半分少女のヒーローアカデミア   作:Akafuku2000

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間章4
半分少女と休日3


半分少女のヒーローアカデミア

 

秋も暮れに差し掛かり、冬の足音が聞こえて来るようになった11月のこと。私は相澤先生に雄英の応接室に呼び出されていた。あの時のインターン組も一緒だ。

 

軽い感じの呼び出しだったので、何か身構えるようなことはないと思う。けど誰も心当たりがないから全員揃って首を捻っていると。

 

「雄英で預かることになった。」

 

さらりとした口調で壊理ちゃんを紹介された。BIG3も勢揃いで、壊理ちゃんは波動さんに髪を結って貰ってて可愛い。文化祭から少し空いたけど、また更に明るくなったように思う。

 

「髪、可愛くしてもらってよかったねぇ。」

「よっ!」

「わぁ、壊理ちゃんやったー!」

「私、妹を思い出すわ。よろしくね。」

「よろしくお願いします!」

 

集まった面々が順繰りに挨拶するが、彼女は元気に返してくれる。前は人に囲まれるとミリオさんに隠れちゃってたのに……経過は順調みたい。

 

ていうか超可愛い、もう今すぐ抱きしめたいくらい。年相応の愛らしさが溢れてる、とってもいい事だ。

 

「ど、どういった経緯で?」

「いつまでも病院という訳にもいかないからな……」

 

先生は黙って入口を指さす。

 

……なるほど、ちょっと外で話そうってことね。

 

お世話役に波動さんが買って出てくれ、私たちは校舎前へと移動した。周りに人がいないことを確認すると、先生はすぐに話を再開する。

 

「壊理ちゃんは親に捨てられたそうだ。血縁にあたる死穢八斎會組長も長らく意識不明で現状寄る辺がない。」

「………」

 

そうか、親無しか。やっぱり私と少し似てる。でも「捨てられた」って言うのは穏やかじゃない。捨てた親に思うところがなくはないが、そこまでに至る経緯もあの事件の時に聞いた。

 

「巻き戻し」の暴発、突然変異によって生まれた誰も予期しなかった個性で壊理ちゃんは父親を消してしまったらしい。詳細は不明だけど、多分若返りすぎて受精卵レベルにまで戻って消滅したんだろう。それを知った母親は育てられないと実父、つまり組長に押し付けるようにして捨てたのだとか。

 

私は結婚してないし、子供もいないから実感としては薄い。しかし自分の愛する人が死に、その原因が実の娘にあると分かって彼女の受けたショックは計り知れない。例え捨てなかったとしても温厚な家族関係は望めなかったと思う。

 

確かにこれは壊理ちゃんの前では出来ない話だ。あの子がこのことを知ってるとは思えないし、やっと歩き始めたところで教えてしまうのは酷だ。

 

「そんでね、先生から聞いてるかもしれないけど、壊理ちゃんの個性の放出口になってる角。」

「はい、今は縮んでて大丈夫って聞きました。」

「僅かながらまた伸び始めてるそうなんだ。」

「言われてみれば前より大きかった……」

「じゃあまたあぁならないようにってことですか?」

「そういうことだ。」

 

壊理ちゃんの個性の肝は角にある。発動型に分類されるけど、その発動にエネルギーの蓄積を必要とする珍しいタイプだ。その蓄積量は角の大きさである程度測れるから、伸び出してるというのは不意の発動の危険が上がっているわけか。

 

「そんな事情があるから養護施設じゃなく、うちが引き取り先となった。教師寮の空き部屋で監督する。様子を見て強大すぎる力との付き合い方も模索していく。検証すべきこともあるし、まぁおいおいだ。」

「私第2号ってことですね!」

「今回は保護者じゃなくて監督者だがな。全く、人生何があるか分からん。」

 

やれやれと言った雰囲気を出してるが、満更でもないのは簡単に見て取れる。まぁ赤の他人だった私を引き取り、教師もやってる人が世話好きじゃないはずがない。自慢の相澤さんである、ふんす。

 

「でも相澤先生が大変そうね。」

「そこは!休学中であり、壊理ちゃんとも仲良しな俺がいるのさ!」

 

ズバッと身を乗り出してきたのはミリオさん。壊理ちゃんが1番懐いてるのは先輩だろうし適任だ。

 

あぁ、よかった。ミリオさんがいるなら安心安心。

 

「相澤さん生活力ないし……」

「なんか言ったか?」

「な、何でもないですよ???」

 

相澤さんの私生活が壊滅的なのをボソッと言ったら睨まれた。自覚あるなら直したらいいのに……

 

たまに壊理ちゃんの食生活が三食ゼリー漬けになってないか見に行こう。

 

「壊理ちゃんが体も心も安定するようになれば、無敵の男復活も遠くない。」

「そうなれば嬉しいね!ハハハッ!」

 

ミリオさんの個性も壊理ちゃんに戻してもらう計画か、早く成功するといいな。

 

治崎の研究から巻き戻しは一方向じゃないと分かってる。つまり「巻き戻しを巻き戻す」ことが可能なわけだ。彼女が個性を使いこなせるようになれば、決して不可能じゃない。

 

「早速だが3年、しばらく頼めるか?」

「ラジャっす!オセロやろっと。」

「僕らもいいですか?」

「いやA組は寮に戻ってろ。この後、来賓がある。」

 

うん?来賓????

 

※ ※ ※

 

「へっくし!」

「風邪?大丈夫?」

「いや、息災。我が粘膜が仕事をしたまで。」

「なにそれ……」

 

なんだろうね?相変わらず常闇くんの口調は思春期のアレっぽい。

 

「ウワサされてんじゃね?ファンできたんじゃね?文化祭の時の八百万!みたいな。」

「茶化さないでくださいまし!ありがたいことです!」

 

八百万コール懐かしいな。元々ある程度あった八百万さん人気は文化祭で更に伸びた。今の人気なら来年の文化祭で彼女はミスコンのクイーンを取れるかもしれない。自分からは出ないだろうけど。

 

「常闇くんはとっくにおるんやない?だってあのホークスのとこインターン行っとったんやし。」

「いいや、ないだろうな。あそこは速すぎるから。」

「ん?」

「速すぎる男、ね。」

「あぁ。あの人は速すぎる。」

 

ホークスの2つ名と言えば「速すぎる男」だ。名声も実績もデビューからあっという間にトップ層を追い抜かしたから。事件解決速度も現役ヒーローで彼の右に出る者はいないだろう。そんな彼のインターンで結果を出すのは難しいと思う。

 

と、こんな感じにA組が集まって駄弁ってるのは人を待っているためである。昼間に相澤先生が言ってた来賓、誰が来るんだろうか?

 

時間的にそろそろだけど……

 

寮の入口をノックする音が響いた。

 

「お!来たぞ、みんなお出迎えだ!」

 

飯田くんが率先して開いた扉の先にいたのは。

 

 

『煌めく眼でロックオン!』

『猫の手、手助けやってくる!』

『どこからともなくやってくる!』

『キュートにキャットにスティンガー!』

 

『『『『ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!!』』』』

 

プッシーキャッツじゃん。超個性的な名乗り、下手な自己紹介よりもわかりやすい。

 

「プッシーキャッツ!お久しぶりです!」

「元気そうねキティたち!」

 

来賓ってこの人たちの事だったのか。夏休みは色々お世話になったし、懐かしいなぁ。

 

「2人とも、あんときゃ守りきってやれず済まなんだ。」

「……ほじくり返すんじゃねぇ。」

「いえいえ!虎さんのおかげで私たちめっちゃ元気にやってるので!ね!かっちゃん?」

「やかましい。」

「すみません。この子、反抗期で……」

「テメェのそれはどこ目線だよ。」

「友達目線。」

「キモイわ。」

 

あぁん?

 

プライドがエベレストすぎるだろコイツ。どれだけ救けられたの認めたくないんだ。神野のとき救助に来てくれたんだからお礼くらい言いなさいよ。爆豪のお母さんにチクってやろうか?この野郎。

 

「うちら大丈夫っすよ。ねぇ?」

『肉球まんじゅう!肉球まんじゅう!』

「3人ともお礼言ったー?」

『ありがとうございまーーす!』

 

お土産1つであそこまで喜んでくれるのあげ甲斐しかないな……

 

まんじゅうを持ち上げてわっしょいわっしょいしてる三奈さん達を見ていると緑谷くんが「あぁ!」と声を上げた。

 

「洸汰くん久しぶり!手紙ありがとうね、宝物だよ!!!」

「別に……」

 

洸汰くんが来てるのに気づいたらしい。シュババッって感じ。プッシーキャッツに隠れてたから私も今気づいた。

 

「洸汰くんおひさ〜、私のこと覚えてる?」

「あ、加山さん。」

「そうそう!また会えて嬉しいよ。あれ、ちょっと身長伸びた?」

「………!」

「ありゃりゃ。」

 

緑谷くんとは仲良く握手してたのに……マンダレイの後ろに隠れちゃった。

 

「こら、洸汰……ごめんね、あなたに会うのは少し恥ずかしかったみたい。」

「全然、大丈夫ですよ!」

 

合宿のときのこと気にしてるんだろうか?別に私は気にしてないんだけどな。このくらいの歳ならあの程度は可愛いもんだ。見た感じ嫌われては……なさそうだし、そのうち慣れてくれるでしょ。

 

「本当はね、緑谷くんみたいに加山さんにも手紙書こうとしてたんだけど、照れてダメだったの。ドタバタしてたしね。」

「ちょ、なんで言うんだよ!」

「はぁ手紙を……もしかしてラブレター?」

「違う!!!」

 

顔真っ赤にしちゃってる。

 

多分、マスキュラー倒したときのお礼だったのかな。私としては洸汰くんが元気にしてるだけで満足だけども。でも緑谷くんが貰ったって言うのはちょっと羨ましいな。嬉しすぎて額縁に飾ってたかも。

 

「そうそう見てよ、洸汰の靴。自分で選んだんだよ。絶対「赤」だって。」

「うわあああ!それも言わないでって言ったじゃん!」

「お揃いだ!」

「あ、ん………」

 

2人とも嬉しそう。真っ赤なスニーカー、緑谷くんとお揃いの色。私の色でもあるけど、それを言ったらまた赤くしちゃいそうだから黙っておくか。

 

……ふふ、確かにいいね、赤は。ちょっと好きになった。

 

「しかしまたなんで雄英に?」

「復帰のご挨拶に来たのよ。」

「復帰?」

「それはおめでとうございます!」

 

そういえばプッシーキャッツは暫くヒーロー活動を休止してたんだった。復帰するって言うのはおめでたい。

 

あれ?でも、そもそもの休止理由って確か……

 

「ラグドール復帰するんですか?個性奪われて活動見合わせだったんじゃ。」

「戻ってないよ!」

「え?」

「あちきは事務仕事で3人をサポートしていくの。OLキャッツ!」

「タルタロスから報告は貰うんだけどね。どんな、どれだけの個性を内に秘めているか未だに追及している状況。現状、何もさせないことが奴を抑える唯一の方法らしくてね。」

 

やっぱりか、ラグドールの個性を戻すには奪ったオール・フォー・ワンにやらせるしかないけど、あのニヤケ面が素直に言うこと聞くとは思えない。何しでかすか分からないし、個性を返すと言いながら余計なことをするに決まってる。

 

ラグドールの「サーチ」を取り返すのは現実的じゃない。彼女が現場に出られなくなるのは致し方ない。

 

「では、なぜこのタイミングで復帰を?」

「今度発表されるんだけど、ヒーロービルボードチャートJP下半期、私たち411位だったんだ。」

「プッシーキャッツは前回32位でした……」

「なるほど急落したからか!ファイトっす!」

「違うにゃん!全く活動してなかったにも関わらず3桁ってどういうこと!?ってこと!」

「「え?」」

 

ヒーローは人気職でもあるし、活動休止が長引いて世間から忘れられるの危惧したのかと思ったけど違うんだ?プッシーキャッツが活動してるって知られてないと、山岳救助とかの要請が回ってこなくなる的なのではないのか。

 

「支持率の項目が我々は突出していた。」

「待ってくれてる人たちがいる。」

「立ち止まってなんかいられにゃい!」

 

なるほど……

 

「それは確かに復帰しないわけにはいかないですね。」

「漢だぜ!プッシーキャッツ!」

 

プッシーキャッツは女性でしょ。あ、虎さんは男か。

 

「そういえば下半期はまだ発表されてなかったね。」

「色々あったからな。」

「オールマイトのいないビルボードチャートか。どうなってるんだろう、楽しみだな!」

 

オールマイトのいないビルボードチャート、私達の世代からしたら初めてのことだ。メラメラおじさ……こほん、エンデヴァーは繰り上がりで1位だろうけど。

 

他は見当もつかないね。

 

 

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