半分少女のヒーローアカデミア   作:Akafuku2000

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ミリオ、めちゃ強いですよね。扱い辛い個性で伸し上がったのもかっこいい。


インターン編
半分少女とビッグ3


半分少女のヒーローアカデミア

 

ヒーローインターンの実施が匂わされてから3日後、緑谷くんが謹慎明けで戻ってきた。たった3日だけれど、その分ついた差を埋めるって息巻いてる。

 

今日のホームルームは本格的なインターンの話があるとのこと、相澤先生の合図で3人の生徒が教室へ入ってくる。

 

「現雄英生の中でもトップに君臨する3年生、3名。通称、ビッグ3のみんなだ。」

 

おぉ、ビッグ3だ。ヒーロー科でも最たる実力を持つ3人がいるというのは聞いたことがある。学生ながらプロヒーローにも引けを取らない力があると。ヒーロー科はあまり縦の繋がりがないので、具体的に誰がそう呼ばれているのかは知らなかったが、この人たちだったか。

 

他の人もビッグ3の登場に様々な反応を見せている。かと言う私も目を奪われてる。なんというか雰囲気がある。特に1番大柄な先輩がそうだ。自信?覇気?のようなものを感じた、この人強いぞって。

 

「じゃあ手短に自己紹介してくれ、まず天喰から。」

 

相澤先生に天喰さんという先輩が自己紹介を促される。その瞬間、彼の目がギンと見開かれ、鋭い視線が私たちを貫いた。全員が天喰さんの気迫に気圧される。

 

「……ダメだ。ミリオ、波動さん。」

 

あれ、様子がおかしい。

 

「じゃがいもだって思って臨んでも頭部以外が人間のまま……依然、人間にしか見えない。どうしたらいい、言葉が……出てこない……」

 

めちゃくちゃ震えてた。天喰さんは人見知りであがり症みたいだ。さっきの気迫も緊張しすぎて目付きが怖くなってただけか……

 

「頭が真っ白だ……帰りたい……!」

 

そっぽ向いてしまった。ミリオって呼ばれてた人は強そうだけど、天喰さんは今ひとつピンと来ない。本当に雄英生のトップ……なんだよね?まぐれなんかでインターンを乗り越えられないと思うし、小心者なだけで実力は確かなんだ、多分。

 

「あっ!聞いて天喰くん!そういうのノミの心臓って言うんだって!ねぇ、人間なのにね!不思議〜!」

 

し、辛辣!緊張して固まってる天喰さんになんてことを……もしかして仲悪い?でも悪気はなさそうだしなぁ。得体が知れないぞ、ビッグ3。

 

「彼はノミの天喰環。それで私が波動ねじれ!今日はインターンについてお話して欲しいと頼まれてきました!………けどしかし、ねぇねぇ!ところで君はなんでマスクを?風邪?オシャレ?」

「これは、昔……」

 

天喰さんをノミとバッサリ切り捨てた彼女は、波動ねじれさんというらしい。パッと見、気になったことは全部聞かずにはいられない性格みたいだ。

 

なぜなぜ期の子供……?

 

「あら、あなた轟くんだよね!ねぇ、なんでそんなところをやけどしたの?」

「……それは、」

「芦戸さんはその角折れちゃったら生えてくる?動くの?あっ!峰田くんのボールみたいなのは髪の毛?散髪はどうやるの?蛙吹さんはアマガエル?ヒキガエルじゃないよね?うーん、どの子もみんな気になるとこばっかり!不思議〜!」

 

次から次へと矢継ぎ早に質問していく波動さん。しかも返答は気にしてなくて、とにかく気になったことを口に出しまくってる。私にも飛んできたらどうしよう。ていうか自己紹介で時間なくなりそう……

 

「君たち、合理性に欠くね。」

 

ワサワサと髪を靡かせ、苛立ちを露わにする相澤先生。早く進めろってめちゃくちゃ怒ってるじゃん。

 

「イレイザーヘッド!安心してください!大トリは俺なんだよね!」

 

機嫌が悪くなってる相澤先生を見てミリオさん?がやっと自己紹介を始める。

 

「前途ォ──!!?」

 

耳に手を当て、ズイッとこちらに身を乗り出してくるミリオさん。はて?これは……?

 

「多難ッ─!つってねぇ!……よぉし!掴みは大失敗だ!!!」

 

1人でボケ始めて勝手に滑って、それでも楽しそうに笑ってる。どうしよう、強そうだしビッグ3だし、もっと真面目な人たちかと思ってたのに。揃いも揃って変な人たちだ。小心者、好奇心の塊、滑った人……

 

私の見たて違いってことはないと思いたい。ミリオさんは絶対1番強いし、天喰さんと波動さんもそれに次ぐ実力があるはず。でもその片鱗すら感じられなくて不安なことこの上ない。

 

「まぁ、何が何やらって顔してるよね。必修ってわけでもないインターンの説明に突如現れた3年生だ。そりゃわけもないよね。」

 

話を切り替えたのかと思ったら今度はウンウン考え始めちゃった。話す内容についてくらい打ち合わせしてなかったんですか?相澤先生……

 

「うーん、じゃあ君たちまとめて俺と戦ってみようよ!」

『えええええ!?』

 

唐突の提案に全員が仰天する。どういう流れを辿ったら戦うことになるんだ。

 

体験談云々はどこへ……?

 

「俺たちの経験をその身で味わってもらう方が合理的でしょ?どうでしょうね、イレイザーヘッド。」

「……好きにしな。」

 

あ、止めないんだ。

 

 

※ ※ ※

 

あのあと本当にミリオさんと戦うことになり、私たちは体育館γへ集まっていた。まさかこんなことになるとは思ってなかったので、全員が緊張の面持ちである。

 

「あの…マジっすか?」

「マジだよね!」

(ミリオ、やめた方がいい……)

「遠っ!」

 

遠くからボソッと中止を促したのは天喰さん、相変わらず私たちと目を合わせるのは恥ずかしいらしい。

 

「インターンについては形式的に語るだけで十分だ。みんながみんな上昇志向に満ちているわけじゃない。立ち直れなくなる子が出てはいけない。」

「む……」

「立ち直れなくなるって……」

 

ちょっとムカッと来たぞ。そりゃ先輩方からしたら足元にも及ばないヒヨっ子だよ。A組全員のほとんどが格下だろうさ。

 

まぁメンタルを心配されてるのか、見くびられてるのか分からないけど。どっちにしろそこまで下に見られるのは良い気分じゃない。

 

「それ知ってる!昔、挫折してヒーロー諦めちゃって、問題起こしちゃった子がいたんだよ、知ってた?大変だよね、通形。ちゃんと考えないと辛いよ、これは辛いよ〜」

「待ってください!我々はハンデありとは言え、プロとも戦ってる。」

「そしてヴィランとの戦いも経験してます。そんな心配されるほど、俺ら雑魚に見えますか?」

 

そう言い切る常闇くんと切島くんに対し、余裕たっぷりという表情のミリオさん。

 

「うん!いつどっから来てもいいよね!1番手は誰だ?」

「俺が……」

「僕!行きます!!!」

「意外な緑谷!?」

 

1番手に名乗りを上げたのは意外にも緑谷くんだった。ここまでガンガンに積極的な彼は珍しい。朝言ってた遅れを取り戻すって意気込みを有言実行してるのかな。

 

「問題児くんじゃないか!いいねぇ、君!やっぱり元気があるなぁ。」

 

緑谷くんが構えるのを見て、A組は戦闘体勢に入る。私も纏炎を使って準備を整える。

 

やる前に考えることじゃないが、正直なところボコられて負けると思う。それだけの力の差をミリオさんから感じるからだ。自分に自信のある者ほど良く笑うもの。一発くらい入れてやりたいけどね。

 

「そいじゃ先輩!せっかくのご厚意ですんで、ご指導よろしくお願いしまーーーす!!!」

 

切島くんの声と共に緑谷くんが動き出す。その瞬間……

 

──ミリオさんの服がパージした。

 

「うわあああっ!」

「今、服が脱げたぞ!?」

「あぁ!ごめん!調整が難しくてね。」

 

いそいそと服を着直し始めた全裸マンことミリオさんに緑谷くんが襲いかかる。回避の動作もなく、頭部を狙って繰り出された蹴りは、どういうことか当たらなかった。

 

「……すり抜けてる?」

 

一瞬だったので確信がないが、緑谷くんの蹴りは確実に直撃コースだった。けどそれが首も動かさずに避けられてる。当たったと思った時、彼の足とミリオさんの頭が重なったように見えた。状況的にすり抜けてるとしか考えられない。

 

「顔面かよ。」

 

特に焦った様子もないミリオさんへ遠距離組の個性が向かうが、それもノールックで回避。今ので完全に攻撃がすり抜けてるのは見えた、個性についてはこれで決まりだろう。

 

外れた攻撃は壁に当たって土煙を上げる。隠れてしまったミリオさんの動きを見逃さないように神経を尖らせるが、煙の晴れた先に彼はいなかった。

 

「まずは遠距離持ちからだよね!」

「いやあああ!!!」

 

耳郎さんの悲鳴でハッとして振り返る。そこには再び脱げたミリオさんの姿、いつの間にか後ろへ回り込まれていた。

 

速すぎる……単純な身体能力じゃ私たちの目を潜り抜けるのは無理だ。なら絶対に今のは個性が絡んでる。それを見極めない限り、私たちに勝機はない。ここは一旦、見に徹した方がいい。

 

「ワープした!?」

「すり抜けるだけじゃねぇのか!」

「なんつう強個性だよ!」

 

強個性、か。確かに今この瞬間にもA組の面々が次から次へと倒されていく。しかも全員が腹に一撃だけでだ。あれは素だろうから体格に恥じぬ筋力の持ち主ってことになる、そこも凄い。けど私の予想では、1番凄いのは個性の方だ。でもそれは強いと思ったからじゃない。

 

初手で服がすり抜けたとき、調整が難しいって言ってた。なのにあの誰も捉えられない、攻撃も防御も意味をなさない動き、相当緻密な個性使用の賜物じゃないかな?それだけ使えるのに服はずり落ちた。つまりあれだけ鍛えても完全な制御はできないほど、扱いにくい個性ってことになる。

 

予測不能なワープ攻撃もワープ前に地面に消えてるところからして、すり抜けの応用だと思う。仕組みは分からないけど、みんなが感じている以上にミリオさんの個性は理不尽な能力じゃない。受ける方は理不尽でしかないが。

 

「POWERRRR!!!」

 

気持ちよく声を上げるミリオさんの後ろには死屍累々、ダウンしたA組が倒れ伏してる。誰からの反撃も許さず、ほぼ壊滅させられてしまった。

 

「通形ミリオ、アイツは俺の知る限り、最もナンバー1に近い男だ。プロも含めてな。」

 

はいいい!?何サラッと重要なこと言ってるんですか、相澤先生!!!

 

驚愕の情報が聞こえてしまい凄い勢いでそっち向いてしまった。そりゃ強いと思ってたし、実際には想像以上だったよ。それでもプロの相澤先生から見てもナンバー1に近いと太鼓判を押されるほどとは思わなかった。

 

……なるほど、これは天喰さんも私たちが折れないか心配するわけだ。

 

それほどにまで私たちとミリオさんには大きすぎる差がある。

 

「遠距離はこれだけ、あとは近接主体ばかりだよね?」

「何したのかさっぱり分かんねぇ!」

「すり抜けるだけでも強いのに、ワープとか……」

「それってもう無敵じゃないですか!」

「……違うよ、尾白くん。ミリオさんの個性は無敵じゃない。彼自身が恐ろしく強いんだ。」

「おぉ、今のでそこまで分かるか!少し鋭い子もいるんだね!」

「無敵の個性には少しうるさいんですよ、私。」

 

くっそぉ、ちょっと動揺を誘おうと思ってこれ見よがしに言ってみたけど、ブレないな。実際、個性のカラクリを看破できたわけじゃない、打つ手はないと言っていい。

 

「加山さんの言う通り無敵じゃない、何かカラクリがあると思うよ。ワープの応用ですり抜けてるのか、すり抜けの応用でワープしてるのか。どっちにしろ直接攻撃されるわけだから、カウンター狙いならこっちも触れられるときがあるはず。何してるのか分からないなら分かってる範囲で仮説を立てて、とにかく勝ち筋を探っていこう!」

「サンキュー!謹慎明けの緑谷、すげぇいい!」

 

ミリオさんの圧倒的実力を前に狼狽していた切島くんたちも意気を取り戻す。やられっぱなしは嫌だ、何としても一矢報いたい!

 

「だったら探ってみなよ!」

 

ついにミリオさんが動き出す。ぐんぐん迫ってくるが、やはり直前で地面へと消えた。

 

ワープが来る!問題は誰に飛んでくるかだけど……今までの感じからして、狙われるのは。

 

「1番後ろ!」

 

私たちの中で、ミリオさんから1番奥にいた緑谷くんの方を見る。そこには予想通り、ワープしたミリオさんと彼に蹴りを入れようとする緑谷くんの姿。

 

わずかだけど驚いてる。動きを読まれたのは少し予想外だったらしい。

 

「だが!必殺!!ブラインドタッチ目潰し!!!」

 

ミリオさんの行動を読んで見事カウンターを決めようとした緑谷くんだったが、焦ることなく目潰しを狙いに来たミリオさんに怯み、やられてしまった。

 

「ほとんどがそうやってカウンターを画策するよね!ならば当然、それを狩る訓練はするさ!」

 

やっぱり読まれることが読まれてた!自分の弱点を潰してないアホはいないか。

 

ミリオさんはまた地面へ消えていく、このままだと全員さっきみたいにやられるぞ。……思いつく手としては攻撃をギリギリまで引きつけることくらいか?纏炎をあえて全開にせずに、四肢だけに留めておいたブラフが効くかどうかにかかってる。

 

「緑谷くん!ぐっ……!」

 

飯田くんがダウン。

 

「クソッ!うわっ……!」

 

切島くんもダウン。猛攻は止まらず、残ったメンツもあっさりと倒されていく。

 

……残るは私だけ、か。

 

もう私1人しかいないからターゲットは考えなくていい。攻撃の狙いもお腹狙いだから絞れる。

 

やるぞ……やるぞ……!

 

「来た!」

「最後の一人にはバレちゃうよね!」

 

やぶれかぶれに見せかけて大振りな右パンチを繰り出す。当然すり抜けられるが、それでいい。集中すべきは今まさに当たろうとしてるミリオさんの右腕……!

 

「アッチチチ!」

「よしっ!」

 

限界まで引き付けた右腕にゼロ距離で水蒸気爆発をぶち当てた。攻撃する部分だけは実体化してるから、読まれてすり抜けを使われないようにしたのだ。

 

「君、お腹からも個性出せたのか!いやぁ騙されたよ。それでも俺の拳をギリギリまで引き付けるのは中々度胸があるよね!」

「賭けでしたけどね。あれもすり抜けられてたら為す術なしでした。」

「そうだね!次は食らわないさ!どうする?俺は続けてもいいんだよね!」

「無茶言わないでください。個性の種もわからないですし、降参します。」

「わかった!じゃあこれで終わりにしよう!」

 

よ、良かった降参受け入れてくれて……本音としてはもう少し頑張りたかったが、もう考えつく手段がさっきした一度きりのカウンターだけだったし、これ以上は無理だ。

 

改めて周りに転がるA組のみんなを見て、ミリオさんの強さに戦慄する。

 

 

※ ※ ※

 

「とまぁ!こんな感じなんだよね!」

 

服を着たミリオさんの前に集まり、話が始まる。結局、服は戦闘中ずっと脱げっぱなしだった。別に男の裸くらいでキャーキャー言う気はないけど、気まずいものは気まずい。あれもある意味攻撃だったな。

 

「訳も分からずほぼ全員が腹パンされただけなんですが……」

「水穂ちゃん、よくカウンターできたわね。」

「あれほとんどまぐれだし……2度はなかったよ。」

 

梅雨ちゃんが褒めてくれるけど、とても喜ぶ気にはなれない。ラッキーパンチに賭けてるようじゃダメなんだよ。ミリオさんの個性もすり抜けること以外は分からず終いだ。

 

未だに腹パン食らった人は全員お腹を抑えてる。どんだけ痛かったんだ、あの腹パン。ミリオさんが降参ありにしてくれなきゃ、私もあそこに仲間入りしてた。

 

「俺の個性、強かった?」

「強すぎっす!」

「ずるいや!私のことも考えて!」

「すり抜けるしワープするし!轟と水穂みたいなハイブリッドですか!?」

 

瀬呂くんたちがワーワーと騒ぎ出す。そりゃ何も出来ないでボコボコにされたら騒ぎたくもなるよね。

 

「いや、1つ。加山さんはちょっと分かってたのかな?」

「え、まぁ少しだけ……」

「なら言ってみてくれよ。考えを口に出すってのも大事なんだよね!」

 

確証もないことを人に説明するのは恥ずかしいんだけどなぁ。ミリオさん本人が良いって言うならいいか。

 

「ミリオさんの個性はすり抜けかなと。透過…って言えばいいんですかね?使用すれば物をすり抜けられる。オンオフと範囲選択が可能で、だから攻撃も防御も意味をなさなかった。」

「合ってるよ!俺の個性は「透過」さ!他にはわかったことあるかい?」

「あとは制御が恐ろしく難しいこと、範囲を制限しながら使うのは相当正確な個性使用が求められる。そのせいで脱げてたんですよね?ワープは透過の副産物みたいなものかなぁとは思ってます。」

「やるね!参った、だいたい言い当てられちゃったね。」

 

えー、多分穴だらけなんだけどなぁ。戦闘は容赦なかったけど、ミリオさんの懐はデカい。

 

「ワープの説明をすると、透過を使うとなんでもすり抜ける、地面もすり抜けて下へ落ちる。そこで透過を解除すると、質量のあるものは重なり合えないのか俺だけ弾き出されるのさ。俺はその中で角度やポーズを調整して、弾かれた先を狙っている。」

 

ほぇー、そんな仕組みなんだ。三奈さんが「ゲームのバグみたい」って言ってたけど、その通りだと思う。やっぱり透過の力じゃなくて、それに付随したオマケみたいな効果だった。

 

「攻撃は全て透かせて、自由に瞬時に動けるのね。やっぱり強い個性……」

「うーん、それはちょっと違うんだよね。強い個性にしたんだ。さっき「なんでも」と言った意味を考えてみてほしい。」

 

ミリオさんの言う通り、「透過」は元々決して強い個性じゃなかった。使用範囲を限定するだけでも相当扱いにくいと思うけど、それ以上に理由があるらしい。

 

なんでもすり抜ける個性、服も地面もすり抜ける。人の体も物質もすり抜ける。……ん?物質……?

 

まさか、

 

「もしかして透過って空気も光も音もすり抜けるんですか?」

「また加山さんだね!大正解だよ。俺の個性を使っている間は、息は出来ないし、目も見えないし、音も聞こえない。ただ落ちているという感覚だけが残るんだ。」

 

全員に動揺が走る。みんな強い強いと言っていた個性が、とてもそんなことは言えないほど、扱いにくさの塊だとわかったからだ。段々と見えてくる、その個性を持ちながら十全に使いこなし、ナンバー1に最も近いとまで言われるミリオさんの実力が。

 

「そんな感じだから、壁ひとつ抜けるにもいくつか工程がいる。接地してる片足以外を透過、すり抜けたもう片方を解除して接地、残りをすり抜けるという具合だよね。」

「急いでる時ほどミスるな、俺だったら。」

「おまけに何も感じなくなってるんじゃ動けねぇ。」

 

ミリオさんはそれに同意し、頷く。実際、自分はビリっけつまで落ちたと。そして彼が「透過」という使いにくい個性で遅れを取らないために身につけたのが予測。

 

「予測は経験則が可能にする。この経験則が大事というのを言葉じゃなくて、経験で伝えたかった!これが手合わせの理由!インターンでは俺たちはお客ではなく1人のサイドキック、プロとして扱われるんだよね!!」

 

プロの世界は恐ろしい、時には人の死に立ち会うこともあるとミリオさんは言う。けれどもそれは学校では絶対に得られない一線級の経験だとも。

 

「俺はインターンで得た経験を力に変えてトップを掴んだ!ので!怖くてもやるべきだと思うよ!1年生!!!」

 

そう言ってミリオさんは話を締めくくる。まさに経験則を重視し、それを糧に伸し上がった彼の経験を全て教えてくれた。私たちに足りないのは経験、経験がなければ予測すら出来ない。エンデヴァーも経験は大事だと言ってたし、やはりインターンは行くべきだ。

 

周りも俄然やる気が出てきたらしく、かなり燃え上がってる。天喰さんの心配は杞憂に終わったらしい。ここでへこたれる様じゃ、入学初日に除籍になってるからね。

 

まずはエンデヴァーにダメ元で連絡してみようか。

 

 

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