やはり俺がアイアンスーツを着るのは間違っている。 作:9ナイン9
※←外国語を話してる場合。
総武高校を卒業してから逃げるようにアメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)に入学して、早4年以上。
高校の頃にハマっていたラノベから影響を受けて、フルダイブ研究に没頭してたら月日があっという間に過ぎたな…….
昔は数学とかの理系科目は苦手だったが、意外とちゃんと勉強すればMITに入学出来るぐらいの才能が俺にはあったようだ。
現在は飛び級制度を利用して博士課程として、MITに在籍している。
高校時代に俺は生徒会選挙の件で、現状維持という名の欺瞞を選び奉仕部の崩壊を防いだ。
元通りになったと思った奉仕部。だが、俺を含めた3人の間には見えない境界線みたいなのが出来てしまった。
俺は現実から逃げるように勉強に走った。雪ノ下は俺達の前で似合わない仮面を付けるようになった。由比ヶ浜は懸命に奉仕部の仲を取り持とうとしてたが全てが徒労に終わった。
由比ヶ浜には本当に申し訳ないと思っている。
そして、追い打ちをかける様に平塚先生は高2の終わりに人事異動により離任してしまった。
受験もあって、気づけば奉仕部は高3の夏頃に自然消滅。
卒業式に関しては、渡米の関係で俺は出席してない。
あの二人には、俺の進路は伝えてないし、あの二人の進路を俺は知らない。
もちろん4年以上日本にも帰っていない。
日本に帰る事があるとすれば、小町の結婚式の時ぐらいだ。
その時は花婿の野郎に一言ぐらいは言ってやる。一言で済めば良いけどな。何なら言葉だけで済めばいい方だ。
何が言いたいかというとだな、アレだ。俺は精神的にも物理的にも二人から逃げたんだ。
※「いや〜、たまには母校に顔を出すのもイイね!実に素晴らしい研究テーマだったよ!えーと、名前はなんて言うのかねジャップ君?」
現在、マサチューセッツ工科大学の発表会場にて自身の研究テーマであるフルダイブ技術についての発表を終えて、後ろの方で目立たずに寛ごうとしたら世界的な大物に絡まれてしまった。
俺は瞬時に椅子から起立態勢に移行し、大袈裟に頭を下げて挨拶をする。
※「ハチマン・ヒキガヤです……会えて光栄です。ミスタースターク」
今じゃ世界中で知らない者はいないレベルの大物中の大物、スターク・インダストリーズ社のCEOことトニー・スタークだ。
死の商人、天才発明家、現代のダ・ヴィンチ、ブロンド美女好きのクソ野郎などとメディアで言われている有名人。
連日メディアでは女関係のトラブルばっかり報道されている問題児。
同時に1、2ヶ月おきに何かしらの技術革新を起こす天才でもある。
が、正直メディア通りの人間なら俺が苦手とするタイプの人間なのは間違い無い。
※「ヒキ…何だって?やっぱり日本名は覚えにくいな。確かハチって数字の8だろ?なら親愛の意味を込めてエイトって呼ばせてもらうよ」
うん、スターク氏の笑顔は親愛を感じさせない胡散臭い笑顔だ。
こちらの利用価値を測る視線をビシビシと感じるよ。
しかも、エイトってなんだよ……まぁヒキガエルとかゾンビって言われるよりはマシか。
※「ミスタースターク、貴方にニックネームで呼んで頂けるなんて嬉しいです。自分に何か御用ですか?」
可及的速やかにスターク氏から離れたい俺ガイル。
だが、逆にこれは好機でもある。世界的大企業であるスターク・インダストリーズ社に自分を高く売るチャンスなのだからな。
日本人として、戦争を生業としている軍事企業で働くのは気が引ける部分はあるが、スターク・インダストリーズ社でのキャリアは間違いなく自身の市場価値を高めるに違いない。
「正直、今まで五感を使った没入型仮想空間技術に興味は無かったが、エイト。君の考案するアクセルシステムは非常に画期的だ。しかしそうだな……仮想側での6日は現実側での1日か……現状6倍が限界か?」
なるほど、やっぱりアクセルシステムの方が気になるのか。
6倍は正直言うと安全マージンだ。
現状モルモットを使った測定結果だと、8倍が限界。9〜15倍でモルモットに不調が現れる。15倍以上でモルモットが急速に老化して、5分で生命停止。
以上が実験結果だ。
脳または魂なのか今は不明だが、精神的な耐久性は存在する。
これを今の所俺は「精神的摩耗限界」と定義付けしている。
※「安全性込みの6倍です。無理をすれば8倍が限界、それ以上は論文に書いてある内容通り体に不調が現れます。最悪の場合は死にますね」
※「まぁモルモットは気の毒だが、この技術があれば近い未来、その気があれば空間と時間を支配可能だ。そう思うだろエイト?」
トニー・スターク、やっぱり天才だったか。
俺の発表を聞いただけで、この技術の発展系まで見抜いた。
伊達に現代のダ・ヴィンチと謳われるだけはあるな……。
だが、この技術の発展系は神の領域だと俺は予想する。
と言うか単純に怖い。もはや科学が踏み込んで良い領域なのか疑問だからな。
だが、目の前の男は確実に神を領域を超えらる逸材の人間だ。
※「流石ですミスタースターク。この技術の発展系にお気付きになるとは……ですが、その先は神の領域、または終焉かもしれないですよ?」
俺が一応の警告をすると、トニー・スタークはオチャラけた雰囲気から一変して、俺に顔を近づけゆっくりと口を開く。
※「僕はトニー・スタークだ。神をも恐れない男、終焉なんて怖くない。持続する世界平和には君の協力が必要だ、エイト」
世界平和ときたか……。
ここで言う平和とはアメリカにとって都合の良い世界平和だろ。
アメリカはスターク・インダストリーズ社の協力もあって、世界的に権威を振るっている。
要は武力と軍事技術で他国にデカい顔をしてるのがアメリカだ。
そして、やはりメディアの印象通りトニー・スタークは傲慢でナルシストだ。
だが、その短所が小さく思えるぐらいに長所となる才能がデカすぎる。
まぁ正直言って世界平和だとかの国絡みの面倒事は俺には関係ない。
今の俺にとって大事なのは、自身のキャリア形成だ。
俺の研究や技術が軍事転用されようが大した問題では無い。
※「世界のトニー・スタークにそう言って貰えて…」
※「大丈夫だ、君の顔を見れば分かる。日本人の前置きは聞き飽きたからね。来週から本社ビルに出社してくれ。契約金もこのぐらいあげよう。」
スタークさんはカード型のホログラムデバイスを取り出し、ホログラム映像を空中に映し出す。
映し出された提携契約を見て俺の開いた口が塞がらない。
勿論ホログラム技術にもビックリだが、一番ビックリなのは契約料金だ。
日本円にして、8の後ろに0が八桁もあるだと!?
しかも専用の大きい研究室も無料で貸してくれるのか……。
雇用形態は業務提携だが、全然良い。
こんな好条件、日本なら絶対有り得ない。
※「どうだ?終身雇用が当たり前の島国と比べて好条件だろ?終身雇用なんてやってるから日本は料理以外は遅れてるんだ。で、他に欲しいモノはあるかね?」
その考えには概ね同意だ。
グローバル化した現代では終身雇用形態は世界的に遅れている。
日本は人材の流動性をもっと促進して、ジョブ型雇用に切り替えた方が良い。
それにしても、この人はよく目の前の相手の出身国をイジれるな。
俺に愛国心があったら喧嘩沙汰になる所だ。
因みに愛国心は無いが、千葉への愛は今でもある。千葉をアメリカに持ってきたいぐらいには、千葉Loveだ。
※「毎月マックスコーヒーを1ダース付けてくれるなら条件を吞みますよ」
目の前の相手は8億もさらっと出せる人間だ。1ダースのマックスコーヒーなんて可愛いもんだろ。
だから勇気を出して、もう少し強欲に条件を付け加えた。
これは仕方が無い。マッ缶が無いと集中が続かないし、研究に没頭出来ないんだ。
※「マックスコーヒー?やけにカフェインが高そうな名前だな。それは島国独自のコーヒーか?まぁいいや、毎月手配するとしよ。これからよろしく頼むよエイト」
よし!毎回日本からMAXコーヒーを取り寄せるのが面倒だったんだ。
これからは無料で飲める!トニー・スターク最高!
感謝の印にスタークさんのSNSフォローしちゃおっと。あ、SNSやって無かったわ。八幡ついうっかりしちゃった☆
※「ええ、来週からよろしくお願いします」
こうして、俺はスターク・インダストリーズ社と業務提携をする事になり、スタークさんと交渉成立の熱い握手を交わす。
だが、この時の俺は世界的なイザコザに巻き込まれれるとは夢にも思わなかった……
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