女たちは言う。イケメン、美男子、美青年と。しかし、俺に相応しい呼び名があるならそれは……   作:でぃくし

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ありちゃんと家族

「あたしのお母さん、いっつもおっぱい丸出しだったっす!」

 

「へ、へえ……ワ、ワイルドだね……」

「お父さんがいつも揉んでたっす!」

「そ、そうなんだ」

 

「そんでどんどん大きくなっちゃったらしいっす!」

 

その美貌からかけ離れた話題にあたけはどう反応していいか分からなかった。

 

あたけは目の前の天真爛漫な美女から視線を落とし、そのはち切れんばかりのエネルギーを閉じ込めたような巨大な胸の膨らみをじっと見つめる。

 

(ありちゃん、声がデカいな……それにしてもなんの話をしているんだ?)

 

先ほどから二人のために黙々と肉を焼き続けていたたかしも会話の内容がまったく理解できずにいた。

 

「だから、あたけ先輩もどんどん揉まれて大きくなるといいっす!」

「あ、ありがとう……」

「そんであたしもいつかは揉まれて大きくなりたいっす!」

 

「え、そ、それ以上に!?」

「お母さんのおっぱい、今でもすごいっす!あたけ先輩はどうっすか?」

 

あたけは困惑する。

 

「俺は……母さんは死んじゃってていないよ……」

 

「……」

「うっす!ごめんなさいっす!」

 

肉をひっくり返すたかしの横であたけは力なく首を振る。

 

「いや、いいんだ……俺はバカだし変態だから……」

「うっす!あたけ先輩があたしのおっぱいとかお尻をいっつも見てるのバレバレっす!」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

たかしは肉と格闘する手を止めると、あっけらかんとした様子で笑うありちゃんを前に縮み上がっていたあたけに声を掛ける。

 

「お二人さん、どんな話をしてるのかよく分からないけど肉が焼けたぞ」

「うっす!ににに肉肉にくにくにく肉……♪」

 

ありちゃんは風船のような胸をどたんぶるんと弾ませながらご機嫌な様子でひょいひょいと肉を口に詰め込んでいく。

 

「ありちゃん、おいしいかい?」

「うっす!せっかくのお肉、いっぱい食べるっす!先輩のおごりっすよ!?」

「ああ、もちろんだ」

 

たかしはにっこりと微笑むとありちゃんに質問する。

 

「ありちゃんはお姉さんやお兄さんはいるのかな?」

「お姉ちゃんが二人いるっす!妹も一人いるっす!」

 

「ええっ!お姉さんが二人も!?そして妹さんも一人!!」

 

何がそんなに珍しいのか、驚きの声を上げるあたけ。ありちゃんの取り皿に肉を置きつつ、たかしが口を開く。

 

「なるほど、やっぱりありちゃんみたいに強かったりするのかな?」

「……みんなあたしよりもひょろひょろで弱かったっす!マミーもパピーもあたしよりも弱いっす!」

 

ありちゃんは頬一杯に詰め込んだ肉をごくんと喉を鳴らして一気に飲み込むと、一呼吸置いて続ける。

 

「二番目のお姉ちゃんは臓器不全とかいう病気で三歳の時からずっと寝たままっす!あたしがお姉ちゃんのお世話もしてたっす!お母さんはあたしのことをたくさん褒めてくれたっす!おっぱい丸出しで」

 

「……そうなのか」

 

「あたしらは人狼だから普通のお医者に診てもらっても何もわからないっす!でもガンドライドの魔女さんは人狼の体のことも研究してるって聞いたっす!だからお姉ちゃんの体を治せるかも知れないと思ってあたしはガンドライドに入ったんす!」

 

「「……」」

 

「……ありちゃんはすごいな……俺なんかとは大違いだ。きっとその頑張りは報われるよ」

 

たかしは新しい肉を丁寧に網の上に置きながら、しみじみと言う。

 

「うっす!頑張ります!先輩もあたけ先輩も優しくしてくれてめっちゃ嬉しいっす!」

 

「ありがとう、俺はリーダーとして皆が頑張れるように出来ることをやり続けるよ」

「うっす!」

 

そう言うとありちゃんは残っていた最後の一切れをあたけの前に差し出す。

 

「え?あ、ありちゃんが食べていいよ」

「うっす!あたしばっか食べて、あたけ先輩ちっとも食べてないじゃないっすか!」

 

「でも、ありちゃんはいつも頑張って……」

「はいっ!あーん」

「あ、ありがとう……」

 

ごくりと生唾を呑み込みながらあたけは差し出された肉を口に運んだ。

 

(ありちゃん……)

 

その美味しさが口の中に広がった瞬間にあたけの目から涙がこぼれ出した。

 

美味しかった。

そしてそれ以上にあたけは自分が情けなかった。

 

(君はいつも一生懸命で、強くて、それに優しくて……)

 

ありちゃんは苦しんでいた。それなのに乳だの尻だのありちゃんの表面的なことにしか見てこなかった自分の愚かしさに腹が立った。

俺は彼女の支えになりたい、少しでも彼女を助けられるようになりたい。

 

だから、そのためには俺はもっと……もっと強くなりたい。

 

「そんなおいしかったすか!あたけ先輩は涙もろくて可愛いっす!」

「ありちゃん……ごめん、俺……」

 

自分が泣いていることに気づき、慌てて涙を袖で拭うあたけ。

 

「肉でお肉でお肉でのーぷろぶれむっす!まだまだ食べるっす!」

 

そう言って頭をもみくちゃにしてくるありちゃんにされるがままになっていると、ふとたかしと目が合う。

 

「ありちゃん、あんまりあたけをいじめちゃいけないよ」

 

そう言って柔らかく微笑むたかしの表情はどこまでも優しかった。

 

(あたけとありちゃん、いい感じに仲良くなってるな。これであたけのストレスが緩和されてくれるといいんだが)

 

あたけとありちゃんのやりとりを眺めながら肉を焼くたかし。

彼は少し反省していた。

 

あたけはありちゃんのことが大好きだ。

 

だから目の前で俺とありちゃんがいちゃいちゃするような真似をしていたせいで苦しんでいたのかも知れない。

 

(けど、まあ)

 

たかしは網の上で焼き上がった肉をあたけの皿にひょいひょいと移す。

 

(こういう風に気を使いつつなら問題ないだろう)

 

「あっ!せ、先輩、あたしも食べたいっす!」

「すまん、あたけにもっと肉を食わせてパワーアップさせたいんだ(笑)」

「なんだよそれ(笑)」

 

「うっす!(怒)」

 

「ごめんな、ありちゃんのために骨付き肉を別に用意するから許してくれ(哀)」

「うっす!(喜)」

 

「ははは……(楽)」

 

そんな他愛もない話をしながら時間は過ぎていくのであった。

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