「見せてください」
と、椋に言われるままに、うしおは手にした二枚のトランプを渡す。
その二枚のカードを見て、椋は難しい顔をして考え込んだ。
「どう、判った?」
「それが……」
困惑したように椋は占いの結果を口にした。
「うしおちゃんのママは、遠くて近い所にいる……です」
「遠くて……近い?」
真逆にすると「近くて遠い」って事になるが、どちらにしても抽象的で全く判らない。
「藤林。東とか南とか、そういうのは判らないのか?」
明也が尋ねると、椋はすまなそうな表情になった。
「はい、遠くて近いだけです」
「なんだよ。それじゃ、判んないのと一緒じゃん」
「す、すいません……」
春原の文句に、じわっと椋の瞳に涙が
同時に、何時の間に鞄から取り出したのか、杏の手に握られていた英和大辞典が残像を残して春原の顔面に減り込んだ。
相変わらずの椋に対する杏の盲目なまでの姉妹愛であり、一言余計な春原だった。
「椋、気にする事ないわよ。近くで遠い所にいるのは間違い無いんだから、うしおちゃんがママに会える可能性があるって事よ」
「お姉ちゃん。占いに出たのは『遠くて近い』だけど」
「あ、そうそう、そうだったわね。『遠くて近い』よね」
うっかり真逆を言ってしまった杏は、それを笑って誤魔化した。
「そうなの。遠くて近いって事は、多分今は遠くに居るけれど、じきに近くに来るって事かもしれないの」
「そうですね。ことみちゃん流石です」
ことみの解釈に渚が感嘆した。
確かにそう言えなくもないが、本当にそうなんだろうか。朋也は何か違う様に思えたが、何処がどう違うのか自分でもよく判らないので反論のしようがなかった。
どっちにしろ、これでは捜しようがない。
不安そうに、うしおが朋也の顔を見上げる。
その頭に軽く手を乗せ、朋也はこれからどうするか思案した。
そして、ある人物を思い出し、思わず指を鳴らして声を上げた。
「そうだ、宮沢」
「え? 宮沢さん?」
「誰それ?」
「資料室の管理をしている二年の子です」
頭に疑問符を浮かべる杏達にそう応え、渚は朋也を見た。
「でも岡崎さん。宮沢さんがどうか……あ、もしかして、おまじないですか?」
「ああ、あれならもしかしたらイケるかもしれないぞ」
「おまじないぃ?」
椋の占い以上に胡散臭い代物に、杏は思いっ切り眉根を寄せた。
宮沢有紀寧のおまじないの事を知らない他の面々も、杏程ではないにしろ、やはり半信半疑の
「ああ、あいつのおまじないはよく効くんだ。な、春原」
「そ、そだね……」
自信たっぷりに請け負う朋也に同意を求められ、春原は頬をヒクヒクさせながら応えた。
彼は以前有紀寧に「貴方の事を好きな人が判るおまじない」を教えて貰い、それを実行してこの学校に自分を好きな子が一人も居ないことを実証されてしまったのだ。
かく言う朋也も別のおまじないで、おまじない通りになり、かなりヤバい状況に陥った事があった。
そう、彼女のおまじないは一度その効果が発揮されれば、どんなに抗おうとも絶対に逃れられない。まさしく「お
「陽平に保証されてもねぇ……」
未だに杏は懐疑的で、明らかに気が進まなそうだった。
そこに渚も言葉を添える。
「大丈夫です。落とし物探しの時はとても助かったんです」
「落とし物って……」
「とにかくものは試しだ。別にダメでも困ることはないし、やってみようぜ」
と、強引にその場をまとめ、朋也はうしおの手を取った。
びっくりしたように、うしおが朋也を見る。
「うしお、もしかしたらママに会えるかもしれないぞ」
うしおに笑いかけ、朋也は渚を見た。
にこっとそれに応え、渚もうしおのもう一方の小さな手を握る。
「しおちゃん、岡崎さんがそう言うのなら、きっとママに会えます」
「うんっ」
朋也と渚の顔を交互に見て、うしおは嬉しそうに返事をし、ぎゅっと二人の手を強く握り返した。
そして、二人の手に引かれるまま部室を出て行く。
微笑みながら手を繋いで歩く三人の姿はとても自然で、見ている者の心が温かくなるような優しさに溢れた情景だった。
そんな三人の後ろ姿を見ながら、思わず春原はポツリと呟いた。
「なんかさぁ、ああやってると、あいつらまるで親子みたいだよな」
「そうですね……」
と、それに椋達は我知らず頷いていた。
毎回このテの茶化しに問答無用で春原に制裁を加えて黙らせていた杏も、今回は手も口も出さなかった。