ついに僕のヒーローアカデミアが8月5日のジャンプで完結してしまいました。10年の連載、ヒロアカの物語を締めくくるに相応しいラストでした。人生の中でずっと忘れられない最高の作品だったと思います。
半分少女のヒーローアカデミア
朝日が昇る午前5時30分、林間合宿2日目である。体操服に着替えた私たちA組は建物前で集合していた。みんな何とか起き出してきたが、ほとんどがまだ眠い目を擦っている。私?私は家の炊事洗濯掃除をしないといけないので、いつも早起きしてるから慣れてます。
「おはよう諸君、今日から本格的に強化合宿を始める。目的は全員の強化、そして仮免の取得。力を増しつつある敵に立ち向かうための準備だ。心してかかるように。」
そう前置きを置いて、相澤先生が爆豪へボールを投げ渡す。個性把握テストで使った測定用のボールだ。試しに投げてみろとのこと。入学してから色々あったし、これは前の記録を超えるんじゃないかってみんな期待してる。
「よっこら、くたばれえええ!」
爆豪の掛け声は聞かなかったことにするとして、投げたボールは以前と同じように爆破の勢いを受けて綺麗に飛んでいく。美しい軌跡だ、これはいい記録出たかな?
「709.6メートル。」
「なッ!?」
「あれ?思ったより……」
「伸びてないね。」
「そう、ここからが本題だ。君たちがこの合宿で何を強化するのか……今日までの3ヶ月間、精神面、技術面の成長、多少の体力的な成長がメインで、個性はそのものはほとんど育っていない。なのでこれからは君らの個性を伸ばす。死ぬほどキツいが……。」
相澤先生がとても悪そうに笑う。
「くれぐれも死なないように。」
1年A組に再び受難が襲いかかる。
※ ※ ※
いよいよ始まった強化合宿、日は高く昇り絶好の訓練日和である。
──我々A組は既に地獄絵図となっていた。
訓練用に切り開かれた森のあちこちで個性が炸裂し、それと同時に耳を塞ぎたくなるような悲鳴がこだましている。部外者が見たら速攻で訴えられそうな状況だが、これはどうしようもないのだ。
個性とは身体能力、比喩ではなく正しくそのままの意味だ。筋肉を酷使すれば筋繊維が千切れ、修復されることでより太く、強靭になっていくように、個性も使えば使うほど成長していく。個性自体も強くなるし、その使用者も個性への耐性が上がっていく。今、A組全員が血と汗と涙を流しながらそれを目指して頑張っている。
しかしこれは「圧縮」訓練、本来なら高校3年間を通して鍛え上げていくところをこの合宿期間だけで仮免レベルに持っていこうとしてる。故に私たちはありえないレベルのハードトレーニングを課されてる。本当に死にそう、これ。
一部の人は拷問の域に達してる。お茶子さんはウォーターバルーンのようなものに詰められ、個性を使い続けながら山を転げ落ちてる。個性強化と酔ってしまうことに耐性をつけるためらしいけど、それにしたって乱暴すぎる。まだ吐いてないことだけでも褒めてあげて欲しい。
そして1番可哀想なのが上鳴くん、大容量バッテリーに感電させられてるんだよね、あの子。アホになることへの対策にはとにかく電気浴びるしかないが、あれは感電死するよ普通なら。岩山の上でバリバリと光る電光が眩しい。
他の面々も多くが苦痛に顔を歪ませながら必死に個性を使っている。なんなら今目の前でプッシーキャッツの1人である虎さんが、緑谷くんをボコボコにしてるし。
そんな地獄の一丁目みたいな状況だが、誰も怪我には至っていない。雄英教師は相澤先生とブラドキング先生しかいないのにである。そのわけはプッシーキャッツさんたちにある。サーチのラグドールさんとテレパスのマンダレイさんがいるからだ。サーチの個性が全生徒の居場所を把握、テレパスで複数人へ一度にアドバイスを出す。常に指導と監視ができるので、こんな無茶な訓練が成り立っているのだ。
ちなみに土流のピクシーボブさんは訓練に適した地形の形成、軟体の虎さんが増強型の生徒をシバキあげるという割り振り。
ここまでの一連の流れを見て、少し遅れて来たB組は全員顔面蒼白になってる。そしてそんなふうに私が周りを眺めてられるのは、無様に地面へ伸びているからである。
……だって私の相手、虎さんだから。
「そこの貴様!いつまで寝ている!我ーズブートキャンプは終わっていないぞッ!」
「すみません!」
「うむ、立ったな。ならかかってこい!」
「はい!」
ずっと寝転がってるわけにもいかず、虎さんに叩き起される。課された訓練通り全身へ炎を纏って、彼?に立ち向かう。
私が行っているのは、一番の課題である炎の克服。炎の個性は連続使用が出来ないこと、制御が甘いことをこの訓練で一気に解消してしまおうという狙いだ。炎を纏うことで無理やりにでも使い続けさせ、使う範囲を自分の体だけに限定させ続ける。
「炎を纏う!それをムラなく最小限、そして無意識に行えるようになれ!できるようになった頃には炎の熱さ程度、そよ風になっているはずだッ!」
「んな無茶な!」
「無茶ではない!自分の個性に焼かれる間抜けなヒーローになるつもりか?まぁその体たらくでは有精卵止まりだがな!」
ボコボコに殴られるし、ボロクソに言われるし悔しさで喚き散らしたいが、全ては自分の至らなさなので何も言えない。ひたすら打ち込み続けるしかない。
そもそもこっちは精一杯やってるのに、虎さんにはかすりもしない。拳も蹴りもグニャリと体を曲げて避けてしまうのだ。格闘戦で炎を纏うのは、個性の制御に相当意識を割かなければ維持出来ない。そんな半端な状態で同格ならともかく、ヒーロー殺しのような格上には、手も足も出ないことは痛いほど知っている。虎さんとの訓練は、言わばその時の再現なわけだ。
圧倒的格上と訓練することで格闘戦の精度を上げ、それ以上にそこへ合わせる個性を鍛え上げる。今まで慣れることを倦厭してきたツケか、体力も気力もガリガリ削られていく。
「甘い甘い甘い!個性の制御に意識を割かれすぎだ!欠伸が出て我は寝てしまうぞッ!」
「はい!……うぷ。」
「吐きそうか!耐えろ!限界を超えなければ、炎の克服など夢のまた夢だぞッ!」
「こなくそぉ!」
「だから甘いと言っているだろう!」
「あがッ!?」
思いっきり殴りつけられ、その勢いのまま後ろの木へ体を打ち付ける。体力の消耗と個性のキャパ、殴られた衝撃で頭がぐわんぐわんする。立ち上がれなくて地面に手をついた視界は世界が回っている。炎を纏っていた部分はほんのり赤くなっていた。
──ほんとに死ぬか死なないかのギリギリだ。
「ふんっ!もう立てんか、貴様には特製の氷風呂を用意した、それで体を冷やせ。冷えたら直ぐに戻ってこい!いいな!」
「……は、はい。」
「声が小さい!!!」
「はい!!!!!」
「よし!」
めちゃくちゃ苦しいけど、これも強くなるため。強くなるためッッ!
Plus ultra!!!……あ、やっぱ吐きそう。
※ ※ ※
訓練開始1日目は、A組B組の全員がボロ雑巾みたいになるまで続き、日が暮れ始めた頃、やっと終了が告げられる。訓練中に戻すという醜態は何とか避けられた。
誰もがそのまま布団に倒れ込みたいと思っているだろうが、そこはプッシーキャッツが許さない。今日からは自分たちの飯は自分たちで作らねばならんのだ。本日の献立はカレー、炊飯組とカレー組に分かれ、作り始める。
飯田くんが「最高のカレーにしよう!」と発破をかけてくれなかったら誰も動けなかったかも……
「加山、玉ねぎの皮むき終わったぜ。」
「ありがとう、上鳴くん。そこに置いといて。」
「OK……って、すっげぇ!あの人参の山もうこんだけ切ったのかよ!」
「まぁね、料理は好きだから。」
「料理のできる女子、いいですなぁ。そしてその手料理をオイラは食える!」
「……峰田くん、鼻の下伸ばしてる暇あったらじゃがいも洗ってきて。晩飯抜きになりたい?」
「す、すんません。」
全く油断も隙もないんだから。にしてもクラス全員分の食事を仕込むとなると大変だな。昨日の晩御飯を出してくれたプッシーキャッツはすごい。
プッシーキャッツの方々の協力に感謝しつつ、残りの人参を切っていると釜戸
の方にいた瀬呂くんから声がかかる。
「加山、飯盒の水加減ってこんなもんか?」
「うん、いいと思うよ。」
「これってどうやったら炊けたってわかるん?炊飯器みたいにピーって鳴らんし。」
「えっとねー、私も詳しくないけど、しばらくしたら吹きこぼれてくるから、それが無くなったら使ってない薪とかで触ってコトコトしてないか確認して。振動止まったら火から上げていいと思う。」
「へー、そうなんや。」
「あと炊き上がった後に逆さにして蒸らすと美味しくなるんだって。」
炊飯組に飯盒炊飯の仕方を教えて、自分の作業に戻る。これで微妙な炊きあがりの米で渋い顔には誰もならないでしょう。暇つぶしにキャンプ飯の本読んどいて良かった。……キャンプしたことないけど。
その後は私が料理出来るってことがB組にも知られてしまい、あっちこっちに引っ張りダコ。みんな普段自炊することも少ないので、調理が拙い子が多かったのだ。玉ねぎが目に染みると泣きつかれ、おっそろしい包丁の持ち方してるのを慌てて止め、鍋が焦げたと聞けば駆けつけてフォローをし、めちゃくちゃ大変だった。
渡された材料だけで作って、本当なら色々手間を加えたかったけど、ひとまず完成した、加山印の特製カレーである。焚き木なので火加減が難しくて苦戦したが、まぁまぁな出来栄えだと思う。
だって、
「うっめえええ!」
「家で食うのと同じ!いやそれ以上だな!」
「これが家庭の味ですのね。」
みんな凄く食べてくれるから。
瀬呂くん、切島くんあたりが褒めちぎりながら食べまくってる。おかわりし続けてるけど、あまり食べすぎると体に毒だよ。まぁ好みにあったようでこちらとしても嬉しい。あと八百万さんも見た目とは裏腹によく食べる。
「水穂、おかわり!」
「こっちも貰えるかな?」
「俺もくれー!」
「はいはい順番ね。」
さっきついだばかりの皿を空にした三奈さん、尾白くんが皿を渡してくる。上鳴くん、顔にご飯粒付いてるよ。
たっぷりとよそってあげれば、3人とも目をキラキラさせて受け取るんだから、可愛いもんである。しかし忙しすぎて私、食べる暇ないな。
「いやー、A組に加山いて良かったな!」
「ほんとにな!これはもうA組の母ちゃんだな!」
「母親はみんなちゃんといるだろ。」
「おい轟、ノリ悪ぃぜ!」
「私はこんなに大きな子供は持った覚えはありません。」
「加山もそう言ってるぞ。」
「天然かよ!」
上鳴くんが私を勝手にA組の母親ポジに認定しようとしてくるが、丁重にお断りする。私はまだ親になるつもりはないので。轟くんもツッコミ入れてくれてありがとう、ズレてるけど。
みんなで賑やかに食事してる中、そんな輪から離れていく人が見えた。
「緑谷くん、どこ行くの?カレー持ってるけど。」
「えっと、ちょっと洸汰くんのところに。さっき森に入っていくの見えてさ、晩御飯食べてないみたいだったし。」
「そうなんだ、なら私も行く。」
「でも加山さん全然食べてないんじゃ……」
「大丈夫だって。話、しに行くんでしょ?」
「……うん。」
昨日、緑谷くんから聞いた洸汰くんの事情は重い。両親を失った深い悲しみと周りへの絶望、あの子の心は解き方が分からないほどぐちゃぐちゃになっている。
部外者の私たちが少し話をした程度でどうにかなる問題とは思っていない。けど今の洸汰くんはあまりにも辛そうだった。まだ小さいのに、あんな表情になってしまうのかと悲しくなるくらいに。
※ ※ ※
洸汰くんの足跡を追いかけて森を進む。足跡は山を登るように進み、頂上にほど近い開けたところに彼はいた。
「洸汰くーん!」
「カレー持ってきたよ!」
「お前らなんでここがわかったッ!」
私たちが声をかけた途端、敵意むき出しで叫ばれる。ここは洸汰くんの秘密基地だったようで、早く出て行けと睨まれた。
「頭おかしいよ、お前ら。個性伸ばすとか言って張り切っちゃってさ。気味わりい、力を見せびらかしてそんなに楽しいかよ。」
「……」
嫌われてるなぁ。この分だと昼間の強化訓練も見ていたんだろう。ヒーローを嫌っている洸汰くんには、必死になって訓練してる私たちは、さぞ不愉快に映ったに違いない。
「……君の両親さ、もしかして水の個性のウォーターホース?」
対話そのものを拒否している彼にどう話しかけたものかと悩んでいた時、緑谷くんが切り込んだ。
「なん、で……マンダレイか!?」
「あっ、いや、えっと……ごめん、流れで聞いちゃったんだ。残念な事件だった、覚えてる。」
「……うるせぇよ。イカれてんだ、みんな。馬鹿みたいにヒーローとかヴィランとか言って殺しあってるだけじゃんか。個性なんてひけらかしてるからこうなるんだ、バーカ。」
殺し合い、か。それはヒーローの本質ではないけど、事実なのは間違いない。ヒーローとヴィランの闘争は一面を切り取れば、ただの殺し合いだ。ヴィランに両親を殺された彼には、余計にそう思えるんだ。
「……なんだよ、用ないなら出てけよ!」
「あ、あの!友達……僕の友達さ、親から個性が遺伝しなくってね。」
「は?」
緑谷くんが唐突に話し始めたのは、友達の話という体の緑谷くん自身の話だった。無個性で生まれ、しかしどうしようもなくヒーローに憧れてしまって、幼いながらに絶望を知った過去の話だ。
「個性に対して、色々な考え方があると思うけど、そこまで否定しちゃうと君が辛くなるだけだよ。」
洸汰くんは、ヒーローを、個性社会を憎んでいる。それは何故か?個性なんてものがあるからヒーローとヴィランが誕生し、そのために両親が死んだと思っているからだ。
個性が恨めしい、しかし洸汰くんだってきっと個性を持っている。体の一部である以上、捨てることは出来ない。それを否定することは自分の存在を否定しまう。だから緑谷くんはそういうんだろうな。
「えと、だから……」
「うるせぇズケズケと!出てけって言ってんだろ!」
「ごめん、取り留めのないことしか言えなくて。」
それでも強い拒絶を返す洸汰くんに、緑谷くんは言葉に詰まってしまった。「カレー置いておくね。」とだけ言い、去ろうとする。
けれど私はもう少し洸汰くんと話したい。だから緑谷くんへこっそりと耳打ちした。
(緑谷くん、私はまだ粘ってみる。)
(でも……)
(上手くやれるかわかんないけど、やれるだけやってみるから。)
(……わかった。)
緑谷くんの後ろ姿を横目で見送り、洸汰くんへ向き直る。すっごく怒ってるなぁ。
「……お前も帰れよ。」
「まぁまぁ、カレーでも食べながら私の話も聞いて欲しいな。」
「ふんっ。」
出て行けとは言われなかったが、洸汰くんはカレーを持って遠いところに陣取る。話なんて聞く気は無いって意思表示だ。怒鳴られなかっただけマシか。
「洸汰くん、さっき私たちが個性鍛えてるのを気持ち悪いって言ってたよね。」
「……」
「頑張る理由は人それぞれだけど、私の場合は守りたいって言うのと恩を返したいって言うのがあるんだ。」
「……守る?恩返し?なんだよそれ。」
お、返事してくれた。ちょっと興味持ってくれたかな?
「私ね、親がいないんだ。お母さんは病気で、お父さんはヒーロー活動中にヴィランと相打ちになった。今はヒーローの保護者と暮らしてる。」
「それで?俺の気持ちがわかるなんて薄っぺらいこと言うのかよ。」
「言わないよ。私と洸汰くんは違う人間だから、境遇が似てても理解出来るなんて思わない。」
「じゃあ何がいいたいんだよ。」
「ごめんごめん、前置きが長かったね。守りたいって思う理由は、保護者のヒーローが私を必死に守ってくれたからなんだよ。」
「……」
洸汰くんは何も言わないが、カレーを食べる手は止まっている。話を聞いてくれる気にはなってくれたらしい。
「洸汰くん見て。あーそこからじゃ見にくいか。……なら、そーれ!」
「……!」
空に向けて太めの水流を放つ。大したことはしてないけど、洸汰くんは結構驚いたようで、目が見開かれてる。昼間の訓練を見てたなら当然だ。
「お前、俺と同じ……でも昼は炎使ってただろ。」
「合ってるよ。じゃあこれも見て。」
そう言って指先に炎を灯す。それを見て彼の目はますます見開かれる。
「2つ個性があるんだよね、私。」
「すげ……って違う!結局お前も個性見せびらかしたいだけだろ!2つも個性あるなんて気持ち悪ぃ!」
「そう、気持ち悪いよね。」
洸汰くんの反応はストレートで素直だ。個性は1人に1つまで、子供でも知ってる常識だ。よっぽど稀有な例じゃない限り、2つ以上の個性を持ってるなんて異端でしかない。
「まぁ色々訳があるけどそこは割愛。こんな気持ち悪い体の私だけど、これを制御するの結構大変だったんだ。暴走させがちでね、そんな時に命懸けで救けてくれたんだよ、そのヒーローは。」
「それがどう守りたいって繋がんだよ。」
「それはね。失意の底にあった私を救いあげてくれたヒーローに憧れたから。私も同じように絶望している人の手を掴める人になりたいって思った。そのために、守りたいものを守れるようになるために、私は頑張ってる。」
「……チッ、そんなもんか。」
「うん、そんなもん。」
ドライな返答をする洸汰くんへ私は笑いかける。
そう、そんなものなのだ。自分の理想なんて赤の他人である彼からしたら至極どうでもいい。届いたかは分からないが、彼は話を聞いてくれた。今はそれで十分。
「あと最後にひとつ。」
「まだあんのかよ。」
「今の私じゃ洸汰くんの苦しみを理解してあげられない。それが余計に辛くさせるってことが分かってるから。でもね、君が救けを求めた時、必ずヒーローはやってくる。職業としてのヒーローじゃない、洸汰くんの英雄になる人がきっと君の辛さも打ち砕いて手を掴んでくれる。」
「……んなの求めてねぇし。」
「ふふ、どうだろうね。もしかしたら私かもしれないよ?」
「きっっも!話はもう終わったんだろ!帰れ!」
「はーい。じゃ、遅くならないようにね。」
言われるがまま秘密基地から退散する。帰ったらマンダレイさんに洸汰くんの居場所は伝えておこうか、心配してるだろうし。
結局、洸汰くんの悲しみや絶望を払ってあげることは出来なかった。そりゃそうだ、ほぼ初対面の奴と話して解決できるんなら彼は初めから苦しんでなどいない。ただ彼の前にはもう手は差し伸べられていると気づく、僅かなきっかけにでもなれれば幸いだと思う。