リコリス・リコイル -運命の邂逅-   作:銀の匙

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MISSION 9 Night Operation ― 初任務、始動 ―

同時刻、喫茶リコリコ。

 

「千束、たきな。情報は確認したか?」

 

ミカの問いに、たきなが静かに頷いた。

 

「はい。港の倉庫で武器取引。強奪された銃と関係している可能性があります」

 

「つまり、例の千丁の銃ってやつでしょ?」

 

千束は制服に袖を通しながら、軽い調子で言った。

 

「港で武器取引なんて、映画みたいだね」

 

「千束、浮かれないでください」

 

たきなは弾倉を確認しながらため息をつく。

 

「私たちは日本の治安を守るエージェントです」

 

「はーい」

 

千束は笑って答えた。

 

ミカは二人を見つめ、静かに告げる。

 

「無理はするな。目的は武器の回収、または無力化だ」

 

「了解」

 

二人はそれぞれ銃を確認し、店を出た。

 

---

 

一方、八馬人のアパート。

 

テーブルの上には、陣から送られてきた新装備が置かれていた。

 

イチガンブレード。

 

レミントンM870。

 

「これ、普通に持ち歩いたら完全にアウトだよな……」

 

八馬人はスマートウォッチを操作する。

 

画面には、新しいモードが追加されていた。

 

STORAGE MODE

 

「これか」

 

モードを選択すると、ウォッチの画面が淡く光る。

 

『対象物をスキャンします』

 

光がイチガンブレードとレミントンM870を包み込む。

 

次の瞬間、二つの武器は粒子のように消えた。

 

『収納完了』

 

「すげぇ……」

 

続けてTRANS MODEを確認すると、そこには登録された武器名が表示されていた。

 

COLT GOVERNMENT

ICHIGAN BLADE

REMINGTON M870

 

「これなら持ち運びは問題ないか」

 

その時、アパートの外で車のライトが点滅した。

 

「来たな」

 

八馬人はジャケットを羽織り、部屋を出た。

 

---

 

その少し前。

 

リュウジは車を走らせながら、陣と通信していた。

 

『リュウジ、よく聞け』

 

「はい、先輩」

 

『今回の取引に、エンターが現れる可能性がある』

 

リュウジの表情が変わる。

 

「エンター……? そんな、あいつはヒロムたちが倒したはずです」

 

『俺もそう思っていた。だが映像に映っていた』

 

「でも、もし本当にエンターなら、俺にはモーフィンブレスが……」

 

その瞬間、リュウジの右腕が光った。

 

そこには、見慣れた装備が装着されていた。

 

「先輩……いつの間に」

 

『俺を誰だと思ってる』

 

陣の得意げな声が響く。

 

『天才エンジニア、陣マサトだぞ』

 

「相変わらず無茶しますね」

 

『万が一エンターが出たら、八馬人は撤退させろ。今のあいつでは勝てない』

 

「了解」

 

リュウジは通信を切り、アパート前に車を止めた。

 

八馬人が助手席に乗り込む。

 

「行きましょう」

 

「うん。現場までは僕が送る」

 

車は夜の港へ向かって走り出した。

 

---

 

港の近く。

 

人気のない場所で車が止まる。

 

八馬人は左耳にインカムを装着した。

 

「八馬人君、僕は後方支援に回る。危なくなったらすぐ撤退して」

 

「了解。でも、この任務を成功させないと前に進めない気がするんです」

 

八馬人はスマートウォッチを確認する。

 

「俺は、不可能を可能にする」

 

その言葉に、リュウジは少しだけ驚いた表情を見せた。

 

「……無茶はしないでね」

 

「分かってます」

 

八馬人は倉庫へ向かって歩き出した。

 

リュウジは小型ドローンを起動する。

 

「ドローン、八馬人君を追尾」

 

ドローンが静かに飛び立つ。

 

モーフィンブレスの画面には、八馬人の周囲の映像とサーモグラフィが表示された。

 

「さて、先輩の新作。頼むよ」

 

---

 

倉庫の入口。

 

八馬人は扉の前で足を止めた。

 

中から複数の男たちの声が聞こえる。

 

「これだけあれば、この国も終わりだな」

 

「上に渡せば報酬は倍だ」

 

「問題は、例の未知の武器だ。扱いを間違えるなよ」

 

八馬人は息を潜め、扉を少しだけ開ける。

 

内部には数人の男。

木箱。

武器ケース。

そして見慣れない銀色のケース。

 

「リュウジさん、確認しました。取引現場です」

 

『了解。無理に動くな。まずは状況確認だ』

 

その時、リュウジのいる場所に一台の車が近づいてきた。

 

リュウジは咄嗟に身を隠す。

 

車から降りてきたのは、二人の少女。

 

ベージュの制服。

 

「まさか……」

 

リュウジはすぐにインカムへ声を飛ばした。

 

『八馬人、緊急事態だ』

 

「どうしました?」

 

『リコリスが来た』

 

「……え?」

 

八馬人の表情が固まる。

 

その直後、倉庫の別入口から二つの影が静かに入り込んだ。

 

千束とたきな。

 

八馬人は物陰から二人を確認する。

 

「君たち……」

 

千束も八馬人に気づいた。

 

「えっ、八馬人君?」

 

たきなが銃を構える。

 

「なぜ、あなたがここにいるんですか」

 

八馬人も動けなかった。

 

AFTとDA。

 

それぞれ別の指令を受けた者たちが、同じ武器取引現場で鉢合わせた。

 

だが、その時だった。

 

倉庫の奥で、拍手の音が響く。

 

パチ、パチ、パチ。

 

男たちの会話が止まる。

 

暗がりから、一人の男が姿を現した。

 

余裕のある笑み。

 

不気味な気配。

 

八馬人は本能的に身構える。

 

インカム越しに、リュウジの息を呑む音が聞こえた。

 

『……エンター』

 

男は静かに微笑んだ。

 

「Bonsoir」

 

「役者は、そろったようですね」

 

八馬人の初任務は、想定を大きく超える事態へ突入しようとしていた。

 

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