半分少女のヒーローアカデミア   作:Akafuku2000

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期末試験、八百万ライジング良いですよね。ヒロアカのキャラクターたちのエピソードの中でも年頃の女の子、等身大の子供って感じがします。周りがどんどん進んでいくのに、自分は何も出来ていなくて自信を失ってしまう。でも同級生の信頼を受けて、自信を取り戻して一気に才能を発揮するのかっこいいと思います。

UA5万件を突破し、3話もUAが1万を超えました。お気に入りも800件もしていただいて、ありがたい限りです。もっと面白く書けるよう頑張ります。


半分少女と期末試験2

半分少女のヒーローアカデミア

 

期末試験は3日間の筆記試験を終え、演習試験の日を迎えた。筆記試験の方はみんなかなり頑張ったようで、八百万さんに教えて貰っていた上鳴くん達は結構手応えがあったみたいだ。この様子なら筆記で赤点は出ないだろう。

 

各々のコスチュームに着替え、実技試験会場の中央広場に集まる。ここをクリアすれば晴れて林間合宿だ!

 

「では、演習試験を始めていく。演習試験でも赤点はあるから、林間合宿に行きたきゃヘマするなよ。」

 

試験監督の相澤先生の説明が始まる。でもなんだろう、他の先生が異様に多い気がする。補助役としたとしても多い、1年担当の教師のほとんどが揃ってるんじゃない?

 

「お前たちなら既に情報を手に入れて、試験内容もうっすら分かっていると思うが……」

「入試みてえなロボ無双だろ!!!」

「花火!カレー!肝試し!」

「残念!諸事情から今回の内容は変更させてもらうのさ!」

『校長先生!?』

 

どこからともなく聞き覚えのある声がすると思ったら、相澤先生の捕縛布からひょっこり根津校長が出てきた。あの中にずっと根津校長を仕舞いながら相澤先生は真顔を貫いていたなら少し面白い。しかし試験内容が変わるのか、ロボじゃなくなる、物々しい数の先生……

 

「変更って?」

「……あ、まさか。」

「これからは対人戦を想定した、より実戦よりの指導を重視するのさ。というわけで、諸君にはペアにわかれて彼ら教師1人相手に戦ってもらう!」

 

嫌な予感的中かぁ……え、本当にやるの?歴戦のプロを相手にして?みんなもこの変更には、動揺してる。私もちょっと胃が重くなってきたぞ。

 

「ペアの組み合わせと対戦する教師は決定済みだ。戦い方や成績、親密度、その他もろもろを考えて独断で組ませてもらった。じゃあ、発表していくぞ。」

 

何はともあれ、決まってしまったものはしょうがない。組むことになる人と精一杯やるだけ……ん?なんか相澤先生こっち見たな。

 

「まず、轟と加山、八百万のチーム……俺とだ。」

「……げ。」

 

轟くんと組めたのは良い、彼とは行動すること多かったし、お互いやり方は分かってる。八百万さんとはあまり接点がなかったけど、頭脳明晰なのは承知の通りだ。けど相澤先生が相手とは……この試験、生徒の実力を引き出すのに最適な教師が当てられてる。私に戦い方を教えたのは相澤さんだ、厳しくなるな。

 

「次、緑谷と爆豪がチームだ。」

「かっ……!」

「デ……!」

 

これは難しい戦いになると考えてた時、緑谷と爆豪の名前が呼ばれた。しかも相手はオールマイト。あの2人がペアなんて相澤先生も人が悪い、というのは語弊があるか。それでも彼らの仲の悪さは折り紙付きだし、そのことを考慮したってことだろうか。自分も大変だけど、緑谷くんたちも心配だこれ。

 

私たちのあとも続々と組み合わせが発表される。組まれた意図が読み取れるペアや逆に理由がさっぱり分からないペアまで様々だ。

 

「試験時間は30分、それまでにこのハンドカフスを教師にかける、それか誰かが脱出することさ。」

「今回は極めて実戦に近い形の試験です。僕らをヴィランそのものだと考えてください。」

「会敵したと仮定して、そこで勝てるならよし。だが、」

「実力差が大きい場合、逃げて応援を呼ぶのが賢明……轟、飯田、緑谷、加山、お前らはよく分かってるはずだ。」

 

勝てないなら一旦逃げろ、ヒーロー殺しのときの話か。あの時は逃げるに逃げられなかったけど、今回の試験なら逃がせば勝ちだし、実戦でも誰か一人でも応援呼びに行かせればそれだけで勝ちの目はある。

 

でもこの試験、本当にクリアできるかな。そりゃ先生たちだって本気は出さないかもしれないけど、インターンも経験してない私たちには不利な気がする。

 

「戦って勝つか、逃げて勝つか……」

「そう!君たちの判断力が試されるわけさ。でもこんなルール逃げの一択じゃね?って思っちゃいますよねぇ?そこで私たちサポート課にこんなもの作ってもらいました!」

「サポート課?」

「じゃん!超圧縮重り!」

 

そう言ってオールマイトが取り出したのは、輪っか状の重り。教師の体重、その半分をそれぞれ装着して戦うらしい。ちゃんとハンデをつけて私たちが逃げの一辺倒にならないよう勝ち筋を見せる気か。

 

「よし、チームごとに用意したステージで1戦目から順に演習試験を始める。砂藤、切島は準備しろ。他の者は試験の見学、作戦会議、好きにしていい、以上だ。」

 

さて、いよいよ演習試験が始まる。みんなの試験は気になるところだけど、私のチームは4戦目だ、見るより轟くんたちと作戦を詰めておいた方がいい。

 

「轟くん、八百万さん、演習試験の作戦なんだけど……」

 

相手は相澤先生、情けない戦い方は見せられない。

 

※ ※ ※

 

「じゃあ作戦通りに行くぞ。八百万は小物を常に作り続けろ。出せなくなったら相澤先生のいる証拠だ。視認できたら俺と加山が、」

「囮になる!」

「そうだ。俺たちが引き付けてる間に八百万は脱出ゲートに走れ。」

「あの……」

「どうしたの八百万さん?」

「……いえ、なんでもありません。」

 

なんでもないと言うけど、八百万さんは浮かない顔をしてる。何か作戦に不備があったのかな?けどこれ以上は一所に留まって話してる時間もない。相澤先生がどこから来るのか分からないから、とにかく動き続けないと。

 

路地裏を抜け、私たちは住宅街の間を走る。私は水を垂らしながら、轟くんは弱い氷結を使いながら、八百万さんは小物(マトリョーシカとのこと)を出しながら移動する。この個性使用が途切れたらすぐ近くに相澤先生がいると分かる。

 

「さすがですわね、轟さん、加山さん。」

「何が?」

「んー?」

「轟さんには、相澤先生への対策をすぐ立てられるのもそうですが、ベストを即決できる判断力があります。加山さんは、今回の場合だと轟さんの決断を迷いなく信頼し、そしてそれについていけるだけの実力があります。」

「そうかなぁ。」

「別に、俺は普通だと思うが。」

「普通、ですか。同じ推薦入学者、同じ1年生、スタートは同じはずでしたのに。騎馬戦は轟さんの指示下についただけ、本戦は常闇さんに完敗でした。加山さんはその轟さんを破って2位まで登りつめましたのに。」

 

うーん、八百万さん相当落ち込んでる。私たちのことをとても凄い人だって思い込んでるみたいだけど、彼女との間にそんなに差はないはず。轟くんだって八百万さんがいなければ、騎馬戦で1000万は取れなかった。本戦もクジで当たった以上、相性の良い悪いが出るのはしょうがない。私も爆豪の力がなければ、騎馬戦止まりだった。本戦でも途中の相性が良かっただけで、結局爆豪には敵わなかったし。

 

八百万さんも凄いはずだ、個性「創造」ほどの応用力と汎用性がある個性なんてそうそうない。それに一度聞いたことがある、彼女の個性は作る物の構造や仕組みが分からないと創れないって。そのためにどれだけの努力をしてきたのか。八百万さんには自信を取り戻して欲しい。でもどう言葉をかけたらいいんだろう……

 

「……八百万、マトリョーシカ止まってねぇか。」

「え?」

「来るよ、2人とも!」

「そう思ったらすぐ動け!」

 

不味った!!!思わず相澤先生への警戒が解けてた。上から来る先生の影を見て距離を取る。死角を突かれた、まずは出方を見ないと。

 

「加山は避けたか。先手を取られたなら回避に専念しろ、轟。」

「くっ……!行け!八百万!!!」

「は、はい!」

「ふん、そういうあれか。」

 

轟くんの声に八百万さんが走り出す。轟くんは個性を使えないので、近接戦を挑むけど、それは相澤先生の十八番中の十八番、あっという間に捕縛布で絡め取られて電線へ宙ぶらりんだ。

 

完全に油断してた!八百万さんは作戦通りに逃がせたけど、轟くんと2人で相澤先生の足止めをする予定が最初から崩れた。

 

「くそっ!」

「焦って攻撃が雑になってるぞ。」

「なっ!」

 

背面からの拳をヌルりと避けられる。抹消の個性がある今、個性はどちらも使えない。格闘のみで相澤先生とどこまでやれるか……

 

「考えるのはいいが、他の意識が疎かだ!」

「ぐぅ……!」

 

素早く伸びた捕縛布が私にも巻きついてくる。くっそ、何とか初撃は避けたのに。依然、抹消は発動中で拘束を外すこともできない。私も轟くんと仲良く電線行きだ。私が一番先生の動きが分かっていたはずなのになんてザマだ。

 

「はい、これで2人アウト。」

「何がアウトですか。こんな拘束、俺らなら簡単に外せますよ。」

「外すのは構わないが、足元には気をつけた方がいい。」

 

そう言って相澤先生が私たちの真下に撒き菱を撒く。これで安易に捕縛布を炎で焼きでもしたら撒き菱が刺さってとんでもないことになる。私の個性が戻れば、水蒸気で思いっきり吹き飛ばせるけど、上手く退かせるかどうか。

 

「しかし、お前らが囮になる作戦か。八百万の直接の戦闘力が高くないことを考えてのことだろうが、もう少し話し合っても良かったんじゃないか?」

「「……」」

 

八百万さんを追いに行ったであろう相澤先生の後ろ姿をジッと見つめる。もう少し話し合っても良かった、か。言われてみればさっき八百万さんは何か言おうとして、口を噤んでいた。もしかしたら相澤先生に勝利する作戦があったかもしれないのに、それを深く聞くことなく流してしまった。

 

「失敗しちゃったね。」

「あぁ、相澤先生の言う通りだ。八百万は何か言いたげだった。ちゃんと聞いときゃ良かったな。」

「うん。」

 

もう試験の赤点は避けられなさそうだ。私たちの穴だらけの作戦が破綻し、八百万さん単独にしてしまった以上、彼女も相澤先生に捕まって終わりだろう。一緒にヒーロー殺しからも生き延びた轟くんと組めたことで慢心していた、今回も上手くやれるって。本当に申し訳ない、もっと八百万さんの意見に耳を傾けていたら……って、あの人影は!

 

「八百万さん戻ってきたの!?」

「轟さん、加山さん、すみません!私……!」

「おい!相澤先生来てるぞ!」

「え!?……そんな!どうしたら。」

 

八百万さんが捕まらず戻ってきてくれたのは嬉しいけど、相澤先生にガッツリ追跡されてた。彼女も戻ってきたはいいが、焦りすぎてパニックになってる。でも私たちは身動きが取れない、策もない。ここは一か八か、八百万さんの作戦に頼るしかない!

 

「八百万!」「八百万さん!」

「ごめん!八百万さん、何かあったんだよね?」

「お前の意見も聞いとくべきだった、これでいいか?って。何かあるんだよな?」

「でも轟さんの策も通用しなかったのに……」

「いいから教えてくれ!こういう作戦考えるのは、八百万の方が適任だったって言ってるんだ!学級委員決めた時、お前2票だったろ?あれは俺が入れた。そういうのに長けたヤツだと思ったからだ!」

 

おや?それは知らなかった。八百万さんの1票入れてたのは轟くんだったのか。しかしその言葉を聞いて、試験が始まってからずっと不安気な表情だった八百万さんの顔つきが変わる。

 

「もう済んだ?」

「……お2人とも、目を閉じて!」

 

八百万さんの合図と共に投げられたのは、さっき作ってたマトリョーシカ。あの中に仕込みがあるんだ。彼女を信じて目を固く瞑る、と同時に目の前がカッと明るくなった。多分、人形を殻にしてスタングレネードを作ってたんだ。そんな器用な使い方ができるなんて、八百万さんはすごい人だ。

 

閃光をもろに食らった相澤先生が動けない間に、八百万さんが降ろしてくれる。これで自由になった、彼女がいるならまだまだやれそうだ。

 

「轟さん、加山さん……私、ありますの!相澤先生に勝利するとっておきのオペレーションが!」

「やっぱりあったんだね、秘策!」

「えぇ!私、考えてましたの、始めから!」

「で、そのとっておきってのはなんだ?」

「お話しますわ。でもその前にここから逃げますわよ!」

 

その掛け声を聞いて私たちは脇目も振らず走り出す。横目で後ろを確認してみれば、相澤先生が目くらましから復活してくるところだった。危ない……また逆さ吊りにされるなんてたまったもんじゃない。

 

「加山さん!相澤先生はUSJの時に負った後遺症で、個性の発動時間が短縮、インターバルが増加したと、言ってましたわね?」

「う、うん。……あぁ、そっか!自分で言っててすっかり頭から抜けてた!」

「仕方ありませんわ。加山さんは相澤先生と接していた時間が長い、個性への先入観が強くなるのも当然です。」

「それを利用すんのか?」

「いいえ。まずは先生からの視線を切りませんと。時間こそが勝利への道ですわ!」

「でも相澤先生、ピッタリ追って来てるし難しいよ。」

「大丈夫です。今から話す通りに、轟さんは常に氷結の発動確認を!発動でき次第、体育祭で見せた大氷壁をお願いします。」

「おう。」

 

ここまで来れば、八百万さんがやらんとしていることが分かる。相澤先生は抹消の個性を常時発動できない。発動切れと再発動までに必ず隙ができる。そこを突いて、轟くんがあの氷壁を出して視線を切るのだ。隙も一瞬だけど、彼にはその一瞬で十分すぎる。

 

「来たッ!」

 

ついにやってきた相澤先生が瞬きをするタイミング、それを逃さず轟くんは大氷壁で私たちと先生の間を遮った。

 

「これでしばらく時間が出来た。八百万、作戦の内容を教えてく……悪ぃ。」

「それって相澤先生の捕縛布?」

「そうですわ。素材や製造工程が分からないので、同じものは創れませんが、別の素材を織り込んだ私バージョンです。」

 

八百万さんが胸元をガバッと開けて、創造を使っているところを見てしまった轟くんはバツが悪そうだ。背を向けてるとはいえ、視界に入れないよう他所を向いてくれている。どこぞの峰田くんとは大違いである。

 

「ここは住宅街、被害は最小限にしなくてはなりません。相澤先生の捕縛布を使った素早く、捉えずらい動き。私の作戦でそれを攻略します。」

「できるの?」

「もちろんです。まず、私が創ったものですが、形状記憶合金が織り込んであります。加熱によって元の形に復元するこれで相澤先生を拘束する、轟さんと加山さんの炎熱が作戦の要になりますわ。」

「けど、どうやって先生に食らわせるんだ。」

「それは射出装置、カタパルトに任せます。私が部品を創りますので、組み立てを手伝ってください。」

 

八百万さんの指示に従い、創られた部品からカタパルトを組み立てる。こういうものにも知識があるとは……私もカタパルト自体は知ってるけど、どうやって作るかなんて知らなかった。八百万さん様々だ。

 

しかし、これを作って相澤先生に投擲するのはいいけど……

 

「作戦はわかったけど、このまま運んだら相澤先生に警戒されるんじゃない?」

「そこも考えてあります。私が3人分の布を用意いたしますので、それを隠れ蓑に移動します。そしてあえて相澤先生に見つかりますわ。」

「自分から見つかりに行くのか。」

「えぇ。ですが、それはブラフ。先生は必ず捕縛布で捕まえようとしてくるでしょう。そこをこのマネキンで等身を誤魔化し、空振らせます。」

「さっきから創ってたのは、そのためだったんだ。」

「はい。飛び出す前ですが、加山さんは個性の応用で水蒸気を出せますわね?動き出したその時だけで結構ですので、煙幕のように無作為に広げられますか?」

「できる、と思うよ。そういう使い方したことないけど、いつもは水蒸気に指向性を与えてるから、それを無くせばいいだけだし。」

「ありがとうございます。」

 

作戦も固まった。相澤先生の言う通り、八百万さんと話し合って良かった。この策は、私や轟くんだったら思いつかなかったし、彼女がいなければそもそも実行することすら出来なかった。餅は餅屋、何でもかんでも自分でやるより、より上手くできる人がいるなら頼るべきだ。

 

「これで準備は完了です。勝負は一瞬です、お2人ともよろしいですか?」

「あぁ、文句なしだ。」

「私も!絶対成功させて、3人で合格しよう!」

「では……始めます!!!」

 

一斉に布を被り動き出す。私は事前の打ち合わせ通りに煙幕係だ。普段なら推進力に変えるこれを爆発させることなく、ひたすらにモクモクと辺りに広げる。

 

煙幕と氷壁の端から出てきた私たちを確認して、追ってくる人の気配がする。相澤先生が来たと認識した瞬間、被っていた布ごと捕縛布がマネキンに巻き付く。……かかった!

 

「上半身だけ人形か!?」

「……今ですわ!」

 

唐突に現れたカタパルトに警戒して、相澤先生が飛び退く。そこへ八百万さん特製の捕縛布が射出された。それを見て、炎の溜めに入る。完全に作戦がハマった、この期を逃す訳にはいかない!

 

「お2人とも、地を這う炎熱を!!!」

「行け!」

「やぁ!」

 

合図を受けて、轟くんと一緒に炎を放出する。その熱に反応して、ただの布にしか見えなかったそれが形を変え始める。

 

「相澤先生、ニチノール合金はご存知ですか?熱によって形を取り戻す形状記憶合金……私たちの勝ちですわ!」

「……ッ!」

 

完全に形を復元した捕縛布に相澤先生が拘束される。ガッチリと体に両手を縛りつけられ、身動きが取れない。

 

八百万さんの作戦勝ちだ!

 

 

※ ※ ※

 

動けなくなった相澤先生にハンドカフスをかける。これで勝利条件を満たした、後はアナウンスを待つのみだ。

 

「八百万の作戦通りだったが、こんなにすんなり行くか?」

「正直、私も不可解ですわ。」

「どうしたの2人とも。」

 

どこも変なところはなかったと思う。八百万さんの策はバッチリ決まったし、実際こうして相澤先生を捕まえられた。

 

「……カタパルトの発射で私はミスを犯しました。」

「え、そうなの?」

「そうです。相澤先生を気にするあまり、トリガーに触れる手が空振ってしまいました。先生はそれに気づいた上で距離を取った。あの隙に防げたはずなのに。先生は故意に策に乗ったように見えました。」

「控えてた轟と加山を警戒しただけだ。2人は布で隠れてた、特に轟の氷結は厄介だったからな、凍らされると思った。俺が最善手だと考えて引いて、それが八百万の策略通りだったわけだ。」

 

私が見えてなかったところで、そんなことがあったんだ。相澤先生が飛び退くところと射出されるところしか見えなかったから、てっきり全部上手くいっていたと思った。

 

でも相澤先生の言ってたことは多分全部が本当じゃない、ずっと一緒に暮らしてきた私には分かる。轟くんを警戒したのは本当だろうけど、実際はこれほどまでの作戦を練って、実行して見せた八百万さんに花を持たせてくれたんだ。だから隙を見つけつつも、邪魔しなかった。自信を失くしていた八百万さんを立ち直らせる合理的虚偽ってやつ。けど、これをわざわざ言うのは野暮だ、私の内に留めておこう。

 

「八百万の言った通り、時間があればだった。……ありがとな。」

「あの捕まった状態から勝てるなんて思わなかった。ありがとう八百万さん。」

「……う、うぅ!」

「な、泣いてる!?」

「どうした、口抑えて。気分悪いのか?」

「なんでもありませんわ!」

 

八百万さんの方見たら、ポロポロ泣いててびっくりした。どこか悪いとかじゃなくて、相澤先生に認められたのが凄く嬉しかったんだと思うけど。

 

「吐き気なら足の甲にあるツボを押すと……」

「なんでもありませんから!」

「轟くん……それは違うと思うよ?」

「そうなのか?けど八百万のやつ急に泣き出して、どっか痛えんじゃねぇか?」

「……はぁ。」

 

前々から思ってたけど、轟くんってものすっごい天然なんじゃない???

 

 

 

『轟、加山、八百万チーム、条件達成』

 

 

 

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