「お隣失礼しますね」
「あ、どうぞ」
「じゃ、俺はこっちだな」
「ふぇっ!?」
僕と新田君は、あらかじめ話しておいたそういう不幸な子を挟み撃ちにする話をしていた。
新田君から自らボッチになりに行く子だと教えていたからね。
「そういえば、見ない顔だね?」
いや、前回見たぞ。言ってなかっただけで、視界の端に映ってた。
「片目を隠している珍しい髪型だね。すごくかわいい。君の名前を教えてよ」
「ら、ライスシャワーです……」
「へぇ、結婚式に行う祝福の儀式じゃないか。いい名前だね」
「い、いえ」
さてここで朝一考えた未成年に対する詐欺まがいの口撃を行う。
考える暇もなく、本人の自尊心と承認欲求を刺激しつつ連続で口をはさむことで考える隙を無くさせ、頷くだけのロボットにさせる。
拒否の素振りを見せないように、巧妙に話に混ぜて承認させていくんだ。
僕だけじゃ無理だけど、超頭がいい新田君が頭を回転させて言い放つそれは僕よりも精密爆撃を行った。
つよい。
「新しい自分って見つけたいもんだよね、僕らがその手伝いをするよ」
「雨が晴れに、赤信号が青信号になるのさ。ライスが手伝ってくれたらすべてがうまくいくんだ」
「一流なライスなら、すべてをはねのけられるよね」
「すべてを変える夢を現実にするんだ。さあ、手を取ってくれ。それで完成する」
「あ、これにも名前書いてね、先生に提出する大事なやつなんだ」
一定の感覚をつかめたら、新田君がライスの肩を抱く。
僕は顔を近づけるんだ。
「はわわわわ」
新田君は自分磨きに余念がないから十分通用する。
でも僕は『巨万の富』のおかげで、ある程度やっているだけで素質はそこまででもない。
そのおかげもあって、ライスはおめめぐるぐる状態で混乱しつつ契約を結んだ。
「ここにあるように、先生に何か言ったら契約不履行で警察沙汰だから」
「夢、なくなるね?」
「ら、ライス……とんでもないことしちゃった……」
「大丈夫大丈夫。守ればいいんだよ」
「守れば何もないんだからさ」
この後僕と新田君は、ライスを真ん中にして嬲ることにした。
「じゃ、一緒に登校しようか」
「せいぜい裏切らないよう、一緒に行こう」
新田君に僕の荷物も持ってもらって、僕はソウル干渉器を背負った状態で歩き出す。
この干渉器は今しがたソウル干渉器として命名したんだけど、その名の通り近くにいるウマ娘に子機をくっつけそこから出るソウル波を受信して解析し、ある程度の介入を行えるんだ。
軽いものだと、宝くじで特賞とか。
ただ現状だと変えただけで、その反動や揺れ幅が大きく最大幸福から最大不幸を招くことになるんだ。
ただそれを避けるために、もう一つの子機をほかの存在につけてその最大不幸を受け流すか、分散することで反動をすくなくできる。
そのため、今日の僕と新田君は、スピカのトレーナーからもらったお金で汚れてもいい服装に変えている。
「ふぇっ、また赤信号」
3回連続でなったので、子機からくるその情報をAIにディープラーニングさせて干渉させる。
この後青信号ばかりになったが、反動としてどっかから飛んでくるボールや犬の糞・鳥の爆撃・子供の飛び出し・人為ロケットプリウス等
錚々たるメンツが僕らを襲ったんだ。
ウマソウル干渉への反動でかすぎでは?
昼休み、ライスがいる教室へ突撃する。
「失礼します! ライス!」
「あ、ひゃい!」
「君の赤信号3回分の反動をリストアップした読んでくれ」
「はい!」
新田君は腕を組んでライスの目の前に陣取り、僕は彼女の近くで見守る。
「何か弁明は?」
「あ、あの……」
「契約不履行?」
「ライス……西尾君と新田君を4回殺しちゃった?」
「そうだな。で? 責任どうとってくれんの?」
「分散しないと4回死んでいるんだ」
「で、どう責任を取るんだ? 俺達はライスが契約を結んだせいで、死ぬんだ。これはわかるよな? な!?」
「はい!」
さて、やくざ論法やっていこう。
それはこっちが提示した交渉を、相手が受諾することで履行するんだ。
普通ならこっちの不手際なんだけど、相手のウマソウルのせいでというところを強調する。
そうすることで、直接相手のせいにできる。幸運を呼ぶ実験を不幸をはねのける契約にすることで、相手の脳内を凝り固めることができる。
安全なところでぬくぬくされている場合、何食わぬ顔ができるんだけど登校中一緒にそれを味わっている。
実感させることで、当事者感覚を植え付けられる。
じゃあ、仕上げいこうか。
「人生には人生で支払わないとな」
「契約不履行だね? 嫌ならどうすんだよ」
「ライスは……ライスは……」
「一応、ここにほかのやつが提示してきて、俺達が妥協した奴だ。ここから選んでもいい。
だが、わかるよな?」
「……!」コクコク
ここで俺達は妥協を提示する。それが譲歩ってもんよ。
絶望に希望を見出すのだ。じゃあ、人生詰もうか。
「ら、ライスシャワーです……よろしくお願いします……」
「どうしてこうなった……」
連れてきたのはスピカのチームハウス。
僕と新田君、途中で合流したゴルシさんが伊達黒サングラスを着用して、ライスシャワーを連れてきたのだ。
「親分、示談金なしでことを解決したいとかぬかしてやしたぜ」
「見ケ〆料として、自分の体で解決したいともいいやがりました」
「やっぱシノギは売春斡旋よな!」
「これが小学校卒業したばかりの子供の発言かよ……」
トレーナーは手で顔を覆った。でも素質は長距離であることを伝えると、目の色が変わる。
ステイヤーズミリオンも夢じゃねえなんていうと、ライスシャワーはお前に預けるとか言われた。
トレーニングの管理はやるから、それ以外を丸投げされた。
さすがに強制がすぎるので、名前貸しの状態にしてトレーニングは行うが他の意思等のすり合わせは僕がやるようにといわれた。
「これ、実質結婚みたいなもんだろ」
「結婚!? いいなあ、俺もウマ娘と結婚してぇな」
「ら、ライスは西尾君より新田君のほうがいいな」
「やだよ、年上なんて」
「胸見ながら言うセリフじゃないよ」
「アタシは巨乳だぜ~?」
「ヤンデレっぽくてなんかやだな」
「こ、これから大きくなるかもしれないし……」
「保険の教科書において、胸の成長は二次性徴前に発生するのでもう無理だな」
「やっぱ、巨乳最強!」
「年上のゴルシさんやライス的には、イケメンショタは性癖にあってるの?」
「「あってる」」
「二次性徴で声もガタイも変わるんだが?」
「めんくいって言葉知ってくるか?」
「さすがの俺もドン引きだ」
ゴルシさんはともかく、ライスさんの目が座ってんな。
「ん~じゃあ、ステイヤーズミリオンと長距離G110勝したら、新田君と結婚できるって契約する?」
「まあ、それならいいか」
「ライス、頑張るね!」
ははは!! 馬鹿め! 史実ならともかく、ソウル波を傍受して干渉器で介入するんだぞ?
絶対新田君にライスの籍入れて見せるからな。
「あ、そうだ。ライスシャワー」
「はい、何でしょうかトレーナーさん」
「来年、デビューな」
「ふぇっ!?」
このソウル干渉器をもっと活用できるようにしようか。
そうすれば、ライスを活躍させられるようになるし、なによりテイオーも三冠させたいしな。
……夜
「今度は何作ってんだ?」
「ウマソウルは消耗するものだから、今度は吸ってみようと」
「それは……まあ、トレセンから落ちたウマ娘やサポート科の人にお願いしたら行けそうだな」
「ただ怖いのが、吸った場合戻らないか回復しないっていうのがなぁ」
「あー」
ライスに行っていた干渉は、ちょっと横道にずらしたり方向性を与えたものだったんだ。
でもそれを吸う?回収?することで、ウマ娘の競争寿命やウマ娘自身の競争能力をそぎ落とすんじゃないかって、思っているんだ。
『巨万の富』はまだ何も教えてくれない。けど、たぶん大丈夫な感じがする。
まずはライスの不幸な現象をどうにかしたい。
あわよくば、誰も不幸にならない状況を作り出して、あの時はよかったねという思いでにできればいいかな。
干渉器を作っている身で何を言ってんのって、思うかもしれない。
だけど作ったのなら、使わないとね。
「結構小さくなったよなー」
「昔の携帯電話から、ノートパソコンくらいになったね」
「それでも大分でかくないか?」
「通信兵よりましでしょ」
よし、これを使ってさらに実験していこっか。