慌ててもう一度、じっくりと幼い少女の顔を見る。
肩口に揃えられた明るめの茶色味がかった髪に、ちょっと垂れかかった大きな瞳。そして形の良い小さな鼻と唇。どれも似ていないように思えるが、顎の辺りとか顔の輪郭などは何となく似ていなくもないように見える。親父似と言われていた自分に。
——って、まさかこいつ、親父の隠し子か!?
物心付く前に母親を事故で亡くした朋也は、唯一の肉親である父親と元々仲が良くなく、ある事を切っ掛けに親子と呼べない程に、どうしようもなくその関係は壊れてしまった。
だが、もう親だと思っていなかった筈の親父が、自分に黙って他の女性との間に自分以外の子供を作っていたと思うと、自分でも驚くほどに朋也はショックだった。
——あの甲斐性ナシの親父が、一体何時の間に? あんなでも相手する物好きがいたのか? いやでも前に杏も言ってたよな、不良って案外優等生の女子にモテるとかどうとか。親父は不良じゃなくて単なるロクデナシだが、そういう事って、やっぱあるのか?
いや、待て待て落ち着け俺。まだ親父の隠し子だと決まった訳じゃないぞ。もしかしたら親戚の子っていう線もあり得る。けど、この町に親父の親戚なんていたか? いや、いなかった筈だ。
ってコトはやっぱこいつは親父の——。
いやだけど俺が知らないだけで、実は親戚がこの町にいたりして……
などと、目茶苦茶動揺しまくっていた。
そんな汗だらだらな状態で朋也が思考をループさせてると、うしおは急に目を輝かせて嬉しそうに声を上げた。
「なべ~っ」
「な、なべ?」
いきなり耳に届いた不可解な言葉にハッと我に返って朋也が見ると、うしおは体に縦縞模様の付いた茶色い小動物に抱き付いていた。
朋也がさっき探していたボタンである。
「おまえ、今こいつをなんて言った?」
嫌な予感に朋也はボタンを指差し、恐る恐る訊いてみた。
それにうしおが元気一杯に答える。
「なべ」
——聞き間違いじゃなかった。
朋也は頬をひくつかせて慌てて周囲を窺うと、声を殺して厳かにうしおに言い聞かせた。
「いいかよく聞け。『なべ』ってのは確かに
その朋也の言葉を聞いて小首を傾げたうしおは、考えながらぽつりと呟いた。
「ボタン………なべ?」
「ばっ、馬鹿っ」
余計悪い。
朋也は焦って手でうしおの口を塞ぎ、辺りを見回した。
同時に、殺気と共にジュッと摩擦音さえ感じさせる鋭い風切る音が
「うおっ」
反射的に、朋也はうしおに被さるようにその場に身を沈めた。
ソニックブームを撒き散らして類語新辞典改訂版が朋也の頭上すれすれを掠め飛び、後ろの校舎のコンクリート壁に蜘蛛の巣状のひび割れを作って深く
それを見て、朋也はぞっとした。
後少し避けるのが遅かったら、こいつが自分の額に
相変わらずの恐るべき地獄耳と
校舎を出てやって来る藤林姉妹の姉をすかさず睨み付け、朋也は怒鳴った。
「杏っ、危ねぇだろっ!」
「あらぁ、朋也。今なんかすっごく勘に
「お姉ちゃん。すいません、岡崎くん」
悪びれもせずに、にこやかに言う姉を控えめに
「いや、別に藤林が謝ることじゃねぇし」
「そうよ、椋。人の神経逆なでするような事言った奴が悪いのよ」
「おまえな、言ったのは俺じゃ——」
「きょうせんせい」
「え?」
言い合っていた朋也と杏、そしてそれをオロオロと見ていた椋は、突然上がった可愛らしい声に、目をぱちくりさせてその声の主を見た。
※「ボタン」が「なべ」な訳
汐の通う幼稚園の先生のペットの猪の名を、祖父の秋生が「なべ」と汐に教え込んだ所為です。
なので、汐にとってウリ坊を含め猪は、みんな「なべ」になってしまいました。
パソコンが壊れました。何の前触れもなく突然に。
前日まで普通に動いていたのに、次の日パソコンの電源を入れたらもうファイルが開かなくなっていました。
オフィス関連のソフトが全部吹っ飛んでいたようです。話では稀にあるらしく、その対策もあるみたいですが、直らなければ意味がありません。
唯一の救いはファイルの中が無事だったことでしょうか。これまで吹っ飛んでいたら立ち直れませんでした。結構先まで書き貯めていたので、それを全部思い出すのはまず無理。今頃小説書くのを止めてた可能性大でしたね。
結局何をやっても復旧しないので、急遽新しいパソコンを買うことになり、痛い出費と新しいパソコンを使えるようにする諸々の面倒臭い手続きに心底泣きました。
一先ず続きが書けるようになりましたが、二度とこんな事がないように願います。
マジで!!