リコリス・リコイル -運命の邂逅-   作:銀の匙

13 / 14
MISSION 11 After the Crossfire ― 交差の後で ―

 

倉庫内には、まだ焦げた臭いが残っていた。

 

床には破損した銀色のケース。

制圧された取引相手たち。

そして、互いに状況を整理できない三人。

 

千束は八馬人をじっと見つめた。

 

「AFT……別世界の武器……?」

 

たきなは銃を下ろさない。

 

「説明になっていません。あなたは何者ですか」

 

八馬人は両手を上げたまま、ゆっくり言う。

 

「俺も全部を知ってるわけじゃない。ただ、この世界に流れ込んだ危険な技術を回収するために動いてる」

 

「誰の指示ですか」

 

「黒木タケシさんと、陣マサトさん」

 

その名前に、千束は首をかしげた。

 

「誰?」

 

たきなも眉をひそめる。

 

その時、八馬人のインカムからリュウジの声が響いた。

 

『八馬人君、もう隠すのは無理だね』

 

「リュウジさん……」

 

倉庫の入口から、岩崎リュウジが姿を現した。

 

「やあ、千束ちゃん、たきなちゃん」

 

千束はぱっと表情を変える。

 

「あれ? リュウジさん!?」

 

たきなは驚きを隠せない。

 

「あなたも関係者だったんですか」

 

「うん。ちょっとね」

 

リュウジは苦笑しながら、八馬人の隣に立った。

 

「彼は敵じゃない。少なくとも、この世界を壊そうとしている側ではないよ」

 

たきなはまだ警戒している。

 

「それを信じろと?」

 

「信じなくていい。ただ、今は協力した方がいい」

 

リュウジが視線を向けた先には、焼け焦げたケースがあった。

 

「これ、放っておいたら大変なことになってた」

 

千束はしゃがみ込み、ケースを覗く。

 

「これが未知の武器かぁ……。ほんとに変な感じするね」

 

その時、たきなの通信機が鳴った。

 

『たきな、千束。状況を報告しろ』

 

楠木の声だった。

 

「取引相手は制圧。未知の武器は破損。ですが、現場にAFTを名乗る男性と岩崎リュウジがいます」

 

一瞬、通信の向こうが沈黙する。

 

『……連れてこい』

 

「了解」

 

たきなは八馬人を見る。

 

「あなたたちにも同行してもらいます」

 

八馬人はため息をついた。

 

「またですか……」

 

千束が笑う。

 

「まあまあ。今度はたぶん、前より優しくしてくれるよ」

 

「たぶんって……」

 

リュウジは肩をすくめた。

 

「大丈夫。今回は僕も一緒に行く」

 

その時、スマートウォッチが振動した。

 

画面に通信が入る。

 

黒木タケシだった。

 

『八馬人君。現場状況はこちらでも確認した』

 

「黒木さん」

 

『DAとの接触は避けられない。正直に話しなさい。ただし、話せる範囲でだ』

 

続いて、陣マサトの声が割り込む。

 

『エンターのことは絶対に油断するな。あいつは一度姿を見せた以上、必ずまた来る』

 

「了解」

 

八馬人は拳を握る。

 

たきなはその通信を見て、さらに表情を険しくした。

 

「今の通信相手も説明してください」

 

「……ですよね」

 

千束はにこっと笑った。

 

「なんか面白くなってきたね」

 

「面白くありません」

 

たきなが即答する。

 

倉庫の外では、DAの車両が到着していた。

 

八馬人は夜空を見上げる。

 

初任務は終わった。

 

だが、問題は何一つ終わっていない。

 

エンター。

 

流出したレーザー技術。

 

DAとの接触。

 

そして、喫茶リコリコ。

 

彼の第二の人生は、また一つ大きく動き始めていた。

 

千束が八馬人の隣に並ぶ。

 

「ねえ、八馬人君」

 

「はい?」

 

「今度、ちゃんと自己紹介し直そうね」

 

八馬人は少しだけ笑った。

 

「そうですね」

 

たきなは前を向いたまま言う。

 

「その前に事情聴取です」

 

「ですよね……」

 

リュウジが小さく笑う。

 

四人はDAの車両へ向かって歩き出した。

 

その背後で、壊れたケースの破片がわずかに赤く光ったことに、まだ誰も気づいていなかった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。