半分少女のヒーローアカデミア   作:Akafuku2000

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最近、ヒロアカの単行本最新巻を読みました。めちゃくちゃ面白くて大興奮だったんですが、同時に半分少女を書き始めたのもこの世界に飛び込んでみたいというのが始まりだったなと思い出しました。超モチベ上がってます。


半分少女とインターン1

半分少女のヒーローアカデミア

 

ミリオさんにインターンで得られる経験、その重要性を教え込まれた翌日、私たちはインターン実施の是非についての説明を受けていた。ちなみに爆豪も今日から復帰、1人になっても真面目に掃除してて偉かった。

 

「昨日、説明したヒーローインターンですが、職員会議で協議した結果校長先生を始めとした多くの先生が、「やめとけ」という意見でした。」

『えええっ!!!』

 

どよめきが起こる。当然だ、なんだかんだもうやれるもんだとみんな思ってたんだから。

 

嘘だァ!やるかやらないかは未定とは言ってたけど!こっちはやる気満々だったのにーー!

 

「そりゃないですよ!相澤先生!」

「あんな説明会までしておいて!?」

「でも全寮制になった経緯から考えたらそりゃそうか。」

「ざまぁ!!!」

「……参加出来ないからって。」

 

中止になりそうなの喜んでんじゃないぞ爆豪!ヒーローインターンなんてチャンスを逃すデカさとんでもないんだからな!!!根津校長に直談判しちゃおうか、いやあの人めちゃくちゃ頭良いし、口も上手いから丸め込まれて断られるのがオチだな……

 

「話は最後まで聞け……今の保護下方針では強いヒーローが育たないという意見もあり、方針としてインターンの受け入れ実績の多い事務所に限り、1年生の実施を許可するという結論に至りました。」

「…………クソがッ!!!!」

「じゃ、爆豪は留守番よろしくー」

「黙れ!!ぶっ殺すぞッ!」

「こわーい。」

「よぉし、表出ろや……!」

「お前ら静かにしろ。仲良く謹慎になりたいか?」

「「………」」

 

騒ぎすぎた……

 

ま、まぁ爆豪はすぐに仮免取って追いついて来るし、大人しく待ってよう。同じヒーローを目指す者だし、それについて煽りすぎるのもほどほどにしなきゃ。どうにも中学の時からの癖が抜けないね。あの頃はずっと口喧嘩してるのが日常だったから……

 

「インターンは体育祭で得たスカウトから始めていくのが基本になる。職場体験先に問い合わせるか、そこのコネを頼るのも良し。そこら辺は自分で考えてやってくれ。見つかれば事務所または学校の判断でインターンの許可を出す。」

『はい!!!』

 

朝のホームルームはこれで終わり。インターンに条件が付いてしまったのは痛いけど、実施してくれるだけありがたい。

 

さてと、私はエンデヴァーに連絡連絡と。

 

※ ※ ※

 

ヒーローインターンについての説明があったその日の放課後、A組はそれぞれの伝手を使ってインターン先を探していた。私も職場体験中に貰ったエンデヴァーの連絡先に電話するつもりである。

 

登録していた電話番号を押し、数回の呼び出し音が鳴る。エンデヴァー、忙しいだろうし出てくれるかな?

 

……お、繋がった。

 

「もしもし、加山です。」

『あぁ、加山くんか。久しぶりだな。』

「ご無沙汰してます。今日は折り入ってお願いがあるんですけど。」

『なんだね?』

「ヒーローインターンって受け付けてますか?」

『………』

 

あ、沈黙……

 

『率直に言うが、無理だ。俺にはまだ教育権が戻っていない。』

「ですよね……」

『どうしてもと言うなら、こちらで他の事務所を紹介できるが。』

「いいんですか!……あーでも雄英の方針で、1年生のインターンはインターン受け入れ実績の多い事務所に限るってなってて。」

『そうか……では少し厳しいだろうな。』

 

ダメかぁ、インターン受け入れてるならどこでもOKじゃないからなぁ。私としてもエンデヴァーのところで教わりたいから、申し訳ないが他のヒーロー事務所は乗り気じゃない。

 

「分かりました。自分でも色々探ってみます。忙しい所、ありがとうございました。」

『連絡してくれたのに悪かったな。』

「いえ、元々は私がエンデヴァーに迷惑かけたせいですから。」

『そう気に病むことはない。冬頃にはインターンも受け付けている。また連絡してくれ。』

「はい!」

 

やはりエンデヴァーはヒーローに関しては真面目だな。そして律儀だ。その頃には轟くんも仮免取ってるだろうし、2人で行けるなとか考える。

 

『……して、焦凍は元気か?』

「轟くんですか?」

 

唐突な話題転換だな。

 

はて、わざわざ私に聞くことだろうか?と一瞬思ったけど、轟くんって家族とマメに連絡取るタイプじゃないだろう。多分お姉さんとお母さんくらいだ、エンデヴァーならほぼ無いよね……

 

轟くんが仮免の補講受けることになったって、エンデヴァーにも情報は行ってると思うし、色々気になることもあるか。

 

「元気ですよ。仮免は躓いちゃいましたけど、補講頑張るって意気込んでますし。」

『そうか、元気か……』

「はい。あまり心配しなくても大丈夫かなと。」

『わかった。ありがとう、加山くん。』

「いえいえ、友達のお父さんの頼みですから。じゃあ、これで失礼します。」

『あぁ。』

 

終話ボタンを押し、一息つく。

 

──不器用だなぁ、エンデヴァー

 

でもちゃんと子供が大切らしい。

 

 

※ ※ ※

 

エンデヴァー事務所へのインターンがダメになってしまった次の日、インターンには行きたいが当てがない。相澤さんに頼る方法もあるけど、あの人と私のスタイルって違うし合う事務所も見つからなさそうだ。なんて考えながら昼休みの廊下を歩いていた、そんな時。

 

〈1年生の加山水穂さん、オールマイトがお呼びです。至急、生徒指導室まで来てください。繰り返します……〉

 

「オールマイトが私を?」

 

足を止め、校内放送に耳を傾ける。オールマイトが呼んでいる、しかも生徒指導室だ。なんか私、悪いことしたかな?怒られるようなことなら、まず担任の相澤先生に呼び出されそうなもんだけど。

 

ウーンと首を捻るが、特に思い当たる節はない。考えても分からない以上、素直に生徒指導室へ行くしかないだろう。ただ個別に話があるだけかもしれないし、あまり気構えなくてもいいか。

 

放送で言われた通りに生徒指導室へ向かう。着いてみると部屋の中から数人の気配がした。これでオールマイト以外の先生にも囲まれて指導とかだったら泣く。

 

「加山です。放送で呼ばれて来たんですけど……」

「来たか、入っておいで。」

 

ノックをすれば、オールマイトの返事が返ってくる。怒ってる雰囲気じゃなさそうだ。内心、ホッとしつつドアを開けて入室する。

 

「失礼します……って緑谷くんとミリオさん?」

「彼らと話をしていた最中でね。加山少女も交えて話したいことがあったから、急だが呼ばせてもらった。」

「そうですか。」

 

椅子を持ってきてちょこんと座る。この3人が集まってる理由がよく分からない。私を加える理由も。

 

「えと、なんで呼ばれたんですか?私。」

「それは俺から話すよ、ズバリ言うとね。俺のインターン先、サー・ナイトアイのところへ緑谷くんと一緒に行ってみないかって話なんだ。まだどこに行くか決まってないんだろ?」

「そうですね。インターン先は決まってないです。でもどうして私を?」

「元々は緑谷くんをサーに紹介してくれって話だったんだけど、俺としては加山さんもどうかな?って思ったんだよね!」

「なるほど……」

 

オールマイト唯一のサイドキック、サー・ナイトアイの話は聞いたことがある。そんな人がミリオさんのインターン先で、まさか私に紹介の話が飛んでくるとは思わなかった。めちゃくちゃびっくり。

 

「理由を聞いてもいいですか?」

「もちろん!俺は前に「予測」が重要って話をしたよね?手合わせの時は、それを駆使した速攻を君たちに仕掛けた。サーのところで鍛えてからは、初見で対応されるなんて滅多になかったんだ。でも君は見破って一発凌いでみせた。素晴らしい観察眼と洞察力だ、サーに教わればもっと光ると感じたんだよ。」

「はぁ〜、そんな訳が。」

 

凄い恐縮だ。あのラッキーパンチをそこまで評価して貰えてたとは。ありがたい限りである。

 

「ということだ。どうだい加山少女、悪くない話だと思うが。通形少年の話、受けてみないかい?」

「ぜひ!ミリオさん、よろしくお願いします!」

「そう言うと思ってたぜ!顔合わせの日は追って2人に連絡するよ。」

「「ありがとうございます!」」

「あぁ!……おっと言い忘れてた。サーはユーモアを大切にする人だから、会った時は1度でいい、笑わせてみろよ。」

「ユーモア?」

 

緑谷くんと一緒にハテナマークを浮かべる。

 

ユーモア……人を笑顔で和ませるようなジョークを言ってみろってことかな?これは困ったな。私、ギャグには自信が無い。インターン先という難題が解決しそうになった矢先、ユーモアで笑わせるという難題が降ってきた。

 

……どうしよう。

 

 

※ ※ ※

 

サー・ナイトアイ事務所に紹介してもらえることが決まり、その週末に事務所へ連れて行ってくれることになった。とりあえず私たちを見てくれるらしいので安心した。

 

「じゃあ行こうか。サーを笑わせる手、考えてきたかい?」

「はい。」

「私も一応。」

「そうか。俺ができるのは紹介まで、サーのお眼鏡に適うかは君ら次第だ。」

 

2人揃ってガチガチに緊張してる。お互いにここを逃したらインターンを受けてくれるところなんて無いから、もう冷や汗が止まらない。

 

ミリオさんの先導で、事務所内を進む。内装からも所長のキッチリした性格が伝わってくる整えられた事務所だ。そんな人を自分のユーモアで笑わせられるんだろうか……

 

「今さらですけど、通形先輩はなんで会ったばかりの僕たちに良くしてくれるんですか?」

「うーん、別に良くしてるつもりもないけどね。将来有望な後輩たちが困ってる。そんな人がいたらお節介焼いちゃうのはヒーロー基本だろ?」

 

そう言って笑うミリオさんの笑顔をとても眩しい。なるほどなぁ、相澤先生が彼を最もナンバー1に近いって評価するわけだ。実力、人格共にヒーローの鑑みたいな人。

 

「さて、あのドアの先だ。強くなりたいなら己で開け!」

「「はい!」」

 

緑谷くんが先頭に立ち、勢いよくドアを開ける。

 

「昨日お伝えした1年生、連れて来ましたよね!」

 

サー・ナイトアイ、どんな人物なんだ、ろう……?

 

──入る部屋間違えたかもしれない。

 

「アハハハハッ!!!」

「全く、大きな声出るじゃないか。」

 

機械に縛り付けられ、全身をくすぐられてる女性が1人。その対面にはサー・ナイトアイその人がいる。

 

「一体どんな!?」

「特殊なプレイ?」

 

あの人、滂沱の涙を流しながら笑いまくってる……サー・ナイトアイはどういう感情でそれを見つめてるんだ?ヤバい、帰りたくなってきた。

 

「サイドキックのバブルガール、ユーモアが足りなかったようだね……」

 

そういうことなの?この事務所、ユーモアが足りないと無理やりくすぐられて笑わされるの?

 

……怖い!

 

私たちに気づいたサー・ナイトアイの視線がこちらに向く。

 

「……ッ!」

 

すっごい視線!元々写真や映像で見ただけでも、かなり気迫があった。直で見るとここまでの迫力があるのか……!あまりに特異な状況で弛緩してた気持ちが締め付けられる。

 

この人を笑わせる……やってやるぞ!

 

『緑谷出久です!』

「緑谷くん行った!」

 

オールマイトの顔真似!?表情筋をどうやって動かしたらその顔になるんだよ、凄いな。生粋のオールマイトオタクはここまで似せられるんだ。これは結構凄いと思うけど、サー・ナイトアイは……

 

「オールマイトを……バカにしているのかッ!!」

「うっ!」

「す、滑った!」

「怒ってる!」

 

ただでさえ怖い目付きだったのに、その5割増しくらいの目力で緑谷くんを睨みつけるサー・ナイトアイ。睨まれてるの私じゃないのに、恐ろしくてたまらない。相澤さんに怒られてる時くらい怖い。

 

「貴様、その顔はなんだ?なんのつもりだ?」

「あっ、いや!その……」

「私をオールマイトの元サイドキックと知っての狼藉か?」

 

サー・ナイトアイの手が緑谷くんへ伸びる。な、何するつもりだ……

 

「オールマイトにこんなシワはない。」

「え、」

「目元のシワは通常フェイスにて約0.6センチ。シルバーエイジからは約0.8センチ。今どきノンライセンスグッズでも何時代のオールマイトか識別できるよう作られる。……そんなことも分からないのか?」

 

こっっわい!顔面ゼロ距離で詰められるのも怖いけど、オールマイトの顔パーツをシワの1つに至るまで把握してるのが怖い!緑谷くんも大概だと思ってたけど、彼を上回るレベルのオールマイトファンだ。

 

しかし完全にサー・ナイトアイの不興を買ってしまったけど、緑谷くんどう挽回する?

 

「非常に不愉快だ、お引き取り願おう。」

「───ビネガースーサイド事件、ご存知ないですか?」

「………」

 

緑谷くんは引き下がらず、オールマイトが過去に解決した事件を話題に出す。水質を変えられる個性の中学生が溺れた事件だ。彼は周りの水をお酢に変えてしまい、オールマイトはそこへ飛び込んで救助した。結果、オールマイトはお酢が目に染みて、シワシワの笑顔でインタビューを受けたそうだ。

 

「僕はそこをチョイスしたつもりだったんです!」

「……もちろん知っている。私が組む以前の事件、読売テレビのスペシャル番組でもやっていた。」

「それですそれです!ヴィランもいないし、他の活躍よりも地味なんでファンの間でも滅多に話題に上がらないけど、僕好きでして!助けた中学生の感謝を受けて返したセリフがウィットに富んでて!」

「『お肌10歳若返ったよ。』」

「それです!!!」

 

あれ、なんか共鳴してる?ほんの数秒前までものすごく険悪な空気だったのにオタクトークに華が咲いてない?やだ、私の存在忘れられてる……

 

「先輩、私どうしたら……」

「そうだねぇ。サーと緑谷くんが満足するまで待つしかないね。」

「うへぇ〜」

「ミリオくん、あの子なに?」

「後輩ですよね。この子もですよ。」

「そう……」

「どうも。」

 

散々くすぐられ、ぐったりした様子のバブルガールさん。あれは可哀想だった。仮にインターンが認められて働くことになって、ユーモアが足りなかったら私もあんなことになるんだろうか、嫌だ!

 

その後も完全にオールマイトワールドに入り込んで行った2人はたっぷり10分以上は喋り続けてる。次々に聞いたこともないオールマイトエピソードが飛び出してきて、オールマイトがゲシュタルト崩壊しそうになった。もうしばらくは彼の話題を聞く気にならない。

 

「……少々話しすぎた。今日はもう1人いたな。君のユーモアも見せてもらおうか。」

「………あ、私ですか!」

「君以外に誰がいる?まさか彼の付き添いという訳でもあるまい。」

「いえ!やらせてください!」

 

ポケーっとしながら天井眺めてたら急に呼ばれてびっくりした。私の番が回ってきたらしい。

 

よぉし、覚悟を決めろ!たった一日で考えた超付け焼き刃のギャグだけど技術で魅せてやるぞ!

 

「サー・ナイトアイ、個性を使ってもいいですか?」

「建物に影響しないのなら許可しよう。」

「そこは大丈夫です。……では、2番手加山水穂、行きます!」

 

全身からゆっくりと水蒸気を出し、体を覆っていく。肌に纏わせるように薄く丁寧に。水の粒の1つ1つに至るまで意識を巡らせ、支配する。光を曲げ、私の姿を別物へと変化させる。

 

……出来た。

 

あとは渾身のギャグを!

 

『前途ォ──多難ッ─!!!』

 

ミリオさんの姿を真似、あの日見た一発ギャグを繰り出す。姿を変える個性使用もめちゃくちゃ大変だったが、1度見たきりのギャグを真似るのもまぁまぁ大変だった。これでダメならギャグセンのない私はお手上げだ。

 

「………」

「俺のギャグを真似たのか。」

「光学迷彩の再現?」

 

だ、誰も笑わねぇ……クスリともしないじゃん。サー・ナイトアイの沈黙が1番痛い。笑ってもらわないといけない人が真顔で見つめてくるだけ……

 

終わった。

 

「君、それはミリオのネタだな?」

「は、はい。前に1度見せてもらいました。」

「その個性使用はなんだ、普段から使っているのか?」

「これは……その、ユーモアを大切にされてると聞いて、私の力でできることを考えて即興で作りました。昨日、話を聞いてからすぐに。」

「そうか。」

 

どうなんだろう?受けてる様子はない。でも詰まらないと切り捨てられることもなかった。わ、分からない、サー・ナイトアイがどう思ってるのか。

 

「出来はお粗末ではある。」

「ですよね……」

「声音は寄せれてないし、動きも違う。」

「はい。」

「ただ……如何様にでも使えるその個性を、ユーモアの一点にだけ費やしたというのは悪くない。」

「悪くない、ですか。」

「自分のできることで、人を笑顔にしようという気概は感じた。私の求めるユーモアには遠く及ばないが、及第点としておこう。」

 

おぉ!ダメ出しはされたけど全否定ではなかった。好感触とまではいかないが、ギリギリセーフと言ったところ。

 

「一応、合格ってことですかね?」

「ふむ、そうしてやってもいいが……私は先にこちらの彼へ話がある。」

「僕、ですか?」

「そうだ、来たまえ。」

 

そう言って自分のデスクへ戻っていく。合格かどうかは保留になってしまった。とりあえず不合格とは言われなかったし良いか。

 

にしてもサー・ナイトアイは緑谷くんの方に興味があるらしい。オールマイトの元サイドキック、何年も彼の側に居たならば、ワン・フォー・オールの秘密も知っているはず。緑谷くんが後継者と知っている可能性が高い。

 

「君は今より強くなるため、私の元でインターンがしたいと聞いたが。」

「はい!お願いします!」

「学校から契約書は貰っているかね?」

「もちろん持ってきてます!」

 

緑谷くんはワタワタと契約書をサー・ナイトアイへ差し出す。私はそれをミリオさんたちと眺めているが、なんとなーーく嫌な感じがしていた。睨みが相澤先生並に怖いと思ったが、何だかこう人を詰める時の喋り方も似てる気がする。故に嫌な予感だ。

 

「この書類に私の印鑑を押せば、インターン契約は成立となる。」

「はい!」

「ヒーローインターンは一般企業の気軽な短期のインターンシップとは違う。最低1ヶ月以上の就労、それも有償だ。授業の多い1年生なら公欠も増える。クラスの皆とも一律には歩めん。」

「分かっています!でも……みんなと歩みを合わせていては、トップにはなれない!」

「………」

 

彼のトップヒーローを目指す決意、ずっとオールマイトの後継者として頑張って来ていた。しかしそれは爆豪との決闘でより強くなったらしい。以前よりもずっと力強い意志を感じる。

 

それを受けてなのか、サー・ナイトアイの持つハンコが書類へと動いた。

 

「あの、外しましたよ……?」

 

緑谷くんが困惑の声を上げる。右手と一緒に高々と持ち上げられたハンコが、鈍い音を音を立ててデスクに打ち付けられたからだ。

 

「………押す気がないからな。」

「えぇっ!」

「貴様がここで働くメリットは承知した。だが、私が貴様を雇うメリットは?サイドキック2名、インターン生1名で事足りてる事務所へ貴様を入れてどんな旨みがあるんだ?」

 

そこからは緑谷くんに次々と正論を突きつける。私に社会にどんな役に立てるのか示して見ろと並べ立てる。今は緑谷くんへ話しているようだけど、それは私にもグサグサ刺さった。

 

……私もメリット示せてなくない?示せたの微妙なユーモアだけじゃん。

 

これは雲行きが怪しくなってきたぞ。とてもじゃないが、サー・ナイトアイに緑谷くんを認める気があるとは思えない。私も留め置かれてるけど、全然安心出来ない。2人仲良く雄英に送り返される可能性も十分にある。せっかくミリオさんに認めてられて機会まで貰えたのに、それを自分の不甲斐なさでダメにしてしまうのは申し訳が立たない。

 

「貴様が我が社にどう利益となるのか、言葉でなく行動で示してみるといい。……3分だ、3分以内に私から印鑑を取ってみよ。私の下でインターンを行いたいのなら、貴様が自分で判を押せ。」

「えっ、え……」

「ユーモアでは欠片のセンスもない貴様にチャンスをやろうと言うのだ。どうだ、私は優しいだろう。」

 

優しいかな……いや、優しいか。サー・ナイトアイのさっきの言葉をそのまま受け取るなら、雇うメリットがないから帰れと言ってもいいんだ。でも条件を達成したら雇っても良いと提示してくれている。

 

……その条件がめちゃくちゃ難しそうだけど。

 

「3人とも退室を。」

「は、」

「「イエッサー!」」

「イ、イエッサー!」

 

返事はイエッサーか。そうだよね、サーだもんね。

 

緑谷くんを試したいようだから、私も当然退室させられる。サー・ナイトアイの実力のほどは分からない。でも何としても判を押させて欲しい。

 

 

※ ※ ※

 

部屋の全てをひっくり返してるのかと思うほどの音が聞こえ続けて、3分経った。ミリオさんはサー・ナイトアイが本気だと言っていたけど、緑谷くんはどうなったか。

 

「失礼します!」

「終わりました?最後に凄い音立ててましたけど。」

 

勢いよくミリオさんが戸を開ける。そこには物の散乱し、あちこちに足跡の着いた部屋があった。どれだけ激しく動いたらこんなことに……

 

緑谷くんは床に手をついて動かない。ハンコはサー・ナイトアイの手に握られたままだった。それはつまり彼が条件を達成出来なかったことを意味する。

 

「……緑谷くん。」

「ミリオ、彼は採用だ。」

「やったああ!」

「あれ?」

「なぜですか!?全く達成出来てないですけど!」

 

彼の言葉にうんうんと頷く。気が変わったみたいなことを言う人には見えない。自分の引いた基準に満たないなら容赦なく落とす人だと思ってたけど。

 

「印鑑を取り自分で押せと言ったが、できなければ不採用とは言ってない。」

「そんな……」

「緑谷くんやったね!サー、笑ってましたね!」

「貴様が来るとわかった時点で、採用は決定していた。使えない人材でないこともわかった。だが認めた訳ではない。」

 

ご、合理的虚偽だ。相澤先生以外でこれを繰り出してくる人いたのか。やっぱり十中八九、サー・ナイトアイは緑谷くんがワン・フォー・オールの後継者だと知っている。でも彼が相応しいと認めていない、他に適した者がいるはずだと。だから実力を測るため、不採用を仄めかし難題を押し付けた。

 

このインターンは緑谷くんがサー・ナイトアイを認めさせるか、逆に諦めされられるかというものになってしまった。採用した以上、ちゃんと教育してくれるだろうけど、緑谷くんにとって成長とは違う意味で苦しいインターンになるな。

 

「象徴なき今、人々は微かな光ではなく、眩い光を求めている。例え彼の意思に反しようとも、今誰にその力が相応しいかプロの現場で痛感してもらう。」

 

サー・ナイトアイが緑谷くんの手へ印鑑を落とす。彼はしばしそれを見つめ、噛み締めるようにゆっくりと判を押した。

 

「よろしくお願いします!!!」

 

ここに彼のインターン契約は成った。

 

「あの、私は……?」

 

完全に2人で話し込んでいた所へ、おずおずと入り込む。結局は私の採用はどうなるんですか、サー・ナイトアイ。

 

「及第点と言ったろう。合格とは言い難いが、不合格ではない。君も採用だ、契約書を出すといい。」

「あ、ありがとうございます!」

 

ユーモアを大切にしてるって本当だったんだ。ほぼ赤点らしいが、何とか丸は貰えた。ガッツリ試された緑谷くんに対して、私だけぬるいのは少し申し訳ない。

 

しかしどうにかこうにか、インターン先を得ることは出来た。貴重な実地経験を得られる重大なチャンスだ、絶対にものにするぞ。

 

 

 

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