編入先はトレセン学園   作:名無しの権左衛門

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5:スイープトウショウ

♪~

 

「は! 今日は」

「振替休日だ!」

 

 金曜日の今日、なんか急に休みが入ったらしくて寮の1階にある掲示板に、その旨の紙が貼られていた。

それに気づいた宮本 文恵っていう女子が、クラスのLANEにその写真を送ってきたんだ。

やった、明日休みじゃあああって喜んでいるクラスメイトだけど、僕と新田君は違う。今日も今日とて、ライスのソウル干渉の実験をしなくちゃいけない。

これこそ契約不履行になっちまうからね。

 

「やあライス、隣いいかな? いいよね」

「え、うん」

「じゃあ、俺はこっちだ」

「ひゃっ」

 

 学校がなくても制服を着て出てくる。私服で付きまとったら何ていわれるかわからないしさ。

今日はとりあえず、ライスにくっついて干渉したら、今まで得た知見を周囲のウマ娘に試そうってことになった。

色々今日の実験について話しているけど、それは新田君に任せて僕の方はどこ行くかだね。

干渉器をあまり大規模に使うと、非常に面倒なことになってしまう。

そこで商店街等都心方面には向かわず、少々田舎なところを巡ることにした。

そもそも干渉器が重すぎるんだ。

 今でさえノートパソコンだけど、中身が詰まっているからあんまり変わっていない。

速く研究して軽くしていきたいなあ。

 

「あ、遠矢!」

「よっテイオー」

「何してんの?」

「ライスの実験」

「え? な、なにを実験するの?」

「そりゃあ……ねぇ?」

「ああ」

 

 新田君も僕の思わせぶりな行動に頷いてくれる。

賢いっていいなあ。

ただこの動作をするとテイオーは、なんか顔を真っ赤にするんだ。

え、なんでそんな反応するの?

 

「ーーーーーのに」

「え?」

「ボクが最初に好きだったのに!」

 

 そういってテイオーは走っていった。

まって、これって……ああもう。放課後に謝ろう。

 

「すまん、悪乗りしちまった」

「ううん。まさか、あそこまで考えが飛躍するなんて」

「西尾君も新田君も、もう少しライスたちウマ娘の気持ちを考えてほしいな」

「そうだね。確かに僕も、親しい友達が知らない人と楽しく話しているともやもやしたことあるよ」

「俺も気になる女の子が、どうでもよさそうなやつと話していたらこう……来るよな」

「うん。もっと大人にならないとね」

「そうだな!」

「じゃあ、ライスの事も」

「あ、それは契約中だから無理」

「業界人として、契約の破棄はできないから」

「なんで!?」

 

 片づけをして登校をしつつ干渉器とウマソウルの波長を可視化する機械でみてみると、お互いに干渉しあって相乗効果を生み出すことが分かった。

特に気になると言ったウマ娘同士の波長は、絡み合ってから一つの大きな波になるんだ。

興味深いね。

 

「新田君!」

「お、おう。どうした西尾」

「あの子からすごい波長だ」

「すげえ! ってことは、ウマ娘の波長がでかいってことか」

「素質をビンビンに感じるぜぇ」

「ウマソウルの波長の大きさとウマ娘の強さが比例するか、見てみたいよなぁ」

「比例するよ」

「まじで!?」

 

 『巨万の富』が教えてくれる。間違いない。それにこの子は将来トレセン学園にくるらしいから、ここで接触するのもいいかもね?

なんせ、あの子、今迷子らしいから。

始業までまだ30分もあるから、ライスも巻き込んであの子のところへ行こうそうしよう。

 

「え、あの子迷子なの?」

「うん。そういうわけで、ライス先輩! 一緒来ていただけませんか?」

「頼れるライス先輩。一緒に迷子を救おう!!」

「(調子いいなぁ)うん、悲しそうな子はほっとけないよね」

 

 二人ともごめん。そのこ、超気難しいから。

 

「やあこんなところでどうしたの?」

「あ、トレセン学園の人! ねえ、TS魔法少年はどこよ!」

「「「!?」」」

「TS魔法少年はどこって聞いてるの! まったく、聞こえないのかしら」

「あ、ああ、ちょっとよくわかんない。えーと、名前聞いてない?」

「えーと、たぶち のりたか? 教えたんだから早く案内しなさいよ!」

「電話する、ちょっと待ってて。西尾、対応」

「まじ? ライス先輩?」

「頼れる後輩の西尾君、頑張って♡」

 

 夢見る少女の前で顔をゆがめられないゾ。

あの手この手で話を引き延ばして、何がこの子をトレセン学園まで足を運ばせたのか聞かないと。

 それで聞いてみたところ、グランマというおばあちゃんと同じく魔法を使えたらしい田淵君と出会って、何もないところからお菓子をだしたり、いつの間にか自家用車が来ていたり手の中から光が瞬いたりしたんだって。

何それ、こわ。田淵君すごい特技をお持ちのようで。

 

「ところで、TS魔法少年はどうやって魔法少年になったか聞いてるかい?」

「大魔法使いになる代償として、ウマ娘から人間の男になったって聞いたわよ」

「なるほどお」

 

 視線誘導をして袖の下からバラの花をやって、彼女の気性を抑えつけられたけど田淵には及ばない。

どうやって手のひらから光をだしたんだ?

チェレンコフ光か? コジマ粒子か?

 

「おーい!」

「やっと来たか!」

「遅いぞっ 魔法少女リリカルっ子が待ちくたびれてんぞ」

「わりぃわりぃ。やあ、スイープ」

「遅い! 遅い遅い遅い遅い遅い!!! スイーピーの約束を守れない師匠なんて、グランマに及ばないへっぴり魔法使いよ!」

「ごめんね。こっちのTS魔法少年に、魔力を渡していたから動けなかったんだ」

「!? お、おい、田淵ーー師匠!」

 

 呼び捨てにしようとすると、魔法少女からジト目を向けられる!

まずい。夢見る少女の夢を破壊しちゃいけない!

とにかくTS魔法少年じゃないけど、少女の為に魔法を使ったのは師匠の技術のおかげってことにしておこう。

それと魔法少年として、新田君とライスを巻き込んでやろう。

 

「ところで、あんた名前は?」

「僕は西尾 遠矢。君は?」

「あたしは、田淵師匠の一番弟子、スイープトウショウよ! アタシの事は、姉弟子って呼びなさい!」

「わかったよ、姉弟子。ところで姉弟子は、ホムンクルスって作れる?」

「ホムン? 何よそれ」

「なんとこちらの新田君は、田淵師匠の薫陶を受けて青いバラをホムンクルスにしたんだ!

それがこっちのウマ娘、ブルーローズだ!」

「「!?」」

 

 あと5分くらいで始業が始まるから場を切り抜けられなさそうなライスを、魔法を使って送り出すことにした。

新田君とライスは焦って僕を睨みつけてくるんだけど、ここで策を一つ提案してみるぞ。

 

「なんと新田君はホムンクルスを、遠くに瞬間移動できるんだ」

「本当なの!?」

「本当さ! じゃあ、やってみせるから、新田君とライス先輩準備よろしく」

 

 おっと無理だって目線で訴えないで。大丈夫『巨万の富』が、99%騙せる手品のやり方を教えてくれるから。

まずはいろんな道具が入ってるリュックサックから赤くて大きい布を取り出して、ライスの周囲を取り巻く、

次に地面まで垂れた布を揺らすことで、何か物体が布を押し込んでも不自然がないようにする。

そしてこれが肝なんだけど、ソウル干渉器でスイープト「姉弟子って言ってるでしょ! 聞こえないの!?」姉弟子のソウル波をちょちょいとする。

 このちょちょっとしたときに、ライスを走らせるんだ。

ライス曰く、干渉されるとふわっとなるらしいので、その隙をついた形。

あとは視線をくぎ付けにすれば……。うん、ライスは曲がり角を曲がったな。

 

「ほーら!」

「凄い!! すごいわ! 本当にブルーローズがいなくなってるじゃない!」

 

 なお、ここで布を取っ払うと、走り去ったことが悟られるくらいG1級ウマ娘の五感が優れている。

暫くここに布を放置しよう!

そして田淵君のひょうひょうとした言動に合わせて、僕と新田君がTS魔法少年としてふるまうんだ。

うおおおお師匠! あんたってやつは最高だぜええええ!!

姉弟子も道端から近くの公園に移ってから魔法を使えるように、田淵や俺から魔法を習っていく。

 でも姉弟子のそれって、いわゆる自己暗示とかテイエムオペラオーみたいなやつじゃない?

やる気を与えるための動機付けって感じだね。うお、勝手にしてもらうと、ソウル波がすごい。

 

「!」

「鳥の爆撃だ!」

「おいおい、こんな電信柱のないところで爆撃とか運ねぇな」

「これにはちょっと訳があるんだよ、師匠」

 

 G1級ウマソウル干渉は常に身の危険があるね。本当に子機を使って分散しなきゃいけないじゃん。

 

 お昼を僕のおごりで、師匠・新田君・姉弟子を誘って食べた後夕方までやり続けた。

そして電気自動車で登場する姉弟子の父親。そりゃ気づかないわけだよ……。

 

「スイープがお世話になりました」

「いえいえ、こちらも楽しく遊ばせていただきました。ね、姉弟子」

「そうよ。弟弟子たちも師匠も、グランマみたいな魔法を使えるの! みんなアタシの魔法なんてどうでもいいなんて言うけど、三人は本当の魔法使いなんだから!」

「……うちの子が本当に、ご迷惑をおかけしました」

「ご迷惑だなんてとんでもございません。見たところ、G1を狙える素質を持つ素晴らしい子じゃないですか。

是非トレセン学園に。まあ、弟子の成長を近くで見守りたいってのもありますが」

 

 姉弟子のお父さんは、終始申し訳ない感じで腰が低かった。でもこちらこそありがとうでしかない。

内緒でウマソウルに干渉してしまったんだから。見たところソウル波が小さいと、反動が少ないんだと思う。

でもG1級はものすごい。まだまだ解明しきれていないけど、ライスや姉弟子といったイベントに欠かないウマ娘は実験に申し分ない。

 

 だから、もんのすんごく高いスイーツをおごらされても、なんとも思ってないよホントダヨ。

 

「じゃあね、遠矢! 幸助! そして典孝師匠!」

 

 

 

――夜

 

 テイオーに謝罪したところ、明日遊園地に連れて行ってだって。

うっそだろ。

 

 とまあこれは明日でいいか。

今日はウマソウル干渉器と僕らのクラスで発表されたとあるお題目のための開発をするぞ!

 

「さて、はんだ付けするから、抑えといて」

「両手ふさがってるもんな」

 

 今までノートパソコンだったのが、広辞苑くらいになったぞ。

同じくらいだと思っては困る。開発初期のノートパソコンだったのが、広辞苑を最初に発行したくらいの大きさになったんだ。

確か令和の時代だと相当分厚かったはず。それに比べたら、最初の広辞苑なんて新聞紙よ。

 開発しながら近くの遊園地の事を調べて、どういう道順とか適当にフローチャートを作成。

うーん。デート経験ないから、適当に遊んで食って帰るか。

 

「ふー終わったぁ」

 

ピロン

 

「ん? 西尾、携帯なったぞ?」

「え? あー、時計の特許取れた」

「まじかよ!? 一応聞くが、ウマソウル干渉器を特許申請しないよな?」

「しないよ。そんなのしたら、まずいに決まってる」

「そらよかった。じゃ、おやすみー」

「おやすみー」

 

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