半分少女のヒーローアカデミア   作:Akafuku2000

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今回はちょい短めです。この先、主人公をどう動かそうか悩みますね。

10話のUAが1万件を超えました。ありがとうございます!


半分少女とインターン3

半分少女のヒーローアカデミア

 

ナイトアイ事務所と他ヒーローたちのチームアップが成され、死穢八斎會の調査が始まってから数日が経過した。全国各地に散っている八斎會関連の施設、土地を現地のヒーローが調べている真っ最中だ。私たち学生は、この作戦の他言を厳しく禁じられ、また通常の学校生活に戻っている。

 

もう覚悟は決めている。後悔は脇に置いて、ただ壊理ちゃんを救うことだけを見据える。だからか、前みたいに精彩を欠いた悲惨な授業内容にはなっていない。むしろ、決行日までに少しでも力を付けておこうと訓練にも気合いが入っていた。

 

そんな日々の昼下がり、私は食堂で昼食を取っていた。今日のメニューはカレーだ。カレー大好き。向かいには緑谷くんとその隣に飯田くん、轟くんがいる。インターンでゴタゴタしてたから、こうやってゆっくりクラスメイトと皿を並べてご飯食べるのも久しぶりな気がする。

 

「緑谷、食わねぇのか?」

「え、あっ、食うよ!食う食う!」

 

好物らしいカツ丼を前にジッとして動かない緑谷くんに轟くんが話しかける。取り繕ったけど思い詰めた表情だった。私はだいぶ切り替えられたけど、彼の中ではまだ整理のつかない部分があるんだろう。壊理ちゃんのこと、そして

 

……サーとオールマイトのこと。

 

オールマイトの大ファンなサーがオールマイトと袂をわかったのには、間違いなくわけがある。それを知ってしまったのかもしれない。二重苦、私よりずっと悩んでそうだ。

 

「大丈夫か?」

「インターン入ってから浮かねぇ顔が続いてる。」

「……そうかな。」

「加山くんも何か知っているだろう?2人は同じインターン先だったと記憶してるが。」

「あー、ごめん!インターンのことは他言無用になってる。悪いけど、話す訳にはいかないんだよね。」

「そうだったか。仕事の内容は軽々に話せないことを失念していた。すまない。」

「謝ることないよ。緑谷くんのことを思ってでしょ?」

 

悩みを聞き出す取っ掛りを私が潰してしまって、飯田くんは少し言い淀む。けどいつもの彼らしい動きで、ビシッと手を差し出した。

 

「本当にどうしようもなくなったら言ってくれ、友達だろ?いつかの愚かな俺に君がかけてくれた言葉さ、職場体験前の。」

 

緑谷くんは飯田くんの言葉にハッとした表情になる。飯田くんの言う通り、さっきの言葉は職場体験前にお兄さんのことで悩んでいた彼へ緑谷くんがかけた言葉だった。あの時の自分のように、誰にも言えず悩んでいる緑谷くんへ返したのか。やっぱり私たちの委員長は優しい人だ。

 

言葉を噛み締めるように黙っていた緑谷くんだが、いきなりボロボロと涙を零し始めた。大丈夫大丈夫と彼は言うが、傍から見てたら全然大丈夫じゃない。飯田くんもテンパってる。まぁ、飯田くんの優しさが緑谷くんの溜め込んでいたものを少しだけ洗い流してくれたからだと思う。泣いてるけど、前よりずっと良い表情してる。

 

「ヒーローは泣かない……!」

「いや、ヒーローも泣くときゃ泣くだろ、多分。……蕎麦半玉やろうか?」

「ビーフシチューもあげよう!」

「……ありがとう。」

「私のカレーもあげるよ。一緒に頑張ろ?」

「うん!」

 

そう、一緒に頑張る。私と緑谷くんだけじゃない。サー・ナイトアイ、ミリオさんたち、協力してくれてるヒーロー、全員の力を合わせて壊理ちゃんを救けるんだ。

 

そして死穢八斎會突入の決行日、連絡はその日の晩にやってきた。

 

 

※ ※ ※

 

いつも通りベッドに潜り込んでウトウトしていた頃、枕元に置いていたスマートフォンが通知を受けて液晶を光らせる。普段ならそのまま朝まで放置しておくのに、その時は不思議と手が伸びた。

 

ロック画面を開き、通知の内容を確認する。

 

「……決行日だ。」

 

サーからチームアップした関係者全員への一斉メール。八斎會の強制捜査を行う、その詳細の連絡だ。

 

スマホを握る手に力が入る。これがヒーローとして初めての大仕事、この仕事の成否で私の行先も左右すると何となく思う。自分勝手に利用するようで気後れするが、壊理ちゃんを無事に救出できなければ、私はきっとヒーローとしてやっていけない。どこかで挫折してしまうだろう。

 

私がさらに先へ進むためにも、絶対これは成功させなければならない。

 

「そうだ、この連絡って……」

 

決行日のメール、緑谷くんたちにも来てるはずだ。もしかしたら寝ていて気づいてないかもしれないけど、みんなこれを見ていると、どこか確信を持っていた。

 

部屋を抜け出し、1階の共有スペースへ降りる。灯りの消えた廊下を走り、広間へ出た先には、やはり緑谷くんたちの姿があった。

 

「みんな、来たか?」

「うん。」

「来たわ。」

「もちろん。」

「決行日……!」

 

全員が暗がりの中でも緊張の面持ちをしてると分かる、多分私もだ。でも誰も恐れてはいない。

 

「……俺たち、ちゃんとやれるよな。」

 

恐れはなくても、不安はある。そういう声音で切島くんが零した。この任務において、私たちはメインじゃない。でも自分たちがヘマをしたらプロの動きにまで影響するのは避けられないだろう。

 

でもそれを気にしていたら何も出来ない。任務の達成は絶対だとしても、そこまでの道筋はどう転ぶか私たちには分からない。ならやれることをやるだけだと、腹を括る他ないんだ。

 

「切島くん、らしくないよ。男ならドンとぶつかってこそ、でしょ?」

「お、おぉ!そうだ、そうだよな!悪ぃ、弱音吐いちまった。」

「派手に活躍してMVPを掻っ攫うくらいの気概で行こうよ!」

 

彼の背中をバシバシして励ます。体が堅いから私の手の方が痺れるが、まぁそれはいいや。いつもの精悍な顔つきに戻った切島くんに満足して、手を離す。

 

「水穂ちゃん!私にも一発気合い入れて!」

「さっきの?」

「そう!」

「よぉし!背中を出せ!」

 

切島くんとのやり取りを見て、お茶子さんも背中をバシッとされたくなったらしい。気合いの入りっぷりは切島くんを見ての通りだ、やってあげましょうとも。

 

痛めつけたい訳じゃないので控え目に、でもしっかり力が伝わるように思いっきりお茶子さんの背中を叩く。小気味良い音が響いた。

 

「僕もいいかな?」

「私もお願いするわ。」

「いいよ!同時に行くからね!」

 

同じく気合いを入れたくなった緑谷くんと梅雨ちゃんにも背中をバシンとしてあげる。手加減してるとは言え、ちゃんと痛いはずなんだけど、4人ともこれを食らったらいい表情になってるので、私の手のひらはゴッドハンドなのかもしれない。

 

「じゃあ最後は私で!」

「誰がする?」

「何言ってんの緑谷くん!」

「え、」

「4人全員でしょ!」

 

さすがに全員は…って渋る4人を丸め込んで、4つの張り手を背中に頂戴する。なるほど確かにこれは気合いが入る。食らった衝撃とじんわり広がる痛みが緊張を吹き飛ばしてくれた。

 

ただまぁ、この晩のテンションは色々とおかしかったと後になって思わざるを得ない。

 

 

 

だって次の日の朝も背中、普通にめっちゃ痛かったし……

 

 

※ ※ ※

 

お互いに気合いを入れあってさらに数日、ついに決行日を迎えた。今、私たちは八斎會本部の前で突入準備を整えている。ヒーローと警察、その共同チームだ。

 

全国に渡って調査された八斎會関連施設だが、壊理ちゃんはこの本部にいるとサーの調べでわかった。組員の1人が彼女のご機嫌取りか、女の子向けのおもちゃを買いに来たところを上手く接触して未来を見たらしい。その未来で、壊理ちゃんの隠し場所とそこまでの道のりまで把握出来たことが、強制捜査の決め手になった。

 

様々な失敗の可能性を潰し、成功確率を上げた上で予知はダメ押しに使うというサーのやり方、まさにその本領発揮なわけだ。各地の調査を他ヒーローに任せ、自分の行動範囲に余裕を持たせていたことで、的確に予知を使うことが出来た。予知が無くても未来が見えているかのような最善手、これが予測という技術の賜物だろうか。

 

「令状読み上げたらダーッと行くんで。速やかによろしくお願いします。」

 

警察側の指揮を刑事さんが、最後の確認を行う。それを受けて私もサポートアイテムの具合を確認した。全力で戦うには、こいつの存在が不可欠だ。ちゃんと動いてるか確かめとかないとね。

 

うん、排熱機能はバッチリだ。今は待機状態だけど、私の体温上昇を感知したらすぐに働いてくれる。

 

「そろそろかな。」

 

刑事さんたちが頷きあう。そしてついに指がインターホンにかかろうとして

 

──屋敷の門が盛大に吹き飛んだ。

 

「な……」

 

手筈通りに突入できるように体を構えようとしたまま、一瞬硬直してしまう。

 

飛び出してきたのは、八斎會のトレードマークなマスクを被った巨漢。唐突な事態に気圧されるが、門を破壊した余波で宙を舞う警察官を見て我に返った。

 

地面に落ちる前に飛び上がってキャッチする。ぐったりしてるが特に外傷はない。大の大人が簡単に飛ぶ衝撃波だ、ショックで意識が朦朧としてるのかもしれない。

 

「何なんですかぁ?朝から大人数で〜」

「おいおいおい!勘づかれたのかよ!?」

「いいからみんなで取り押さえろ!」

「少し元気が入ったぞぉ、もう……何の用ですかぁ!」

「離れて!!!」

 

眠そうなのんびりとした喋り、それでいて容赦なく拳を振り下ろして来る。それを竜に変わったリューキュウが止めてくれた。風圧は抑えられなかったが、被害は出ていない。

 

「とりあえずここで人員を割くのは違うでしょ!彼はリューキュウ事務所で対処します。皆さんは今のうちに!」

 

門番をしていた大男はリューキュウによって拘束されている。彼女の言う通り、行くなら今のうちだ。

 

「ええい!もう入って行け行け!」

「ヒーローと警察だ!違法薬物製造、販売の容疑で捜索令状が出ている!」

 

ファットと刑事さんに続いて全員が突入して行く。私はミリオさん、緑谷くんと一緒だ。中に居た組員がヒーローも警察も気にせず立ちはだかってくるけど、さすがにさっきの男ほどじゃなくてヒーローたちに無力化されていく。

 

門番は手強そうだったけど、あまり入口は固められてそうにない。組員の数こそ多くて厄介ではある。上は捨てて、地下で待ち受けてるってのはありそうだ。サーたちの話では地下施設は入り組んでるらしいし、敵を誘い込んで始末するには閉所の方がやりやすい。

 

「緑谷くん、加山さん!行くぞ!」

「はい!」

「やります!」

 

この先に治崎がいる。奴に壊理ちゃんを連れ去られるわけにはいかない。あの子にもう二度と悲しい顔も思いもさせたくない。

 

絶対に手を掴んでみせる。

 

 

 

 

 

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