半分少女のヒーローアカデミア   作:Akafuku2000

80 / 108
3話目!


半分少女とインターン再び3

半分少女のヒーローアカデミア

 

下げた頭を戻して、話を続ける。

 

「あともう1つ話があるんですけど。」

「長ぇッ!」

「ごめんて。」

 

爆豪がまたキレた。さっきまで長々とエンデヴァーと話してた上に続けようとしてるからしょうがない。でも、元々は今からのが本題だったのに、エンデヴァーの態度が気になるから話が増えたんだよ。文句はこの人に言って。

 

「いいだろう。だが手短にな。」

「了解です。」

 

本来ならパトロールに出ないといけないのでダラダラと喋ってる時間はないか。

 

「実は私も個性のことでアドバイスが欲しくて。」

「君の個性は……水と炎のハイブリッドだったな。個性伸ばしは順調なんだろう?」

「それが最近になって個性が変化したんです。身体を水や炎に変えられるようになったんですけど上手く出来ないんですよね。」

「それは発動か?維持か?」

「発動です。一度だけ暴発的に炎化はできたんですが、それ以来どちらもさっぱり。」

「仮に発動出来たらどうなる?相応のリスクもあるはずだが。」

「完全に人の形を失います、多分物理無効です。リスクは──」

 

一瞬言い淀む。形状変化は暴発もしくは使いすぎた場合、死ぬ可能性がある。身体を保てなくなって存在ごと掻き消えるんだろう。できるようにならないとはっきりしたことは言えないが、対抗戦の日に感じた自分が削れていく冷たさは、死の淵と表現して差し支えない。

 

私としては使いこなす気でいるけど、他人に初めて聞かせるには刺激が強すぎると思う。エンデヴァーはそれでもサポートしてるはず、しかし轟くんはどうだろうか?

 

友達だと言ってくれる彼に、私は正直に言うべきだろうか?

 

病院でも誤魔化したのに?

 

私は……

 

 

 

 

一拍置いて口を開く。

 

 

「リスクは、今まで以上の消耗、ガス欠になりやすいので使いどころが肝心です。」

 

 

全部は言わないことにした。

 

一応嘘では……ないと思う。死のリスクは消耗の先にある事だ。上手く使えるようになったら打ち明ける。要は私が心配かけないくらい実力をつければ良いわけだし。

 

でも怒るだろうなぁ。私がやられたら怒るもん。今のうちに綺麗な土下座の練習しとくか。

 

「君の個性もまた扱いが難しいな。今の訓練はどうしている?」

「扱い慣れてる水の方でイメトレを、でもこれが全く掴めなくて。自分の身体を別のものに変えるってのがよくわかんないんですよね。」

「だろうな。……悪いが俺の事務所にもそこまでの者はおらん。今は扱える範囲の個性使用に留めろ。ヒーロー活動中に使うのは難易度が数段上がる。そこから力への理解を深めるべきだ。」

「了解しました。その方針でお願いします。」

「よし。では、パトロールに出る。全員着いてこい。」

 

話を切り上げたエンデヴァーに続き部屋を出る。

 

彼からも具体的なアドバイスが貰えなかったのは残念。でもこういうのは逆上がりなんかと同じで、やってもやっても出来なかったのに、ある日突然ポンとできるようになるやつだ。……多分。

 

ていうか、できるようにならないと発動するしないも選べないから、うっかり頓死しかねない。

 

 

※ ※ ※

 

サイドキック、私たちインターン組を率い、エンデヴァーは街を歩く。その最中、彼が日々熟すヒーロー活動とはどういうものかという講義があった。

 

「救助、避難そして撃退、ヒーローに求められる基本3項目。通常は救助か撃退、どちらかに基本方針を定め事務所を構えるが、俺は3つ全てを熟す方針だ。」

 

後ろを歩きながら、なるほどなぁという顔で聞く。職業ヒーローなら全部やるもんだと勝手に思ってたけど、言われてみればその通りだ。

 

救助しながら撃退、撃退しながら救助なんてことをやるのはめちゃしんどい。普通どちらかしか専門に出来ないんだ。もちろん本人の得意不得意もあるが、私は実際、仮免試験じゃその場を凌ぐのに手一杯だった。

 

「管轄の街を知り尽くし、僅かな異音も逃さず、事件事故があれば誰よりも速く現場へ駆けつけ、被害が拡大せぬよう野次馬がいれば熱で遠ざける。基礎中の基礎だ。並列に思考し、迅速に動く、それを常態化させる。」

 

これをサラッと言ってのけるところに、エンデヴァーがトップヒーローたる所以を感じる。きっと血の滲むような努力の賜物なんだとは思う、まさに人生を賭けた。それを今日この日も弛まずやり続けていることは、オールマイトにだって引けを取らない。

 

本人は決して認めないだろうが、ナンバー1ヒーローとして素晴らしい人だ。

 

「何を積み重ねるかだ。雄英で努力を、そしてここでは経験を、山のごとく積み上げろ。貴様ら4人の課題は経験こそが克服の手段だ。この冬の間に1回でも俺より速くヴィランを退治して見せろ!」

 

それが出来て、一人前の第一歩ってことですね。

 

「……ッ!」

 

会話を切ったエンデヴァーが飛び出す。それは支給された通信機から響く電子音が鼓膜を叩いたのと寸分もズレがなかった。

 

一瞬にして離された背中を揃って追いかける。今朝と同じ展開だ。

 

「待てや!!!」

「対応が速い!」

「初速が段違いだよもう!」

 

纏炎の発動に遅れはなかった。ただひたすらに最初の反応速度が悔しいほどに違う。ヒーロー活動とは何たるかを語ってる間にも、常に異変がないか神経を尖らせてたってことだ。

 

サイドキックからの報告が私たちにも届く。当て逃げ犯が、この先の交差点を曲がったところを逃げてるらしい。

 

エンデヴァーはもうその手前まで来てて──

 

「「「「……ッッ!!?」」」」

「加速を止めずに!?」

 

──彼は直角に曲がった。

 

「マジか……」

 

生々しい彼我の実力差を眼前に叩きつけられる。

 

私は3人と違ってナンバー1ヒーローへの憧れはなかった。尊敬すべき人とは思っても、ヒーローの頂点に立つことを目標にしたいとは思っていなかった。

 

でも、それは甘かったのだと悟る。

 

私の目指すヒーロー像がそこになくとも。頂点に興味がなくとも。

 

それを超えるつもりで挑まなければならなかった。

 

でなきゃ自分の成りたいものに指さえかけられない!

 

一段と炎の温度を上げ、エンデヴァーに追いすがる。それでも彼のスピードには遠く及ばず、現場に到着した頃には当て逃げ犯はすっかり捕縛された後だった。

 

「一足遅かったな。」

「冬はギア上げんのに時間かかんだよ。」

 

そっか爆豪は寒いと汗腺が閉まるから個性が弱まるのか。人間の体質と個性の特性上仕方ないけど……

 

うーん、やっぱりいいか。

 

一瞬暖めてあげようかと思ったがやめた。嫌がるだろうし、どんな季節でも最大のパフォーマンスを出せるようになるのは、彼自身の課題だ。

 

「爆豪、気づいてるか?」

「テメェが気づいて俺が気づかねぇことなんてねんだよ!何がだ言ってみろ……!」

「……みみっちぃ。」

 

ここら辺は中学の時から変わんないな。

 

しかし、轟くんが気づいたことの内容は私も気になる。

 

「アイツ、ダッシュの度に足から炎を噴射してる。九州で脳無に使ったジェットバーン、あれを圧縮して推進力にしているんだ。」

「俺の爆破のパクリだ。つうか、テメェ今気づいたんか。」

「あぁ、全く遠回りをした。」

 

なるへそ。エンデヴァーの速さのミソはそこか。轟くんは氷結を移動手段にしてた。でも、そこに炎を合わせちゃいけないなんてルールは無い。

 

私だって個性で走るのに水蒸気爆発を使ってるけど意識してなかったな。爆発の方向性は決められるし、力を圧縮するってやつの助けになりそうだ。

 

「もう1つ言わせてもらえば、あっちは大通りだ。」

「そうか!火炎放射で威嚇し、犯人の逃走経路を絞り込ませて!」

 

そこまで考えて追跡してたの……たった数時間でとてつもない情報量だ。トップヒーローとの差は想像していた以上に大きい。

 

「あぁっ!」

 

また行っちゃった。ほんと速い。

 

「行きな!」

「ここは任せて!あの人が焦凍くん以外に物教えようとするなんてレアだから!」

「わかりました。ありがとうございます!」

 

纏炎を再度展開する。

 

無意識に使ってた水蒸気爆発、それを足裏に集めるイメージ。

 

それを散らさないよう、しっかり力を束ねて……GO!

 

「うわっとと!」

 

加速が強くて、地面に頭擦るところだった!使い方を意識するだけで、この違い。確かにエンデヴァーの言う通り、できることから積み重ねてく方がよっぽど経験値が多い!

 

でもこれなら、もっと速く走れる、もっと速く飛べる!

 

細かい個性使用に切り替えたおかげで、エンデヴァーにも追いつけた!

 

「サイドキックと連携しないんですか!」

「先の九州では、ホークスに役割分担してもらったが、本来ヒーローとは一人でなんでもできる存在でなければならないのだ。ちなみに、さっきのガラスヴィランの手下も俺は気づいていたからな!」

「ちっせぇな!」

「爆豪がそれ言うの?」

「黙れや!てか俺に並んでんじゃねぇ!」

「最高速度が同じくらいなんだからしょうがないでしょ!」

「……バクゴー、何が出来ないかを知りたいと言ったな?」

 

やいやいと私たちは口喧嘩をしてるが、エンデヴァーは意に介さず話を続ける。

 

「確かに良い移動速度、申し分ない。ルーキーとしてはな。しかし今まさに俺を追い越すことが出来ないと知ったわけだ。」

「冬は準備が……!」

「間に合わなくても同じ言い訳をするのかッ!!!!」

 

さっき言ってた冬はギアがどうこうという話を、エンデヴァーは強く咎める。

 

そして彼が大きく踏み込んで降り立った先は交差点のド真ん中。トラックが人身事故を起こすその寸前。

 

「ここは授業の場ではない。間に合わなければ落ちるのは成績じゃない、人の命だ!!!」

 

そう、エンデヴァーの言う通りだ。調子良いだとか悪いだとかではない、何がなんでも必ず間に合わせる。自分が遅いせいで、救えた命があっさりと失われることを直接示して見せた。さすがのプライドがエベレストな爆豪も子供じみた言い訳だったと悔しそうだ。

 

「ショート、バクゴー、貴様らには同じ課題を与えよう。」

「なんで毎度こいつとセットなんだよ!」

「それが赫灼の習得に繋がるんだな。」

「溜めて放つ、力の凝縮だ。最大出力を瞬時に引き出すこと、力を点で放出すること。まずはどちらか1つを無意識で行えるようになるまで反復しろ。」

「かっちゃん!APショットと同じ要領だ!」

「〜〜〜ッ!?なんで要領知ってんだテメェ!本当に距離を取れ!!!」

 

この子はどうして他人の個性の使用感覚がわかるんですかねぇ?私は分からなくて四苦八苦してるのに。

 

「ショートはどちらも途上、まずは点での放出だ。氷の形状をある程度コントロール出来ていたな。あのイメージを炎で実践してみろ。」

「氷のイメージを炎で……」

「アモルファス、お前も2人に倣え。発展形がどうであれ、放出型の個性である以上、基礎として身につけておくべきだ。」

「そうします!」

 

2人の基本方針プラス私の方針も固まった。

 

今日一日、インターン頑張っていこうか!

 

 

※ ※ ※

 

「デク、パワーを瞬時に引き上げるのはできている、そうだな?」

「はい。」

「意識せずとも行えるか?」

「はい、フルカウルはできます。エアフォースはまだ使う意識が……」

 

午前中のパトロールを終え、ビルの屋上で昼休憩。その途中、エンデヴァーと緑谷くんは話をしていた。

 

私は横で話を聞きながらエナジーバーを齧っている。手軽に最低限のカロリーと栄養を補給できて合理的、これを常食するのは非合理。

 

「ならばまずはエアフォースとやらを無意識でできるように、副次的な方は一旦忘れろ。」

「えっ?並列に考えるんじゃ。」

「そもそも、誰しもが日常的に物事を並列処理している、無意識下でな。」

 

エンデヴァー曰く、並列処理はヒーローでなくとも普通にしているとのこと。

 

例えに出されたのは車の運転手、その人もハンドル、アクセルとブレーキ、前後の確認といった運転操作を初めから一緒に出来たわけじゃない。1つをできるように訓練し、出来たら次へと進む。それらを無意識に行えるよう教習されたからできるのだと。

 

「無意識下で二つのことをやれるように、それが終わればまた1つ増やしていく。どれほど強く激しい力であろうと、礎となるのは地道な積み重ねだ。……例外はいる。しかしそうでない者は積み重ねるしかない。少なくとも俺はこのやり方しか知らん。」

 

何かを噛み締めるようにエンデヴァーは言う。

 

「同じ反復でも、学校と現場とでは経験値が全く違ったものになる。学校で培ったものを、この最高の環境で体に馴染ませろ!」

 

その言葉にギュッと身が引き締まる。

 

雄英で培ってきたもの。違う、私がそれより前からずっと与えられてきたものを、ここで血肉に変えるんだ。

 

「講義は以上だ。パトロールに戻るぞ、全員準備はできているか?」

「……待ってくれ。」

「なんだ?」

「いや、エンデヴァーじゃなくて加山に聞きたいことがある。」

「私に?」

 

さぁ、午後もパトロールだってところで轟くんが待ったをかける。しかも私に用があるらしい。

 

「ずっと気になってたんだが、できるかもしれねぇっつう身体変化は纏炎ってやつとは違うのか?」

「違うけど……」

「そうか。あれを使ってるとき、髪が変わってるから同じもんだと思ってた。」

「え?」

 

え???

 

そうなの?

 

「ちょちょちょ、え?待って。エンデヴァー時間いいですか???」

「あ、あぁ。」

「今からやるから誰か撮って。」

「じゃあ僕が撮るよ。」

 

頭の中がはてなマークだらけだ。とりあえず纏炎状態を緑谷くんに撮ってもらう。

 

「うわ、マジじゃん。」

「とんでもなくアホだろお前。」

「だって、この状態で鏡なんて見ないよ。」

「炎でできるなら水の方でもできるんじゃねぇか?」

「確かに!緑谷くんもう1枚!」

「わかった!」

 

水も纏って撮ってみる。

 

「あ、変わってる。」

「変わってんな。」

「………」

 

頭痛いぜ!

 

「アモルファス、見るに変わっているのは毛先だけだろう。それを広げられるか?纏炎とやらじゃなくていい、水の個性でやってみろ。」

「ウス!」

 

言われて再度、水を纏う。名前付けてなかったから便宜上、纏水とするか。その纏水を使い、髪の毛を意識してみる。

 

「……変わらんか。」

「あれ?」

 

嘘、これでダメなパターンあるんだ。こう、漫画とかならいい感じに突破口になるもんでは?

 

現実は漫画じゃないって?はい。

 

「ふむ……まぁ、そう気落ちするものでもない。僅かでも出来るとわかったのなら収穫だ。」

「でも残念です……」

「インターンでは、俺が言った基本に専念することを忘れるな。身体を別物に変えるという感覚は、今の積み重ねの先にあると思え。」

「……はい。」

 

これじゃぬか喜びもいいところだ。上げて落とされるのは普通に凹む。エンデヴァーがヒーローとして励ましてくれてるのが余計に辛い。

 

「なんかガッカリさせちまって悪い。」

「悪くない、轟くんは悪くないんだよ。むしろヒントになるかもしれないし。」

「とてもそんなテンションには見えねぇぞ?」

「大丈夫……すぐ、切り替えるから。」

 

とりあえず、エンデヴァーの言う放出の基礎を頑張ろう。努力は裏切らないのは身をもって知ってるしさ!ね!!!

 

でもちょっと悲しい……くすん。

 




ここまで読んでくださりありがとうございました。書き溜めた分はこれで終わりです。また書かなければ。

もし、感想、評価、お気に入りしていただけたら嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。