半分少女のヒーローアカデミア   作:Akafuku2000

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間章5
半分少女と姉弟弟子


半分少女のヒーローアカデミア

 

三学期始まって間もない休日の昼下がりのこと。

 

「はい!…よっ!とぉ!」

「この、クソっ!」

「へへーん、甘い甘ーい!」

 

心操くんと組手中です。

 

拳は全部落とす、足は同じく足で受ける。技をかけられたら足をずらして逆に投げる。このやり取りをもう…5、6セットはやったかな?

 

彼はまだ近接戦の素人だけど、こっちも容赦はしません。まぁ何回か打ち合った感じ、絶対私より才能あるね。でも始めて数ヶ月の人にあっさり越されたら流石に威厳がないじゃん?なので本気です。

 

「ダメ!狙いが視線でバレてるよ!」

「いっった!?」

「考えてから動かない!ほら見たらすぐ動く!」

「……ぐっ!?ごほっ!」

「あ、ごめん。やりすぎた。」

 

鳩尾入っちゃった。痛そう……ごめんね?

 

隙だらけだったから思わず突いてしまった。近接格闘は流れを掴んだら離しちゃいけないし……下手に躊躇したら取り返されてボコボコにやられる。実戦なら即アウト、死にます。

 

「大丈夫?立てそう?」

「問題ないよ……」

 

そうかなぁ。結構良いの入ったと思うけど。

 

ふむ……

 

「相澤先生ー!休憩にしませんかーー?」

「な、俺は別に!」

「まぁまぁ。」

 

気合いは十分な心操くんを宥める。彼はちょっと休憩した方がいいと思う。相澤先生も片手を上げて返事してくれてるので、判断は間違ってないだろう。

 

「ほれ心操、氷嚢だ。冷やしとかないと後で痛むぞ。」

「……はい。」

「リカバリーガールが治してくれるけど、ちゃんと処置せず行ったらめちゃくちゃ怒られるからね。」

「そうなんだ。」

「怖いよ〜怒ったリカバリーガールは。」

「へー」

 

やーん、ちょっと冷たい。距離感感じます。でも言うて私たち接点ないもんなぁ。相澤先生に呼ばれて訓練相手してるが、まともに会話したの今日が初めてだもん。緑谷くんみたいにバチバチに殴りあったわけでもない。

 

殴りあったら明日から友達、な理論も脳筋すぎるけどね。不良漫画は私の趣味じゃない。不良そっくりなやつが身近にいるのでお腹いっぱい。

 

「心操、さっきの改善点だが……そうだな、加山お前は何かわかるか?」

「私ですか?いいですよ、この姉弟子に任せてください!」

「は?」

「姉弟子?お前が?」

「……あれ???」

 

え、なにそのバカを見るような目は。

 

「だ、だって心操くんって実質先生の弟子ですよね?マンツーマンで教えてるし、捕縛布の扱いを伝授するなんて直弟子そのものじゃん。」

「それはまぁ……そうだな。」

「でしょー?」

「俺はお前がイレイザーの弟子ってところが疑問なんだけど。」

「……そっか、心操くん知らないか。」

 

普通に考えたらA組じゃない心操くんが私の事情なんて知る由もないわ。A組に慣れすぎててうっかりしてた。ここら辺はもう隠したいほど痛いところじゃないし話してもいいよね。来年度から彼もヒーロー科に来るだろうし。

 

「相澤先生ね、私の保護者。小学生くらいの頃から面倒見てもらってる。格闘訓練も心身の鍛錬というか、護身用というか……とにかく同じくらい昔からつけてもらってた。」

「……プロに、昔から……それは、なんか……」

「なんか、なに?」

 

顔を近づけてじーっと見る。

 

言いたいことは言いなさい、逃がさんぞ。

 

「狡いなって……」

「うーん、確かに!!!」

「え……」

 

私が思いっきり笑いかけると、心操くんは少し驚いたような顔をした。

 

彼の事情を聞くに、「洗脳」という戦闘向きじゃない個性のためヒーロー科に入れず、滑り止めで入った普通科の中で何とか編入しようと頑張ってたらしい。体育祭で見た彼の必死さは覚えている。

 

そんな一方でプロヒーローから直接教えられ、ストレートでヒーロー科に受かった私の存在は面白くなくて当然だ。ムカつくだろう。

 

「怒んねぇの?」

「怒らないよ。君から見た私が恵まれてるってのは事実だろうし。」

 

君が狡いと言ったときの表情は、不満も自嘲も罪悪感も混ざった顔をしてたからね。

 

「でも、姉弟子ってのは嫌だな。」

「なんで!?」

「いやキモイだろ。仮にお互いを弟子だとして、同級生の女子を姉扱いしたくない。」

「そこをなんとか!」

「……じゃあこれならどうだ?」

「なにな、に……」

 

おや、頭がフワッとして──

 

「…………」

「はぁ。」

「悪いな心操、加山はこういう奴だ。」

「みたいですね。」

「だが、加山が積極的に近づくのは加山自身が気に入ったやつだけだ。まぁ、だからお前は人から見ても気のいい人間ってことだな。」

「……そっすか。」

「あぁ。ほら、加山起きろ。」

 

──む、体揺すられてる?

 

「はぅあ!」

「加山、お前は人との距離感を覚えろ。近づかれるのが好きな人間ばかりじゃない。」

「え、はい、すみません。」

 

怒られた。先生と心操くん何か話してた?

 

私はいきなり頭がぼーっとして……まさか!

 

「もしかしてさっきのが「洗脳」ってやつ?」

「そうだけど。」

「凄いねぇ、かけられたの全然気づかなかった。ヴィランも止められて、困ってる人も助けられる良い個性だ!」

 

返答させたら勝ちな個性とは知ってたけど、直に体験すると強さがわかるなぁ。工夫こそ必要だがヴィランは無傷で捕えられるし、一般市民がパニックを起こしてても一声で落ち着かせられる。

 

ヒーロー向きな優しい個性だと思う。

 

「あんまりそう言われたことないな。でも……ありがとう。」

「ん?よくわかんないけど受け取っとく。」

「……でだ、2人とも。反省会の続きをやっていいか?」

「「あ……」」

 

そういや元々そんな話でした。

 

「こほん。心操くんは、私から見ると格闘戦の才能二重丸ですね。負けん気もそうですが、やっぱり体格と柔軟性は外せません。」

「よし、よく見てるな。柔らかさは訓練次第で改善出来るが、体格は生まれ持ったものが大きい。使える択もリーチも全く変わってくる。確かに心操は格闘戦に向いてると言えるな。」

「でも基礎体力はまだまだですね。私程度との打ち合いでへばってたら実戦で使えません。技術の方も体づくりと並行して、体に覚え込ませないとです。近接戦闘で考えてる暇ないので。」

 

こんなところだろうか?心操くんは身体的な素養はあるので、体力と技術も追いつけば一気に跳ねると思う。身長に関しては私に分けて欲しいくらい。

 

「だそうだ。お前はどう思う?心操。」

「その通り、かと。正直、最後のセットは着いていくだけで精一杯でした。それまでもまともに攻撃が当たらなかった。体力、技術の両方が足りてない。」

「足りてないけど、不足してるってことはないから焦らなくていいと思うけどね、私は。」

「どういうこと?」

「うーんとね……」

 

自分で言っときながら例えが難しいな……彼頑張ってるんだよ、それを何とか本人に実感して欲しい。

 

「例えば……この場に君みたいな人が複数居て、同じ努力をしたとする。当然、成果には個人差があるわけだよね。でも君は100した努力をほとんどそのまま実力に変えられてると思う。だから足りてなくても不足してない。」

「……?よくわかんないな。」

「私たちヒーロー科には一日の長があるけど、結局それは一日だけ。心操くんと大差ないし、訓練期間を考えたら君は物凄く成果を出してるってこと、かな。」

「とりあえず励まされてるってことでいい?」

「……まぁそゆこと。」

 

逆に気を使われたわ。

 

でもちょっといい顔になったからOKってことで。

 

「心操、明日はどうする?やるか?」

「もちろんです。お願いします。」

「じゃあ、私も……」

「加山はいいよ。今日付き合ってくれたので十分。」

「え?」

 

意気揚々と名乗り出たら拒否られた。

 

お前の番じゃねぇ、座ってろってこと???悲しい。

 

「先生強いよ?」

「わかってる。だからイレイザーに稽古つけてもらった方が効率いいと思う。」

「確かに……」

「お前たちが努力するなら、俺は追い越すために倍努力しなくちゃいけない。じゃないと、その一日はいつまで経っても埋まらないから。」

「言うじゃん。じゃあ私はさらに倍頑張ろ。」

「そうしてくれ。抜かしがいがないと拍子抜けする。」

 

ひゅー!大きく出たね!これはうかうかしてたらあっという間に追い越されて泣きを見るぞ。私も負けないよう新技の練度高めとかないとね。

 

しかもたった今いい物も見れた。

 

彼、笑ってる。

 

笑えるんじゃん。心操くんの笑顔初めて見たかも。

 

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