——と、
ことみが何か思い付いたのか、弾んだ声で朋也に提案した。
「朋也くん、椋ちゃんに占って貰えばいいんじゃないかと思うの」
「ああ、そうだね。それがいいよ、うん。一ノ瀬はやっぱ頭いいね」
何時の間に復活したのか、ゴキブリ並みの生命力で春原がすかさず今度はことみにゴマすりの相槌を打つ。
「わたしもそれがいいと思います。このまましおちゃんがママに会えなかったら可哀想ですから」
「あ、ああ、そうだな」
タラリと冷や汗を垂らし、朋也は思わず杏と視線を交わした。
確かに、椋が趣味でしているトランプ占いの確率は百パーセントを誇る。但し当たらない方にだ。
以前椋に占って貰った朋也は、明日登校途中で優しい女性とのロマンチックな出会いがあって遅刻するとか言われた次の日、危うく杏にバイクで轢かれそうになり、そのまま置いて行こうとする杏を、全身痛む体に鞭打って追いかけたお蔭で遅刻を免れたという悲惨な経験を持っていた。それ以外にも色々と。
椋の占いは面白いくらいに当たらない事を、朋也は身をもって知っていたのだ。
だが、それを知っているのは朋也と姉である杏くらいなもので、他の連中は当たると信じていた。
春原の場合は椋の占いで散々酷い目に遭っても、全然その事に気付いてないが。
「そうね、他に手掛かりになるようなものはないし。椋、占ってみたら」
『おい、杏』
当たらないと知ってて勧める杏に、朋也は小声で非難の声を上げた。
『もし占いの結果が良かったらどうすんだよ』
それを聞いて変に期待を持たせては、かえって失望も大きくなる。
その朋也の心配を杏は一蹴して小声で返した。
『椋の占いは、ある意味当たってると言えなくはないのよ。真逆にね』
そう、占い通りには絶対にならないという事は、言い換えれば占いと逆の事が百パーセント起こるという事だ。
『だから、真逆の結果を予想して占って貰うのよ』
そう言うと、杏は不安そうに朋也と自分を見ていた妹の背中を威勢よく叩いた。
「ほら、椋。トランプ出して」
「う、うん」
姉に言われ、慌てて椋は上着のポケットから愛用のトランプを出した。
シュッ、シュッ、シュッと、トランプを切っていく。
「椋、占うんだったら、うしおちゃんがママに会えるかどうかより、ここからどの方角にいるか占った方がいいわ」
杏の言葉に朋也は成程と感心した。方角なら例えば東がでたら真逆の西を捜せばいい。
「う、うん」
姉の提案にコクリと頷き、椋は切り終わったトランプを不格好な扇状に広げ、きょとんとするうしおにトランプの裏を向けて差し出した。
「うしおちゃん、ここから二枚のトランプを引いてください」
「………」
「しおちゃん、この中からトランプを二枚取ってくださいって」
差し出されたトランプに手を出そうとしないうしおに、渚は優しく言い聞かせた。
「トランプにまい、とるの?」
「はい、どれでもしおちゃんの好きなトランプを二枚です」
「……うん」
渚に言われ、うしおは少し迷いながら二枚のトランプを取った。