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半分少女のヒーローアカデミア
1次試験を突破し、私と轟くんは控え室へと移動していた。扉を開けるとそこにはもう結構な人数が来ている。私たちが通った時点で50人は超えてたし、それも当然か。
「A組のやつはまだ来てねぇみたいだな。」
「だね。もう半分切ってるけど、みんな大丈夫かな。」
「わかんねぇ。でもアイツらなら大概大丈夫だろ。」
「それもそっか。向こうでターゲット外せるらしいから早く行こ?」
「おぉ。」
2人してターゲットを外しに行く。これは専用の磁気キーがないと取れないみたいで、謎にハイテクだ。そんなふうにして控え室を歩いていると、見知った顔を見た。士傑の夜嵐イナサ、コスチュームだけどあの大柄な体格と様になった学帽ですぐに分かる。
あ、こっち見た……なんで睨まれる?あぁ、私じゃなくて、隣の轟くんを見てるのか。2人は推薦入試で会ってるだろうし、その時なにかあったんだろう。前までの彼は凄く尖ってたから、怒らせるようなことを言ってしまったのかもしれない。
「轟くん、夜嵐くんと何かあった?」
「いや……覚えがねぇな。引っかかりはあるんだが。」
「ふーん。」
あんなキャラが濃い人、そうそう忘れられない気がするけど、覚えてないかぁ。向こうも興味を失ったか、他校の人に絡んで引かれてる。デカい声かつ自分のペースに巻き込んでくるから、相手にすると疲れそう。
他のA組の状況は気になるけど、みんな通ることを信じて、ゆっくり待とう。
※ ※ ※
私たちが通過してから10人、20人とさらに通過者が増えていく、その中には何人かA組の面々がいた。その人たちと1次試験突破の喜びを分かちあってる間にも合格の枠はどんどん埋まっていった。しかしそれでも中々、A組集合とは行かず、ついに定員の100人へと達した。
結果は……
「よっしゃあああ!」
「A組全員、1次通っちゃったーーー!」
「すげぇ!こんなんすげぇよ!!!」
「誰も落ちなくて良かった……」
ホッと胸を撫で下ろす。飯田くんたちを始めとしたギリギリまで残ってた人たちは本当に滑り込みだったので、とてもヒヤヒヤさせられた。次がどうなるかは分からないけど、とにかく全員集まれて万々歳だ。
『では、1次選考を通過した皆さん、これをご覧ください。』
喜びもそこそこに、目良さんからのアナウンスが始まる。1次試験と同じモニターに表示されているのは、私たちがさっきまで競い合っていた試験会場だ。
みんなして試験会場がなんなんだろうと眺めていたとき、それは……
派手に爆ぜた。
全体のありとあらゆるところが次々に爆破されていく。地形は崩れ、建物は倒壊し、ステージはさながら災害、事故現場のようだ。
「ど、どうして……?」
大量の疑問符が浮かぶ。
やらしい話だが、このステージを作るのにそれはそれは大層なお金がかかっているはずだ。競技場に建ててるので、建築から撤去まで考えると想像のつかないほどの大金。その結晶が容赦なく瓦礫の山へと変わっていく。
税金なんて消費税くらいしか出したことのないので、なんとも言えないけども、国へあらゆる税金を払ってる人達が見たら白目を剥いてしまうんじゃないかと言う惨状である。
ヒーロー公安委員会、思い切りが良すぎると思う。
受験生全員が唐突の事態に引いてる中、粛々とアナウンスは続いていく。
『次の試験でラストです。皆さんには、これからこの被災現場で、バイスタンダーとして救助演習を行ってもらいます。』
「「パイスライダー???」」
「バイスタンダー、現場に居合わせた人のことだよ。授業でやったでしょ?」
「一般市民を指す意味でも使われたりしますが……」
『1次選考を通過した皆さんは、仮免許を取得していると仮定し、どれだけ適切な救助を行えるか、それを見させていただきます。』
最終選考の内容は「救助」、HELP US COMPANY (通称HUC) の方々が要救助者に扮して、会場全体に散っている。HUCの人たちを救助し、その過程を見て私たちに点数が付けられていく。最後に点数が合格点に達していれば、晴れて仮免試験は合格となる、とのこと。
「救助演習か。」
それ自体は授業で何回かしたことあるけど、試験においてその難易度は何段階か上がる、と思う。基礎の練習や勉強は大事だが、災害現場はケースバイケース、実際どういう状況になっているかは、そこに行かないと何も分からないからだ。故に救助というのは、どれだけ経験を積んできたかに左右される。
私たちは1年生、ほとんどが現場の経験なんて雀の涙ほどしかない、救助活動なんてもっと少ない。けど、周りは2年生、3年生、私たちより多くの経験をしてきた。その中で試験に臨まないといけないのは……結構厳しくなるな。
「おい、坊主のやつ。俺、何かしたか?」
「……ほほう?」
私が次の試験をどうしたもんかと、ウンウン考えていたら、隣の轟くんがおもむろに夜嵐くんへ話しかける。さっき睨まれたの気になってたか。
「いやぁ、申し訳ないっすけど、エンデヴァーの息子さん。……俺はあんたらが嫌いだ。あの時よりいくらか雰囲気変わったみたいっすけど、あんたの目はエンデヴァーと同じっす。」
「………」
それだけ言って士傑の人に呼ばれた夜嵐くんは去っていく。
エンデヴァーが、轟くんが嫌い……まぁエンデヴァーはあまりファン人気が高いヒーローとは言えないけど。なんというか、人気的な好き嫌いというより、存在そのものを嫌って否定しているような……うーん?
「親父の、目?」
「気にすることないよ。親子でも別々の人間なんだから。似てても、ただそれだけだよ。」
「あ、あぁ。」
エンデヴァーとの確執、そのデリケートな所を突かれてたので、一応フォローするが、彼は浮かない顔のままだ。
『ヴィランにより、大規模テロが発生。規模は○○市全域、建物の倒壊により傷病者多数。道路の損壊が激しく、救急先着隊の到着に著しい遅れ。到着するまでの救助活動は、その場にいるヒーローたちが指揮を執り、行う。』
最終選考が始まる。
轟くんのことは、今は置いておこう。ほとんど現実の災害をなぞってるこの試験、関係ないこと考えてる暇はない。
『1人でも多くの命を救い出すこと。それでは……スタートォ!!!』
ここを突破して、仮免許を取るんだ!
※ ※ ※
合図と共に受験生が一斉に動き出す。
私たちの救助活動を見て採点するって言ってたけど、どういう基準かは一切明かされなかった。合格点だって、加点式なのか減点式なのかも分からない。分からない以上はとにかく体を動かすところから始めよう。
私の個性は増強系でも索敵系でもない。瓦礫が複雑に絡んだ場所だと本領を発揮できなさそうだ。炎に耐性があるから火災現場があれば突っ込んで行けたけど、演習レベルで火事を起こすのはHUCの人たちに及ぶ危険が大きすぎる。だから、この規模のテロでも火災は用意されてない。
なら活かせるのは、この機動力と水流操作だ。向こうに水場があったはず、みんなは一旦市街地に行くようだけど、私はそっちに行かせてもらおう。
「飯田くん!私、水場の方に行ってみる!」
「何!?……いや、一塊とは言ったが全員が全員固まっている必要もないか。わかった!こちらも後で誰か送ろう!」
「ありがとう!」
A組を率いていた飯田くんへ声をかけ、私は目的地へ一気に加速する。圧縮訓練で身につけたこの移動方法、凄く便利だ。纏炎状態でしか使えないのはネックだけど、スピードは申し分ない。推進力は足からの蒸気噴出に任せて、考えるのは手のひらから噴出して方向転換することだけなので楽だ。普段から個性使用に細かい水蒸気爆発を使っててよかった。
え?その方向転換を身につけるのに、爆豪のアレ真似したんじゃって?……絶対バラしちゃダメ、アイツキレるから。本人が気づいたらこれで逃げさせてもらう。
「課題は通常状態で使えるようにすることかなっと。……見つけた!」
水場の上空にたどり着き、状況を確認する。かなりの人数だ、でも私の個性ならやれる!
「救けてくれーー!」
「大丈夫です!岩に掴まってそのまま動かないでください!」
地上に降りて、すぐに水面へ手を入れる。この池は擬似的に作られたもの、水深は深くない。なら水が無くなっても体を打つ心配ないか。
一帯の水を個性の支配下に置く。私が出したものではない水は、触れないと操れないけど、この量でも操る範囲を限定すればわけない。
「よいしょ!」
救助者に向けて一直線に水を退かす。あとはあそこまで走るだけ、触れたあとならしばらくは水も留めて置ける。
「救けに来ました!打ったところは?痛む箇所はないですか?」
「あ、ありません。」
よし、受け答えに問題はなさそう。見る限り、出血も外傷もないね。……でも身体が冷たい、体温が下がってるな。
私に掴まらせて岸まで移動する。救護所が設置されてるだろうし、早く行きたいけど先に暖めてあげる方がいい。
「ちょっと失礼しますね。」
「なにを……」
HUCの方の首筋に触れ、集中する。今から私の熱をこの人に分ける。感覚としては戦闘訓練で氷を溶かした時が近い。だけど、それよりずっと低い温度でやらないといけない。本来なら難しい個性使用だが、圧縮訓練で炎の制御に力を入れてたから炎に変えるまでの温度なら結構自由に操れるようになってる。
「あれ?暖かい。」
「私の個性で体温を上げました。気分はどうですか?」
「良くなったよ、ありがとう!」
「いえいえ。」
しかし、1人の救助だけで時間食っちゃった。今から全員にやろうとするなら、ロスが大きすぎる。火を起こして、そこで温まってもらう方が効率いいな。
加えて、この人をすぐに救護所へ連れていきたいけど、まだ要救助者は残ってる。まとめて救けるには手が足りないか。単独行動はちょっと短絡的だったな……
「水穂ちゃん!遅くなっちゃったわね!」
「梅雨ちゃん!」
どう動くべきか思案しているところへ、梅雨ちゃんが駆けつけてくれた。轟くんも葉隠さんも一緒だ。水に強い梅雨ちゃんと炎を出せる轟くんがいるなら、ここは任せられる。
「他にも要救助者がいる!梅雨ちゃんはそっちへ!」
「ケロッ!そのつもりよ!」
「葉隠さんは轟くんと燃えるものを集めて!水難救助者は体が冷えてるから暖めないと!」
「わかった!」
「俺は火種係だな。」
「私はこの人を救護所まで連れてくから、ここは一旦任せた!」
救助者役の人を担いで水場を離れる。個性使って移動するのは、揺れが激しいからやめておこう。この人は大丈夫だけど、一刻を争う重症の場合もある。今の練度じゃ、こういうときに使えないのもネックだな。
瓦礫の隙間を抜いつつ、できるだけ最短距離で救護所までを賭ける。途中からは瓦礫が無くなってて、かなり動きやすくなってた。救護所に着くまでの導線作りも現場では確かに大切だ。
「救助者です!受け渡しをお願いします!」
「来たか、俺が見るよ。状態を教えてくれ。」
「水難救助です。水は飲んでなくて、外傷もありません。体温が下がってたので一応暖めましたが、服は濡れたままです。こっちでも暖を取らせてください。」
「わかった。誰か!包むもの用意できるか!」
スムーズに救護所へ渡せて、内心一息つく。渡した相手が傑物学園の絡んできた人なので一瞬ピリッとしたが、そんな阿呆なこと気にしてる場合じゃない。向こうもちゃんと救助演習として対応してくれてよかった。
救護所の人員は足りてそうで、私の出る幕はもうない。それよりも水場に戻って梅雨ちゃんたちと救助活動に入らないと。
まだまだこれから……
「……な、爆発!?」
救護所の近くで唐突に爆発が起きた。建物が崩れたとか、可燃物に火がついたとかじゃない。
土煙の中から複数人の人影が現れる。ナンバー10 ギャングオルカ、とそのサイドキック。
「マジか。」
冷や汗が背筋を伝う。
──これは救助演習シナリオの続きだ。
『ヴィランが姿を現し、追撃を開始。現場のヒーロー候補生はヴィランを制圧しつつ、救助を続行してください。』
シナリオではヴィランのテロとあったけども……ただでさえ慣れてない救助活動、それに加えてヴィランへの対処も入れてくるか。
救助活動とヴィランの制圧を同時に行うのはプロでもキツイ内容だって、相澤さんが言ってた。守らなければいけない一般市民を庇うという制限を受けつつ、ダメージ入ればなんでも良しのヴィランの相手、難しくないわけがない。
「簡単には仮免許くれないってことね。」
拳を握る。
やってやろうじゃないか。これくらい出来なくて、プロになんか成れやしない!