半分少女のヒーローアカデミア   作:Akafuku2000

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3話目です。相澤先生視点めちゃ久しぶりに書きましたねぇ

原作キャラの視点で書くの難しいんですよねぇ


半分少女とかつての

半分少女のヒーローアカデミア

 

三学期の始め、俄に活気の戻った校舎を寝袋片手に歩く。生徒がインターンに勤しんでいた間、教員である俺たちはそれらの調整、他の業務に追われていた。そのため、今朝も寝袋頼りなギリギリの睡眠時間だった。

 

……これ使ってたってバレたらまた水穂のやつにドヤされるな。生徒たちの主導権は教育者として握れてると思ってるが、こと私生活に関してはアイツに頭が上がらん。大人としての威厳が紙のように薄くなってるのは、消えることのない頭痛の種だな。

 

「まぁいい。」

 

今日は冬休みが明けて最初の授業となる。全員、インターンは相当精を出していたらしいが、それでも多少は休暇で気も緩んでるだろう。

 

実際、目前に迫ったA組の教室は騒がしいことこの上ない。飯田に言っておいた連絡事項が伝わってるといいが……

 

「………」

 

一応、少し喝を入れるか。人間、上手く行ってるときが一番失敗をしやすい。

 

「おい!いつまで喋って……」

「先生あけおめ〜!」

 

さて、と戸を引いたところで、芦戸がこちらへ駆けてくる。見るにコスチューム用のアタッシュケースを手に持っていた。

 

「今朝伺った通り、本日の概要は伝達済みです!」

「そうか……」

 

どうやら気の緩みなんぞは、俺の杞憂だったらしい。インターンで得た経験を共有する報告会をグラウンドαでやるという内容は、既にA組に伝えられていた。

 

こういうところは一学期のときと比べて見違えたと思う。状況ごとに合ったリーダーがおり、その下に統率を取れるのはA組の明確な長所だろう。

 

飯田で言えば、平時や緊急時の初動において高いリーダーシップを発揮する。彼のようないつでも安定した行動を取れるリーダーは得がたい。

 

「飯田が空回りしてねぇ。」

「あぁ!インターン先のヒーロー、マニュアルさんが保須でリーダーをしていてね。そこで学んだのさ、物腰の柔らかさをね……あっそれ!それそれそれ!」

「お、空回った。」

「すぐチェーン外れる自転車みてぇ。」

「飯田の場合、バイクじゃね?エンジンついてるし。」

 

「………」

 

関心したのも束の間、飯田の行動に嘆息する。物腰の柔らかさは、そういう柔らかさじゃない……まぁ、こういうところが真面目故に堅くなりがちな飯田に親しみを生んでるんだろうが。

 

ぞろぞろと出ていく生徒たちの背を見送る中、また1人俺の元へ駆けてくる生徒がいた。

 

「相澤先生、あけましておめでとうございます!」

「……加山か。そうだな、おめでとう。」

「先生は冬休みどうだった?」

「教師は学校で仕事だよ。お前も知ってるだろ?」

「確かに!」

 

と言っても、前まではなんだかんだ仕事を切り上げて、大晦日と元旦くらいは休みを取っていた。年末年始に予定がないのは久しぶりで、一部の教師から帰らなくていいのかと心配されたくらいだ。

 

そのせいで一瞬、仕事にかまけて日付を忘れていたと焦った。

 

「あ、また寝袋。……そればっかりで寝るのは合理的じゃないよ。」

「仕事が立て込むとどうしても、な。」

「ふーん。」

「………」

 

やはり痛いところを突かれた。脇に抱えた寝袋を背中に回すが、余計に視線が鋭くなる。

 

これを取られるのは非常に困る。そうされると仮眠室を使うしかなくなる上、あそこは空いた時間に寝るには少し遠すぎる。

 

「別に取らないよ?また汚れてないかなって見てただけです。」

「……そうか。」

「それよりも!私たちエンデヴァーのところでめちゃくちゃ伸びたから報告会は期待しててください!」

「聞いてるよ、個性のことも。お手柄だったらしいな。」

「はい!だから次は炎の方を──」

 

〈相澤先生、至急職員室までお越しください。繰り返します。相澤先生……〉

 

「ありゃ?」

「呼び出しか……悪い、授業に遅れるとみんなにも言っておいてくれ。」

「……わかりましたぁ。」

 

こうも露骨に悲しそうにされると罪悪感がある……

 

今日は俺に加えてオールマイトが見るので、一応授業は問題ない。生徒たちの成果を見れないのは痛いが。

 

しかし、

 

──急な呼び出し……いい予感がしないのは何故だろうな。

 

 

※ ※ ※

 

山田と共に、打ちっぱなしの無機質な廊下を歩く。最低限の照明に照らされるそれは、見た目以上に強い閉塞感を与えてくる。

 

場所は監獄──通称、タルタロスと呼ばれる重大な個性犯罪を犯した者のみが収容される拘置所。

 

「………」

 

呼び出しのとき受けた嫌な予感はズバリ当たった。

 

──今ここに収監されているとあるヴィラン、それがかつて俺たちの友「だった」者、かもしれない。

 

そんな耳を疑う、冗談では済まされない情報を塚内さんから知らされたのだ。

 

「2人も知っての通り、改人脳無は複数個性に耐えられるよう体を改造された人間だ。ただし……生きた人間じゃない。脳みそから心臓に至るまでめちゃくちゃにされている。」

「脳無とは正しく人形、意思持たぬ操り人形……のはずだった。」

「……グラントリノさん、こっちは授業飛ばして来てるんです。簡潔にお願いします。」

 

自然と語気が強くなった。

 

この御老体を睨んでも仕方ないとはわかっている。グラントリノはただ塚内さんらと調査結果を報告し、そこから推測できた情報を伝えてただけだ。俺たちも普段なら感情が動いても、努めて冷静にいられた。

 

……腸が煮えくり返っていなければ。

 

「相澤、落ち着け……」

 

怒気に満ちた態度を山田に咎められる。しかし肩を押さえつける手は震えていた。堪えるのがやっとな俺のように、コイツも耐えかねているんだろう。

 

「必要な話だよ、順を追おう。気持ちの整理をつけるためにも。」

 

目的地にたどり着き、塚内さんが解錠の操作を始める。ここはタルタロスの最奥の一つ、個性犯罪者の監視を行うモニター室。

 

「コイツは敵連合の中核だ。」

「口を割らせることが出来れば一気に叩けるんだが、如何せん肝心なことは一切話そうとしない。くだらない話はするが、連合の不利になる情報についてはストンと無反応になるんだ、まるで電源が落ちたかのように。」

「つまり……?」

「あまりに精巧で、それと気づくまでに時間がかかった。複数の因子が結合されて1つの新しい個性になっていたんだ。」

 

二重のドアが開き、視界全体にモニター映像が飛び込んでくる。その中心には件のヴィラン……

 

──黒霧

 

リーダーである死柄木弔の側近と目され、ワープゲートという空間移動系の非常に希少な個性を持つ人物、そして。

 

「そのベースとなった因子、かつて雄英高校で君たちと苦楽を共にし、若くして命を落としたとされている男──白雲朧のものと極めて近いことがわかった。」

「つまり、黒霧は脳無で白雲朧の死体がベースになってる可能性が高いっつうことだ。」

 

俺たちへ最悪の情報をもたらした当本人だ。

 

白雲は俺や山田と一緒にヒーローを志した友だった、親友と言っていい。そんな人間が尊厳という尊厳を奪い尽くされた状態で帰ってくる。とても冷静ではいられなかった。いい歳して、どんな感情を表せばいいか整理できない。

 

「……A組の三バカなんて呼ばれもしたよ…………意味がわかんねぇよッッッ!!!!!」

 

先に言葉にしたのは山田だった。そう、俺も意味が分からない。

 

なぜ白雲がこんな姿になっているのか、なぜ今俺たちの前にいるのか……確たる証拠を突きつけてくる現実と、それを否定したいという感情が身の内でせめぎ合っている。

 

「あの男曰く、優れた個性が雄英に集まるのなら、そこを襲うのは道理。目立たず三ツ星レストランの残飯を漁るようなもの、だそうだ……意味なんて求めちゃいけねぇよDJ、そこには悪意があるだけだ。」

 

……つくづく、オール・フォー・ワンは怪物なのだと思い知らされる。倫理を踏みにじり、道徳を省みず、他者へ尊重というものが欠落している。悪意を濃縮して人の形にしたような男だ。

 

「なんで、我々をここに?絆による奇跡でも期待してるなら大衆映画の見すぎでは?」

「根拠がありゃ奇跡も可能性になる……まぁ、それについては歩きながら話す、時間が惜しいからな。」

「……そうですか。」

 

年長者というのは何故こうも話を引っ張りたがるのか……

 

グラントリノらがやらせたいことは、俺たちを使って黒霧の口を割らせること、なのはある程度察しがつく。尋問が上手くいってないことは塚内さんが口にしていた。いつもなら俺たちが話したところで、友だった死体が応えてくれるような奇跡は起こらないと一笑に付している。

 

しかし、俺よりも長くオール・フォー・ワンと脳無を追ってきたのもグラントリノだ。彼が夢物語ではなく、歴とした根拠があると言うなら聞かなければならない。

 

「九州でエンデヴァーが倒した脳無は、明確な人格を有し、強者への執着を見せたそうだ。残骸を調べた結果、あれの素体は地下格闘で生計を立てていたならず者だとわかった。」

「高位な脳無は生前の人格を残していると……?残念だが、黒霧とは雄英で一戦交えてます。口調も違ったし、俺に対して何の反応も示さなかった。」

「そういう実験をしていたのかもな。改竄、消去した記憶が命令遂行に与える影響…とか。」

 

確かに自律思考出来る兵器は、その点に絞って考えれば便利だ。一々指示を出さずとも命令通り動くのは扱いやすい。実際、USJに現れた脳無は強力でこそあれ、死柄木弔が指示しないと動かず、それ故に敗れた。

 

だが、同時に不都合な人格、記憶を残していると、いつ反逆されるか分かったもんじゃない。そうなると、それらを消す実験をしていてもおかしくはない、か。

 

「……重ねて言うが、コイツから情報を引き出せれば大きな進展に繋がる。」

 

移動が終わり、黒霧の収容室の前に立つ。

 

「プレゼント・マイク、イレイザーヘッド……白雲朧の執着を呼び覚まして欲しい。」

「………」

 

──覚悟を決める。

 

意図はわかった、根拠もある。

 

これは俺たちにしかできないヒーロー活動であり、俺たちでしか友の尊厳を取り戻すことはできない。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。

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