半分少女のヒーローアカデミア   作:Akafuku2000

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半分少女とNo.1

半分少女のヒーローアカデミア

 

プッシーキャッツの方と久しぶりに会った翌日、今日も休日というのもあってA組は寮でダラダラと喋っていた。

 

課題を進めてる人も、ぐでーっと溶けてる人も、雑談に花を咲かせている人もいる。誰が決めたわけでもないが、クラスが集まって同じ場所で思い思いに過ごしている、すっかり日常となった光景だ。

 

「おいみんな見ろよこれ、エンデヴァーとホークスがチームアップだってさ。」

「ほぉ、あのホークスがか。」

「現No.1とNo.2……ビッグネームが組んだものだな。」

 

スマホをいじっていた上鳴くんが振った話に常闇くんと飯田くんが食いついた。ついに発表されたヒーロービルボードチャート、その下半期にてエンデヴァーがNo.1の座に立ったのは記憶に新しい、ていうか昨日だが。

 

オールマイトが引退した故の繰り上がり、結局追い越そうとしてきてそれが絶対に叶わなくなったエンデヴァーの内心はめっちゃ複雑だろうな。

 

ただ思うのは昨日のスピーチで一言、「俺を見ていてくれ」と言っていたこと、あれはあの人なりの決意表明なのかもね。

 

「トップ2が組むってどういうことなんだろう?また何か起きるのかなぁ。」

「バカ、怖ぇこと言うなよ芦戸!」

「僕も何か意味があると思うよ。2人は現役ヒーローの最高戦力と言っても過言じゃない訳だし、そんな人たちがチームアップするにはきっと理由がある。ホークスの地元にエンデヴァーが出張するって形のチームアップだから提案したのはホークスなのかな?エンデヴァーは忙しいだろうし、それでも呼び出すなんて余程のことが……いや、意外と新しいトップ同士親睦を深めてるのか?でもそれはホークスならともかくエンデヴァーのイメージとズレる──」

「おいら撤回する!緑谷の方が怖い!爆豪ぉ!幼なじみなんだろ何とかしろよーー!」

「知るか、死ね。」

「加山ぁぁ……」

「はいはい。」

 

ヒーローの話題を振ったのが悪かったか、久々のブツブツモードに緑谷くんは入ってしまった。そのうち帰ってくるので放置でも良かったんだけど、峰田くんのヘルプが来たので止めに向かう。顎に手を当てながら小声で何か呟き続け、段々と酸欠で青くなっていく様は慣れるのに時間がかかるからしゃーない。

 

未だに思考を続け背後が疎かになっている緑谷くんへ近寄る。こういう時はちょっとびっくりさせてやるのがいいんです。

 

「ほれ!」

「うわあああ!?冷たい!」

 

首筋から背中へ水滴をポタっと落とす。完全な不意打ちに彼は飛び上がる。正しく水を差してやったのだ、ふふ。林間合宿のときに出来なかったから満足。

 

「ほら緑谷くん、深呼吸をしたまえ!顔が真っ青だぞ。」

「ご、ごめん。また夢中になってた。」

「デクくんはほんとにヒーロー好きやねぇ。」

「あはは……」

 

3人のやり取りをボーッと眺める。私は緑谷くんがパニックになってる隙に元いたところに戻っている。イタズラはバレるかバレないかを攻めるのか楽しいのだ。

 

ていうか相変わらずあの3人は仲がいいなぁ、それも一学期の初めから。私の方が付き合い長いのに、と謎の対抗心が芽生えそう。あと思ったけど緑谷くんたちの名前、1文字ずつ抜いたらお茶漬けみたいな組み合わせになるよね。

 

「新しいNo.1がエンデヴァーなわけだけど、轟からしたらそこら辺どうなの?」

「別に……親父がNo.1になったからって何がどうこうってこともねぇな。」

「へぇ、そういうとこ轟はさっぱりしてるよね。親がNo.1ってかなり凄いと思うけど。」

「俺だったら親がトップヒーローなんてプレッシャーで禿げるぜ?」

「そりゃアンタがノミの心臓だからじゃん。」

「ひっでぇ耳郎!俺泣いちゃうよ!?」

 

上鳴くんうるさい……リアクションがいつもオーバーすぎる。隣で騒がれて耳がキーンとなった。耳郎さんとよくつるんでるけど、いい凸凹コンビな感じがする。ボケとツッコミだ。ひとまとめにしたら一緒にするなって耳郎さんにイヤホンジャックで刺されそうだけども。

 

「ただ、俺はエンデヴァーを見てる。」

「それ昨日のやつ?」

「そうだな。」

 

──ふーん……

 

「最近、エンデヴァーと何か話した?仮免講習とか。」

「ちょっとな、向こうから一方的にだったが……よく分かったな。」

「うん?なんとなく。」

「そうか……親父も俺と同じで少しずつ変わってる気がする。だから見ていようと思う。」

「それエンデヴァーに言ったら超喜ぶよ。」

「あんまし想像したくねぇな……」

「確かに。」

 

エンデヴァーのキャラと違いすぎてフリーズするな。まぁ轟くん相手に「焦凍ォォォ!」って叫んでるの何回か見てるから今更感あるけど。

 

子供の言葉に一喜一憂してるとか子育て初心者のパパかな?

 

ここに突っ込んだらブラックジョークにもならないのでお口チャックするか。

 

「み〜ほ!」

「……ッ!?」

 

私の隣に誰かが唐突に座ってくる。何故か肩をガッチリと掴んで。

 

嫌な予感しかないけど、確認するためにギギギと首を回す。

 

「やっぱ何かあるっしょ。」

「ぁ……」

 

しまったァァァ!!!!

 

完全に油断してた!いつも通りの感じで話しちゃったッ!前のほとぼりが冷めてないってのに!

 

「今日という今日は白状してもらうんだから!」

「み、三奈さん?私、なんの話かわかんないな〜」

「轟とどうなのか吐けーー!」

「うああ!断るーーッ!」

 

何とかしてここから逃げ出そうとするが、向こうも本気で私をソファに抑えつけてきてるから逃げらんない。周りもまた始まったって眺めてないで助けて!?

 

峰田コラッ!ニヤニヤ見てないで何とかしろい!さっき助けてあげたでしょ!

 

「芦戸、俺と加山がどうかしたのか?」

「轟!」「轟くん!」

「お、おう?」

「ズバリ聞きます!水穂とどうなの!?」

「うおおお!!!その口を閉じろッ!!!?」

「むががが!?」

 

そのお喋りな口に綿詰めてやる!

 

「……どうって、クラスメイトで友達だと思ってるぞ。」

「へー!ってあれ?ん、あれ?」

「………っし!」

 

見誤ったようだな、芦戸三奈。轟焦凍という男の天然ぶりを。

 

轟くんが今の話題が……そ、そういう話って気づくわけないじゃん、ね!

 

「すぅーー、そっかぁ!」

「芦戸はそんなこと聞いてどうしたんだ?」

「ううん、なんでもないなんでもない!」

「お前がいいならいいが。」

 

轟くんは怪訝な顔をしつつも、私たちの話は終わったと他のメンツと別の話に移っていった。

 

ふぃー轟くんの天然に助けられるとは。やり過ごしたぞ。

 

「……水穂。」

「な、なに?」

 

これ以上はこっちも札がないんだけど……

 

え、その慈愛に満ちた目はどういうこと?

 

「頑張ってね!」

「なにが!?」

「私、応援してるから!」

「だから何が!?」

 

ぐあああッ!これ絶対向こうで勝手に確信されてる!!!

 

はぁ……もう知らん!どうとでもなれ!

 

恋バナ好きの三奈さんには参っちゃうな。次からは迂闊な発言は気をつけなきゃ。

 

「ごめん上鳴くん!ちょっとリモコン借りるね!」

「あ、おい緑谷!今いいとこだったのにー!」

 

どうしたんだろう?

 

私が三奈さんをジト目で睨んでると、緑谷くんが慌てた様子でテレビに飛びついた。チャンネル操作権は早い者勝ち、見てる人優先って決まってるけど、それを無視してまでリモコンを奪い取っていった。チャンネルが次々に切り替わっていき、あるところでピタリと止まった。

 

……その番組は、

 

『博多市内に突如として改人「脳無」が出現!現在、エンデヴァーとホークスが応戦中の模様!』

 

ニュースの中継映像だった。リポーターに向けたカメラに映るのは逃げ惑う市民とその上空で戦うエンデヴァーたちの姿。

 

「脳無が博多に!?」

「また敵連合ですか……」

「嘘だろ!?フラグ回収早すぎんだよ!!!」

 

カメラが遠くてよく見えないが、脳無はトップ2相手にして互角以上の戦いをしている。既にエンデヴァーの炎が何回も直撃してるのに倒れる気配がない。目を凝らしてみれば、焼け焦げたとしてもその直後から高速再生していた。

 

──USJのと同じタイプか……

 

特徴的な黒に近い濃紺の肌、明らかな個性複数持ち、再生出来るところからして脳無の最高位体なんだろう。特に再生は厄介だ、あのオールマイトでさえ仕留めることはできてないんだから。損傷箇所を炭化させてしまうヘルフレイムにも耐える以上、一撃で弱点であろう頭部を消し飛ばすしかないが……

 

「市街地なのが足を引っ張ってる。」

「そうですわね。あの人口密集地でエンデヴァーさんの火力を全開で使えば周囲にも被害が及びかねません。」

「それが分かってて仕掛けて来たんだとしたら、今回の脳無は相当手強いよ。」

 

そう行ってる間にも脳無との戦闘は激化していく。途中、ビルが真っ二つにされ、上部が崩落寸前に至ったがそこはエンデヴァーたちの連携で上手く切り抜けていた。

 

エンデヴァーがビルを細切れにした技、ヘルスパイダーって言ったかな?似たようなことは私もできるけど、複数なんてとてもじゃないが無理だ。本気で撃てば相当熱が篭もる。巻き込んだ脳無もそれに耐えたようだし、エンデヴァーの調子が心配だ。大技の連発、教えてもらった熱を溜め込む技術は同時に彼の体力を大幅に削っているはず。

 

脳無がさっき出した雑魚脳無も不味い。強さは黒脳無ほどじゃないと思うけど、数が多いからホークスも現地ヒーローもそっちに取られた。エンデヴァーと脳無の一騎打ち状態、手強いとは考えてたがもし今の状況を脳無が誘導したのだとしたら性能はUSJの奴以上ってことになる。

 

「……エンデヴァー」

 

エンデヴァーは繰り上がりのNo.1だ。それでもオールマイト健在下でNo.2まで上り詰めた経歴にある彼の必死さを知っている。その挫折の形を垣間見ている。……なんなら巻き込まれかけたが。

 

でもNo.1になった時、「見ていてくれ」と言っていた。

 

息子さんほどじゃないが……

 

──私も見ていますよ!

 

『み、見えますでしょうか!エンデヴァーが!この距離でも眩しい程に発火しています!!!』

 

テレビ越しでも目が焼けてしまいそうなくらいエンデヴァーの炎が強く燃え上がった。

 

彼の持つ最大の必殺技、その構えが炎の中に見える。

 

と、同時に赫灼熱拳と同質の炎がエンデヴァーの全身から放たれた。脳無の方も真っ向から立ち向かったようで回避もせず飲まれていった。

 

「……すっげぇ、あれがエンデヴァーのプロミネンスバーンかよ。」

「これで脳無も消し炭だぁ!」

「ケロ……でもUSJの脳無はオールマイトでも倒せなかったのよ?まだ安心出来ないわ。」

「………」

 

梅雨ちゃんの言葉に自分でもさっき考えていたことを思い出す。再生持ちの脳無がどの損傷まで治せるのか分からない。今となっては旧型であろうUSJ脳無でもオールマイトの全力が通じなかったんだ。

 

本当に倒せているのか?

 

カメラが限界まで拡大した先にエンデヴァーを写す。相当疲弊しているが大丈夫そうだ。

 

これで何事もなく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──視界の端に小さな影を捉えた。

 

「……ッ!?エンデヴァーッ!!!」

「ど、どうしたん?大丈夫やってエンデヴァー、は……」

 

声を上げた時には、もう事は起こった後だった。

 

影が一瞬で伸びたかと思うと一撃でエンデヴァーの顔面を切り裂いた。

 

大量の血飛沫を上げながら無惨に落下していく姿を、新たなNo.1の姿をカメラはハッキリと写していた。

 

※ ※ ※

 

エンデヴァーが深手を負ったのを皮切りに現地の緊張は限界を迎えた。目の前でNo.1がやられた現実、街中にばら撒かれた脳無がパニックを引き起こす。

 

中継のテレビクルーも逃げ惑う人々に飲まれて満足に報道できていない。彼らも既にパニック寸前だ。ブレまくるカメラから見える炎で辛うじてエンデヴァーがまだ生きているのだと分かるが、それを伝えることもできない。

 

「象徴の不在……これが、象徴の不在……」

 

「なにが象徴の不在だ……」

 

悔しい。

 

平和の象徴がいないことにじゃない。

 

今、この瞬間それを絶やさぬようにと命を懸けているエンデヴァーを誰も見ていないことが。

 

エンデヴァーが言った「見ていてくれ」という言葉を誰も覚えていないことが。

 

私があそこにいたならカメラもマイクも奪って、今思ってること全部ぶちまけてやるのに。

 

 

 

『適当なこと言うなやッ!!!どこ見て喋りよっとやテレビ!!!』

 

 

 

A組の誰もが沈痛な面持ちで中継を見守る中、現地の人々がパニックを起こす中、通った声が響いた。

 

『あれ見ろや!まだ炎が上がっとるやろうが!エンデヴァー生きて戦っとるやろうが!おらんもんの尾っぽ引っ張って勝手に絶望すんなや!!!』

 

1人の男の子が友達の静止も聞かずにカメラに叫んでいる。

 

『今、俺らのために体張っとる男は誰や!!!』

 

エンデヴァーを、未だ倒れず戦っているヒーローの姿を

 

『見ろやッッッ!!!』

 

、と。

 

再びエンデヴァーと脳無が上空に現れる。これまでにないスピードで脳無に食らいつくエンデヴァーの軌跡が見える。こうなってはもうテレビ越しだと何が起きているのか見えないが、彼の動きがついに脳無を捉えたのだけは分かった。

 

『……エ、エンデヴァーが戦っています。身を捩り、足掻きながら!戦っています!!!』

 

プロミネンスバーンを放った時のような輝きが映像を満たす。既にエンデヴァーを見ない悲観的な目は変わっていた。

 

「親父…見てるぞ……見てるぞッ!」

 

轟くんの噛み締めるような声が聞こえる。彼からついぞ聞いた事のなかった強くエンデヴァーに期待する声だ。それに足るだけの姿を今、エンデヴァーは示していた。

 

脳無を包んだ炎が更に上空へと上がっていく。既にエンデヴァーたちの姿は見えなくなり、ただ眩しい光が空に輝いている。

 

そしてその光は一段と眩くなった。先ほど以上の威力を伴ったプロミネンスバーン、それは太陽に連なる名前の通りに夕焼けの街を昼間のように照らす。

 

「すごい……」

 

炎が収束し、炭化した脳無とともに落下するエンデヴァーを見て思わず言葉が溢れた。

 

これがトップたらんと走り続け、その座に立つ重責を背負った人の力なんだ。

 

私たちが目指すべき最高峰の覚悟。

 

『「………」』

 

エンデヴァーがどうなったのか、私たちもテレビの向こうも固唾を飲んで見守っている。

 

着地による土煙と纏わりつく炎が晴れる。

 

『エンデヴァー!スタンディング!!!立っています!腕を高々と突き上げて!勝利の…いえ、始まりのスタンディングですッ!!!』

 

勝利と言うにはあまりにもボロボロ、それでも自分が次のNo.1であると宣言するエンデヴァーの姿がそこにはあった。

 

 

──ちゃんと見てましたよ、エンデヴァー。かっこいいじゃないですか。

 

 

 

 

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