回りくどくてすみません。
部屋を出て居間へ行く。
朝飯でも作るか…、ん?また味噌汁のような匂いが……。
!まさか、またお袋か!?
キッチンに駆け込むと、そこにはたわしを刻んでいるお袋……ではなく、味噌汁をよそっている翔子がいた。
「雄二?慌ててどうしたの?」
「いや、何でもない。スポンジの悪夢がな。」
「スポンジ?」
「ああいや、こっちの話だ。朝飯作ってくれたのか、悪いな。」
「…妻のつとめだから。」
「まだ妻じゃねぇからな!?」
「まだってことはそのうち?」
「……」
いかん、失言だった。
まだ朝で頭がしっかり働いてないみたいだな。
「と、とにかく!早く飯食おうぜ。出かけるんだろ?」
「…うん。」
なんとか誤魔化せたか。次からは気を付けねば。
「「いただきます」」
翔子が作った味噌汁を啜る。
ん、これはなかなか。
「うまいな。前に明久の家で食ったときも思ったが、料理上手いんだな。」
「嬉しい。ありがとう、雄二。」
そう言い微笑む翔子。
その笑顔がさっき考えていた昔の笑顔と重なって……
「雄二?顔が赤いけど、どうかした?」
「っ!なんでもねーよ。」
翔子から顔を反らす。
「ふふ、変な雄二。」
くそっ、昨日明久と話した後から妙に翔子のことを意識しちまう。
しっかりしろ!俺らしくもねぇ!
「で、どこに行くんだ?つーか、お袋はどこに行ったんだ?」
翔子を家に入れた筈のお袋は既に家を出ていた。
「お義母さんは、お夕飯の買い物に行くって。」
「この時間からか!?どこまで買いに行くつもりなんだよ!?」
ちなみに近所のスーパーは徒歩10分程の所にある。ほんとにどこまで行く気なんだか。
「それでね、雄二。」
「ん?」
「お義母さんが、雄二と二人で行きなさいって、これくれたの。」
そういって翔子が出したのは、隣町に新しくできた水無月グランドパークのプレオープンチケットだった。
「へえ、よくお袋がこんなもん持ってたな。」
「うん、聞いたらお豆腐を買った帰りに文月学園の生徒にもらったんだって。」
「ほう、文月学園の生徒、ねえ。」
俺の頭に三バカがよぎった。
まさか、なあ……。
流石に考え過ぎか。
「そうか、なら早いとこ行こうぜ。時間が少なくなっちまうからな。」
「うん。着替えてくるからちょっとだけ待ってて。」
「おう。」
前回は明久達のせいでろくに回れなかったからな。
今回は楽しませてもらうとしよう。
俺も支度するか。
翔子の家の前で待っていると、10分位して翔子が何やら大きな荷物を持って出てきた。
「おまたせ。」
「おう。じゃ、行くか。……それ、弁当か?」
「うん。また作ってみた。」
「そうか、悪いな。持ってやるから貸せ。」
そう言って翔子の手からバックを受け取る。
「…ありがとう。やっぱり雄二は優しい。」
「別に、これくらい普通だ。」
それから少し歩く。
遊園地までは駅からバスが出ているらしい。
時間は一時間ちょっとってとこだろう。
その事を伝えようと翔子の方を見ると、俺の視線をどう受け取ったのか、口を開いた。
「…ねえ、雄二。私の服、変じゃない?」
なるほど、服を見ていると思ったのか。
今日の翔子は、薄い青色のブラウスに白のカーディガンを羽織って、紺色のスカートをはいている。
なぜこんな説明口調なんだ?俺は。
「変じゃないし、似合ってると思うぞ。」
思った通りの感想を伝える。
「そう。良かった。」
そう言いつつ頬を染める翔子。
う、いかん。また顔が熱くなるのを感じる。
平常心、平常心……
気づいたらバス停まで着いていたようだ。
「このバスだな。」
車内は割りと空いていた。
混んでるバスは御免だからな。
「…あっ」
と、バスに乗る時翔子がステップに躓き転びかける。
「っと、大丈夫か?」
間一髪、俺は翔子の手を掴む。
こいつは昔から変なところで抜けてるところがあるからな。
まあ、間に合って良かった。
せっかくの遊園地だってのに、怪我でもしたら楽しめないからな。
「ありがとう。雄二。」
「おう、気を付けろよ。」
そう言いつつ手を離……手をはな……手を……
「翔子、手を離せ。」
「いや。」
「離せ。」
「いや。……雄二は私と手を繋ぐのは嫌?」
以前の俺だったら即答で嫌と言っていただろう。
だが、翔子の少し悲しげな顔を見ると…
「…好きにしろ。」
「…うん。」
それからバスを降りるまで、ずっと手を繋いでいた。
次回から、遊園地編です。
感想等お待ちしております。