半分少女のヒーローアカデミア   作:Akafuku2000

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会議パート、子供が発言する余地がないので長いだけになってしまった。オリジン、書くの難しい。


半分少女とオリジン

半分少女のヒーローアカデミア

 

忸怩たる思いで終えたインターン初日から数日、私は通常通りの授業を何とかやり過ごしていた。あの日以来、サー・ナイトアイからもミリオさんからも連絡はなく、死穢八斎會の動向は知らされないままだった。サーの言葉を受け、壊理ちゃんを見過ごしたことは、やはり飲み込んでもトゲが胸に刺さって抜けない。常に答えのない考えが頭を巡り、集中を欠いた授業内容は散々だ。

 

当然、担任であり保護者である相澤先生からも声をかけられたけど、たとえ雄英高校の教師であっても他事務所で得た情報をおいそれと話す訳にもいかなかった。いわゆる守秘義務と言うやつである。だから相談することも出来ず、ただ嫌な感情が澱のように溜まっていく一方だった。

 

しかしそれも今日変わるかもしれない。ついにサーからの呼び出しがあったからだ。きっと死穢八斎會について進展があったのだろう。その呼び出しに応えるため、私は緑谷くんと寮を出た。

 

「おっ!緑谷、加山、おはよう!お前らもインターン行くんだ。奇遇だな!」

「切島くんも今日なんだ。インターン先はファットガムだっけ?」

「そうそう!街中の人から好かれててさ、超いい人なんだよ!でも全然インターン呼ばれなくってよ。まぁ天喰先輩が怪我しちまったし、色々あんのかもだけど。」

「そんなことがあったんだ……大変だね。僕らもしばらく呼ばれなくて、やっと今日だよ。」

 

寮を出ると意外なことに切島くんとばったり遭遇。彼もインターンに呼ばれたらしい。ファットガムは関西圏を代表するヒーローの1人だ。それも天喰さんのインターン先だと言うから驚きである。しかしそこで負傷するとは、なんとも不穏だ。詳細は分からないけど、先日の件もあってモヤモヤする。

 

なんだかなぁと思っていると、私たちに遅れて寮から出てくる人がいる。

 

「あれ?おはよう!3人とも今日?」

「偶然ね、私たちもよ。」

「おぉ、偶然……」

 

切島くんに続いて、お茶子さんと梅雨ちゃんまで一緒とは。こんなこともあるのか。

 

彼女たちと合流し、駅へ向かう。本来なら別々の行先になるはずが、何故か乗る電車が一緒だった。降りる駅も同じ、行く方向も同じ、全員がよく分からないまま歩いていく。

 

結局たどり着いた先はナイトアイ事務所、そこにはビッグ3の面々、中は全国各地のヒーローたちがぞろぞろ。それを見てようやく思い至る。前にサーが話していたチームアップの話、あれが今日だったんだ。

 

多くのヒーローがひしめき合うところ、なんと相澤先生までいた。急遽、招集がかかったとのこと。色々と話したいことがあったが、サー・ナイトアイが死穢八斎會について協議を始めると、打ち切られてしまった。

 

※ ※ ※

 

「え〜、それでは始めてまいります!我々、ナイトアイ事務所は2週間ほど前から指定敵団体、死穢八斎會について独自調査を進めています。」

 

バブルガールの司会で協議が始まる。喋りが少したどたどしくて、こんな大勢の前で話をするのは緊張してるみたい。

 

「調査開始のきっかけは?」

「レザボアドッグスと名乗る強盗団の事故からです。」

「そんな事故ありましたね。」

「警察は事故として処理しましたが、腑に落ちない点が多く、追跡を始めました。」

 

私たちも聞いた話だ。事故に巻き込まれた治崎らは無傷、強盗団の持病も治して去っていった。しかし彼らが盗んだお金だけは綺麗さっぱりなくなってるという奇妙な事件。お金は燃えたことになっているが、怪しさ満点である。

 

「私センチピーダーがナイトアイの指示の下、追跡調査を進めておりました。調べたところ、死穢八斎會はここ1年間に全国の組織外の人間や同じ裏稼業団体との接触が急増しており、組織拡大と資金集めに動いていると見ています。」

 

ナイトアイ事務所、もう1人のサイドキックであるセンチピーダーが代わって話を続ける。

 

「そして調査開始してからすぐに敵連合の1人、分倍河原仁…ヴィラン名、トゥワイスと接触しました。尾行を警戒され、追跡はかないませんでしたが、警察の協力で、組織間に何らかの抗争があったことを確認。」

「連合に関わる話ならということで、俺や塚内にも声がかかったんだ。」

 

そう言って1人のおじいちゃんヒーローが発言する。

 

そうだ、あのおじいさんグラントリノだ。保須市、神野区の事件でお世話になった人、緑谷くんの職場体験先だったね。ミリオさんと緑谷くんもその事についてゴニョゴニョと話している。

 

 

 

……隣のヒーローの目線が気になるな、ロックロックだっけ?なんか睨まれてる?

 

「えー、このような過程があり、HNで皆さんに協力を求めたわけで……」

「そこ、飛ばしていいよ。」

 

バブルガールが話を続けるが、緊張が祟ったかもたついてしまう。その中で飛び出したHN、ヒーローネットワークについて波動さんがお茶子さんたちに説明する。それが癇に障ったらしく、私の隣にいたロックロックがついに口を開いた。

 

「雄英生とはいえ、ガキがこの場にいるのはどうなんだ?話が進まねぇや、本題の企みにたどり着く頃にゃ、日が暮れてるぜ。」

「抜かせ!ここにいる2人はスーパー重要参考人やぞ!」

「俺…たち?」

「……ノリがキツイ。」

 

ファットガムが立ち上がり、反論するが切島くんはよく分かってないようで、天喰さんは縮こまっている。

 

まぁでも私たち学生が居ることで空気が若干緩くなってるのは否めない。インターン先のヒーローがそれぞれ出席させても問題ないとしてるから、私たちも戦力の1つとして数えられてるんだろう。

 

「八斎會は認可されていない薬物の捌きをシノギの1つにしていた疑いがあります。そこでその道に詳しいヒーロー、ファットガムに協力を要請しました。」

「昔はゴリゴリにそう言うんぶっ潰しとりました。そんで先日の烈怒頼雄斗デビュー戦、今までに見たことない種類のもんが環に撃ち込まれた。……個性を壊すクスリ。」

「個性を壊す!?」

 

個性を破壊してしまう薬物、誰も想像し得なかったものの登場に会議室がザワつく。個性そのものに干渉する手段は非常に少ない。そういう個性を持っている人は希少だし、個性を強化するドーピング剤は副作用が強い上、そもそも違法薬物だ。だからみんな驚いている。

 

その薬物を撃ち込まれた天喰さんは、一時的に個性が使えなくなっただけで、今は回復してはいるらしい。回復してる証拠に右腕を立派な牛の蹄に変えて見せてくれた。

 

「回復すんなら安心だな。致命傷にはならねぇ。」

「いえ、その辺りはイレイザーヘッドから。」

「どうやら俺の抹消とはちょっと違うみたいですね。俺は個性を攻撃してる訳じゃないので。抹消は個性因子を停止させるだけで、因子そのものには攻撃出来ません。」

「環が撃たれた直後、病院で診てもらったんやが、その個性因子が傷ついとったんや。幸い今は自然治癒で元通りやけど。」

「その撃ち込まれた物の解析は?」

「それが環の体は他に異常なし。ただただ個性だけが攻撃された。撃った連中もだんまり、銃はバラバラ、弾も撃ったっきりしか所持してなかった!けど切島くんが弾いてくれたおかげで、中身の入った1発が手に入ったっちゅうわけや!」

「……うぉっ!俺っすか!?びっくりした!」

 

なるほど、それでスーパー重要参考人なわけか。個性を壊す弾丸、それを直に受けた天喰さんと現物を無傷で手に入れた切島くん、会議に呼ばない理由がない。切島くんグッジョブだ、本人は意図してないからよく分かってなさそうだけど。

 

「そしてその中身を調べた結果、むっちゃ気色悪いもんが出てきた。人の血ぃや細胞が入っとった……!」

 

血液や細胞が銃弾の中身、その告げられた事実に震え上がるようなおぞましさを覚える。

 

人の血肉を取り出して弾に詰める。それだけでも恐ろしい、でもその目的は……

 

「つまりその効果は人由来、個性ってこと?個性による個性破壊……」

 

そういうことだ。リューキュウの言葉に心の中で同意する。個性因子というのは謎が多い。血流に乗って体内を巡ったり、採血によってそれを調べたりすることはできる。しかし純粋に因子だけを取り出して、あまつさえ任意に発動させるというのは聞いたことがない。少なくとも一般に公開される技術ではないだろう。

 

だから治崎は人の細胞ごと因子を取り出し、「個性を破壊する」という方向性を与えて銃弾を作った。理屈は分かるが、とても人の所業とは思えない。鬼畜のすること、反吐が出そうだ。

 

「うーん、さっきから話が見えてこないんだが、それがどうやって八斎會と繋がる?」

「今回切島くんが捕らえた男、そいつが使用した違法薬物な。そういうブツの流通経路は複雑でな。今でこそかなり縮小されたが、色んな人間や組織が何段階にも卸売りを重ねて、やっと末端に行き着くんや。」

 

ファットガムが言うには、そのいくつもの流通経路の中に死穢八斎會と繋がりがあるグループがあったとのこと。そしてそのグループはリューキュウが退治したヴィラングループの抗争の片割れだったとサーが補足し、最近起きたヴィランの組織的犯行の多くに死穢八斎會が関わっている可能性を示した。

 

しかしそれだけでは、死穢八斎會をクロと断定するには力不足、むしろ無理やりクロだと言おうとしてるようにも思えると、一部のヒーローは否定的な意見を評す。

 

そんな雰囲気の中、サーは更なる情報を提示する。

 

「若頭、治崎の個性は「オーバーホール」、対象を分解し修復が可能という力です。分解、一度壊し直す個性、そして個性を破壊する弾……治崎には壊理という娘がいる。出生届はなく詳細は不明ですが、ミリオと緑谷、加山が遭遇した時は手足に夥しく包帯が巻かれていた。」

 

……分かっていたことだ。

 

治崎の壊理ちゃんへの扱いは尋常じゃなかった。個性オーバーホール、分解し直す個性は、彼女の命が尽きない限り際限無く、銃弾の材料を生み出せる。壊理ちゃんの個性は分からない、でもやろうと思えば個性を破壊できる個性なのは確実だ。治崎はそこに目をつけたんだろう。

 

「まさかそんなおぞましいこと……」

「超人社会だ、行動次第で誰もがなんだってできちまう。」

「何、何の話っすか…?」

「やっぱガキは要らねぇんじゃねぇの?分かれよな。つまり治崎って野郎は、娘の体を銃弾にして捌いてんじゃね?ってことだ。」

「そ、そんな……」

 

切島くんもようやく事態を理解したみたいだ。今回、いきなり呼び出されて、何を目的にしてるかもよく分からない会議で、突然分かれと言われても無理な話だとは思う。

 

私も今になってやっと理解出来た気がする。雄英の先生たちがインターンに反対した理由が。ヒーローはこんなことの連続だ、そんなところに子供を送り出すべきじゃないと、そういう気持ちだったんだろう。

 

「実際に銃弾を売買してるのかは分かりません。現段階としては性能があまりに半端です。ただ仮にそれが試作段階にあるとして、プレゼンのためのサンプルを仲間集めに使っていたとしたら……確たる証拠はありません。しかし全国に渡る活動の拡大、もし弾の完成形が完全に個性を破壊するものだとするなら、いくらでも悪事のアイデアが湧いてくる。」

 

悪事のアイデア、治崎の目指すところは不明だが、個性を破壊することが出来るなら破壊された個性を直すことだってできるかもしれない。もしそうなら、ヴィランは当てれば勝ちの個性破壊弾を手に暴れ、それにやられたヒーローは違法と知りつつも治崎に頼らざるを得ない。

 

恐ろしいことだ。たった一人の人間に社会を裏から牛耳られてしまう。銃弾も治崎にしか作れないから絶対に競合は現れない、全てを独占できる。それはまるでオール・フォー・ワンが支配した時代の再来のようだ。

 

「ケッ、こいつらが子供保護してりゃ一発解決だったんだじゃねぇの?」

「……」

 

全身がカッと熱くなる。結果だけを見た外野からの物言いに苛立った。強く閉じた拳に炎が散る。反論しようとして、でも自分のどこか冷静な部分がそれを遮った。

 

この人に怒ってもしょうがない、それでいて正論でもある。あの場にいたのが私たちじゃなくて、実力のあるヒーローならこんな事にはなってなかったかもしれない。プロがそこを指摘したくなるのは当然だ。私が弱いからこうなったんだ、文句は言えない。

 

ミリオさんと緑谷くんも同じ悔しさを抱いているんだろう。俯いていて表情は伺えないが、見てるだけで痛いほど拳を握りこんでいるのが分かる。

 

「全ては私の責任だ、3人を責めないでいただきたい。知らなかったこととは言え、3人ともその子を救けようと行動したのです。加山、緑谷はリスクを背負い、その場で保護しようとし、ミリオは先を考えより確実に保護できるように動いた。今、この場で一番悔しいのは、この3人です。」

 

サーの言葉に突然、2人が立ち上がる。

 

「「今度こそ必ず壊理ちゃんを保護する!!!」」

「……わ、私もです!絶対に壊理ちゃんを救けます!」

 

2人がしたのは決意表明。それに気づいて、私も立ち上がってサーに宣言する。

サーは私たちの悔しさを分かってくれている。自分と一緒に壊理ちゃんを救けようと手を引いてくれている。それに応えるんだ。

 

「そう、それが私たちの目的となります。」

「……ガキが粋がるのもいいけどよ。推測通りだとして、若頭にとっちゃその子は隠しておきたかった核なんだろ?それが何らかのトラブルで外に出ちまってだ。あまつさえガキんちょヒーローに見られちまった。素直に本拠地に置いとくか?俺は置かねぇ。攻めるにしてもその子が居ませんでしたじゃ話にならねぇぞ。どこにいるのか特定出来てんのか?」

「確かに…どうなの?ナイトアイ。」

「問題はそこです。何をどこまで計画しているのか不透明な以上、一度で確実に叩かねばならない。」

 

私たちを非難したように、サーの見通しにも厳しい意見が飛ぶ。しかしそれを考えていないはずもなく、屹然と話を続ける。

 

「そこで八斎會と接点のある組織、グループ及び八斎會の持つ土地を、可能な限り洗い出し、リストアップしました。皆さんには各自その箇所を探っていただき、拠点となり得るポイントを絞ってもらいたい。」

「それで俺たちみたいなマイナーヒーローが呼ばれたのか。」

「どういうことだ?」

「見ろ。ここにいるヒーローの活動地区とリストがリンクしてる。土地鑑のあるヒーローが選ばれてんだ。」

 

なるほど……ナイトアイ事務所だけでは、全国各地にある八斎會の施設を探るには手が足りないし、土地鑑もない。だから現地に詳しいヒーローに協力してもらって、全施設を一斉に調査しようってことなのか。

 

「……オールマイトの元サイドキックの割にずいぶん慎重やな。回りくどいわ!こうしてる間にも壊理ちゃん泣いとるかもしれへんのやぞ!」

「我々はオールマイトになれない。だから分析と予測を重ね、救けられる可能性を100%に近づけなければ。」

「焦っちゃいけねぇ。下手に大きく出て捕らえ損ねた場合、火種が大きくなりかねん。ステインの逮捕劇が連合のPRになっちまったようにな。むしろチンピラに個性破壊なんつう武器を流したのもそういう意図があってのものかもしらん。」

「考えすぎやろ!そないなこと言うとったら身動き取れへんようなるで!」

 

サーのやり方、グラントリノの考え方とファットガムは相性が悪いらしい。単純にスタンスの違いだろう。どっちが正しくて、どっちが間違ってるというものでもない。ただ違法薬物を流す組織を潰すのとは違う、既に壊理ちゃんという被害者が居て、その救出には一刻を争うことを考えてファットガムは熱くなっている。私もそうだ、サーを信じてるからこそ大人しくできている。本当は今すぐ動き出したい。

 

「あの、1ついいですか?どういう性能かは存じ上げませんが、サー・ナイトアイ、未来を予知できるなら俺たちの行く末を見ればいいじゃないですか。このままでは少々、合理性に欠ける。」

「………それは、出来ない。私の予知性能ですが、発動したら24時間のインターバルを要する。つまり1日1時間、1人しか見ることが出来ない。フラッシュバックのように、他人の生涯を記録したフィルムを見られる、と考えていただきたい。ただしそのフィルムは全編、人物の近くからの視点。見えるのはあくまで個人の行動と僅かな周辺環境だ。」

「いや、それだけでも十分過ぎるほど分かるでしょう。出来ないとはどういうことなんですか?」

「例えば、その人物に近い将来、死……ただ無慈悲な死が待っていたらどうします?」

 

そうか、サーの個性は死の未来を見てしまうかもしれないのか……

 

便利な個性だと思ったけど、考えてみれば不都合な未来を見る可能性を考慮してなかったな。どういう形で未来を見ているのかは分からないけど、SF映画にあるように「過去を改変しても流れが修正され未来は変わらない」なんてこともありうる。なら人の死を見た場合、その人はどうやっても死んでしまうことになってしまう。サーはきっとそれを危険視しているんだ。

 

だから確実に成功できると確信を得られるまで予知は使わない。変えられるか分からない予知で悪い未来を見てしまわないように。

 

「私の個性は行動の成功率を最大まで引き上げたあとに、勝利のダメ押しとして使うものです。不確定要素の多い間は無闇に見るべきじゃない。」

「はぁ?死だって情報だろ!そうならねぇための策を講じられるぜ!」

「占いとは違う、回避出来る確証は無い。」

「ナイトアイ!よく分かんねぇな!いいぜ、俺を見てみろ!いくらでも回避してやるよ!」

「ダメだ……!」

 

ロックロックの言葉にサーはそれでも頑なだった。死を見てしまう可能性、あの話は実感を伴った重みがあったように思う。その出来事がサーに重くのしかかっているんだろう。

 

冷静沈着なサー・ナイトアイらしくない大声に、場はしばしの沈黙に包まれている。微妙な空気だ、誰がどう発言していいのか分からない。そんな中、リューキュウの声が通った。

 

「……はぁ、とりあえずやりましょう。困っている子がいる、これが最も重要よ。」

「娘の居場所の特定、保護。可能な限り確度を高め、早期解決を目指します。ご協力、よろしくお願いします。」

 

気持ちを切り替えたサーの言葉によって会議は締めくくられる。調査が完了するまではサーと各ヒーローを信じて待つ。そして決行日が来たら、

 

──全力でやるだけだ。

 

 

※ ※ ※

 

一度会議を終えて、調査を行うヒーロー同士で話があるからとインターン組は退散する運びになった。今は会議室の階下にある休憩スペースに集まっている。ナイトアイ事務所のインターンで何があったのか、みんなも気になってるから情報共有も兼ねてだ。

 

「インターン初日に、私たち壊理ちゃんと遭遇したんだよ。治崎から逃げて来たところを偶然にね。」

「でも壊理ちゃんは心身ともに治崎に強く縛られてた。睨まれただけで加山さんの腕から出て行ってしまうくらいに。」

「私はあの子の手を掴めなかった。……絶対に離しちゃダメだった。」

「強引にでも保護しておけば、今頃壊理ちゃんは……」

「そうか、そんなことが……悔しいな。」

 

あの日起きたことを簡潔にみんなへ話す。重苦しい空気、必ず救けると決意しても、あれを思い返すと情けなさがそれに勝る。

 

そんな最中、エレベーターから人が降りてくる。……相澤先生だ。

 

「通夜でもしてんのか。」

「ケロ、先生……」

「あぁ、学外ではイレイザーヘッドで通せ。……いやしかし、今日は君たちのインターン中止を提言しに来たんだがな。」

「えぇ!今更なんで!?」

「敵連合が関わってくる可能性があると聞かされたろう。話は変わってくる。」

 

敵連合……死穢八斎會は奴らと何らかの接触があった。抗争か、提携か、もし後者なら厄介かつ危険な勢力とやり合うことになる。何度も敵連合にしてやられてきた雄英が、そして担当の相澤先生が慎重になるのも無理はない、か。

 

「ただなぁ緑谷、お前はまだ俺の信頼を取り戻せてないんだよ。」

「………」

「残念なことに、ここで止めたらお前はまた飛び出してしまうと、俺は確信してしまった。俺が見ておく、するなら正規の活躍をしよう、緑谷。」

 

緑谷くんの目の前にしゃがんだ相澤先生は、右手をコツンと彼の胸に当てる。

 

「わかったか?問題児。」

「……はい!」

 

神野でやらかした規則違反、失った信頼をちゃんとヒーローとして活躍することで取り戻そうと、相澤先生が緑谷くんの背中を押した。

 

「ミリオ、顔を上げてくれ。」

「ねぇ、私知ってるの!通形、後悔して落ち込んでも仕方ないんだよ、知ってた?」

「あぁ……!」

 

先輩も立ち直ったらしい。後悔しても、落ち込んでも仕方ない、波動さんがミリオさんにかけた言葉は私にも響いた。クヨクヨするな、ウジウジするな、失敗はそれを覆して取り戻せ。

 

いつの間にか潤んでいた目を拭って、相澤さんの方へ向く。

 

「相澤さん、雄英に入る前の頃、私がヒーロー目指すことに消極的だって言ってたよね。」

「言ったな。」

「目指す過程で絶対過去と対峙することになる。その通りだった。降り掛かって来る過去は私が強くあれば乗り越えられた。でも有り得たかもしれない昔の自分を前にしたら、情けないくらい心が底から揺さぶられた。」

「壊理ちゃんか……」

「うん。」

「お前はどうしたい。」

 

相澤さんは私の目の奥の奥を見つめる。ただそれだけだけど、きっと試されているんだと思った。私がこれからヒーローを目指していけるのか。

 

確かに迷うこともある。不安なこともある。でも出す答えはYESだ、私はやれる。困っている人の手を離さない、全力で救けるヒーローを。

 

「ヒーローを目指す。私のオリジンはずっと私の中に、そしてずっと目の前にある。絶対に諦めない。向かい風にちょっとあおられたけど、私はまだ折れてない。」

「……なら俺はそれを信じる。全力で行け、転んでもフォローしてやる。」

「はい!」

 

私が元気に返事すると、気難しい顔をしてた相澤さんの表情が少し緩んだ。そして立ち上がって、全員を見つめて言う。

 

「気休めだが、掴み損ねたその手は必ずしも壊理ちゃんにとって絶望だったとは限らない。前向いて行こう。」

「はいッ!」

「もちろんです!」

「相澤先生……!」

「ここではイレイザーだ。」

「俺、一生着いていきます!」

「一生はやめてくれ。」

 

私のオリジン。

 

転んでも、心が揺れても、どれだけ打ちのめされたっていい。何度でも立ち上がって、何回だって手を伸ばす。絶対に手を掴むまで挑み続けるんだ。

 

 

きっとその先に私の成りたいものはある。

 

 

 

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