編入先はトレセン学園   作:名無しの権左衛門

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2、トレセン学園最初の授業

 

 

 次の日。すぐにいろいろ準備して7時までに正門前へ集合する。

 

「来たね。忘れず学生証を持ってきているのは素晴らしい。これからもちゃんと所持するんだよ。さあ、お待ちかねだ」

 

 そう、これから二回目の入学式。

1回やった後に急遽建て替えみたいなことになった。

この入学式はほかのウマ娘もいる。それに初めてトレセン学園の制服に、男子服が特別用意されたという宣伝もあるらしい。

シンボリルドルフ会長のありがたい訓示を授かり、自分らの教室へ赴く。

途中ウマ娘に話しかけられるが、それも自己紹介と今後についてちょっと話すぐらいでとどめた。

 そう、トレセン学園は僕らにとってただの学び舎だが、彼女らにとって過酷な場所になる。

走るだけがプライドな子は、負けが込むと地方へ行くらしい。それでも箔がつくという名目で、最後までいる子も多い。

そこらはネットでよくみるね。

 

 教室についたら、この学園の教師からの挨拶や教科書の配布がある。

授業の進み方はある程度早い方ではあるが、わからないことがあったら放課後聞きに来たり、特別放課もあるようだ。ここらは普通の学校じゃありえない待遇で、非常に好感が持てるね。

 

 授業はすぐに行わず、学園内の案内やどこに何があるのかそれらの案内をしてくれる。

このトレセン学園はうちの学校よりも広く、ウマ娘専用の学園としても現存する学校施設としても日本最大級だ。

敷地面積は相当で、隠れ野良トラックが山奥にあったりするらしいし相当だ。

ちゃんとしたトラックは、ウッドチップやオールウェザー・ダートやターフがある。

外と中でそれぞれ完備している。

 また筋力トレーニングを行えるジムもあり、各種チームの要望に応える施設もある。

プールはウマ娘ように非常に長くレーンが多い。

 

「そういえば、早朝から走っている子たちは勉強しなくていいんですか?」

「ああ、レースが控えている子たちやOP級ウマ娘たちは、授業がある程度免除されているんだ」

 

 それもそうか、と納得する。

勉学とレースの両立は現実的ではないしなぁ。

きっとレースから引退したら、ちゃんと勉学に取り組むんだろうな。

 しばらくしたら散策時間を3時間くれた。

実際にウマ娘専用に作られているので、テーマパークなんて目じゃないほど広い。

 

 僕は新田君やほかの男子と一緒に、ウマ娘専門学校といわれるトレセン学園を巡る。僕以外の子は、レースの熱狂を知っているようでテレビでしかしらない彼女らを見て興奮している。

 

「西尾はなんか楽しくなさそうだな?」

「そんなことないよ」

「まさか、推しがいないのか?」

「あーうん、まあ、そんな感じ?」

 

 僕に推しの云々かんぬんを言ってきたのは、浜内 誠。

おしかつというものをやっているらしい。僕にはわからない世界だけど、休日にそのおしかつというものを一緒にするのもいいかも、

巡るのはいろんなコースだけど、見るだけじゃなく実際に走ってみた。

 

「運動場は使われているから仕方ないけど、レース場は空いているんだね」

「特別に空けてもらってるらしいぞ?」

「まじかよ」

 

 ウマ娘じゃないから前のめりに走れない。

この外周だけで、2400mあるから簡単に日本ダービーができると誰かが言った。

芝が足に絡んでくるみたいで、僕らの運動靴じゃ走り切れないな。

 

「人にとっちゃ、2400mはいい運動になるよな」

「ああ。ウマ娘が規格外の走力を持っているのをわからされるぜ」

 

 みんなが疲労困憊の中、僕だけここを抜け出して山奥にあるらしい自由練習場へ向かう。

行ってみると廃屋が一棟。簡単なトラックが一つ。ここに芝なんて高尚なものはなく、普通の校庭のように砂ばかりだ。

 校内もそうだけど、電線がないっていうのは最高にいいと思う。

空が広くて、仰ぎみることができる。

 

 またここに来ようかな。景色がいいからさ。

 

 今日の授業は午前中で終わったので、午後から部活やウマ娘たちの活動をみていいんだとさ。

ただ男子らはウマ娘は女の子なので、いろいろわきまえて行動するよう注意された。

まあ、当然だね。

 みんな夢を見ているみたいだとウマ娘の活動風景を、目を輝かせてみている。

うーん、初日からそう考えるのは仕方のないことだけど、これからトレセン学園の生徒になるんだ。

こんな光景はこれからも見られるんだから、今のうちに行動しないといけない事があるだろうに。

偉そうにいうのには訳があるんだ。

 

 そう、『巨万の富』を成すための道具を購入しないといけない。

それの為に成績を優秀な状態にするのは当然だが、それだけじゃだめだ。資金源を見つけないと。

 

 人ではありえない非現実的なパフォーマンスに脳を焼かれるみんなを後目に、チームを率いる者たちが集う場所へむかう。

学び舎から少し離れた場所にある建物。ここらがすべてチームのための建造物。

簡単なロッカーやチームのトレーナーが事務作業をする場所に当たる。

ここでリギル以外のチームと接触する。

 リギルは完全な管理社会だ。そこにド素人が介入するなんて無理だ。

あとは中堅を狙って、雑用でお駄賃を貰えれば万々歳だと思っている。

または有能なウマ娘をスカウトして、チームに引き渡しチームの勝利数に貢献できたらなと捕らぬ狸のうんたらをする。

 

 どう考えても人身売買だな!

だけど僕の力を眠らせておくには時間がもったいないんだ。申し訳ないけど、いけにえになっていただく。

 

 いろんな道具の入ったリュックを背負って、ウマ娘のゴールドシップに襲撃されないように向かおう。

なんせ、向かっているのはスピカだからな。ここでくじけた場合、カノープスへつま先を向けようか。

と思っている矢先、聞いたことがある声が聞こえると道端に人が飛ばされてくる。

僕はその人のベクトルを受け流しつつ、地面にやさしく置く。

 その人はがばっと上半身を持ち上げると、そのウマ娘と言い合いをするんだ。

 

「おいゴルシ危ねえだろ!?」

「ふふふ、あたしのコークスクリューサイドクリッパーは光るぜ!」

「大体なんだ、こうしたほうが出会いがいいってのは!」

「おうトレーナー。その出会いってのはそこの少年の事だぜ」

「な!?」

 

 僕はこの言い合いの舞台の背景になりつつ、リュックから医療道具を出してトレーナーを治療する。

『巨万の富』を築ける『医療』は、日夜しのぎを削る医者たちの経験知と派閥争いで進化と漸進を続けている。

本来なら死んでしまう命をつなげるその小手先は、その医師の人生であり唯一無二の存在にもなる。

そういうわけで、僕は道具があれば死者以外治せるんだ。うーん、医者に喧嘩売ってるな。

 

「初めまして。アルバイトしたいので、応募したいです」

「なるほど、そういうことか」

 

 簡易な治療を施した後、チームハウスに入って面会を行った。

ゴールドシップ「ゴルシでいいぜぇ」、ゴルシさんは僕の隣に座ってからかいつつ僕が有利になるように話を進めてくれる。

 

「例外があるっていうことや資金が必要なのも分かった。そして俺のチームも、俺一人じゃ首が回らなくなってきているのも確かだ」

「そんじゃ、採用OKってことでいっかー?」

「…………本来ならサブトレーナーを入れなきゃならねぇが……仕方ないな。アルバイトを認めよう」

「! ありがとうございます!」

「よかったな、遠矢!」

 

 自己紹介は面接の最初に伝えてたんだけど、距離の縮め方すごいな。

この後チームを教えてもらった。

アニメの通りだけど、トウカイテイオーがいない。

紹介が終わって誰でもできる事務作業や雑務を効率よく終わらせて、トレーナーがやっている今季の有力ウマ娘の

情報を更新した。

 その休憩中ゴルシさんがいたので聞いてみることに。

 

「トウカイテイオーはいないんですか?」

「あいつはまだ、入学したばっかりだぞ?」

「選抜レースは今月末ですよね」

「ああ」

「ちょっくら引き抜きましょうか?」

「うーん、結局こっち来んだろ」

「ですが、理由が弱すぎません?」

「お前がどこまで見てるかわかんねぇけど、まあ仕方ないところもあるかもな?」

 

 やっぱりこういうのは、ゴルシさんに限るね。

じゃあ、トウカイテイオーとは同期であるんだ。

ゲート練習や成績上位であれば、すぐに表舞台にでてくるだろう。

僕は後日、トウカイテイオーに話しかけることにした。

この時天啓のように、僕の『巨万の富』が選択肢をくれる。

 その名は、『超粒子学』。

観測できれば干渉できるということを大前提にした世迷言のような理論。

こいつは現在の科学ではできないが、上位存在はそんなの余裕らしい。

別の次元・位相であると告げている存在はまあ無視していいんじゃないかな。介入するのも面倒だし。

 

 

―――夜

 

 

「なあ、西尾。それ何してんだ?」

「図画工作」

 

 さすが東大レベルの資本を持つトレセン学園だぜ!

寮の外出制限ギリギリまで、工作技術室に詰め込んでいるのには理由があるんだ。

もちろん新田君に来てもらう理由もある。

今僕が作っているのは、選手専用のスマートウォッチ。

リンゴの会社が作ったあれと同じやつで、スマホのアプリと連動させるんだ。

そうするとウマ娘の身体能力を数値化でき、まとめて管理できるからな!

 そして新田君は隠れ蓑。最強の頭脳を持っているから、実験と称してここでこもっていられるんだよ。

くくく、『巨万の富』の力がなければ、チームスピカ全員分のスマートウォッチを作れなかっただろう。

また部屋に帰ったらアプリ開発を行う。こちらも一晩で終わらせられた。

普通は不可能。だけど、不可能はないと図画工作で思い知らされてしまったから、眠気をおしてごり押ししたんだ。

 

 まあ、次の日の授業は地獄だったけど、公文で習ったことだ!をやっていたので事なきを得た。

 

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