半分少女のヒーローアカデミア   作:Akafuku2000

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八百万さんのオペレーション好き。不測の予測をして、自分が倒れても仲間が勝てるように布石を打つ、かっこいい。


半分少女と対抗戦3

半分少女のヒーローアカデミア

 

A組対B組の対抗戦、その第1試合はA組の勝利で終わった。まぁ、勝つには勝ったけど辛勝と言ったところだろうか。

 

死穢八斎會の一件で経験値の高い梅雨ちゃんと切島くんが先手を取られた、思い通りに動けなかったのが痛かったな。そこら辺は要改善と相澤先生も指摘してたけど。上鳴くんはやはり状況によってパフォーマンスにムラがあるのが目立ってる。上手く扱える人と組むのが良いのかもしれない。それこそ爆豪とかね。

 

心操くんはちょっと意外だった。あまり落ち込んでなかったのだ。序盤の展開の早さについていけてなかったことを反省こそすれ、クヨクヨしてなかった。ヒーロー科編入を狙うだけあってガッツがある。相澤さんが直接仕込むわけだ。

 

次はB組だけど、どんな動きを見せてくれるだろう。

 

「……1回くらい勝負してみたいな。」

 

彼は絶対にヒーロー科に来る、今からとても楽しみだ。同じ師匠を持つ者として期待が高まるね。

 

「第2試合!準備を!!!」

 

ブラキン先生の号令がかかる。いよいよ第2試合が始まるらしい。

 

2試合目のA組チームには八百万さんがいる。また見れるかもしれない。

 

──期末試験で体験した彼女の戦術が。

 

 

※ ※ ※

 

両チーム配置につき、試合が始ま……

 

『頑張れ拳藤チーム!第2試合スタートオオオオ!!!』

 

やたらB組に偏った合図でブラキン先生から放たれる。

 

いや、前の試合からそうだったけど。頑張って無視してたのに……本当にこのスタイルで行くんですか?教え子への愛が熱すぎる。

 

「偏向実況やめろー!」

「「「「やめろー!」」」」

 

A組は三奈さんを筆頭にずっと抗議してるし。

 

……まぁいいか。試合見よ、試合。

 

「拳藤ってB組でどういう立ち位置なんだ?」

 

瀬呂くんがおもむろに話しかける……鉄哲くんへ。

 

「おう!!!ありゃやる奴だぜ!!!なんたって委員長だからなァ!!!」

「声デケェ……」

 

耳がキーンとなりました。鼓膜がビリビリする、痛い。

 

「頭の回転速くて、咄嗟の判断も冷静だ!ここぞという時に前へ出て体を張る勇気もある!それでいてクラスをまとめる明朗な性格!あれがいなきゃB組は物間に取り込まれてらァ!!!B組の姉貴分、それが拳藤一佳という女だッ!!!」

 

へー、そうなんだ。

 

無駄に声はデカかったけど、少し拳藤さんの人となりが知れた。物間係で苦労してそう、くらいのイメージしか今までなかったし。

 

うーん、なんというかA組の何人かを足して割ったみたいな人、かな?物間は良くも悪くもB組を焚きつける推進剤な奴だけど、性格と口が悪い。だからストッパー兼舵取りとして、言動がハッキリしてて物を考えて動ける拳藤さんは確かに欠かせない存在だ。

 

「拳藤……この試合、八百万のオペレーションが刺さるかどうかだな。」

「そうだね。多分、拳藤さんも策士タイプだし。」

「どっちが相手を読み切れるか、か」

「期末試験みたいなオペレーション見たいね!」

「あぁ。」

 

轟くんも八百万さんの活躍が楽しみらしい。

 

物間についていけるところからして拳藤さんは策士よりの人だろう。つまり第2試合は、A組の策士、八百万さん対B組の策士、拳藤さんなわけだ!

 

ワクワクするよ!

 

「さて試合の方はっと。」

 

会話もそこそこに試合映像に視線を戻す。A組チームは常闇くんによる索敵から入るらしい。チーム同士の距離はまだあるが、黒影はものともせず伸びていく。

 

個性伸ばしで色々頑張ってたけど、伸ばせる距離も長くなってたのか……

 

常闇くんの努力に感心していると、B組チームまでたどり着いた黒影は索敵に留まらず相手を攻撃し始めた。常闇くんとタイムラグなしに情報共有できて、見つけたらシームレスに攻撃へ移れるのは黒影の強みだ。

 

今回のB組チームの増強型は拳藤さんだけ……

 

「これは1人は取れるかな?」

「どうだろうな。鉄哲の話をそのまま信じるなら拳藤が何も対策してないとは思えねぇが……」

「む、確かに。」

 

黒影が厄介なことは向こうだって百も承知だった。順当に行くなら何か強い光を当てるか、拳藤さんが相手するかだけど。

 

──あれ?黒影が戻った。

 

景気よく暴れてた黒影が唐突に常闇くんたちの方へ戻っていく。黒影を出せる時間に制限があるらしいのでそれかと思ったが、どうにも様子がおかしい。

 

「……?」

 

映像越しだと何が起きてるかわかんないな。

 

……って!?

 

「常闇くんが殴られた!?」

 

戻ってきた黒影に常闇くんが殴り飛ばされる。暴走かと一瞬思ったけど、状況がそれを否定する。今はお昼間、十分な明るさがある時間で彼が制御を失うはずがない。彼に原因がないのだとすれば、B組チームに何かされたってことになる。でも、向こうにそれが出来る個性に思い当たる人がいない。

 

『葉隠さん!光を!』

『合点!……集光屈折!ハイチーズ!!!』

 

葉隠さんの体がピカっと光り、黒影が苦しむように身を捩る。彼女の透明な体をレンズとして利用した目眩しだ。

 

動きが鈍った隙に常闇くんが黒影を戻す。その直前に黒影から吐き出されるようにして飛び出した人影が1つ。常闇くん以上に全身を真っ黒に染めた姿はB組の……

 

「黒色くんか!」

「黒いものなら何でも入り込めるっつう奴か?」

「そうそれ!」

「……入ったものも操れるのか、厄介だな。」

「多分、個性伸ばしの成果だね。」

 

なるほどなるほど、黒影を操ってたのは黒色くんだったか。黒影はその名の通り真っ黒だから入り込む対象として申し分ない。しかも入り込むだけじゃなくて操作までできるようになってるとは。

 

……先手を取ろうとして取り返されちゃったな。

 

黒色くんを拘束しようと八百万さんたちも動くが、彼の個性故にそれは叶わない。工場地帯は配管が入り組んでいて使える影があまりにも多すぎる。どこから出てくるか予想がつかない。

 

しかしまさかB組が1戦目と同じ手で来るとは読めなかった。常闇くんと黒色くんの個性が相性良かったのもあるとは思うけど……さすがに拳藤さんなら別の策も仕込んでるだろうが、私にはさっぱり分からん。八百万さんたちも辺りを警戒しているが、やはりどこを守ればいいか分からないみたいだ。

 

次は何を仕掛けてくるかとA組全員が注目する中、青山くんの体がふわりと浮く。

 

『へええええるぷ!!!』

 

うっかり影に近づいたところを狙われた!くぅ、抜け目ない……!

 

さっきと同じで序盤からペースを崩されてる。八百万さんの策を挟み込む暇がない。これを拳藤さんが狙ってやってるのなら本当に恐ろしい。

 

黒色くんが黒を移動するスピードはかなりのもの、能力的には常闇くんが追いかけるしかないが……入り組んだ配管を潜り抜けながら、縦横無尽に動く黒色くんを捉えるのは難しいぞ。

 

ん?

 

……んんん!?

 

「「「飛んでる!?」」」

「常闇くんが……」

「新技だ!」

「なんで飛べるんだ……?」

 

え、常闇くん飛んでるんですけど???

 

B組どころかA組の面々ですら全く知らなかった新技のお披露目にびっくりする。

 

「原理としては簡単だ!黒影は常に浮遊状態、だから常闇くんを抱えて移動することも可能!さらにマントに包まれることで弱点の光を防ぎ、常時高い出力を維持!しかもあの抱え方なら両手は自由なままだ!黒影は浮遊する、当たり前すぎて見落としていた事実に着目し応用する!まさにコロンブスの卵的発想だよッ!!!」

「緑谷くん、解説ありがとう。」

「すごい!すごいよ!常闇くん!!!」

「……聞いてないな。」

 

興奮気味な解説を一息で喋ってるのはいつも通りだし。

 

ていうか、いや、あの……

 

黒影って光という弱点こそあれ、素のパワーが凄いし暗いほど強くなるのに、個性伸ばしで中遠距離に加えて近距離戦もできるようになってるんだよ?それに加えて飛べる、しかもかなりのスピードで。常闇くん、強すぎない???相性でメタを張るくらいしか対策しようがなくない???

 

私が常闇くんの成長っぷりへ唖然としてる間に彼は黒色くんから見事、青山くんを奪還してみせた。さらに八百万さんからの指示で間髪入れず青山くんがレーザーを乱れ打つ。これは黒色くんの動きを縛る作戦かな。

 

影が次から次へと乱雑に照らされていく。そして狙い通りか、黒色くんは配管地帯から追い出され、潜む物のない開けた場所へ立たされていた。

 

八百万さんと葉隠さんが黒色くんへにじり寄る。しかし彼は不敵な笑みを消さない。個性を封じられ、無勢かつ救援を待つには孤立しすぎているにも関わらずだ。

 

……やな予感するねぇ。

 

A組チームの思惑通りに行き過ぎているという違和感が拭えない。そも、この単騎突入を拳藤さんが許した時点で、黒色くんが追い詰められるリスクを考えていないはずがない。あの物間に張り合える頭を持つ彼女が雑な作戦に頼ると思えないからだ。まぁ、黒色くんの独断専行も考えられなくないけど、その線も薄い。B組はA組と比べてチーム戦における協調性の高いクラスだからだ。

 

「きっと、黒色くんが失敗したときのプランが……」

 

そう口に出しかけたとき、八百万さんたちに異変が起きた。体の至る所からキノコが生え始めたのだ。衣服、素肌問わず、瞬きする間に彼女たちを覆っていく。2人だけでなく、常闇くんたちも、そして運動場にも埋め尽くさんばかりの数が。

 

「ひっ……」

 

瞬間的にこれがB組チームの作戦だとわかったけど、それ以上に体にゾワッと寒気が走る。

 

だって、見てよ。

 

この色とりどりのキノコが体も周りも関係なく生える様を。

 

正直、生理的嫌悪を感じてしまう。これがB組の小森さんの個性「キノコ」によるものっていうのは分かってるけど、彼女に申し訳ないと思うけど、それでもやっぱり無理!

 

夏場にド忘れして放置してしまった食料品

 

気持ちよく起きて台所に立った瞬間に目に入る

 

そこには無駄に色彩豊かなフワフワしたものが……

 

思い出してしまう!あの触りたくもないのに、絶対に触れて捨てなければいけない光景が!!!

 

「マジ無理……」

「おいおい体にまで生えるのかよ……ホラーすぎんだろ!」

「小森のキノコは2、3時間で消えるから後に引かないんだ。そのせいでぶっぱ癖がついてるけど。」

 

そういうことじゃないんだよ泡瀬くん……

 

この絵面はあまりにもグロすぎる。下手なスプラッタよりも身近な分、嫌悪感が凄いんだよ。

 

「カメラにまでキノコが……」

「キモッ!」

 

耳郎さん、ストレート。映像で見てるだけでもこっちはゾワゾワする。実際に生やされてる八百万さんたちの困惑は如何程か……現に、もう黒色くんどころでなくキノコを払うのに手一杯だ。彼も知らぬ間に姿を消している。

 

うぅぅ、キモイ……キモイ、が!実に見事だ。考えてた通り、拳藤さんは黒色くんが失敗するのは折り込み済みだったんだろう。八百万さんたちが対応するのを見て正確な位置を把握、胞子をばら蒔いて混乱に陥らせてしまった。

 

ここまで嵌ってしまえば、向こうは畳み掛けてくるな。

 

『ゴンッ!ガンッ!ドガッ!ああ!ズドッ!ズン!!!』

 

やっぱり来た!

 

岩山を切り出したかのような文字の塊、それが八百万さん目掛けて飛んでくる。B組、吹出くんの個性「コミック」だ。口にしたオノマトペを形にできる個性らしいけど、これは凄い威力……

 

『バババ!ガガガ!ズダダダーー!!!』

 

間を置かず、先程と同じようなオノマトペが飛ぶ。A組チームはさらに混乱し、そして分断されてしまった。葉隠さんと八百万さんが孤立してるのは不味い……青山くんが破壊を試みてるけど、どうやら岩っぽい見た目の割に頑丈みたいで、彼のレーザーでもかすり傷1つついてない。

 

『ジメジメ、ヒュ〜、ジメジメ、ヒュ〜』

 

吹出くんが今度は攻撃的な方法とは違うオノマトペを発する。その目的は

 

『うわあああ!加湿器だー!キノコ増えるーーー!!!』

 

効果の付与だ。

 

ジメジメのオノマトペが周りの湿度を上げ、キノコの生育しやすい環境に変える。さっきまでとは比べ物にならない速度で成長しだしたキノコに葉隠さんは完全にパニックだ。

 

「黒色の危機を救ったのは小森と吹出、遠距離からの波状攻撃でA組を苦しめる。これがB組の実力か!」

「偏向実況やめろー!」

「「「「「やめろー!」」」」」

 

私も混じっておいた。何気に轟くんが入ってるの面白いな。

 

まぁ、おふざけはそこまでにしておいて。映像から状況を分析しよう。

 

……A組チームは相当追い詰められてる。第1試合よりもだ。特に司令塔である八百万さんが分断されてるのが痛すぎる。彼女なら何か打開策を練ってるはずだが、それを伝える手段がない。

 

相手の分断と混乱、もし全て狙って今の状況を築いたのだとしたら。

 

──この試合、最初から拳藤さんの掌の上だったことになる。

 

 

 

だけど、

 

私の知る八百万さんが、

 

期末試験で魅せてくれたあの八百万百の冴えが、

 

ここで鈍ると、私は思わない。

 

 

 

「……そう来るよね。」

 

チームから孤立した八百万さんに近づく影、拳藤さんが襲いかかってくる。

 

寸前で気づき防御に入るが、増強型の個性「大拳」である拳藤さんに八百万さんは吹き飛ばされる。負けじと防御を続けるが、隙を見せないラッシュに八百万さんは動けない。

 

「あっという間に有利な状況を作り出しやがった!言ったろ!頭の回転速くて咄嗟の判断も冷静だって!これがうちの拳藤さんよ!!!」

「それが最善かはわかんねぇな。」

「え?」

「八百万を警戒しての分断なら見誤ったかもな。」

「えっ???」

 

轟くんの言葉に鉄哲くんが素っ頓狂な声を上げる。

 

その通りだよ、轟くん。

 

「確かにこの状況を作った拳藤さんは凄いよ。私には到底真似出来ない。八百万さんもきっと同じことを考えてたよ、自分たちにベストな状況を作ることを。でもね、彼女はそれを上回るくらい「不測の予測」をしてる。」

「八百万を警戒するなら4人がかりで真っ先に潰すべきだった。この窮地もあいつにとっては想定内の状況、想定していたからこそ想定外の状況でも勝つための組み立てを行える。」

 

そう、この状況から勝ちに行くことこそ。

 

 

「「八百万百の得意分野だ。」」

 

 

八百万さんの体が淡く光る。それは創造したものが出てくる合図……

 

それも飛び切り大きい!

 

『ちょっと……大砲って!?』

『時間がかかりますの。大きなものを作るのは!』

 

突然、目の前へ突きつけられた砲身に拳藤さんは距離を取る。いくら彼女の個性が強いとは言え、大砲なんてものを接射されてしまえば大怪我どころじゃないからだ。

 

「おいおい、そんなん死んじまうぜ!」

「大砲好きだな、彼女。」

 

……言われてみればそうだな。

 

「ほ、本気で撃つ気か……?」

 

仰々しい大砲が現れたことに峰田くんが怯える。確かに本当に撃てば大した威力だろうが、そんな自爆覚悟の攻撃を八百万さんが選ぶとは思わない。もしそれがベストなのだとしたら最初からそうしている。

 

ならば、そこには仕掛けが、八百万百の秘策がある。

 

何かする前に仕留めようと拳藤さんが動く。しかし、その拳が届くよりも早く八百万さんは砲弾ではない「何か」を打ち上げた。それが何かは誰にも分からない。そして、それに気を取られた隙は、八百万さんがもう1つの策を講じるに十分すぎる時間だった。

 

再び彼女の体が光り、新たに物が射出される。

 

『……ワイヤー!?』

 

八百万さんから飛び出した幾本ものワイヤーが拳藤さんに絡みつく。お互いを決して離さないよう何重にもして拘束する、傍らに先程の大砲を抱えたまま。拳藤さんは抜け出そうと個性の発生源である八百万さんを気絶させるが、それでも創造が止まることはない。

 

「マジか……あの拳藤を1人で捕まえちまいやがった。」

「言っただろ、得意分野だって。」

「すげぇ!やるじゃねぇか八百万!」

「うんうん。凄いんだよ、八百万さんは。」

 

鉄哲くんも素直に感心したらしい。鼻が高いぜ。

 

八百万さんはしっかりと考えていたんだろう。チームから分断され、身体能力で自分に勝る拳藤さんと対峙する、このシチュエーションを。だからこそ、攻撃じゃなくて支援のために物資を打ち上げ、自分が倒れても拳藤さんを自由にさせないよう、重りごと自身を縛り付けた。個人の勝利ではなくチームでの勝利を見据えた、八百万さんらしいオペレーション。

 

これを活かせるかは、託された常闇くんたちにかかっている。

 

 

※ ※ ※

 

場面は移り、常闇くんたちへ。八百万さんを拳藤さんと戦っている間に青山くんが捕まっていた。分断とキノコによる混乱の最中、黒色くんに攫われてしまったのだ。

 

残るA組チームは常闇くんと葉隠さんだけ。しかし彼らには八百万さんの残した策がある。その名も「YAOYOROZU’S LUCKY BAG 」、拳藤さんにやられる直前に打ち上げたものの正体、中に入っていたものは「エタノールスプレー」と「暗視ゴーグル」どちらもB組チームを攻略するのに必須のものだった。

 

小森さんの出すキノコの胞子は手強い。どこにでも生え、成長も早いからだ。煩わしく、払わないとあっという間に埋もれてしまう。だが、胞子である以上、殺菌には弱い。エタノールはそのために用意された。今思えば、B組が胞子まみれの中でも問題なく行動出来たのは、予め体全体を殺菌、抗菌処理していたからだろう。

 

次に暗視ゴーグル。吹出くんの放ったオノマトペで辺りは薄暗くなっている。B組がどこから来るか分からず、暗闇は黒色くんに味方する。その対策に常闇くんたちへ渡したのだ。多分、戦闘力とデザインからして常闇くん用だと思う。

 

舞台は八百万さんが整えた。彼女の残した装備を手に常闇くんたちは動き出す。自由を得た彼らは、そこから速かった。

 

『おいおい、常闇が小森の方へ真っ直ぐギュンだぜ!?』

 

吹出くんが常闇くんを物陰でやり過ごすのが映像に映る。本来なら暗がりで見逃したかと思うが、暗視ゴーグルをかけた彼の視界は良好だ。あえて無視したのは自分は黒色くんたちを相手にするから。

 

『君の方にもだよ!』

『ギクーッ!!!』

 

唐突に聞こえた声に吹出くんは驚愕する。本気の透明モードに入った葉隠さんが吹出くんの傍に立っていた。彼女の本気とはブーツも手袋も脱いだ完全な裸、もう誰にも見えない凄いモード。

 

「見えないから大丈夫、で行けるのほんと凄いな……」

 

大胆ガールだ。

 

『うぅ、一体どこに……』

『教えて……あげない!!!』

『ぐわぁー!?』

 

完全なステルス状態であるのをいいことに葉隠さんは次々とパンチをお見舞いする。吹出くんも全く対応できず、ボコボコされていく。個性の影響か、顔の吹き出しに彼の感情が出てくるのが少し面白い……

 

葉隠さんがいい感じにやってるところで、常闇くんもついに黒色くんたちを捉えた。

 

『ホークス曰く、速さは力に勝るという──』

 

常闇くんを抱える黒影が形を変え、彼を覆っていく。

 

『深淵暗躯、夜宴ッ!!!』

 

一瞬にして2人を吹き飛ばしてみせた。

 

それに留まらず、強襲に焦った黒色くんを自分の外套で包んでしまう早業っぷり。黒に包まれてしまうと黒色くんは逆に動けない。小森さんも黒影が捕まえたので、これで2人撃破したことになる。

 

「すげぇ、一気に2人……逆転だ!」

「ヤオモモのアイテムのおかげだね!」

「葉隠さんも優勢だし、このまま行けば3対1で勝てる!」

「やっぱり常闇くん強くなりすぎじゃない???」

 

いやほんと強いよ、彼。

 

『黒影、2人を投獄す……ゴホッゴホッ!』

『……踏陰?』

 

これにて形勢逆転というところで、いきなり常闇くんが咳き込み始める。ゴミが入ったとかではない。

 

……どこか病的なそれ。

 

『可愛くないから封じてたけど、負けそうなのにやらないのはダメキノコだもん。』

 

捕まっていた小森さんがボソボソと呟き出す。

 

『肺攻め──スエヒロダケちゃん。』

 

マジ?????

 

「小森は戦闘能力低いけど、恐ろしい奴さ……訓練だからと抜かったね、常闇。気絶させるべきだった。」

 

その通りだけど、こんなの予想できるもんかい!!!

 

「B組、怖っ!」

「水穂ちゃん、常闇くんどうしたん!?」

「うん、あの、スエヒロダケっていう人に感染するキノコがあるんだけど……多分、小森さんはその胞子を出して常闇くんの肺に感染させた。」

「え、怖っ!」

「あれは個性ありきだから大丈夫とは思うけどね……」

 

簡単には出来ないとはいえ、人を病気にできるのエグすぎる。まさか真菌症まで起こせるとか……参りました。

 

常闇くんがほぼ行動不能に陥ったことで、残るは葉隠さんのみとなったが、彼女もあっさりと捕まってしまった。しかも捕まえたのは何とびっくり拳藤さん。常闇くんたちに集中してて見逃してたが、あの大砲抱えたままの八百万さんを引きずりながら移動してたらしい、パワフル。

 

しかし、これで第2試合はA組チームの敗北が決定してしまった。みんな精一杯頑張ってたから残念だ。自分のことみたいに悔しい。

 

──本当に、惜しかった。

 

「八百万、また弱気になんねぇといいが……」

「その時は励ませばいいよ。八百万さんの凄さは私たちが一番知ってるんだから。」

「……そうだな。」

「うん!」

 

A組チーム、全てのアイコンが投獄済に変わる。

 

第1試合は紙一重の勝利だったけど、第2試合は紙一重の敗北だった。あと少し何か違えば勝てていた。逆にその紙一重分、拳藤さんたちが強かったとも言える。B組がA組より下なんてとんでもない、彼女たちは本当に強かったのだ。

 

骨折ってる場面じゃないな!私!!!

 

「第2試合!4-0でB組の完全勝利ー!B組よくやったおめでとう!!!」

「偏向実況やめろー!」

「「「「やめろー!」」」」

 

ちょ、締まらないじゃん……

 

 

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