半分少女のヒーローアカデミア   作:Akafuku2000

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1ヶ月ぶりです……

暇ができる気配がない!隙間を縫ってチマチマ書き溜めてます。


半分少女と対抗戦4

半分少女のヒーローアカデミア

 

A組とB組の対抗戦、その第2試合を終え、私たちはインターバルに入っている。壊しすぎたグラウンドの移動と負傷者の搬送の時間も兼ねてだ。

 

第2試合の内容を振り返る。何とも惜しい試合だった。八百万さんのオペレーションと常闇くんたちの活躍で勝ちを掴みかけたが、あと一歩及ばず、A組の惜敗。

 

B組、拳藤さんたちは強かった。八百万さんが対策を練っていたとはいえ、中盤までは終始圧倒されていた。拳藤さんによるチームメイトの的確な配置と自分の意図を読ませない巧妙な戦術、それに応えた黒色くんたち。B組の実力と協調性の高さを見せつけられた。

 

「油断してたら置いてかれちゃうな……」

 

まだ2試合だと言うのに、A組もB組も見せてくる成長っぷりが半端ない。誰もがたった数ヶ月で、個性を伸ばし、身体能力を鍛え、何より経験の蓄積による戦いの幅が大きく広がっている。これは凄いことだ、歴代の雄英生でも1年生でここまで頭角を現した世代はそうそうないかもしれない。1年生なのに仮免をほぼ全員が取ってる時点で中々に異質だ。

 

その中で自分も競えていることを嬉しく思うが、同時に今回の対抗戦に参加出来なかった悔しさがまた込み上げてくる。

 

私がドジだったというだけなんだけど……

 

地面に座り込んで空を眺めてみる。うーん、今日も天気がいいね。

 

……くすん。

 

「私がしっとりと来た……」

「……オールマイト?」

「緑谷少年、ちょっとちょっと。」

「あ、はい。」

 

私が遠い目をしていると、オールマイトが緑谷くんを訪ねてきた。何か話があるらしく彼を連れて去っていく。

 

2人で内緒話となると……ちょっと気になるな。

 

緑谷くん関連で三奈さんにいじられてわちゃわちゃしてるお茶子さんたちを尻目に2人を追いかける。

 

「あ?」

「お、」

 

「「…………」」

 

同じこと考えてたらしい爆豪と目が合う。そういえば、緑谷くんと喧嘩したあとオールマイトたちの秘密を聞いてたんだった。内容が内容なのでお互い黙って歩く。

 

「はい、気をつけます。」

「おい。」「ねぇ。」

「かっ…ちゃん!?加山さんまで……びっくりした!」

 

コソコソと話し合う2人へおもむろに声をかける。

 

「テメェら人に守秘強要しといて、あからさまにコソコソしてんじゃねぇ!バレるぞ!」

「A組にもB組にも耳が良い子、何人もいるんですけど。」

「んんっ!」

「んんっ!じゃねぇよ!」

 

オールマイト、バツが悪そう。爆豪の言う通りすぎる。もう既にオールマイトと緑谷くんがやたら仲がいいって言われてるのに。

 

「で、なんかあったんか?ワン・フォー・オール。」

「そうそう、それが聞きたかった。」

「じ、実は……」

 

2人が密談してるってことはワン・フォー・オール絡みになるけど、案の定そうだったらしい。緑谷くん曰く、この前の夜、寝ていたら歴代のワン・フォー・オール継承者の面影が現れ、初代と思われる人と会話したんだとか。そして個性が暴発して目が覚めたと。

 

「暴発…?ハッ、前進してんのか後退してんのか分かんねぇな!」

「それが僕にも皆目……」

「いつになったらものにすんだ?テメェとやった時より強くなってんぞ俺は。」

「それは……焦る!」

 

おぉ、なんだか最近の緑谷くんと爆豪は真っ当なライバルになってきた感あるな。いいじゃんいいじゃん、見てて私は嬉しいよ。

 

「なに笑っとんだクソが!そういうのがムカつんだよやめろや!」

「私の感心を返せ。」

「あぁ!?」

 

やっぱり爆発さん太郎は爆発さん太郎だったわ。多分これは一生治らないな。

 

しかし、歴代継承者の面影と初代との対話、その記憶か……

 

個性に人の意思が宿る。そんなことがあるのかとも思うが、個性の継承なんて異例すぎて判断がつかない。臓器移植をすると、ドナーの記憶が受け継がれるって話も聞いたことがあるし、あながちありえない話でもないのかな。

 

……ん?

 

それがワン・フォー・オールで起こってるとすると……

 

「私ってどうなるんだ?」

「どういうこと?」

「いや、2人にはそれぞれ話したことあるけど、私の個性って半分は他人からじゃん?同じこと起きるのかなって。」

「あ、確かに……」

「テメェはデクみたいなことはあったんか?」

「んー、ないなぁ。」

 

一応思い出してみるが、そんな摩訶不思議な夢を見た記憶はない。忘れてるだけかもしれないけど。でも、他人の意思と対話するなんてこと忘れようがないし……

 

「オールマイトはどう思います?」

「そうだね……緑谷少年に起きてることは、私にも経験がない未知の現象だ。色々調べてみないとハッキリしたことは言えない。」

「そうですか……」

「あぁ。だが、加山少女の個性とワン・フォー・オールは由来が近しい。同じことが起きる可能性は否定できないな。今になって歴代の面影が形を成し始めたことは君と無関係じゃないかもしれない。気をつけるべきだろうね。」

「ですよね。注意しときます。」

 

ちょっと危ない感じだな。緑谷くんは面影を見た時に窓ガラスをぶっ飛ばしちゃったらしいし、私が暴発した場合、寮が黒焦げになるかも。それは困る。

 

ワン・フォー・オールに宿る継承者の意思、私の炎にも誰かいるんだろうか。

 

 

※ ※ ※

 

休憩も移動も終わり、いよいよ第3試合が始まる。今回のメンツは両組ともに攻撃的な個性の人が集まった。A組は轟くん、尾白くんに飯田くん、B組は鉄哲くん、回原くんに角取さん。障子くんと骨抜くんもパワータイプではないが、正面戦闘を行える個性だ。

 

他の試合でも言えることだけど、相手を自分のペースに引き込めるかが肝になりそう。轟くんの範囲攻撃、飯田くんのスピードと蹴り技は厄介だし、柔化の骨抜くんは暴れられるとあっという間に不利を押し付けられてしまう。

 

一人一人が十分な戦闘力を持っているチーム同士、分散して各個撃破が丸い、かな?

 

「では!第3試合スタートッ!!!」

 

ブラキン先生の合図が響き渡る。

 

初手はどちらが仕掛けるか……お、B組が動いた。

 

『オラオラオラァァァァ!』

 

「わぁ、大胆……」

 

鉄哲くんが派手に周りをぶっ壊し始めた。やりたいことは分かるけど思い切りがよすぎるよ。彼は真っ向勝負が得意だし、それを好んでる。だから、一帯を更地にして障害物を排除、正面から殴り合えるようにしたいんだろう。

 

でもそれにしたって……

 

「さっきの反省聞いとらんかったんか……」

 

唖然とした顔のブラキン先生。場所変えした理由が第2試合でB組チームが壊しすぎたせいだし、それで注意されてたのに。

 

他のメンバーも鉄哲くんの暴走に焦っているみたい。だけど、A組チームは彼の目論見通り真っ直ぐ向かってきている。そろそろかち合いそうだ。

 

この状況は意外とお互いに悪くない。A組からしたら正面戦闘は望むところ、それはB組も同じだ。轟くんのぶっぱは強いし、骨抜くんはぶっぱに対応できる。どちらが押し勝つか……

 

「……始まるね。」

 

轟くんの個性が迸り、B組をまとめて氷漬けにする。飯田くんと尾白くんも氷に紛れて潜伏してるみたいだ。

 

「相変わらずぶっぱが強ぇ!ずるい!」

「でも視界を遮る氷結じゃないよ。改良しとる!」

「………」

 

氷結ぶっぱを選んだかぁ。いや、有効だし、使い慣れてるという点では悪くないけど。骨抜くん相手にそれは安易かもしれないよ、轟くん。

 

『レシプロバーストッ!………なっ!?』

 

B組が動けない隙に一気に決めてしまおうと飛び出した飯田くんが氷に「沈む」

 

……やっぱり読まれてたか。

 

轟くんのぶっぱ癖、特に初手の氷結はもう彼の代名詞と言っていいほど使われている。当然、警戒する。おそらくA組チームは、骨抜くんが予め地面を柔化していると踏んで、氷で覆ってしまえば大丈夫という判断だったんだろうけど。B組からしたら、鉄哲くんの大暴れで自分たちの位置が割れてるので、むしろ向かってくるA組を待っていればいい。

 

骨抜くんはそれを利用し、氷結を読んで回避した。攻撃が成功すれば、A組は油断する。そこを突いて罠に嵌めた。実に見事だ。

 

氷が柔らかくなったことで拘束も緩み、回原くんらも復活してくる。尾白くん、飯田くんも対応しようと動き出すが、既に様々なところを柔化していたようで思うように動けていない。

 

『踏みしめる地面あっての脚力、氷の下も柔らかいぜ。アンタはとても面倒だ。沈めて固めて放っておく。』

「俺たちの連携を断つ気か!……おのれヴィラン!狡猾なりッ!」

 

氷に沈み込みながら飯田くんが吼える。相変わらず設定に入り込むタイプだ。戦闘訓練でヴィラン役やってた時もノリノリだったし。生真面目だね。

 

しかし、こうも敵味方が至近距離で入り乱れていると轟くんが動きにくい。彼の個性は出力と威力が高いから、誰か一人を狙い撃ちというのが苦手だ。後ろに索敵の要である障子くんがいるし、手薄にも出来ない。実際、どう出るべきか迷っているみたいだ。

 

「あっ……!」

 

そんな迷いの一瞬を突いて飛んできた角が障子くんを攫う。

 

角取さんの角砲!彼の巨体をああも軽々と……なんて力強さ。

 

『索敵役の障子くんは安全圏にいるとの見解でーす。そう、例えば轟くんのBackとかね!』

 

うむむ、やはりB組侮れない。個人個人に突出した能力あれど、そもそもの総合力も高い。障子くんのガードに誰かついていると勘づかれていた。

 

『鉄哲ッ!』

『いくぜ……角ダッシュ、ハンマー!!!』

 

鉄哲くんが角操作による加速を受けて轟くんへ突撃してくる。畳み掛けてくるな……しかも角取さんの操作出来る角の数が増えてる、個性伸ばしの成果か。ここの成長具合が分からないの本当に厄介だ。

 

くっそぉ、またB組に流れを作られてる。飯田くん、障子くんは動きを封じられてるし、尾白くんも轟くんも目の前の相手に手一杯だ。

 

流れを断ち切らないと、このままじゃ

 

「良いようにやられちゃう……」

 

誰か打開出来ないか、祈るように映像を注視する。

 

『レシプロって時限だろ?開幕使用は良くなくね?じゃあ俺、鉄哲の加勢行くから。』

『………時限?いつの話だマッドマン。』

 

その中で動いたのは飯田くんだった。

 

『インゲニウムはいつでもどこでも駆けつける……そのための脚ッ!』

 

埋もれていた氷がひび割れ、爆散する。そこから響くのは激しいエンジン音。けれど、その音は聞き慣れたそれより数段も高い。

 

視界の晴れた先にカメラが捉えたのは、分厚い氷塊をいとも容易くぶち破り猛進する飯田くんの姿。

 

『俺はもう、ずっとフルスロットルだ!ニュースタイル、レシプロターボッ!!!』

 

「おぉ!新技だ!!!」

 

レシプロバーストを発展させたレシプロターボ。前のは制限時間とインターバルがあったが、それを克服した完成形みたいだ。さすがにお互いの個性伸ばしの具合を逐一報告してる訳じゃないから私も知らなかった。凄い隠し玉!

 

『10分だ!10分の間、誰も俺を止められない!』

 

目で追えないほどの超加速、それは骨抜くんも同じようで四方を縦横無尽に駆け回る飯田くんに対応出来てない。その速さは本人でもまだ制御しきれてないらしいが、その欠点を補ってあまりあるスピード。しかし骨抜くんは驚いた様子を見せつつも、冷静に判断して退却を選んだ。逃したのは惜しいけど、B組の優勢は崩れた。

 

「速いぞ飯田くん!」

「かっこいい!」

「レシプロターボ……グラントリノよりも断然速い!」

「緑谷がシュートスタイルとか言い出したから、飯田頑張ってアイデンティティ取り戻したんだぞ。」

「また蹴りを教えて貰わなきゃ!」

「それより見て!尾白が!」

 

レシプロターボの凄まじさにみんなでワイワイと喜んでいると、三奈さんが映像を指差す。その先では、未だ尾白くんと回原くんの戦いが続いていた。

 

……尾白くんが押され気味か。

 

強靭な尻尾があると言えど、素の身体能力で戦う尾白くんに対し、回原くんは体が旋回するという個性をサポートアイテムで補強している。見た感じの推測だけど、指先や脚に付けてるやつが相当硬い。あれを生身で受けるのはかなり痛むはずだ。回転している部分で攻撃も弾かれてしまう。むしろ、ほとんど一方的に殴られている状況で、よく耐えていると言うべきだ。

 

いよいよ追い詰められ、万事休すというところで、遠くから光る何かが飛んでくる。

 

「飯田くん!?」

「ナイス飯田ー!」

「うおお!飯田のやつ、あそこからもう駆けつけてきたのか!」

 

驚いたことに飯田くんだった。会敵したところから距離があったはずなのに、目を離した隙に到着していた。レシプロターボの威力、恐るべし。

 

すれ違い際、何か尾白くんに伝えたあと、そのままの勢いで回原くんを捕まえてしまう。彼も必死に暴れるが、飯田くんの移動速度の方が圧倒的に速く、抵抗虚しく投獄となった。

 

これで4対3、序盤の流れは取り戻した。あとは残る3人をどう攻略するか。

 

 

※ ※ ※

 

ところ変わって轟くんたちの映像。

 

「こっちも押され気味……」

 

轟くんと鉄哲くんの戦いは、後者が一方的に攻め続けてる状況だった。

 

氷結が主体の彼は、鉄哲くんに上手く反撃できていない。近接戦が出来ないわけじゃないが、金属化によるゴリ押しが得意な鉄哲くんと氷結は相性が悪い。作った端から砕かれていては防御もままならない。

 

このままでは埒が明かないと炎に切り替え、障子くんが離れる時間を作る。しかし……

 

『なんで俺がお前の相手してるか分かるか?』

 

今なお、炎の直撃を浴びる中、鉄哲くんは悠々と歩みを進める。

 

『効かねぇからだよ!!!』

 

全身を赤熱させながらも、堪えた様子は一切ない。そして再び、轟くんへの猛攻を開始する。

 

『個性伸ばしの一環よ!テメェ、竈の中で暮らしたことあるかァ!!?』

 

「訓練エグ……」

 

サラッと言ってるけど、常軌を逸してるでしょ、それ。焼け死ぬとかならともかく、その前に窒息死しない?

 

大丈夫だったからセーフ?そう……

 

怖い、ちょっと引いちゃった。

 

「鉄哲!轟を捕らえて離さない!圧倒的近接に範囲攻撃を出す暇なし!」

 

私が内心引いてる間にも轟くんはボコボコに殴られている。実際、相性が悪いので仕方ない……氷結は砕かれ、炎は耐えられる、普通に戦っていては彼に勝つ術がない。

 

しかし手はまだある。

 

甘えてたらダメだ。君に勝つ気があるなら──

 

「本気でやれ、轟焦凍。」

 

──君が成りたいものに成るために。

 

『……うぉ!?あっちぃ!!!』

 

轟くんの左側から一段と強く炎熱が立ち上る。周囲の氷が瞬時に蒸気へ変わり、捉えていたカメラが耐えきれずに破壊される。

 

体育祭で魅せた、魅せられたのと同じ、いやそれ以上の火力が現れる。

 

温度を上げた炎に鉄哲くんは一度飛び退くが、怯むことなく突貫する。あの火力を前にいくら耐えられると言っても無謀に見えるが、その行動は意外にも勝算がある。似た炎の個性を持つからこそわかる。

 

あれだけのベタ踏み……長くは持たない。

 

加えて鉄哲くんも持たない。自分も向こうも限界を迎える前に決着を付ける必要がある。

 

『我慢比べは得意だぜぇぇ!さらに向こうへ!!!』

 

あれだけの高熱に晒されながら鉄哲くんは膝蹴りをかます。私でもキツイくらいの熱気だろうに……彼の根性は天井知らずに強い。

 

『……ッ!お前、火傷どころじゃ済まなくなっちまうぞ。』

『訓練でタマ懸けねぇ奴は!本番でも懸けらんねぇよォ!!!格上と限界は!超えるためにあるッ!』

 

しかもいいこと言う。熱血すぎるきらいはあるけど。

 

でも、中々決着がつかない。お互い限界を通り過ぎてるのに。これ以上やったら大怪我する。先生たちが止めてないからまだ大丈夫なんだろうけど。私はハラハラしてきたよ。

 

別視点でも試合は動いてる。今戦ってる2人と飯田くんを除いた4人の乱戦の結果、尾白くんが投獄された。これで人数はイーブン。

 

『どうした?すっトロいぜ……轟ィィ!!!』

『お前も鈍くなってんぞッ!』

 

こっちもまだ終わらない。本気の炎熱で勝てるかと思ったけど、鉄哲くんの耐久力が桁違いすぎる。ちょっと想定外だ。

 

ここから勝つには限界を超えるしかないんだけど、あれをぶっつけ本番でやるのは危険すぎ……

 

「……!?うわああ!ダメダメ!」

「か、加山さん?」

「それは鉄哲くんが死ぬって!」

「死ぬ!?」

 

ごめん緑谷くん説明してる暇ない!ていうか早く止めないとヤバい!!!

 

轟くんが振り払った左腕、そこに収束していく炎熱

 

──赫灼熱拳はマズいって!!!

 

『鉄哲溶けちゃうよ。』

『……ッ!』

 

おおお!骨抜くんナイス!今日一のファインプレー!

 

いきなり地面が柔化したことで轟くんの集中が途切れる。放つ寸前だった炎熱も完全に散った。見てみると鉄哲くんの金属化も解けていて、あのまま気づかないで赫灼熱拳撃ってたら彼は消し炭になっているところだった。

 

ふぃー危なかった。敵側だけど今回ばかりは素直に感謝s……あ、

 

「轟くんの、頭に……」

 

柔化で地面が緩み倒れてきたパイプが彼の頭を強かに打つ。ただでさえ扱い慣れない炎熱を使って体力削られてたところに後頭部を直撃、あれは効く。そのまま地面に沈んでいくのを見て、何とも言えない気持ちになった。

 

うん、しょうがない。あの妨害は安全上、仕方なかったんだよ、うん。

 

私は呑気に微妙な気持ちを無理やり納得させているが、状況はまた双方1人ずつ倒れている。鉄哲くんはギリギリ踏ん張ってるけど、もうろくに動けないだろう、轟くんもそう。2人とも、この試合中の復帰は無理そうだ。でも骨抜くんがいる以上、轟くんは取られるだろうし。ちょっとマズイな。

 

どうしたものかと思案していると、骨抜くんの頭部を何かが高速で撃ち抜く。

 

『今度は外さないぞ!マッドマン!!!』

 

……帰ってきたか!飯田くん!

 

『テメェ……待っ、逃げんじゃねぇ!』

『………慎め悪党!救助が先決!』

 

飯田くんは一瞬、鉄哲くんの方を見るが、ダウンしてる轟くんを逃がす方を優先し駆け出す。これで取られる可能性は消えた。B組は鉄哲くんと骨抜くんが倒れた。これは一気に勝ちの目が出てきたぞ。

 

『鉄哲ッ!これ押せぇぇ!!!』

 

「え、まだ動けるの!?」

 

完全に意識を失ったと思ってたのに!て、鉄哲くんも!?

 

気合いで這いずって来た骨抜くんは巨大なタンクに触れ、個性を発動する。それに応えるようにして、鉄哲くんも再度金属化を発動して思いっきり頭突く。その衝撃は柔化したことで全体へと伝わり、不安定になっていたタンクはゆっくりと倒れ始めた。

 

ついに地面へと到達し、もうもうと土煙が上がる。その晴れた先には……

 

「こ、これは……全員ダウン!?しかしまだ牢に入るまではリタイアにならないぞ!どうなる!?」

 

轟くん、鉄哲くん、骨抜くんは気絶。飯田くんも意識はあるようだが、柔化したタンクに巻き込まれ、それが元に戻ったことで全く動けなくなっている。B組2人が魅せた意地の道連れ……なんて凄まじい覚悟だろう。自分たちがやられても、チームを負けさせるわけにはいかないという気持ちが伝わってくる。

 

「A組もB組も1人ずつが投獄。」

「そして4人がダウン中。」

「残ってるのは……」

「障子くんと角取さんだけ……!」

 

カメラの視点が移動し、残る2人の攻防を映し出す。操作角で浮遊しながら逃げる角取さんはもう一対の角を射出し、骨抜くんたちを拾い上げる。逃げられない2人を障子くんに捕まえさせない判断か。同時に轟くんも抱えて行ったのは抜け目ない。

 

判断は最適解でも、角の操作性は抱えてる2人分の重さの影響が如実に出ている。とてもじゃないが複製腕で射程を伸ばせる障子くんから逃げられない。少しずつだけど距離が縮まってる。けど、それは角取さん本人が一番分かっているはず……

 

「……角取さんがどう出るか。」

 

『捕らえたッ!』

 

障子くんの複製腕が伸び、勝負を決めにかかる。

 

が、その手は届かない。

 

──角取さんが空高くまで飛び上がった。

 

『ソーリー、テンタコル!みんなを負けさせるのは嫌ですので!』

 

「デクくん、B組はどうする気なん?」

「恐らく安全策を取ったんだと思う。仲間を置き去りにすれば障子くんが投獄するから。」

「なんで轟まで……」

「轟くんが目を覚ましたら上空に避難しても氷結や炎の攻撃をうけてしまう。安全策を強化するための保険だよ。」

「けどさ!相手を牢屋に入れないと決着がつかないじゃん!」

「つかないけど、つくんだ。」

「あ!時間が!」

「引き分け狙い。それは……アリだ。」

 

タイマーが残り十数秒しかないことを示している。

 

この土壇場でその決断を下した角取さんに驚嘆する。誰だって勝負をつけたい、勝ちたい、そんな気持ちを捨てた合理的な判断だ。これはお互いをヴィランと想定した対抗戦、自分では敵わないと分かったなら仲間を連れて安全圏へ退避し、応援を待つのは理にかなっている。

 

勝てはしないが、絶対に負けない。欲張ってリスクを取らなかったのは冷静だ。

 

1秒、また1秒と時間は減り、ついに終了を知らせるブザーが鳴り響いた。

 

「20分経過!第3試合終了!!!投獄数1対1、引き分けだッ!」

 

 

結果は引き分け、ドロー。でも、お互いの力の全て、死力を尽くした素晴らしい試合だった。

 




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今まで書いてなかったんですけど、貰えなら嬉しいなって……
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