リコリス・リコイル -運命の邂逅-   作:銀の匙

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MISSION 2 The Men Behind the Screen ― 画面の向こうの特命 ―

「陣さん……?」

 

八馬人はスマートフォンの画面を見つめたまま固まった。

 

「ええええええええっ!? 待って、あの陣マサトさん!?」

 

画面の向こうで、白衣姿の男――陣マサトが満足そうに笑う。

 

「おおっ、いいねぇ。その反応」

 

「陣、遊ぶのはそこまでだ」

 

別の男の声が聞こえた。

 

「なんだよ、黒リン」

 

「その呼び方はやめろ」

 

画面に、青いスーツ姿の男性が映る。

 

「木浪八馬人君、初めまして。私は黒木タケシ。これから君をサポートする」

 

「黒木司令官……!」

 

八馬人は思わず姿勢を正した。

 

「俺、今、本当にゴーバスターズの人たちと話してるのか……?」

 

「驚くのは無理もない」

 

黒木は落ち着いた声で言った。

 

「本来、私たちと君が直接関わることはない。だが、今回は事情が違う」

 

陣が画面に割り込む。

 

「簡単に言うと、俺たちはしばらく映像越しにお前を支援することになったってわけだ」

 

「支援?」

 

「そうだ」

 

黒木の表情が引き締まる。

 

「近いうちに、この世界で大きなテロが起こる可能性がある」

 

「テロ……」

 

「問題は、そこに使われる武器だ」

 

陣が続ける。

 

「ビーム兵器を応用した技術が、何者かの手でこの世界に流れようとしている」

 

「ビーム兵器!?」

 

八馬人は思わず声を上げた。

 

映画やアニメでは当たり前のように登場する兵器。

だが、彼の前世の常識では、実戦で使えるようなものではなかった。

 

黒木は静かに頷く。

 

「君が知る私たちの世界では、そうした技術はすでに実用化されている。イチガンバスターなどがその一例だ」

 

「だが、この世界ではまだ存在してはいけない技術だ」

 

陣の声が低くなる。

 

「そんなもんが民間人やテロリストに渡れば、被害は洒落にならねぇ」

 

八馬人は息をのんだ。

 

自分が転生した世界。

リコリスたちが人知れず守っている平和。

その裏側に、さらに別世界の技術まで関わっている。

 

「だいたい、分かりました」

 

だが、すぐに不安が押し寄せる。

 

「でも、俺は前世ではただのサラリーマンです。銃の訓練なんて受けてません」

 

「いきなりそんな任務を任されても……」

 

その時、部屋の空気が淡く揺れた。

 

「その点は心配ありません」

 

八馬人の背後に、女神が現れた。

 

「うわっ!? 急に出ないでください!」

 

「ごめんなさい。説明が足りていませんでした」

 

女神は申し訳なさそうに微笑む。

 

「あなたには、この世界へ来る際に一つ力を授けています」

 

「力?」

 

「空間内の物体情報を素早く正確に認識する力です」

 

「相手の位置、障害物、距離、動きの流れ。集中すれば、それらを瞬時に把握できます」

 

「戦うためではなく、生き残るための力です」

 

八馬人は自分の手を見る。

 

特別な実感はない。

だが、確かに何かが変わっているのかもしれない。

 

黒木が言う。

 

「君に求めるのは、無謀に戦うことではない」

 

「情報を集め、危険な技術が広まる前に止めることだ」

 

陣も頷く。

 

「スマートウォッチは俺が作った。装備の転送、通信、位置情報、緊急信号に対応してる」

 

「使い方は明日、実際に説明してやる」

 

「明日……?」

 

「午前九時過ぎ、迎えが行く」

 

黒木は穏やかな声で続けた。

 

「今日は休みなさい。君は今日、この世界に来たばかりだ」

 

「無理に理解しようとしなくていい」

 

女神も軽く頭を下げる。

 

「黒木司令官、陣マサトさん。彼のこと、よろしくお願いします」

 

「任せとけって」

 

「了解した」

 

女神は光の中へ消えていった。

 

「まったく……自由な神様だな」

 

黒木がため息をつく。

 

「お前と似ているな、陣」

 

「おい黒リン、それどういう意味だよ」

 

二人のやり取りに、八馬人は思わず少し笑った。

 

通信が終わる。

 

部屋に静けさが戻った。

 

八馬人はソファーに腰を下ろし、今日一日を思い返した。

 

新宿駅での死。

女神との出会い。

見知らぬ東京。

延空木。

そして、画面越しの陣マサトと黒木タケシ。

 

「情報量、多すぎだろ……」

 

彼はスマートウォッチを手に取り、左腕に装着した。

 

画面が淡く光る。

 

SYSTEM READY

WELCOME

YAMATO KINAMI

 

「これが、俺の第二の人生……か」

 

疲れが一気に押し寄せる。

 

「考えるのは、明日だ」

 

そう呟いた八馬人は、ソファーに体を預けた。

 

やがて、静かに眠りへ落ちていく。

 

彼はまだ知らない。

 

この世界の平和の裏側で、すでに新たな火種が動き始めていることを。

 

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