夢を見た。
あれは小学校の頃の夢だ。
俺が一番思い出したくない記憶。
自分の弱さが嫌でも分かってしまう記憶。
そういえば、体を鍛え始めたのはそのころだったな。
上級生を殴った、(とはいってもほとんど殴られていたんだが)俺は中学の推薦を失い、不良に成り下がった。
一度落ちてしまえば後はすぐだった。
「不良」という型にはめられた俺は「不良」として過ごした。
そして気づけばついた名前は悪鬼羅刹、町内でも有名な不良となっていた。
実際のところ俺から喧嘩を仕掛けたことは無く、向かってくる奴を倒していただけなんだがな。
…いや、一度だけ俺から仕掛けた喧嘩があった。
あれは中学2年の夏だったな……
「今日も暑いな……」
俺は中学からの帰り道、何度目になるかわからないぼやきをしながら歩いていた。
家まで残り半分といったところに着いたとき、
「…やめて。」
「いいじゃねぇか。俺らと遊ぼうぜ。」
「暇してんだろ~?」
中学生らしき女子が高校生ぐらいの男二人に絡まれているようだった。
なんとなく翔子に感じが似ているようだったが、遠目じゃ良くわからない。
それに、今日は夏休みだ。
俺みたいに補習を受けなきゃならないやつ以外、ここを通るやつはいない。
全く、昼間からご苦労なこった。
ま、俺には関係のない話だ。
誰か親切なやつにでも助けてもらうんだな。
そう思いながら曲がろうとした時、
「私は雄二に会いに行くの。だから、そこをどいて。」
雄二?はて、聞いたことのある名前だな。
ああ、俺と同じ名前か。
なるほど、あの翔子に似た少女は俺と同じ名前の雄二というやつに会いに行くために、この神無月中学への道を……
って、そんなやつ翔子以外ありえねえじゃねぇか!?
ってことはあれは翔子か!
たく、なんでこんなところにいるんだ。
仕方ねえ、ちょっといってやるか。
俺は翔子の方へ歩き出した。
その時男の一人が翔子の腕をつかんだ。
「いいから来いよ!」
「いやっ、痛い、離して!」
その時、俺は何かが切れる音を聞いた。
気づけば逃げ出した男たちの背中を見ていた。
「…雄二、ありが」
「なんでこんなところにいるんだ!!」
俺は翔子の言葉を遮り続ける。
「俺が来ていなかったらどうなってたかわからないんだぞ!ここは人通りが少ないから通るなと前に言っただろうが!」
自分でもなぜこんなに腹が立っているのかがわからない。
「だって、雄二が帰り道にここを通るのを知ってたから。」
「だってもくそもねえ!」
本当に、なぜこんなにも腹が立つのか。
翔子にもう一言二言いってやろうと口を開いた時、
「雄二。」
「…なんだよ。」
「助けてくれて、ありがとう。」
そういって翔子は花が開くように微笑んだ。
そのあと結局何も言う気がなくなったんだっけか。
今思えば、あれは翔子を心配してたから腹が立ったんだろうな。
「雄二。」
翔子が無事で安心して、その反動だったのだろう。
「雄二。」
俺はまだ夢を見ているようだ。いるはずのない翔子の声が聞こえる。
「起きて、雄二。」
うるさいな、夢で起きろと促されるなんて、何て夢だ。
俺はまだ眠いんだ…
「雄二っ!(コキッ)」
「ぐわあぁああ!?」
なんだ!?今手首が一瞬外されて戻されたような感覚がっ!?
慌てて起き上がると、やはりというかなんというか翔子がそこにいた。
「翔子!?なんで俺の部屋にいるんだ!?」
「お義母さんにいれてもらった。」
おかあさんの発音に若干の違和感を感じたが、気のせいだろう。
「またか、お袋め……。で、朝っぱらから何のようだ?」
「今日はお休みだから、どこか、行こう?」
「嫌だ。」
そう言い、布団をかぶる。
「そう…、なら、私も雄二と一緒に寝る。(もぞもぞ)」
「だぁあっ!わかった!行くから、布団に入ってくるな!下で待ってろ!!」
「…分かった。待ってるね、雄二。」
パタンッ
ふぅ、行ったか。
あいつには昔からどうも弱いな。
さて、出かける約束をしてしまった(半ば無理やりに)わけだし、諦めて着替えるか。
どこへ行くんだか……
次回からお出かけ編です。