DA本部。
八馬人は、リュウジ、千束、たきなと共に会議室へ通された。
以前の取調室とは違う。
だが、空気の重さは変わらなかった。
正面には楠木。
その隣には秘書。
そしてモニター越しに、黒木タケシと陣マサトの姿が映っている。
楠木は八馬人を見据えた。
「木浪八馬人。改めて聞く。AFTとは何だ」
八馬人は一度、黒木を見る。
黒木は静かに頷いた。
「説明できる範囲で話します」
八馬人はゆっくり口を開いた。
「AFTは、通常の警察や自衛隊では対処できない特殊技術の流出を調査・回収する組織です」
楠木の視線が鋭くなる。
「特殊技術とは?」
陣がモニター越しに答えた。
『今回のレーザー兵器だ。あれは本来、この世界に存在しない技術だ』
たきなは眉をひそめる。
「存在しない技術……?」
千束は首をかしげた。
「つまり、すごく危ない未来兵器ってこと?」
『まあ、そんな感じだ』
陣は軽く返す。
だが、黒木の表情は真剣だった。
『問題は、その技術を持ち込んだ者がいるということです』
「エンター、ですね」
リュウジが低く言う。
その名前に、陣の表情がわずかに強張った。
楠木は腕を組む。
「その男は何者だ」
黒木は短く答えた。
『我々の世界で、かつて大きな災厄を起こした存在です』
『知能、戦闘能力、技術理解、すべてが高い』
『この世界で自由に動かせるわけにはいきません』
会議室に沈黙が落ちる。
千束は珍しく真面目な表情になった。
「じゃあ、あの人を止めないと、もっと大変なことになるんだ」
「そういうことだ」
楠木はしばらく考え、八馬人へ視線を戻す。
「こちらとしても、正体不明の武装組織を信用するわけにはいかない」
「ですが、現場で八馬人さんは人質を守りました」
たきなが静かに言った。
楠木がたきなを見る。
たきなは続ける。
「少なくとも、敵対する意図はなかったと判断します」
千束も笑って手を上げた。
「私も同じ。八馬人君、悪い人って感じしないし」
「判断基準が曖昧です」
「えー、でも大事だよ?」
八馬人は少し苦笑した。
楠木はため息をつく。
「いいだろう」
全員の視線が楠木へ向く。
「DAはAFTと限定的に情報共有を行う」
「ただし、こちらの監視下でだ」
黒木は頷いた。
『十分です』
楠木は八馬人を指差す。
「木浪八馬人。今後、勝手な単独行動は認めない」
「了解しました」
「それと」
楠木は千束とたきなを見る。
「しばらくの間、彼の監視兼連絡役をお前たちに任せる」
「えっ、私たち?」
千束が目を丸くする。
たきなは即座に姿勢を正した。
「了解しました」
八馬人は固まった。
「え、つまり……」
千束がにこっと笑う。
「八馬人君、しばらくリコリコ出入り決定だね」
「そうなりますね」
たきなも淡々と言う。
陣がモニター越しに笑った。
『いいじゃねぇか。働き口も見つかりそうだしな』
「陣さん、他人事みたいに……」
その時、会議室のモニターに警告表示が出た。
秘書が慌てて報告する。
「楠木司令。倉庫から回収したケースの破片に反応があります」
「何?」
画面に映ったのは、赤く点滅する小さなチップ。
陣の表情が変わった。
『まずい。それ、ただの破片じゃない』
黒木が低く言う。
『発信機か』
陣は歯を食いしばる。
『いや、もっと悪い』
『あれは、エンターの仕掛けたビーコンだ』
その瞬間、DA本部の照明が一瞬だけ揺らいだ。
八馬人のスマートウォッチが警告音を鳴らす。
WARNING
UNKNOWN SIGNAL DETECTED
千束が立ち上がる。
「来る?」
たきなは銃に手を伸ばした。
八馬人も息を呑む。
モニターの端に、ノイズ混じりの文字が浮かび上がる。
Bonsoir.
陣が叫ぶ。
『全員、警戒しろ!』
会議室の空気が、一気に戦場のものへ変わった。