半分少女のヒーローアカデミア   作:Akafuku2000

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また今日から3日間、0時に投稿します。


半分少女と壁は高く

半分少女のヒーローアカデミア

 

泥だらけの顔を雑に拭う。

 

拭いた端からまた涙が浮かんでしまうが構わない。立つと決めたから。

 

未だに胸が苦しい。後悔は消えない。それでも相澤さんが焚べてくれた火種がある。今も戦っているみんなの姿が強くしてくれる。

 

場は混沌の最中、死柄木に加えて巨大なヴィランに敵連合までいる。荼毘(なんか髪色違くない?)とかいう奴が轟くんとバチバチに殺りやってる。でも他はワイヤーで拘束されてる。事情は分からないけど、きっとジーニストだ。ミリオさんもいる、エリちゃんの巻き戻しが上手くいったんだ。

 

けど緑谷くんも爆豪も重傷……一応、爆豪は飯田くんがついてくれてるが。

 

ほんと、泣いてる暇じゃなかった。

 

ただ、メンタル最悪、体力は残りカス、肋骨は砕けた。私、めっちゃ満身創痍。

 

それでもやるしかない。賭けだが打算もある。

 

「見ててね、相澤さん。」

 

応えろよ、"私"の個性。

 

祈るように。

 

 

水炎転身──

 

「──紅焔ッ!」

 

 

個性を弾けさせた。

 

足裏に力を集中させて空へと上がる。そして目論見通り、発動した瞬間に息苦しさがなくなった。対抗戦で起きた謎の骨折治癒、あれ物理的に肉体が消えてたからだ。解除後がベストなときの肉体情報を参照するなら病院で綺麗さっぱり治ってたのも納得できる。

 

でもねぇ……

 

おっそいなこれ!!!……火力が全然出てない!初使用な上に疲れきってちゃ出せる力も出せないけど!ただ轟くんが荼毘に組み付かれてんだよねぇ!?

 

もうちょい絞り出せッ!

 

「焦凍ッ!俺の炎でお前が焼かれたら、「お父さん」はどんな顔をしてくれるかなァ!?」

 

は、お父さん?!!こんな状況で、まさか、嘘でしょ!いきなり新たな轟家が生えてくるはずもないし、あの一家の中で行方知れずなのは1人だけ。

 

荼毘の正体って……燈矢さんなの!?

 

あーー!エンデヴァーが棒立ちなのそれか!そりゃ色々ショックすぎる!……てかまた火力上がってる!!!!

 

「間に合え……ッ!?」

 

今なんか横切った……

 

って、緑谷くん!手足ズタズタなのに、舌で黒鞭使ってる!??

 

死力を尽くした拘束、弱々しい…だけどそのおかげで間に合った!

 

「おいおい、他所の家に首突っ込むなよ…ぐっ!?」

「突っ込むよ!!!」

 

不意打ちパンチ!緑谷くんに気を取られてたね!

 

あなたが荼毘だろうと燈矢さんだろうと、私は知ったことじゃない。彼は雄英の仲間で、競い合うライバル、そして何より!

 

「「轟くんは友達だッ!!!」」

 

お、気が合うねぇ。さっすが緑谷くんだ。

 

「あなたから見れば、きっとエンデヴァーは大好き(きらい)なお父さん!でも彼は私たちを強くしてくれた恩師なんだよ!」

「過去は消えない!だからそれを乗り越えようと今を頑張っているエンデヴァーを僕たちは見てる!!!」

 

今だけでもいい。凹んだ気持ちが上がってきた。

 

緑谷くんの言葉は周りの人間を鼓舞してくれる。

 

「お前はエンデヴァーじゃないッ!!!」「エンデヴァーはヒーローだ!!!」

 

エンデヴァーは擁護のしようがないレベルで馬鹿な人だ。破れた夢を押し付けて家族を壊した。責任を取ることからも逃げた。私を巻き込もうとしたことも全然根に持ってる!許さん!

 

ほんと許さん!許さんが、だからこそ、今の彼は信頼できる。傷だらけのまま、零れたものを拾おうとしてる。過去に向き合うのも、後悔を乗り越えるのも苦しい。それを私は知っている。その姿勢だけは信じられる!

 

「何がエンデヴァーの炎だ!お前の個性じゃないか!」

「ハハハッ!そんなことは誰でもわかる!でも俺は可哀想な人間だろ?正義の味方が犯した罪、それが俺だ!悪が栄えるんじゃねぇ、正義が瓦解するだけ!俺はその責任の所在を感情豊かな皆々様に示しただけだ!!!」

 

……こいつぅ、なんかやらかしやがったな。私が動けてないときに絶対やばいことしたぞ。荼毘自身がエンデヴァーのスキャンダルそのものだ。そのカードを切ったんだろうな。

 

「これから訪れる未来はきっと!綺麗事なんて吹けば飛ぶ混沌だろうぜッ!!!」

 

「ペラペラよく喋る……」

 

とりあえずは荼毘を黙らせる。残りの体力どころか、多分ペナルティが近い。私にできることをやれるだけやろう、また役立たずになる前に。

 

気持ちよく喋ってて隙だらけ、やるなら今……

 

「──ヤバっ!!!」

 

デカイヴィランが立ち上がってる!

 

現状、敵連合側に押し込まれずに済んでるのは、ヒーロー個々人が奮闘して均衡を保ってるからだ。そこにあんなデカいのが暴れたら本当に壊滅する!

 

どうする。一か八か、全力でぶちかます?

 

でも、そういうやぶれかぶれが一番の下、策……!?

 

 

──立ち上がるヴィランへ、真っ直ぐ飛んで行く炎の軌跡。

 

 

「「エンデヴァー!!!」」

「親父ッ!」

 

ただ呆然と荼毘を見上げていたはずのエンデヴァーが空にいた。連戦に継ぐ連戦、荼毘の正体……間違いなく心身ともに疲弊しきってる中、彼は動いた。

 

拳がヴィランの頭を打ち抜く。瞬間、耐えたように見えたけど、すぐに崩れ落ちて動かなくなった。

 

……好機は今だ!

 

予定通り、まずは荼毘を倒す!

 

さすがにエンデヴァーはもう戦えない、主力を欠いた。相澤先生もいない、個性を止められない。脳無は倒すのに時間がかかりすぎる。少ない戦力は倒せそうな奴から集中しないと回らない!

 

「体に熱が篭ってんだろ!けどな、我慢比べならこっちが有利だ!」

「さすが最高傑作…お兄ちゃん、鼻が高いよッ!!!」

 

やってるやってる。しかし、どう割り込むか。

 

紅焔は火力は出ても、速度が出せない。なら、一発の攻撃で大火力を食らわせる他ない。さっきみたいな不意の一撃を狙う。

 

たっだぁ!火力と引き換えに負担が天井知らずになる。

 

「………ここで引けないんだよね。」

 

ぶっつけ本番なんて上等だ、女は度胸!

 

水炎転身─限定並列展開!!!

 

炎の個性を脚部に集中、右手だけを蒼輝状態に変化!個性のパワーバランスが変わって、一部に限って2つを同時に出せる。境界になってる手首あたりがめっちゃ沸騰してるけど。

 

これを限界まで混ぜないようにして……あとは全力で突っ込むッ!

 

「兄弟喧嘩中のところ失礼ッッ!!!!」

「……!?」

「お前…ッ!」

 

轟くんは気づいて飛び退いたね!弟に夢中で私を忘れてた荼毘は一歩遅い。

 

奴が纏ってる炎に思いっきり右手を叩きつけた。

 

インパクト──

 

赤色のものより荼毘の炎は何倍も熱い。触れた途端に手が水蒸気に変わる。爆発的な状態変化、そこに私側からも合わせる。2回の爆発、水蒸気の操作、生まれたエネルギーを余さず向こうへと渡す。

 

荼毘が砲弾のように飛ぶ。エンデヴァーとはまた違う、蒼い軌跡を作りながら。

 

「どう、だ……!」

 

あぁ、苦しい。頭ボヤっとしてきて、個性の出力が維持できない。自分が希釈される感覚……多分これが代償ってやつだ。

 

「はぁ…はぁ……うわ、マジか。」

 

飛んでた軌跡が止まった。しかも反転してこっち戻ってきてる。さっき以上に明るい炎の中で、私に熱い視線をくれてる。

 

今出せる最大火力は撃っちゃってる。水炎転身が完全に切れるまで僅か、足に余力を残して何とか浮けてる。纏炎にも切り替えられない。使えるのは通常の放出と水蒸気爆発だけ。手札は少ない、それでも時間は稼げる。

 

あれほどの炎熱、そう長くはもたない。ガス欠の私が相手しても勝算はある、かな。

 

「……来いよ!」

 

私は執拗いぞ!

 

「なんだ待っててくれるなんて優しいなァ!!」

「どういたしまして!」

 

炎熱に合わせて水流を放つ、こっちの威力は控えめに。生じた水蒸気に乗って身を翻す。

 

〜〜ッ、あっつい!そして痛い!

 

節約のために最小限の力で受けてるから、熱を防ぎきれない!ちょっと空気を吸っただけで、ジリジリと喉奥が灼ける!耐性があるって言ってもエンデヴァーや轟くんには及ばないか!

 

「さっきのは効いたよ!でもおかげで思い出したぜ!!」

「何が…っつ〜〜!初対面!だけ!ど!!!」

 

喋るの好きだなこの人!?

 

私は一発一発を受けることに全力注がないとダメなのにさ!その癖、的確に殺しに来てるから性格悪い!

 

「お前アレだろ!?焦凍とお父さんのお気に入りッ!」

「はァ!?」

「ずっっと聞きたかったんだ教えてくれ!!どうやって取り入ったんだ!あぁ!?」

「…、……ッ!」

 

あっぶなぁ、反応遅れた!

 

てか誰が誰のお気に入りじゃい!ぶっ飛ばすぞ!しかも今ので全力出しちゃったじゃん!時間稼ぎの予定がパーですけど!!?

 

すぐに次が来る。迎撃は……出来ないな。

 

もうすっからかん、自由落下を死なない程度に抑えてるのが精一杯。ギリギリまで引き付けて避ける、がワンチャンあるかないか。

 

ん、待てよ。

 

それをやるなら……

 

うん、うんうん、私がタイミングさえ合わせられれば……

 

行けそうだね。

 

「もう終わりか、期待して損したぜ……ガッカリだよ!!!」

 

来る。

 

──溜めを見逃すな。

 

「赫灼熱拳ッ!」

 

ここ!!!

 

「ジェットバーン!!!」

 

あと、せめて……

 

「イレイザーのお気に入りって言え!!!」

 

水蒸気を爆ぜさせて蹴り上げるッ!

 

当たらなくていい、そのまま回転!体を逃がせば致命傷は避けられる!

 

「噴流熾炎ッ!!」

 

そして隠しておいたよ、轟くんの赫灼をね!

 

私に釘付けになってる隙をついてもらった。私たち、A組。1年近い関係に言葉は不要。

 

目の前でぶつかる2つの赫灼、見た目の威力は同等。

 

その成否は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………勝てないかぁ。」

 

赫灼対決、軍配が上がったのは荼毘だった。

 

残ってた力、それを絞り尽くしてこれは悔しい。だけど、霞む視界の先で奴が退いて行くのは見えた。また事態が動いてるらしい、それまで粘れたのは泣け無しの戦果ってところかな。

 

ただ、本格的に白みがかってきた意識じゃ何も認識できない。私以上のスピードで落下してきた轟くんを引っつかむので限界。

 

戦局はどうなってる…んだ、ろう……

 

……さすがにここまでか。こんなに弱かったんだな、私って。

 

次、起きたとき病院の天井が見られたらいいな。

 

 




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