リコリス・リコイル -運命の邂逅-   作:銀の匙

15 / 18
MISSION 13 Unknown Signal ― 侵入者の残響 ―

DA本部の照明が、再び大きく揺れた。

 

モニターには、ノイズ混じりの文字が浮かんでいる。

 

Bonsoir.

 

たきなは即座に銃を構える。

 

「千束、八馬人さんを下がらせてください」

 

「了解!」

 

千束は八馬人の前に出る。

 

「八馬人君、ちょっと後ろね」

 

「いや、俺も――」

 

「今は説明より安全確保!」

 

千束の声は明るいままだが、目は真剣だった。

 

その時、会議室のスピーカーから男の声が流れる。

 

『Bonsoir, mesdames et messieurs』

 

陣が歯を食いしばる。

 

『エンター……!』

 

楠木が鋭く問う。

 

「DAの回線に侵入したのか」

 

黒木が低く答える。

 

『ビーコンを経由して、内部ネットワークへ干渉している』

 

『完全な侵入ではありません。だが、時間を与えれば危険です』

 

エンターの声が楽しげに響く。

 

『素晴らしい施設ですね。平和を守るための秘密の箱庭』

 

『ですが、箱庭は外から眺めるより、中から壊す方が美しい』

 

「ふざけるな」

 

八馬人はスマートウォッチを見た。

 

WARNING

UNKNOWN SIGNAL DETECTED

 

「陣さん、どうすれば!」

 

『八馬人、ウォッチのEXPLORATION MODEを起動しろ!』

 

「了解!」

 

八馬人が画面を操作する。

 

周囲の情報が視界に流れ込む。

 

通信経路。

熱源。

電磁反応。

そして、会議室の隅に置かれた回収ケースの破片。

 

「反応はあの破片です!」

 

たきなが即座に動く。

 

だが、破片が赤く光った瞬間、小型ドローンのような影が床から跳ね上がった。

 

「っ!」

 

たきなは発砲しようとする。

 

しかし千束が一歩先に動き、机を蹴って破片との間に割り込んだ。

 

「室内で撃つと危ないよ!」

 

千束は椅子を使って影を弾き飛ばす。

 

その隙に八馬人が前へ出た。

 

「TRANS MODE!」

 

手元にイチガンブレードが転送される。

 

光を帯びた刃が、小型ドローンを正確に叩き落とした。

 

ドローンは床に転がり、火花を散らす。

 

だが、スピーカーから拍手が聞こえた。

 

『お見事です、木浪八馬人』

 

「俺の名前を気安く呼ぶな」

 

『あなたは面白い。異物でありながら、この世界を守ろうとしている』

 

『では、次の遊びを用意しましょう』

 

モニターが切り替わる。

 

映し出されたのは、都内の複数地点。

 

駅前。

商業施設。

道路。

そして喫茶リコリコ周辺。

 

楠木の表情が変わる。

 

「これは……」

 

『三時間後。どこか一つで、私からの贈り物が目覚めます』

 

『止められるものなら、止めてみなさい』

 

ノイズが走り、通信は途切れた。

 

会議室に重い沈黙が落ちる。

 

陣の声が、モニター越しに響く。

 

『まずいな。あいつ、こっちを試してやがる』

 

黒木が即座に指示を出す。

 

『楠木司令。AFT側で信号解析を行います』

 

「DAもラジアータを使い、候補地点を絞る」

 

楠木は千束とたきなを見る。

 

「千束、たきな。出動準備」

 

「了解」

 

「了解しました」

 

続けて、楠木は八馬人へ視線を向ける。

 

「木浪八馬人」

 

「はい」

 

「お前にも同行してもらう。AFTの装備と能力が必要になる可能性がある」

 

八馬人は一瞬だけ息を呑む。

 

初任務は終わったはずだった。

 

だが、本当の戦いはここから始まる。

 

彼はスマートウォッチを握り締めた。

 

「了解!」

 

千束がにっと笑う。

 

「いい返事!」

 

たきなは冷静に言う。

 

「ただし、勝手な行動は禁止です」

 

「分かってます」

 

リュウジが通信で割り込む。

 

『八馬人君、僕も外で合流する。サポートは任せて』

 

陣も続ける。

 

『ウォッチの解析モードを強化しておく。無理すんなよ』

 

黒木が最後に告げた。

 

『これはAFTとDAの共同作戦です』

 

楠木は静かに頷く。

 

「作戦開始だ」

 

八馬人、千束、たきな。

 

三人は会議室を飛び出した。

 

廊下の先で、警報灯が赤く回っている。

 

その光の中、八馬人は心の中で呟いた。

 

エンター。

 

お前の好きにはさせない。

 

この世界の日常は、必ず守る。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。