うのは爆豪が本当にそんなつまらない理由で他者を排斥するようなヤツじゃないと思うからだ。私も知らない理由がもっと深くにある。

 

「確かに緑谷くんはヒーローオタクで、落ちこぼれなところがあったかもしれない。でもそう本気で思ってるなら爆豪は「モブ」って切り捨てるだけなんじゃない?」

「……ッ!」

「私は本当の理由が他にあるって思ってる。」

 

私に嘘だと断じられ不機嫌そうだった表情が一気に渋いものに変わる。予想は当たってる。間違いなくある、爆豪には緑谷くんを嫌うわけが別に。

 

「気色、悪ぃからだ。……昔っから、ヘドロん時も!デクのやることなすことが全部目障りで気持ち悪いんだよ!」

「……でもその原因が分からない。」

「〜〜〜ッ!……なぁ、お前はこんなくだらねぇことウダウダ言うために来たんか?邪魔してぇだけなら帰れや。」

 

爆豪から本気の苛立ちを感じる、この先に踏み込んだら許さないと。

 

……ここまで、かな。これ以上は本当にただ爆豪を怒らせるだけだ。私は2人の関係が拗れてる原因を探りたかった。前から知る友達同士には仲良くして欲しい。そうでなくともこんないがみ合った関係は不幸だ。緑谷くんと爆豪は幼なじみなんだ、家族以外でお互いのことを誰よりも良く知っている。

 

私にそういうものはない、とても羨ましくて眩しく見える。彼らは簡単には手に入らない宝物を持っている、それを自分の手で壊してしまうなんて、絶対に後悔する。

 

「ふぅ……爆豪ごめん、好き勝手言いすぎた、私帰るよ。切島くんもごめんね、勉強の邪魔して。」

「気にしてねぇって。よく分かんなかったけどよ、やっぱり爆豪と緑谷って複雑なんだな。でもどんな時でも俺は爆豪の味方だからよ、な!」

「意味わかんねぇこと言うな、クソ髪。クソメッシュも帰んならさっさと消えろ。」

「うん。じゃあね、2人とも。」

 

店員さんに自分の分を別勘定にしてもらい、店を出る。日中の暑さのピークも過ぎたのか、外はそれほど暑くなかった。

 

家路を辿りながら、爆豪とのことを考える。思っていた通り、爆豪が緑谷くんを嫌悪する理由は他にあった。彼は緑谷くんを「気色悪い」と言った。その点に注目して緑谷くんの行動を振り返ってみる。

 

普段の緑谷くんは、優しくて人のことをよく見ている。彼が誰かを悪く言ってたことは知る限りない。頭もいい、知識が豊富で洞察力に優れている。それはステイン戦でよくわかった。努力家で、粘り強くもある。特に気味悪がるところは見つからない。

 

ただ、思い当たるところはあった。

 

ヘドロヴィランの時、USJの時、体育祭の時、ヒーロー殺しの時。緑谷くんは救けなければと思ったら、自分のことを省みず飛び出してしまう。どれだけ命の危険があろうと、どれだけ傷つこうと。

 

その勇気は凄まじい自己犠牲の精神から来ている。誰だって窮地の時でも身の安全を頭に入れているはずなのにだ。爆豪はそれが、

 

……怖いんじゃないだろうか?

 

緑谷くんの捨て身の行動が恐ろしい。けど爆豪はそれに気づいていないか、認めたくなくて蓋をしているのかもしれない。彼の真意ははっきりとしない、それでもその一端を知れただけでも収穫はあったかな。

 

 

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