夜を目前に控えた東京。
リュウジの運転する車は、八馬人を乗せて静かに走っていた。
「リュウジさん、急な仕事って……まさか」
リュウジは真剣な表情で頷く。
「ああ。今夜、港の倉庫で武器取引が行われるという情報が入った。」
「僕たちの世界から流出した技術が関わっている可能性が高い。」
「君には、その武器の回収、もしくは破壊を任せたい。」
その瞬間、カーナビの画面が切り替わる。
黒木タケシだった。
『八馬人君。訓練を終えたばかりで不安なのは理解している。』
『だからこそ、今回はリュウジが全面的にサポートする。』
「了解しました。」
八馬人は深く頷いた。
「ただし、一度アパートへ戻ってくれ。」
『陣が新しい装備を送っている。確認してから現場へ向かえ。』
「分かりました。」
---
同じ頃――
**喫茶リコリコ。**
ミカは千束とたきなの前に立っていた。
「今夜、海岸の倉庫で武器取引が行われる。」
「未知の武器が持ち込まれる可能性が高い。」
「回収、もしくは無力化。それが今回の任務だ。」
「了解!」
たきなは静かに頷く。
一方、千束は腕を組んだ。
「えぇ~? そういうのってDAのお仕事じゃない?」
たきなが即座に突っ込む。
「私たちもDA所属です。」
「そうだった。」
ミカは苦笑した。
「準備ができ次第、出発だ。」
---
八馬人はアパートへ戻ってきた。
部屋の前に立つと、聞き覚えのある声がした。
「お待ちしていました。」
振り向くと、女神がにこやかに手を振っている。
「いつの間に!?」
「立ち話も何ですし、中へ入りましょう。」
女神に背中を押され、部屋へ入る。
リビングのテーブルには、新しい武器と一通の手紙が置かれていた。
「……ラブレターですか?」
「違います!」
八馬人は思わずツッコミを入れる。
女神は笑いながら続けた。
「今日は忘れ物を届けに来ました。」
「忘れ物?」
「転生するとき、あなたに授けるはずだった力です。」
八馬人は首をかしげる。
「あなた、生前にお願いしていましたよね?」
「身体能力を強化してほしい、と。」
その言葉で思い出す。
前世で憧れていた、圧倒的な身体能力。
女神は右手をかざし、静かに祈り始めた。
柔らかな光が八馬人を包み込む。
数秒後、光は静かに消えた。
「これで終わりです。」
「あなたの身体能力は大幅に向上しています。」
「では私は失礼します。本来、この世界へ長く干渉できませんので。」
そう言い残し、女神は光となって姿を消した。
八馬人はテーブルの武器を見る。
そこには、
**イチガンブレード。**
そして、
**レミントンM870。**
陣からの手紙には短く書かれていた。
『状況に応じて使い分けろ。』
時計を見る。
午後五時。
張り詰めていた緊張が切れたのか、八馬人はソファへ横になった。
「少しだけ……。」
そのまま、眠りに落ちる。
---
同時刻。
AFT本部。
陣マサトは大型モニターを凝視していた。
映像には、港の倉庫。
武器取引を行う男たち。
その中の一人を見た瞬間、陣の表情が凍り付く。
「嘘だろ……。」
思わず立ち上がる。
「なんであいつがいる……!」
画面に映っていたのは、本来この世界にいるはずのない男。
ヴァグラス幹部――**エンター**。
陣はすぐに通信端末を掴んだ。
「黒リン!」
「リュウジ!」
「予定変更だ!」
「あいつが現れた!」
「エンターが、あの世界にいる!」
その報告は、これから始まる八馬人の初任務が、想像をはるかに超える戦いになることを意味していた。