個性:英霊召喚   作:金属粘性生命体

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 もしも藤丸がヴィジランテになったら。

 そんなお茶濁し回(1万文字)


IF:ヴィジランテ

 

 

 

 

 人理継続保証機関カルデア。

 

 その名は日本を中心とした全世界的に活動を行う世界最大のヴィジランテ組織。

 総員数は200近くと数だけで見れば中規模の組織だが、よく知っているもの達からはその組織はただ1人の手によって運営される義侠的組織だと知られている。

 

 そこに所属する者達はその多くが過去存在した人物、存在しなかった人物、物語の人物等の名前をコードネームにしており、各国ではその土地の偉人達の名を冠した者達が活動していた。

 

 

 

 

──アメリカ──

 

 

「HA-HAー!!!!簡単な仕事だったな、ジョリー!」

「だな、これならもっと安めのヤクでよかった気がするぜ」

 

 ニューヨークの街並みの中、両手足から吹き出る空気で空飛ぶ男とその上に乗せてもらっている大きめな袋を担いでいる象のような顔をした男がいた。

 彼らはヴィラン、最近ニューヨークにやって来ては軽犯罪を繰り返していた小悪党だった。だが、いつの間にやら街に蔓延し始めた個性強化ドラッグを手に入れてから凶悪犯罪へ手を染め始めていた。

 

 今回はその手始め、銀行を襲う前の予行練習としてコンビニやスーパーなどの一般的なお店を連続で襲いホクホク顔で拠点である隠れ家へ移動している。

 

 

 

「そこのお二人さん、今ちょっといいかな?」

 

 

 

 日に影ができる。ここら辺に今自分たちより高い場所は無い……ならば、顔を上に向ける。そこにいたのは何か浮遊する板に乗ってこちらへ追従してくる時代錯誤の格好をしたガンマンだった。

 

「な、な、な!?」

「誰だテメェ!」

「おや、随分と激情家だね。疲れないかい?」

 

 見た目は非常に若く、恐らく10代か20代のその人物は。器用にその浮遊する板をスケートボードを操るようにしてヴィランの隣へと移動させた。

 

「君たちが連続殺人強盗事件の──」

「っ、ジャッキー!」

 

 その様子に驚いたはいいが、それでも自分たちを追う存在だ。ならば迎撃をしなければならず、だが飛行するのに集中しなければならないジョリーと呼ばれていた男は背中に乗る相棒へ声をかける。

 反射的にその声に反応したジャッキーと呼ばれた男は荷物を持っていない反対の手に象の筋力故に片手で扱えるように改造された、狙撃銃用弾丸を放つ為のオートマチックハンドガンを取り出して撃った──

 

「遅いね、もっと速く抜かなきゃ」

 

 はずだった。銃を抜き構える、その動作をするために手を伸ばし腰に手を当てた時点で目の前の存在が目に見えぬ速度で腰から抜いた古めかしいリボルバーでジャッキーの片手と脳天を撃ち抜いていた。

 

「ぁ」

 

 長年連れ添ったその存在があっけなく死んでしまった。飛行する自身に捕まるために象の個性ゆえの特徴である鼻で胸周りに巻きついていたソレが、力抜けていき時速100km程で飛行していたその速度に耐えられるわけもなく地面へ落ちていく。

 

「ジャッキィ!!!てぇめ────」

 

 なお、仲間を失い激昂した男の末路もその仲間と同じように額を撃ち抜かれて落ちていく。

 

「うーん、良い物だ。このスカイボードとか言ったっけ?安直な名前だけど、使用感も素直だね」

 

 その落ちていく様を残心の為にしばらく握っていたリボルバーをスピンさせながらホルスターに仕舞い込む青年。その表情には大した感情もなく、まるで日常の風景の様にスマホを操作し始めた。

 

「あぁ、エジソン?貴方が作ったこれ、すっごく使い易いよ。結構速度も出るし、常用してもいいくらいだね」

『そうか!それは朗報だ!これであの交流野郎にマウントを取れるな!』

「ははは、程々にね」

 

 ぶつりと、唐突に切られるもそれは割と日常的であるので心配はしないがやった──いや、あの二人ならまた喧嘩するだろうからその被害が少し心配をする青年──ビリー・ザ・キッドなのであった。

 

「あ」

『ビリィ!!貴様ついに上空にまで手を伸ばし始めたか!今日という今日こそ捕まえてやる!』

「それはごめんだね、また今度遊んであげるからさ」

 

 光の粒子と共に姿が薄くなっていくビリー、スカイボードも一緒に消えていく。その姿に血管がはち切れんばかりにブチギレているヒーローが本気の速度になるも。

 

 

────飛行可能なヒーローが出てきたので、今日はここいらで撤退、それではまたお会いしましょう────

 

 

 そこに居たはずのビリーの痕跡は既になく。彼が消えた場所から紙がヒーローの顔にひっつき、そんな文が書かれていた。

 

『っ……!!!!!!F○ck(クソが)!!!!!』

 

 

 

 

 

 

──中国──

 

 

 世界で初めて個性が発現した国。それ故にか、この国には個性に関するノウハウが沢山ある。ヒーローにも、ヴィジランテにも──もちろんヴィランにも。

 

「てめぇらしくじんじゃねぇぞ!」

「「「オウ!」」」

「始め!!」

 

 とある国立個性研究所で、ヴィラン四人が揃い、何かを始めようとしていた。

 

 一人目が大量の蜘蛛の糸を両手の先から吹き出す、その後2人目がその糸に紫色の熱を発しない炎を纏わせる、3人目が糸を念力系の個性で操作をし研究所を囲む様に網目を組んでいく、4人目の号令を取った男が糸に燃え移っている紫色の炎を全身に纏い研究所の敷地内へ入っていく。

 

 

────WARNING・付近5km以内で連続個性使用を確認・WARNING────

 

 

 警報が鳴り響く。個性を感知する特殊な機械、この研究所で開発されていた兵器。研究所敷地内は慌ただしく警備兵が外へ出て銃火器を用意して土操作系の個性持ちが簡単な塹壕を用意する。

 彼ら警備兵は隊長を除きそのほとんどが無個性だ、この研究所が個性に関する開発をする上で邪魔になる個性持ちを入れることを良しとしなかったから無個性が登用されている。

 

 

────個性観測完了・蜘蛛:宇轩(ユーシュェン)・紫炎:奕辰(イーチェン)・念動:茗泽(ミンヅァ)変纏(へんてん):浩宇(ハオユー)────

 

────指名手配犯・deadonly────

 

────ALLWeaponfree────

 

 

 

「ケヒ……精度が高いじゃねぇか!」

 

 ニヒルに笑う指名手配犯。加えていたタバコを飲み込む、紫炎の煙を全身から吹き出す。

 

 変纏(へんてん)、自身の付近にある物質や仕組みを取り込み身体に再現する個性。紫炎の個性を取り込み全身紫炎人間となり、更にタバコを取り込むことで有害物質の煙を撒き散らし自身の姿を煙へと隠す。取り込み上限は5つまで。

 

「高く売れそうだなぁ!」

 

 バネを取り込み足に再現し、尚且つ金属の肉体を全身に回す。目にも止まらぬ速さで警備兵の近くに現れ、口から油を吹き出す。熱を持たぬその紫の炎は、しかして効果は極悪だ。

 

 複数人の油を被った警備兵、その油に炎が引火していき──腐り果てていく。この炎は腐る炎、腐敗を進める不浄の炎。浄化のイメージを持つそれとは真逆を突き進む対物質の炎だ。

 

「うわぁあああ!?!」

「けはッ!」

「いーい悲鳴だァ!」

 

 だが本来なら腐り落ちるはずの蜘蛛の糸が腐らなかったのは何故か、それはシンプルに彼らの力量が高い故の影響だ。蜘蛛の糸は腐らないように強度を高められていて、紫炎は蜘蛛の糸だけを腐らせないようにコントロールしているのだ。両者ともに既に極まっていると言っていいほどの練度、尚且つそれを自由自在に直径10キロ以上のドーム状になるよう操作している念動も完全に極まっている。

 

 彼らはその戦力を持ってして今回この研究所に設置され研究されている個性識別機を奪いに来たのだ。

 

「ケヒャァ!!」

「さ、せぬッ!」

 

 無論研究所側もタダではやられない。既に全身を機械化させている隊長格の警備兵、周囲にある機械を体の部位と交換する、そんな個性持ちであるが故に腐り落ちていく部分を落とせば継戦できる男が対抗のために前へ出た。

 

「フゥン!!!!」

「っ!?」

 

 バネの持ち味を活かし縦横無尽に跳ね回りながら全身の機械を腐り落としていくヴィラン、その様子をじっと亀のように堪えながら時に掴むために機械の手を伸ばし部位を交換し──高度な演算機を頭部に搭載していたが故に演算しきった拳の一振がヴィランの顔面を捉えた。

 

「ガッ!」

 

 だが。

 

「!? 何故!」

 

 上手だったのはヴィラン、紫炎・バネ・油・タバコ、未だ4つしか手札を見せていないのに決めに行った警備兵を嘲笑う。

 拳が当たった瞬間に弾け飛んだ頭が、脳漿だと思っていたそれが機械の隅々にまで浸透して──内側から紫炎が業火のごとく溢れ出した。未だ生身の部分にまでは浸透していないが、それでも時間の問題。何が起きたのか確認をするために拳を見ると弾け飛んだそれは脳漿らしい色をしていなくて、青色の液体があった。

 

「ッ、スライムか!!!」

 

 個性:スライム、生きたスライムであり全身が脳であり臓器の個性。特性上ほぼ不死身に近い性質をしており、このヴィランの男が保険として保有する程度にはお気に入りの仲間の個性。

 その個性を頭部に発動していた男は頭部がないのに普通に立っていた。ゴポゴポという音ともにスライムが首から溢れ出し、顔を形成する。

 

「──aaあ、はぁ……誇れよ雑魚、俺にまともなダメージを与えられたのはお前が久々だ」

「だから、貴様は幾度も死亡報告が上がっていたのか……!」

 

 幾度も殺されてきた、それは研究所側でも把握していた。確かに珍しい部類の中に残機制の個性があったり、再生力が高かったり、そもそも本人じゃなかったり。様々な個性があるが、この男は変纏、再生系の個性ではないと判断していた。だがこれである。

 

「とりあえずてめぇはもう終わりだ、直に腐り落ちるだろうよ」

「は、ははは……」

「あん?気が狂ったか?」

「いや、なに……まだ助かりそうだなって思ってな」

 

 視線がズレている……?いや、男の後ろに何かが居る。

 

 咄嗟に振り向いた先に居たのは一人の老人と仲間の3人がいた。老人と3人には黄色い布が巻かれており、虚ろな目で老人の後ろに侍るように立っている。

 視線を少しずらして上を見ると、既に紫炎の檻が無くなっており、この老人がやったのだろうと理解する。

 

「クソジジイ……そいつらに何しやがった」

「何もこうも……話したら素直にこちらについてくれただけじゃよ」

「んなわけねぇだろうが、仮にもそいつらは俺の配下だ。俺が洗脳して逆らわねぇようにしてたんだがな」

「洗脳!洗脳ときたか、あの程度の児戯が?」

「あぁ?」

「ダメじゃのう、うむ。ダメじゃのう、実力が伴っていない、理解していない。」

 

 これだから何も分かっとらん若もんはダメなんじゃ、そうため息をついた老人は一枚の紙を天へと放り投げた。

 

「一片死んでみるか?」

 

 雨が降る。

 

「……あ?雨だァ?……ジジイ、てめぇの個性か?」

「当たらずも遠からず、と言った所よ」

 

 男が纏う紫炎、如何に腐らせると言えどただの炎。徐々に全身の炎が消えていく、ただそれを見ているほど男も甘くはない。

 

「シャァ!!」

 

 懐から取りだしたナイフを取り込み両手の指を全てナイフへと変換した男はバネの足を用いて円を描くように黄色の老人を周り始めた。

 

「直情的、という訳では無いのう」

「何をごちゃごちゃ言ってやがる!」

 

 ノリに乗ったスピードを無駄にしないよう弧を描くように接近しつ男は、その顔面を切り裂こうと近寄った瞬間にブレーキをするように反射的に真横へと飛び跳ねた。

 

「ほっ、気づきおるか」

「ッ!?」

 

 雷が男が通る場所に落ちる、目を見開き注視をしていた男は目を潰され全力で後退を始める。ここまで来るともはや任務どころの話では無い、引く時は引く。既に目は光を取り戻し始めている、これもスライムであるがゆえの回復能力か。視界が戻ったら仲間を置いて──いや、仲間を殺して逃げるしかない。

 

 そう判断をしていたのに。

 

「──ほれ、冷たいのが降るぞ?生き延びれぃ」

 

 視力が回復し攻撃に備えるために老人の方へ顔向け、目を見開く。宙に浮く数多の紙、パッと見数百という数。それら全てが弾丸以上の速度で雫となり放たれ命を奪わんと男へと殺到する。

 

「ほれ」

 

 ナイフではなく全身を金属にすることでその威力を耐え、バネで下がろうとしても足元から人の手らしきものが出て男の足を掴んでいた。

 

「な」

「同胞よ、かつてのな」

「クソがッ!」

 

 即座にその手を切り捨てるもその隙は老人にとっては罠を仕掛けるのに丁度いい物だった。

 

 地中よりあふれだす土石流、男ごと押し流すように研究施設の庭から外へと運ばれていく。それと同時に雷を男がいるであろう場所に叩き込み、竜巻が土石流を1つの柱へと巻き込んでいく。

 そして締めにその竜巻の先端が地面へと突撃していき、男を地面へ叩きつける。

 

「……生きておる、か」

 

 自然そのものが敵となったその状態ですら男は生きていた。全身を金属にして油を吹き出すことである程度の物質を滑らせていたからか、それともスライム故の特性か。

 意識が朧気になりながらも眼前の敵を睨み続ける男。

 

「が……ぅ……」

「ふぅむ」

「てめぇ……マジ、で……ナニモンだ」

「ほ、それを聞くか?」

 

 口角が吊り上がる老人、その表情は嘲りながら面白いものを見たとも言わんとしている。

 

「儂の名は張角、黄巾党を率いし者也(ものなり)

「張角……?三国志の──っ、てめぇが最近噂になっていたカルデアか!!!」

「知っておるか、そうじゃ。まぁワシはまだ新参者故な、このような危険度の少ない仕事をしておる」

「危険度が少ないだァ!?」

 

 少なくともその言葉はありえないと男は断じる、断じりたい思いだった。男が所属するヴィラン組織は中国においてトップ3に入るほどのデカさで、その中でも男は略奪部隊におけるトップ2である。

 そんな男を相手に危険度が少ない、などと言えるヒーローやヴィジランテは中国には存在しない。

 

「それもそうじゃろ、今儂らは日本のヴィラン相手にメインに活動しておるからの」

「ッふざけんじゃねぇ!あの島国の猿共が俺らより上だと!?」

「上じゃよ、聞いたことは無いか?日本には魔王がおる、と」

「噂だけだろうが……!100年以上前から生きる怪物なんざいる訳が」

「個性なんぞがあるのに有り得んも何も無いじゃろ、少なくともその魔王は儂らが総力を上げて叩き潰さなければ日本を壊し、いずれ世界へ手を伸ばす──だったかの」

 

 事実魔王──AFOは未だ活動中、オールマイトがAFOと()()()()()()()()()()でヴィランは活発に活動し、負傷していないAFOは順調に日本を支配し始めている。むろんオールマイトも活動しているがそれでもヴィランはその数を増している、そのためヒーローは後手に回るしかない。

 今や日本は世界屈指のヴィラン大国になり、犯罪率はほぼ35%と他国の20%を上回る数字となっている。

 

 それを踏まえても今の日本は地獄と形容する他ない。

 

 年がら年中、ヒーロー・ヴィラン・ヴィジランテ、そしてカルデアがお互い鎬を削りあって生存競争をしている。もはや日本には法治国家などという物はなく、一種の無法地帯となって一般人達を襲っている。

 

「昔ほど日本は平和では無い、ということよ」

「だからどうしたって言うんだッ!」

「そうじゃの、特にこの事態とは特に関係はないの」

「……あ?」

「戯れに話をしただけ、お主はもう──死んで良いぞ?」

 

 いつの間にか男は先程足を掴んできた存在たちに囲まれて、各々が持つ槍、剣、手鎌で貫かれていた。喉も貫かれ喋ることが出来なくなり、手足を地面に縫い付けられ全力で個性を使おうとしても何故か反応しない。

 

「────」

「別にお主と話す必要もなし、日本の話をしたがそれ以上のそれもなく。なればお主に用はない、元より儂の仕事はお主らの始末。あぁ、お主の個性はもはや影も形もないぞ。うちの科学者は個性無効化装置を開発しておるからの」

「──…………」

 

 呆気なく、中国全土を脅かしていたヴィランは全身貫かれ死んでいた。

 

「……ふむ、とりあえずこれでよしかの。次もある、帰るとするか」

 

 後ろから迫ってくる研究所の手勢を横目に姿を消していく老人。その表情に変化はなく、その風景はまるで日常のようで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──日本──

 

 

 

「負傷者発生!」

「俺が救助行きます!」

「頼む、インゲニウムが救助に向かった!援護しろ!」

「おう!!」

 

 相も変わらずヴィランが好き勝手をする為に人を襲い始めその対処のために一時的に前線を築くためにヒーローたちはやってきていた。

 臨時的に敷設された指揮施設は慌ただしく八方へ指示を出していた。

 

「っ!ヴィジランテ組織・国定(くにさだ)が出てきました!如何しますか!」

 

 状況は逼迫している、それは既に前線に出て市民の救助や戦闘を行っているヒーローの様子を見て分かる事だ。この臨時施設における最高指揮官はその情報が脳内で反芻しないように最善を選択する

 

「……救援要請だ!今は市民を守る事が最優先!この事態が終わっても追手を向かわせないとも伝えろ!」

「了解!」

 

 ヴィジランテ組織・国定、主な活動内容は縄張りとした地域の防衛及び社会の維持。ヴィラン大国となる前の日本の社会を維持するという考えの元様々な個性持ちが市民を守り続ける組織。時に家財などさえも売り飛ばし飢饉等物資不足が起きないように維持するなど、義侠的な行動をする()()()()ヴィジランテ組織だ。

 彼らが支配する地域では少なからずヒーローは居るが地域密着型のヒーローの為基本的に組織と敵対することも無く、お互い見て見ぬふりをしている。それでも個性を無断使用しているということで外部からやってくるヒーロー達は逮捕などを行うなどとヒーローなどとは確執が存在する。

 

「国定実行部隊隊長の()()()()がA級ヴィラントゥワイスと交戦を開始!」

 

 画面に映し出される無数に現れる全身タイツの男、それが一人の少年へ襲いかかろうとして──視界に映るその全てが粉々に崩れ落ちた。

 

「やっぱり相性悪いぜ、最悪だ!最高な気分だ!」

「相変わらず気色悪い喋り方しやがって──ぶっ壊してやるよ」

「やめて!やってみろやコノヤロウ!」

 

 個性を完全にコントロールしている志村転狐は空気中に崩壊の個性を通して目の前に立つヴィランを壊すために全力で崩壊を伝播させ始める。

 だがトゥワイスが崩壊される前にその崩壊する速度以上で増殖していく。彼は過去にあったトラウマを乗り越えているが故に自身の複製を作ることに対して躊躇いがなく、尚且つAFOから渡された強化個性を使う事でヴィランの中でも屈指の危険度となっていた。

 

「ッ、その個性を返せ!!!」

「嫌だね、このシュガードープってやつ、使いやすいからな!使いにくいったらねぇぜ」

「ふざけやがって……!」

 

 トゥワイスの足元を全力で崩壊させ、トゥワイスの本体へと走り始める。その過程でもトゥワイスの複製が襲いかかるが鎧袖一触で全てが崩壊していく。

 

「殺す」

「こっちのセリフだな!」

 

 それでも抜けてくる攻撃もあるが、身のこなしのみで回避していく。崩壊、崩壊、時に蹴りや頭突きを含みながら徐々にトゥワイスへ接近していく転狐。

 その様子を複製した自身の群れの中で見ているトゥワイス、今自身を大量に複製しているのは囮の自分であり、このままなら不意をつけば殺れる──そう思った時。

 

────BANG!!!

 

 不意に聞こえた銃声と腹部に感じる熱と痛み、咄嗟に音が聞こえてきた方へ顔を向けるとそこにはドレッドヘアーとガスマスクをしたヒーローの姿があった。

 

「ッ!スナイプゥ!!」

「へっ、最初からお前のことはこの目で捉えてたんだよ──レディナガンですら本体を知らなきゃ当てれねぇお前に当てたんだ。俺の方が上だね。それよりこっち見てていいのかい?」

「な、は?」

「トゥワァイスゥ!!!」

「しまっ!」

 

 自分が狙っていたヤツが偽物だと気づいたのは崩壊させた後。怒りのあまり視野が狭まりそうになっていたがそれでも周囲を警戒していた転狐は発砲音と共に血を吹き出したトゥワイスを見て駆けて、あと一歩の所まで接近していた。

 

「死ねェ!!」

 

 そして避け切ることも出来なかったトゥワイスは……虚しく崩壊していく。

 トゥワイスを中心に集まっていたヴィラン達はその様子を見て撤退を始めていた。ただ、一人の少女はそれを見据えて決意の眼差しを向ける。

 

「転狐くん……いつか貴方を殺します」

「トガヒミコ、いつかじゃなくて──今、ここで、俺が殺してやる」

「力を蓄えたら姿を現しますので、オサラバです」

 

 その姿を黒い霧に飲み込まれてその場から消え去っていく。国定に所属する仲間の個性を勝手に使われて完全にブチ切れていた転狐の怒りは収まらず、未だ逃げている有象無象のヴィラン達を虐殺し始めた。

 

「ンンンンンンン、少年よそこまでにするのですぞ」

 

 そんな少年に奇々怪々な姿をした長身の男が声をかけた。格好を見るだけなら和服の巨漢だが、その髪型が謎であり、ココ最近有名になってきているカルデアに所属する人物であった。

 

「まるで悪鬼羅刹の如くの所業、しかし必要以上の殺しは貴方を地獄へと落としますぞ?」

「黙れやピエロ」

「ぴえろとはまた心外な、至って真面目ですとも!」

「いつも思ってたことがある」

「ふむ、なんですかな?」

「てめぇらカルデアは何を目的に活動していやがる?」

 

 今回彼らが出てきたのは恐らく俺を止めるためだろう──そう推測する転狐の考えは正しく、カルデアは時折表舞台に出てきては転狐や一部の人物に過剰に干渉している。まるで何か調整をするかの如く。

 

「……そうですな、頃合いということでしょうか」

「あ?」

()()()()からは時期を見て拙僧に行動すると申されておりましたが、今が時期でしょう」

 

 身勝手、胡散臭い、誰だこいつ──脳内思考が男に向けられ個性の調子を確かめていく転狐。ちょっとでも怪しい動きをしたら即座に粉々にするつもりで。

 というかなんだあの空中に浮かんでる紙はなにか意味が、男の格好だけ見ると陰陽師っぽいな……式神?

 

「てめ──」

「えぇ、えぇ!ですので!拙僧が代わりに()っておきましょう!」

 

 不意に転狐の体が最大限の警戒をするために和服の男へ襲いかかった。己の意思に反して勝手に動く肉体に多少驚きながらも正しい判断だと全力で踏み込む。

 恐らくこの男は最低最悪な事をしでかす。カルデアはヴィジランテという話だったが、これではヴィランではないか。

 

「お目覚めですぞ顕光殿──」

「やめんかいこら」

 

 転狐の体が固まる。

 

 いや、むしろ体がというより空中に躍り出ていた身が止まっていることから空間に関与する類だと推察する──崩壊が効かない。

 

 思考が鈍くなる、このままだと男の──もう1人の声があの男の隣から聞こえてきた。

 

 目とか口は動く、目だけでも動かして男の隣へと向ける。

 

「なっ────お前は!」

「やぁ久しぶり、転狐くん」

 

 かつて己が家族を崩壊させた時に一緒にいてくれた友人が──

 

 ヒーローを憎みそうになっていた自身をヒーローへと導いてくれた恩人が──

 

 ヴィラン大国となった日本で生き残るための術を教えてくれた師匠が──

 

「藤丸六花(リツカ)!」

「覚えていてくれてたんだねぇ……」

 

 ()()、オレンジの髪を煌めかせながらその全身白色の、まるで死装束のような装備を身にまとい、和装の男をアームロックしている姿からは懐かしい気配を醸し出していて。

 

「無事だったのか……?」

「うん、無事も無事。このとおり傷一つないよ……いやごめん普通に嘘」

 

 大型ヴィラン、ギガントマキアとの戦闘の際に生死不明となった()()()の少女。

 あの時から俺は──

 

「ンンンン?マスター、この方をご存知なのですかな?」

「そうだよ、道満。君には意図的に情報を伝えなかったからねぇ……」

「心外ですな、拙僧が何かするつもりとで……」

「いや、宝具使おうとしたじゃん?ダメに決まってるでしょ」

 

 ……主君(マスター)

 

「な、なんでアンタがマスターなんて呼ばれているんだ?」

「……それは」

「アンタが……アンタが、カルデアのマスターなのか?」

 

 カルデアのマスター。人理継続保障機関カルデアにおける最高指揮官であり、創設者。カルデアのメンバーが零すソレは応答することが出来たアルトリア・アヴァロンと呼ばれる存在により確定し、全世界のヒーローが、国連安全保障理事会・安保理が探し続けてきた存在だ。

 

 そんな存在が……この少女?

 

「うん……私が人類最後のマスター、人理継続保障機関カルデアにおける最高指揮官で最高指導者、及び所長だよ」

「……」

「まぁあまり気にしないで欲しいな、君と私の仲じゃない」

「……んで……」

「……?」

「なんで今更顔を出しに来たんだよ……」

 

 周りのヒーローたちがざわつく、今まで謎だった存在が真偽不明とはいえ現れ、尚且つカルデアに所属していることが確定している存在である蘆屋道満が大人しく従っていることで説得力が上がっていて。

 そして同時に確保しなければならない存在だと理解し、包囲を始めた。

 

 そして志村転狐は目の前に立つその少女に問いたださなければいけない。

 

 数年ぶりに現れたその少女が今ここで姿を現した理由を。

 

「決着をつけるために」

「……なにと?」

「AFO」

「そのためにあんたは姿を隠したのか?」

「本当だったら姿を隠す必要はなかったんだけどね、けど……こんな傷を負ったら、カルデアの長の弱みをさらけ出す訳がないのよね」

 

 上着を突如として脱ぎ、上だけ下着姿になった彼女は、目を背けようとしたのに注視せざるを得ないソレを見て別の意味で顔を顰めてしまう。

 

「心臓に左の肺、後脾臓かな……それプラスして左腕がね」

「────」

 

 心臓と左肺があった場所はぽっかりと空洞ができて、脾臓があるであろう場所は何かが穿った跡のみがあった。

 左腕に至っては義手に変わっていてチキリチキリと音を立てて駆動している。

 

 言葉が出ない、絶句とはこの事かと。今まで確かに大怪我を負った人を見た事があるし負ったこともある転狐ですら見たことの無いソレに、なぜ生きているのかと疑問の眼差しを彼女へ向けてしまう。

 

「本当なら死んでるんだけど……うちのメンバーに冥界の神様とか、死に関する人とかいっぱいいるし医療に優れた神様もいる……それでもね、ここまで来たら治せないんだってさ」

 

 呪縛だと、AFOが彼女にかけた全力のそれが蝕んでいると言う。

 

「見たことがない事象らしいよ?神話の時代の魔術師達ですらこれがワカラナイ。抑止力の拒絶に近いものがあるらしいけど、それなんかとは比べ物にならないんだってさ」

 

 目が、彼女の希望に満ちていたあの目がくすんでいく。宝石のようで、いつも気がついたら視線が言ってしまうあの綺麗な目がおぞましいモノになっていく。

 

「治すには」

「AFOを殺すしかない、ですねマスター?」

「茶々を入れないで欲しいんだけど?」

「えぇえぇ、その気持ちは理解していますが……ひとまず上着を着る方がよろしいかと。乙女の柔肌を衆人環視の中に晒すのはいささか忍びない」

「キッショ、あんたにそんな気を遣うなんて気持ちがあったなんてね……それにこんな体見たって欲情する人間なんて居るわけないでしょ」

「それ拙僧の前で言います?」

「あんたは論外」

 

 渋々上着を着る彼女を見ながらどうすればいいのかと思考を巡らせる。そんな俺の様子に気づいたのか責めるような声色で注意を促してくる。

 

「何とかしようなんて思わないでね、転狐くん」

「──え?」

「これは私が背負った咎。私が為すべき事を示す道標、これを何とかできるのなんてオールマイトか……主人公だけだよ」

「ここに現れた理由をちゃんと言ってなかったね……決着のためと言ったけど、別に転狐くんの為の理由もあるよ」

 

 

「貴方とお別れをするためなの」

 

 

「……その傷のせいか?」

「うん」

「マスターのこの傷は、マスターを傷付けるのと同じくして生かしているのです」

「じゃないともう死んでるからね」

「じゃあ、アンタがAFOと決着をつけたら……死ぬのか?」

「そういうこと。だから最期に知人に顔を見せて回ってんのよ」

 

 恐らく運命は変わらないだろう。何故かそんな風に思ってしまう。

 

「……アンタが居なくても、俺は生きられるようになった」

「おや」

「黙って道満」

「アンタが居なくても、俺は人を助けられるようになった」

 

「アンタが居なくても、俺は人に囲まれるようになった」

 

「アンタが居なくても、俺は孤独じゃなくなった」

 

 

 

「アンタは……俺の恩人だ」

「……うん」

「だから本当はアンタのことは止めたい。でも俺の中の何かが止められないって言ってるんだ……これだけは変わらないだろうって……」

「そうだねぇ……」

 

 淡く微笑む彼女に、でも、と付け足して俺も微笑んでやる。

 

「アンタを助けてくれるヤツがきっと現れる」

「……へぇ」

「だって余計なお節介はヒーローの本質なんだ……手が届かない()じゃなくて、本当のヒーローが助けてくれるんだ」

 

 未熟で、弱虫な僕じゃない。

 

「……どーしてみんな、そんなことを言うんだろうねぇ……不思議、ねぇ、道満」

「そうですなぁ……イレイザーヘッド殿に、マイク殿、13号殿、紅頼雄斗(クリムゾンライオット)殿、あらゆるヒーローの人達からマスターを助けてくれる存在が現れると、断言されましたな」

「私が助かる……そんな未来があるのかな?」

「拙僧らはそれを願っております故」

「あんたらはそうでしょうね」

「まぁ地獄に来たら来たでおもてなしは致しますが」

「……ま、そん時はエレシュキガルとかポカニキとかの冥界組が争うでしょうけど」

「そうでしたな!」

 

 先程とは打って変わって明るい雰囲気になった彼らは。

 

「転狐くん」

「……んだよ」

「ありがとう、そう言ってくれて」

「……」

「さようなら」

「あぁ、さようなら……いや、()()()

 

 また会うためのおまじないを二重にかける。再び彼女に出会うために。

 

 姿をくらましていく彼女の満面の笑みに、救いがあらんことを。

 

 

 

 

 

 

 

エクストラクラスで皆が好きなのは?作者はフォーリナー

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