やはり俺がアイアンスーツを着るのは間違っている。   作:9ナイン9

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※←外国語を話してる場合。

時系列はアイアンマン1です


とりあえず、トニー・スタークが生きてて良かった。

 スターク・インダストリーズ社と業務提携して1年と少し。

 なんと、トニー・スタークが行方不明になると言う最悪な事件が起きてしまった。

 

※「で、どうなんだハチマン?アクセルシステムを利用した仮想空間での敵勢力殲滅オペレーションは可能か?」

 

 物騒な事を聞いてくる目の前の男は【オバディア・ステイン】。スターク・インダストリーズ社の副社長であり、今は亡き先代社長のハワード・スタークの友人でもある。

 かれこれ1ヶ月前にアフガニスタンで新型ミサイル“ジェリコ”のデモンストレーションに行ったトニー・スタークが行方不明になってしまったのだ。それからはステイン氏が全面的に会社の舵取りをしている。

 トニー・スタークも大概善人では無いが、目の前のステイン氏はそれ以上だ。妙な会社とスターク・インダストリーズ社が取引をするようになったと変な噂が流れてきたから、少しハッキング技術を使って調べてみたが中身が無いペーパーカンパニーだったのだ。節税対策なのか、はたまた……

 

※「ええ、可能ですが現状仮想としている敵のデータが不足しています。具体的に言うと敵の武器のスペックや想定している戦場、軍隊規模などのデータが少ないです」

 

 フルダイブアクセルシステムを何に利用しようとしてるのか大まかに予想は出来るが、スポンサーの意向にはなるべく応えたいとは思う。てか、いつから俺はこんなに社畜精神をもってしまったんだ……。

 どうやら俺は両親の社畜遺伝子をちゃんと受け継いだようだな。専業主夫になりたいとかほざいてた昔が懐かしい。

 

※「 そうかそうか、それならここにデータがあるから有効活用してくれ。」

 

 俺の回答が気に入ったのか、途端に上機嫌になるステイン氏。

 そして、ステイン氏はホログラム映像でデータを浮かばせる。

 

※「き、北朝鮮!?あんまり深入りしたくないですが、あの独裁国家と戦争でもするんですか?」

 

 どこで手に入れたのか知らないが、目の前には北の独裁国家の機密情報が大量に展開されている。

 おいおい、こんな機密情報どっから持って来たんだよ?犯罪組織とでも繋がってじゃないのか?

 

※「謙虚で従順な君にだから見せてるんだぞ?仮想空間で敵との戦争オペレーションを予め機械学習して、その学習したデータを高値で中国に売る。で、結果的に世界地図からアメリカの脅威が消える。最高だとは思わないかね?これで君の母国もミサイルに怯えなくて済むようになるな」

 

 豪快に大笑いをするステイン氏。

 予想だが、北の独裁国家が消えたら日本は中国に怯える羽目になるんじゃないのか。

 暗い予想をしているとステイン氏のスマホから着信音が鳴り響き、ステイン氏は失礼と言い電話に出た。

 

※「もしもし何だね?ミスポッツ。私は今……なにぃぃい!?アフガニスタンの砂漠でトニーが保護された!?分かった、今すぐに行く!」

 

 マジか。俺の耳に聞こえてきたのは世界的大スクープだ。危うく一つの国を地図から消す計画に加担する所だったよ……。

 スタークさんが生きてて本当に良かった。今のちょっとした裕福な生活があるのはスタークさんが拾ってくれたお陰だからな。

 なんなら、スタークさんがMITに口利きしてくれたお陰で博士号まであっさり取れたしまったのだから。いったいどんな大人の圧力を使ったのかは疑問だが。

 

※「聞いただろ?話はここまでだ。次からはトニーと話し合ってくれ。おっと、もうこれは必要ないな。」

 

 ステイン氏は亡き親友の息子が生きてたのが気に食わないのか、露骨に機嫌が悪くなった。

 やっぱりこの男は会社の乗っとりを画策してたのか!?

 しかも北の国のデータも無かった事にしたいのかデータを削除しやがった。そのうちスタークさんと話す機会あるだろうからその時に忠告するか……。一応今回の話の件は録音してあるしな。

 

※「一ついいですか?」

 

 会議室から出ようとするステイン氏を呼び止めると「なんだね?」と機嫌悪くこちらに振り向く。

 

※「チーズバーガーを持って行く事をオススメします」

 

※「……どうやら君はトニーのファンらしいな」

 

 そして、最後にステイン氏は深い溜息を吐きながら会議室から出て行った。

 あの様子だとスタークさんの知らない所で、確実に後ろ暗い事をやってるな。

 

「とりあえず俺も研究室に戻るか……」

 

♢♢♢

 

 ステイン氏との打ち合わせから数日後。スタークさんに、ステイン氏との会話の録音データを送ったら、何故か立派な大豪邸に呼ばれた。

 

「ふつくしい……」

 

 綺麗な海の景色が見える崖の付近にてられた豪邸。

 呂律が回らなくなるレベルの絶景だ。

 綺麗な光景に心を踊らせてると、胸を光らせるスタークさんが歩きながら後ろから語りかけてきた。

 

※「やぁエイト。何ヶ月ぶりだ?僕は実に良い旅行だったよ。テロリストに捕まるし空を飛んで砂漠に不時着するしで、人生で中々経験出来ない事を経験出来たよ。何よりドーナツとチーズバーガー次いでに、マックスコーヒーの有難みに気づけたよ」

 

 テロリスト……!?

 あんまり聞きたくない単語だ。テロリストと空を飛ぶ事に関連性はあるのか?

 いや、今大事なのはスタークさんが生きてるって事だ。

 テロリストの単語に怖気づいていると、アシスタントロボがスタークさんにドーナツとMAXコーヒーを手渡す。

 美味しそうにMAXコーヒーを飲みながらドーナツを頬張るスタークさん。

 よせ、やめるんだスタークさん。その組み合わせは身体に悪過ぎる。

 渡米当初は、その組み合わせのせいで俺は10キロも太ってしまった。

 それと余談だが、記者会見でスタークさんがMAXコーヒーを飲んでたせいでMAXコーヒーに関連する企業の株価が爆上がりしたらしい。

 予め株を持ってて良かったぜ……。

 てか、この人はいつからMAXコーヒー信者になったんだよ。まさか雲の上の存在が同士だったとは驚きだ。

 

※「MAXコーヒーを気に入って頂けたようで良かったです…」

 

※「あ~本当だよ、実に素晴らしい!日本は車産業と飯以外はダメダメだけどこんな美味い飲料水があるなんて、日本もまだまだ捨てたもんじゃないな」

 

 まるで日本が車産業とMAXコーヒーで成り立っているかのように楽しく話すスタークさん。

 他の日本人が聞いたら苦笑いしそうだ。

 日本人の俺的には、日本の治安の良さと建築技術も評価して欲しいんだがな。もっと言うならアニメや漫画も評価して欲しい。

 

※「所で、何故自分を立派なご自宅に招かれたんですか?噂だと美女しか入れないって聞いたんですが……?」

 

※「それはメディアのデマだ。オバディアやローディだってたまには来るぞ?……まぁ、あんまり来て欲しくは無いがな。野郎が来る時は大抵説教しに来る時だから」

 

 この人はどんだけ色々な人に迷惑を掛けてるんだよ。

 象が蟻を気にしないのと一緒で、トニー・スタークレベルの人間になると大抵の事は些事なのかもしれないな。

 

※「そうですか……やっぱり記者会見でおっしゃってた通り軍事産業から撤退する件でしょうか?」

 

 そう、俺は何度もスタークさんの記者会見の録画を見直したが、耳を疑ったね。

 スターク・インダストリーズ社が軍事産業から撤退すると報じられていたからな。

 売上の8割以上を捨てるって言ってるのと同義だ。

 

※「そうだ、記者会見の通りだ。軍事産業からは撤退する。これはもう決定事項だ」

 

 これは、アレだ。契約破棄の通告に違いない。

 まぁ既に孫に残せるぐらいの金額は貰えたが、少しやるせないな……。

 

※「じゃあ自分は研究室を片付けて、転職先を探すとします……」

 

※「待て待て、早とちりするなエイト。日本人は皆ネガティブって噂は本当なのか?君を呼んだのは、子会社の役員へのオファーのためだ。それと株も30%渡す」

 

 はっ!?スターク・インダストリーズ社の子会社の役員!?しかも30%の株付き!?

 現代社会はスターク・インダストリーズ社の関連子会社ってだけで、株価が高くなる傾向にある。

 それに推定だが事業によっては、株価が数十億以上に伸びる可能性だってある。

 小学校と中学校では黒歴史を量産してボッチ生活。

 高校では精神的に未熟だった為に間違いが多かった。

 大学では、研究に没頭し過ぎてやはりボッチ。

 今までの寂しく間違いだらけの人生は今日という日のための布石だったに違いない!

 これなら、万が一に小町がシングルマザーになっても胸を張って子供とセットで養えるな、うん。

 まぁ、小町がシングルマザーになったら相手の男を地獄まで追っかけてやるがな!

 小町、専業主婦希望だったお兄ちゃんが出世したよ!もうごみぃちゃんじゃないぞ!

 

※「す、スタークさん!その話を受けます!ありがとうございます!」

 

 つい感極まって、柄にもなく声量高く返事してしまった。

 子会社と言えど、あの天下のスターク社で出世だよ?嬉しいに決まってる。

 

※「そうかそうか。いや~君なら快く受けてくれると思ったよエイト!雇用条件と辞令を君のホログラムデバイスに送ったから今、目を通してくれないか?」

 

 俺はホログラムデバイスを起動して、送られてきたデータに目を通す。

 なになに……

 

※「スターク・エンターテインメントJP……事業内容はフルダイブゲーム事業…役職は代表取締役……勤務地は東京都丸の内!?に、日本ですか!?お言葉ですが自分、アメリカに居たいんですけど……」

 

 因みに高級社宅付きの年収1億。1千万でいいからアメリカに居たいよ。

 

※「なんだね?日本に会いたくない元カノでもいるのか?てっきり君はチェリーボーイだと思ったんだがな」

 

 グハッ…何で俺はダメージを食らってるんだ?

 前から思ってたけど、この人って本当にデリカシーないよな!

 

※「別にコレと言った事情は無いですが……」

 

 日本に帰りたくないのは、色々と思い出すからだ。

 認めよう。俺は未だに過去から逃げてる。

 逃げる事は悪い事じゃない…って昔の俺なら言ってるに違いない。

 渡米してからは、逃げないでやって来たからこそスターク・インダストリーズ社と業務提携出来るようになった。

 こんなんで逃げ腰になるようじゃ、俺もまだまだ大人として未熟って事か……。

 

※「なら決定だな、エイト。久しぶりに寿司が沢山食えて良かったな。それにウチの社名を出せば日本ではモテモテだ。大好きな妹にだって会える」

 

 寿司に対して魅力はそこまで感じない。

 社名で寄って来る女にも魅力を感じない。

 小町に会えるのは嬉死ぬ。

 正直な話、アメリカで一生を独身として終える覚悟だってしてたんだけどな……。

 

※「でも……」

 

※「おっと、でもは無しだ。あと検討も無しだからな?さっきニュースを見たら日本のトップが検討を加速しますとか、血迷った事を言ってたからな。幼稚園児でももう少しマトモな事を言うぞ」

 

 今時の総理はそんな事を言うのかよ……。俺も困った時は検討を加速させよう。

 検討術を学ぶ為にも、これからはもう少し日本のニュースを見よっと。 

 

※「……エイト、納得してない顔だな。ちょっと付いて来てくれ」

 

 俺は言われるがまま付いて行く。

 階段を降り、スタークさんは指紋認証システムの付いたドアを開ける。

 

※「これは…スーツ型の兵器ですか!?」

 

 目の前にあるのは赤と金色が配色されたスーツ型兵器と思われるモノ。

 現代からしたらオーバーテクノロジーであり、トニー・スタークからしたら当たり前のテクノロジーだ。

 大体軍事産業から撤退するはずなのに、なぜスーツ型兵器があるんだ? 

 

※「アイアンマンMark2とMark3だ。Mark1でテロリストの基地から逃げる事が出来た。因みに君の開発してくれた仮想空間のお陰で、Mark4の完成まで後少しだ。1日を8日に拡張するだけで技術の進歩は大違いだな」

 

※「なっ!?まさかとは思いますが連続フルダイブはしてないですよね?一日中ダイブしたら一日空けて下さいって言いましたよね?ただでさえスタークさんのフルダイブギアはリミッターを外してるんですよ!?」

 

 リミッターを外した状態での連続フルダイブは、現状分かってる範囲で精神に多少の摩耗を与えるのが確認出来てる。

 計算上だと、5日連続フルダイブで身体に影響が出る。

 

※「まぁまぁ、エイト落ち着くんだ。3日連続以上はしてない。大体リミッターを外したのは君じゃないか?」

 

※「はぁ~貴方が外せって言ったからでしょう!」

 

 もう溜息しか出て来ない。

 Ms.ポッツがたまにヒステリックになる理由が理解できた気がするぞ。

 そして、頼むから精神的摩耗が原因で死亡したとかやめてくれ。

 色々リアクションし過ぎて、精神的疲労が溜まってきた俺は「自分にアイアンマンを見せる理由は?」と聞くとスタークさんは語り始めた。

 「強力な兵器が平和を生む」と信じてたのに、自分の開発した兵器をテロリスト共が利用してるのを目の当たりにしたのが軍事産業撤退を決意させたのがキッカケとの事。

 これからは償いの一環で、アイアンマンとして身を挺して世界平和に貢献していきたいと語る。

 会社としては、軍事技術を生かした民間用ドローンなどの製品開発、胸に嵌めてるアイアンマンの動力源となるアークリアクターを用いたエネルギー事業などを軸にしていくとの事。

 なるほどな。要はヒーロー活動をするって事か。で、兵器は一応造るが自分しか使わない。会社としてもこれからの事業方針が固まってそうだし安心だな。

 

※「でだ!今現在、僕とオバディアの関係は拗れてしまった。会社の役員会議で僕をCEOから降ろそうとしてたしな。幸い君の録音データのお陰で、どうにか先手を打つ事が出来たがオバディアが君を社内の政争に巻き込む前に、君を安全な日本に逃がしておきたいんだ。理解してくれたか?」

 

 俺の身を案じてくれたのか……。

 まぁ、理由はどうあれ確かにスターク・インダストリーズ社の社内政争に巻き込まれるのは御免だ。

 日本に帰国するのはイヤだが、この厚意は快く受けるとしよ。

 

※「分かりました。今週中に日本行きの便をオーダーしておきます……」

 

※「よし、話はここまでだ。僕はこれからペッパーと打合せがあるからね。」

 

 ここ最近スタークさんはMs.ポッツと一緒にいる事が多いな…

 まさかデキてるのか?

 スタークさんだしあり得るな。

 そして俺は、意気揚々と出て行こうとするスタークさんを呼び止めた。

 

※「ちょ、待って下さい!最後に一緒にツーショットお願いします!」

 

 こうして、小町に自慢する用の満面の笑みを浮かべるスタークさんとのツーショット写真を手に入れたのであった。




ここまで読んで頂きありがとうございます。
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