連載って難しいですね(時間的な意味)。
「おっ、もうこんな時間か。」
ベンチに座り少し休憩していた俺は時計を見て呟く。
昼飯を終え、適当にアトラクションを回っていると、気づけば時間が経っていた。
今日はプレオープンなので通常より早めに閉園するらしい。
帰りに観覧車に乗る時間も考えると、残り時間はそこまで多くないな。
「雄二は後は何に乗りたいの?」
と、横に座っている翔子。
「もう大半回っちまったからなぁ……。俺は特にないな。翔子、お前は観覧車以外は無いのか?」
「…私も、特に……あ、雄二。」
「ん?」
「あれ、行かない?」
翔子の視線の先には水無月ホラーハウスと書かれたお化け屋敷があった。
如月ハイランドの時といい、三年との肝試しの時といい、怖がる様子もなかったし案外こいつはお化け屋敷が好きなのかもしれないな。
俺も幼馴染みが釘バットを持って追いかけて来ない(重要)お化け屋敷は好きだ。
「ん。いいぞ。」
俺はそう言って立ち上がり、翔子に手を差し出す。
すると、翔子は少し驚いたような顔をした。
はて、今の俺の行動に何かおかしいことでもあっただろうか?
「…!雄二、嬉しい。」
翔子が俺の手に指を絡ませる。
俺は別に立ち上がって、翔子に手を差し出し……
はっ!なぜ俺は手を差し出しているんだ!?
「しょ、翔子!今のはだな、その、妹にしてる癖で」
「雄二に妹なんて、いない。」
「じゃなくて、演劇部の練習で」
「雄二は帰宅部。」
「じゃなくて……」
くそっ、こういう時に限って明久並みの言い訳しか出てこねえ!
「別に、照れなくてもいい。」
「あぁ!と、とにかく、違うからな。お前が思ってるようなことでは断じてないからな!」
「…そういうことにしといてあげる。」
そう言って悪戯っぽく微笑む翔子。
ああもう、ほんと、今日の俺はどうかしてるぜ……
手を握っているのが当たり前になってたから、無意識に差し出したなんて、言えるわけがねえ……
それからお化け屋敷まで歩くと、こちらに気づいたらしく、係員が近よってきた。
「ホラーハウスへようこそ!お荷物はお預かりいたしますか?」
「いや、俺はいい。翔子、預けるか?」
「私も、大丈夫。」
「かしこまりました。足元暗くなっておりますので、お気をつけ下さい。彼氏さんはそのまましっかり手を握っていてあげて下さいね!」
ん?ちょっと待て。
「彼氏だぁ?違う。俺は」
「夫。」
「そう、夫だ。って違う!翔子、俺の言葉に被せるな!」
「これは失礼致しました。それではご夫妻、いってらっしゃーい!」
「話を聞けえぇえ!!」
しかし俺の叫びは届かず、半ば押し込まれる形で中に入る。
ちっ、これで面白く無かったら文句の一つも言ってやらあ。
えーと、コンセプトは、『THEお化け屋敷』らしい。
ようするにこてこてのお化け屋敷だ。
が、なかなか凝った作りじゃねえか。
学校の肝試しのときでもかなりのものだと思ったが、やはり遊園地、レベルが違う。
人が脅かすのではなく、機械仕掛けのお化け屋敷だが、精巧に作られている。
あの人魂なんてどうやって飛ばしてるのかわからないくらいだし、お化けも機械とは思えない滑らかな動きをしている。
怖くはないが、十分楽しめそうだ。
翔子も楽しんでいるようだだし、これなら係員の失言も許してやるか。
おっ、そういえば、
「翔子、お前が怖がってる姿を見たこと無いんだが、こういうの怖く無いのか?」
以前から気になっていた質問をしてみる。
「うん、平気。こういうの、結構好き。」
そう言って微笑む翔子。
「そうか。それで、一つ聞いてみたかったんだが、お前の怖いものって、あるのか?」
こいつは虫も別に平気だし、グロテスク(※俺への折檻)も大丈夫だからな。
「…ものじゃないけど、ある。」
「ほう、それってなんだ?」
「……雄二が、私の前からいなくなっちゃうこと。」
翔子の手を握る力が少し強まる。
「はあ?なんでまたそんなことを。」
「…たまに、不安になるの。前は、雄二といつまでも一緒にいれると思ってた。でも、この前のことがあってから、すごく不安になって、」
一度言葉を切る翔子。
この前っつーと、俺が小山のことが好きだと翔子が勘違いしてたあれか。
こいつはまだそんなこと気にしてやがったのか。
「それで、今日の朝雄二がいなくなっちゃう夢を見て、すごく怖くなって、もう私」
「翔子!!」
俺は翔子の肩を抱く。
翔子の目には涙が溢れていた。
「落ち着け、俺はここにいる。だからほら、泣くのはやめろ。」
「…っ、うん。でも、でも、怖くて…」
今日のこいつはいつにもまして行動的だと思ったが、こういう訳だったのか。
「ゆう、じ。お願いが、ある、の。」
「おう、なんだ?」
「泣き止む、までで、いいから、そのまま、抱きしめ、ててほしい」
さっき咄嗟に引き寄せた時、丁度抱きしめるような形になっていたらしい。
「……おう。」
少しして、翔子は泣き止んだようだった。
「…ごめんなさい。もう、大丈夫。……あっ、雄二、服が…」
俺の着ていた服は、翔子の涙で濡れていた。
「ん?ああ、こんなの気にするな。」
少し貼りつくが、不快感は無い。
「それじゃあ、そろそろ行くか。」
そう言い、俺は翔子に手を差し出す。
しっかりと、俺の意思で。
「…ありがとう、雄二。」
翔子が俺の手を握る。
その握り方は、先ほどまでとは違う、指を絡ませる握り方になっていた。
「お疲れ様でした!またのご利用をお待ちしております!」
お化け屋敷から出ると、閉園まで1時間弱の時間になっていた。
「そろそろ良い時間だし、観覧車に乗って帰るか。」
「うん。…私のせいで遅くなっちゃって、ごめんなさい。」
「だから気にするなっての。もう乗るものも無かったから、逆に丁度良いくらいだ。」
「…雄二は、やっぱり優しい。ありがとう。」
こうなんども礼を言われるとむず痒いような気分になるな。
「別に礼を言われるようなことはねえよ。ほら、行くぞ。」
翔子の手を引き観覧車まで歩く。
「水無月大観覧車へようこそ!お二人様ですね。それでは、お楽しみ下さいませ!」
係員が扉をあけ、俺たちはは観覧車に乗り込み、向かい合うように座った。
一周の時間は15分位だそうだ。
高さ4位とはいえ、普通の観覧車と比べると長いな。
観覧車が少しずつ上昇するにつれ、町並みが小さくなってくる。
日が暮れかけ、夕日に染まりつつある景色は、ガラにもなく綺麗だなと思った。
ふと翔子を見ると、目を輝かせながら窓の外を見ていた。
すると、俺の視線に気づいたのか、こちらを向く。
「…雄二、今日は付き合ってくれてありがとう。」
「おう。俺も楽しかったし、な。」
丁度、観覧車は最高点に着こうとしていた。
「それなら、良かった。……そっち、行ってもいい?」
「ん?ああ、別にいいぞ。」
翔子が俺の横に来ようと立ち上がったその時、
グラッ
「きゃっ!」
「うおっ!!」
最高点から下降を始めた観覧車が大きく揺れ、翔子がバランスを崩す。
俺は反射的に翔子に手を伸ばしたが、間に合わず、俺のほうに倒れてくる翔子。
そして、次の瞬間、
チュッ
俺の唇に何か柔らかいものが触れ、翔子の顔が目の前にあった。
はて、なぜこんなに翔子の顔が近いのだろうか。
それに、この唇に感じる柔らかいものはなんだ?
俺は軽くショートした頭で考える。
落ち着け坂本雄二、冷静になるんだ。
俺の顔とほとんど同じ高さに翔子の顔があり、唇に何か柔らかいものが触れている。
ここから導き出される答えは一つ。
俺の唇に触れているのは翔子の唇だと言うことだ。
なんだ、唇だったのか、どうりで柔らかいと……
?☆●!▽◆→!?∩√⊥
俺は、今、翔子と、キスしてるのか……?
俺が自分の状況を理解した時、翔子の顔が遠ざかった。
「!…雄二、今の…キス…」
少し上気した顔で翔子が言う。
「あ、ああ、いや、今のはあれだ、事故だ。」
そう言う俺の顔も赤いことだろう。
「うん……、あのね私、キス、初めてで…」
「そ、そうか。」
なんと返せば良いのかわからない。
「…だから、事故じゃなくて、ちゃんと、」
そう言い俺の首に手を回す翔子。
「おい、なんのつもむぐっ」
俺が何か言う前に再び口が塞がれる。
「ん、んちゅ、んん」
「……!……!」
さっきは初め何が起こったか分からなかったが、はっきりとわかる今、脳が麻痺するようなな甘い感覚が俺を襲う。
このままだと色々ヤバイ……!
「んーっ、ぷはっ。」
俺の中で色々なもんが吹っ飛びそうになった直前、翔子が顔を離す。
あ、あぶねぇ……
「っ!しょ、翔子!お前いったい何を」
と、さっきよりも更に赤くなっている翔子に言う。
「……初めてのキスは、ちゃんと私の意思でしたかったから…。ごめんなさい。……嫌だった?」
文句の一つや二つ言ってやろうと思っていたが、その聞き方はずるいだろ……
「……別に嫌ではねえよ。ただ、いきなりで驚いただけだ。」
まあ実際、嫌ではなかったからな。
「…嫌じゃないってことは、いきなりじゃなければまたしてくれるってこと?」
「っっ!?おま、別に俺は嫌じゃないと言っただけでそうとは言ってねえからな!?」
「…次は、雄二からしてくれると、嬉しい。」
俺の腕を取りながらそんなことを宣う翔子。
「だから俺は、違うと言ってるだろうが!?」
ああ、ダメだ、翔子のやつトリップしてやがる……
どうしてこうなった……
「お疲れ様でした!またのご利用をお待ちしております!」
長い15分が終わり、俺達は観覧車を降りる。
涼しい風が火照った頬を冷やしてくれるのがありがたい。
「あー、それじゃあ、帰るとするか。」
「…うん。雄二?」
「な、なんだ翔子。」
「どうして私から顔を背けるの?」
翔子が俺の顔を覗き込む。
さっきあんなことがあって恥ずかしくない方がどうかしてるだろ!?
「っ!何でもねえよ!ほら、バスも来たし行くぞ!」
半ば無理やり会話を終わらせ歩き出す。
「……雄二は、照れ屋さん。」
それからは会話らしい会話も無く、家までバスに揺られていた。
元々体力が無いこいつのことだ。一日遊んで疲れたのだろう。
俺も今の状態ではまともに話せなかったので良かった。
バスを降り、翔子の家まで歩く。
そのころには俺もいつもの調子に戻っていた。
「ここまでで良いだろ。もう見える位置だしな。」
翔子と俺の家の分かれ道で翔子に言う。
「うん。送ってくれて、ありがとう。」
「別に通り道だ、気にするな。じゃあな。」
そう言い俺は歩き出す。
疲れをとるはずがあまりとれてないな……
明日こそはゆっくり休もu
「雄二っ!」
いつぞやの如月ハイランドの帰り道の時のような翔子の大きな声に振り返る。
「私、もう怖くない。ありがとう、雄二。お休みなさい。」
そう言って家に入る翔子。
「……ああ、お休み。」
俺は誰に言うとでもなくそう言い、帰路を歩いた。
定期更新できるよう頑張ります。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。