DA本部を飛び出した八馬人、千束、たきな。
三人は地下駐車場へ向かって走っていた。
「候補地点は三つです」
たきなが端末を確認しながら言う。
「駅前、商業施設、そして喫茶リコリコ周辺」
「うわ、よりによってリコリコも入ってるの?」
千束の表情が少しだけ険しくなる。
その時、八馬人のスマートウォッチが振動した。
『八馬人君、聞こえる?』
リュウジの声だった。
「聞こえます」
『僕は外で待機してる。君たちはまず商業施設へ向かって。そこが一番人が多い』
続いて陣の声が割り込む。
『ウォッチに解析モードを追加した。怪しい信号が近づけば反応する』
「了解!」
地下駐車場に到着すると、黒い車が停まっていた。
運転席にはリュウジ。
「乗って!」
三人は車へ飛び乗る。
車は夜の東京へ走り出した。
車内で、千束が八馬人をちらりと見る。
「八馬人君、緊張してる?」
「してますよ。普通に」
「正直でよろしい」
「千束、今は雑談している場合ではありません」
たきなが冷静に言う。
だが、その声にもわずかに焦りがあった。
商業施設に到着すると、周囲はまだ多くの人で賑わっていた。
「この中にエンターの仕掛けが……」
八馬人はスマートウォッチを起動する。
EXPLORATION MODE。
視界に人の流れ、熱源、電波反応が重なって映る。
「反応あり。地下フロアです」
「行きましょう」
たきなが先行する。
千束は周囲の人々を見ながら、笑顔で誘導を始めた。
「みなさーん、ちょっと設備点検でーす。ゆっくり出口へお願いしまーす」
自然な声かけで人の流れが変わっていく。
八馬人は思わず感心した。
「すごいな……」
「千束は、こういうのが得意です」
たきなが短く言う。
三人は地下へ向かう。
そこにあったのは、小さな清掃ロボットだった。
だが、内部から赤い信号が出ている。
「これか」
八馬人が近づこうとした瞬間、ロボットが変形した。
赤い光が走る。
「下がって!」
千束が叫ぶ。
八馬人はスマートウォッチを操作した。
BARRIER MODE。
光の盾が展開し、放たれた熱線を受け止める。
「ぐっ……!」
「八馬人君!」
「大丈夫です!」
たきなが側面へ回り込み、ロボットの脚部を撃ち抜く。
千束が跳び込み、倒れた本体を蹴り飛ばした。
「今です!」
八馬人はイチガンブレードを転送し、赤く光るコアを斬り裂いた。
ロボットは火花を散らし、完全に停止する。
「一つ目、解除」
息を吐いた直後、リュウジから通信が入る。
『まずい。駅前にも反応が出た』
陣の声も続く。
『同時起動だ。エンターの野郎、最初から三か所全部仕掛けてやがった!』
「じゃあ、リコリコも……?」
千束の声が低くなる。
たきなはすぐに判断した。
「分担しましょう」
「私は駅前へ向かいます」
「たきな一人じゃ危ないよ」
「ですが時間がありません」
八馬人は一歩前へ出た。
「俺が駅前に行きます」
千束とたきなが同時に見る。
「八馬人さん?」
「リコリコは千束さんとたきなさんに任せた方がいい。大切な場所なんでしょう?」
千束の表情が一瞬止まる。
そして、すぐに笑った。
「うん。ありがとう」
たきなも静かに頷く。
「無茶はしないでください」
「分かってます」
リュウジの車が地下搬入口に滑り込む。
「八馬人君、乗って!」
八馬人は車へ向かって走る。
千束とたきなは反対方向へ駆け出した。
その時、八馬人のスマートウォッチにノイズが走る。
画面に文字が浮かぶ。
Bonsoir.
続いて、エンターの声。
『さあ、選択の時間です』
『守れるものはいくつありますか?』
八馬人は拳を握る。
「全部だ」
車に乗り込みながら、彼は言い切った。
「全部守る」
夜の東京で、三つの戦場が同時に動き出した。